航空事故調査委員会設置法
法令番号: 法律第113号
公布年月日: 昭和48年10月12日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

航空交通の安全確保のため、事故発生時の原因究明と再発防止が重要である。現状では大規模事故の際に有識者調査団を編成しているが、迅速な調査開始が困難で事前準備も不十分という問題がある。そこで、常設の航空事故調査委員会を設置し、事故原因究明のための調査を適確に行う体制を確立することを目的とする。委員会は運輸省の付属機関として設置され、事故調査、再発防止策の勧告、必要な調査研究等を行う。

参照した発言:
第71回国会 衆議院 内閣委員会 第4号

審議経過

第71回国会

衆議院
(昭和48年2月22日)
参議院
(昭和48年3月8日)
衆議院
(昭和48年6月29日)
(昭和48年7月6日)
(昭和48年7月11日)
(昭和48年7月13日)
(昭和48年7月13日)
参議院
(昭和48年7月17日)
(昭和48年9月18日)
(昭和48年9月19日)
(昭和48年9月26日)
航空事故調査委員会設置法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年十月十二日
内閣総理大臣 田中角榮
法律第百十三号
航空事故調査委員会設置法
(目的)
第一条 この法律は、航空事故の原因を究明するための調査を適確に行なわせるため航空事故調査委員会を設置し、もつて航空事故の防止に寄与することを目的とする。
(設置)
第二条 運輸省に、航空事故調査委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第三条 委員会の所掌事務は、次のとおりとする。
一 航空事故(航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第七十六条第一項各号に掲げる事故をいう。以下同じ。)の原因を究明するための調査(以下「航空事故調査」という。)を行なうこと。
二 航空事故調査の結果に基づき、航空事故の防止のため講ずべき施策について勧告すること。
三 航空事故の防止のため講ずべき施策について建議すること。
四 前三号に掲げる事務を行なうため必要な調査及び研究を行なうこと。
(職権の行使)
第四条 委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。
(組織)
第五条 委員会は、委員長及び委員四人をもつて組織する。
2 委員のうち二人は、非常勤とする。
3 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
4 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員の任命)
第六条 委員長及び委員は、委員会の所掌事務の遂行につき科学的かつ公正な判断を行なうことができると認められる者のうちから、両議院の同意を得て、運輸大臣が任命する。
2 委員長又は委員につき任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、運輸大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、運輸大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。
4 次の各号の一に該当する者は、委員長又は委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
二 禁 錮以上の刑に処せられた者
三 航空運送事業者若しくは航空機若しくは航空機の装備品の製造、改造、整備若しくは販売の事業を営む者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)若しくはこれらの者の使用人その他の従業者
四 前号に掲げる事業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は使用人その他の従業者
(任期)
第七条 委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
(罷免)
第八条 運輸大臣は、委員長又は委員が第六条第四項各号の一に該当するに至つたときは、これらを罷免しなければならない。
2 運輸大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、あらかじめ委員会の意見をきいたうえ、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。
(会議)
第九条 委員会は、委員長が招集する。
2 委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4 委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第五条第四項の規定により委員長の職務を代理する常勤の委員は、委員長とみなす。
(服務)
第十条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も、同様とする。
2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 委員長及び常勤の委員は、在任中、運輸大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
(給与)
第十一条 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(専門委員)
第十二条 委員会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、委員会の意見をきいて、運輸大臣が任命する。
3 専門委員は、非常勤とする。
(職務従事の制限)
第十三条 委員会は、委員長、委員又は専門委員が航空事故の原因に関係があるおそれのある者と密接な関係を有すると認めるときは、当該委員長、委員又は専門委員を当該航空事故に関する航空事故調査に従事させてはならない。
2 前項の委員長又は委員は、当該航空事故調査に関する委員会の会議に出席することができない。
(事務局)
第十四条 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
2 事務局に、事務局長、航空事故調査官その他の職員を置く。
3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
4 事務局の内部組織は、運輸省令で定める。
(航空事故調査)
第十五条 委員会は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して、航空事故調査を行なうものとする。
2 委員会は、航空事故調査を行なうため必要があると認めるときは、次の各号に掲げる処分をすることができる。
一 航空機の使用者、航空機に乗り組んでいた者、航空事故に際し人命又は航空機の救助に当たつた者その他の航空事故の関係者(以下「関係者」という。)から報告を徴すること。
二 航空事故の現場その他の必要と認める場所に立ち入つて、航空機その他の航空事故に関係のある物件を検査し、又は関係者に質問すること。
三 関係者に出頭を求めて質問すること。
四 航空機その他の航空事故に関係のある物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の提出を求め、又は提出物件を留め置くこと。
五 航空機その他の航空事故に関係のある物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の保全を命じ、又はその移動を禁止すること。
六 航空事故の現場に、公務により立ち入る者及び委員会が支障がないと認める者以外の者が立ち入ることを禁止すること。
3 委員会は、必要があると認めるときは、委員長、委員又は事務局の職員に前項各号に掲げる処分を、専門委員に同項第二号に掲げる処分をさせることができる。
4 前項の規定により第二項第二号に掲げる処分をする者は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
5 第二項又は第三項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(航空事故の発生の通報)
第十六条 運輸大臣は、航空法第七十六条第一項若しくは第二項の規定により航空事故について報告があつたとき、又は航空事故が発生したことを知つたときは、直ちに委員会にその旨を通報しなければならない。
(運輸大臣の援助)
第十七条 委員会は、航空事故調査を行なうため必要があると認めるときは、運輸大臣に対し、航空事故についての事実の調査又は物件の収集の援助その他の必要な援助を求めることができる。
2 運輸大臣は、前項の規定により航空事故についての事実の調査の援助を求められた場合において、必要があると認めるときは、その職員に第十五条第二項第二号に掲げる処分をさせることができる。
3 運輸大臣は、航空事故が発生したことを知つたときは、直ちに当該航空事故について事実の調査、物件の収集その他の委員会が航空事故調査を円滑に開始することができるための適切な措置をとらなければならない。
4 運輸大臣は、前項の規定による措置をとるため必要があると認めるときは、その職員に第十五条第二項各号に掲げる処分をさせることができる。
5 第十五条第四項及び第五項の規定は、第二項又は前項の規定により職員が処分をする場合について準用する。
(関係行政機関等の協力)
第十八条 委員会は、航空事故調査を行なうため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、資料又は情報の提供その他の必要な協力を求めることができる。
(原因関係者等の意見の聴取)
第十九条 委員会は、航空事故調査を終える前に、当該航空事故の原因に関係があると認められる者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
2 委員会は、必要があると認めるときは、航空事故調査を終える前に、聴聞会を開き、関係者又は学識経験のある者から、当該航空事故に関して意見をきくことができる。
3 旅客を運送する航空運送事業の用に供する航空機について発生した航空事故であつて一般的関心を有するものについては、前項の聴聞会を開かなければならない。
(報告書等)
第二十条 委員会は、航空事故調査を終えたときは、当該航空事故に関する次の事項を記載した報告書を作成し、これを運輸大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
一 航空事故調査の経過
二 認定した事実
三 事実を認定した理由
四 原因
2 前項の報告書には、少数意見を附記するものとする。
3 委員会は、航空事故調査を終える前においても、必要があると認めるときは、航空事故調査の経過について、運輸大臣に報告するとともに、公表するものとする。
(勧告)
第二十一条 委員会は、航空事故調査を終えた場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、航空事故の防止のため講ずべき施策について運輸大臣に勧告することができる。
2 運輸大臣は、前項の規定による勧告に基づき講じた施策について委員会に通報しなければならない。
(建議)
第二十二条 委員会は、必要があると認めるときは、航空事故の防止のため講ずべき施策について運輸大臣又は関係行政機関の長に建議することができる。
(政令への委任)
第二十三条 この法律に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
(不利益取扱いの禁止)
第二十四条 何人も、第十五条第二項若しくは第三項又は第十七条第二項若しくは第四項の規定による処分に応ずる行為をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを受けない。
(罰則)
第二十五条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第十五条第二項第一号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による報告の徴取に対し虚偽の報告をした者
二 第十五条第二項第二号、同条第三項若しくは第十七条第二項若しくは第四項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はこれらの規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
三 第十五条第二項第三号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
四 第十五条第二項第四号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による処分に違反して物件を提出しない者
五 第十五条第二項第五号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による処分に違反して物件を保全せず、又は移動した者
第二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、同条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第六条第一項中両議院の同意を得ることに係る部分は、公布の日から施行する。
(最初の委員長及び委員の任命)
2 この法律の施行後最初に任命される委員会の委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第六条第二項及び第三項の規定を準用する。
(運輸省設置法の一部改正)
3 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一節 運輸審議会(第五条―第十八条)」を
第一節
運輸審議会(第五条―第十八条)
第一節の二
航空事故調査委員会(第十八条の二)
に改める。
第二章第一節の次に次の一節を加える。
第一節の二 航空事故調査委員会
(航空事故調査委員会)
第十八条の二 運輸省に、航空事故調査委員会を置く。
2 航空事故調査委員会の組織及び所掌事務については、航空事故調査委員会設置法(昭和四十八年法律第百十三号)の定めるところによる。
第二十八条の二第一項第十五号を次のように改める。
十五 航空事故調査委員会の行なう航空事故調査に対する援助に関すること。
第五十五条の二第十一号を次のように改める。
十一 航空事故調査委員会の行なう航空事故調査に対する援助に関すること。
(航空法の一部改正)
4 航空法の一部を次のように改正する。
第百三十二条を次のように改める。
第百三十二条 削除
第百三十四条第三項を次のように改める。
3 前項の場合には、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
第百三十四条に次の一項を加える。
4 第二項の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第百五十八条第一号中「、第百三十二条第二項」を削り、同条第二号中「第百三十二条第二項又は」を削り、同条第三号を削り、同条第四号を同条第三号とする。
5 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
6 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十三号の五の次に次の一号を加える。
十三の六 航空事故調査委員会の委員長及び常勤の委員
第一条第二十四号を次のように改める。
二十四 航空事故調査委員会の非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「中央更生保護審査会委員長」を
中央更生保護審査会委員長
航空事故調査委員会委員長
に、「土地鑑定委員会の常勤の委員」を
土地鑑定委員会の常勤の委員
航空事故調査委員会の常勤の委員
に改める。
(自衛隊法の一部改正)
7 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
第百七条の見出し中「航空法」を「航空法等」に改め、同条第一項中「、第百三十二条第一項及び第二項」を削り、同条に次の二項を加える。
7 航空事故調査委員会設置法(昭和四十八年法律第百十三号)第三条の規定は、自衛隊の使用する航空機について発生した航空事故(自衛隊の使用する航空機が自衛隊以外の者が使用する航空機と衝突し、又は接触したことにより発生したものを除く。)については、適用しない。
8 長官は、航空事故の防止のために有益であると認める前項の航空事故に係る情報を航空事故調査委員会に提供するものとする。
法務大臣 田中伊三次
運輸大臣 新谷寅三郎
内閣総理大臣 田中角榮
航空事故調査委員会設置法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年十月十二日
内閣総理大臣 田中角栄
法律第百十三号
航空事故調査委員会設置法
(目的)
第一条 この法律は、航空事故の原因を究明するための調査を適確に行なわせるため航空事故調査委員会を設置し、もつて航空事故の防止に寄与することを目的とする。
(設置)
第二条 運輸省に、航空事故調査委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第三条 委員会の所掌事務は、次のとおりとする。
一 航空事故(航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第七十六条第一項各号に掲げる事故をいう。以下同じ。)の原因を究明するための調査(以下「航空事故調査」という。)を行なうこと。
二 航空事故調査の結果に基づき、航空事故の防止のため講ずべき施策について勧告すること。
三 航空事故の防止のため講ずべき施策について建議すること。
四 前三号に掲げる事務を行なうため必要な調査及び研究を行なうこと。
(職権の行使)
第四条 委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。
(組織)
第五条 委員会は、委員長及び委員四人をもつて組織する。
2 委員のうち二人は、非常勤とする。
3 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
4 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員の任命)
第六条 委員長及び委員は、委員会の所掌事務の遂行につき科学的かつ公正な判断を行なうことができると認められる者のうちから、両議院の同意を得て、運輸大臣が任命する。
2 委員長又は委員につき任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、運輸大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、運輸大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。
4 次の各号の一に該当する者は、委員長又は委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
二 禁 錮以上の刑に処せられた者
三 航空運送事業者若しくは航空機若しくは航空機の装備品の製造、改造、整備若しくは販売の事業を営む者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)若しくはこれらの者の使用人その他の従業者
四 前号に掲げる事業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は使用人その他の従業者
(任期)
第七条 委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
(罷免)
第八条 運輸大臣は、委員長又は委員が第六条第四項各号の一に該当するに至つたときは、これらを罷免しなければならない。
2 運輸大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、あらかじめ委員会の意見をきいたうえ、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。
(会議)
第九条 委員会は、委員長が招集する。
2 委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4 委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第五条第四項の規定により委員長の職務を代理する常勤の委員は、委員長とみなす。
(服務)
第十条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も、同様とする。
2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 委員長及び常勤の委員は、在任中、運輸大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
(給与)
第十一条 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(専門委員)
第十二条 委員会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、委員会の意見をきいて、運輸大臣が任命する。
3 専門委員は、非常勤とする。
(職務従事の制限)
第十三条 委員会は、委員長、委員又は専門委員が航空事故の原因に関係があるおそれのある者と密接な関係を有すると認めるときは、当該委員長、委員又は専門委員を当該航空事故に関する航空事故調査に従事させてはならない。
2 前項の委員長又は委員は、当該航空事故調査に関する委員会の会議に出席することができない。
(事務局)
第十四条 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
2 事務局に、事務局長、航空事故調査官その他の職員を置く。
3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
4 事務局の内部組織は、運輸省令で定める。
(航空事故調査)
第十五条 委員会は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して、航空事故調査を行なうものとする。
2 委員会は、航空事故調査を行なうため必要があると認めるときは、次の各号に掲げる処分をすることができる。
一 航空機の使用者、航空機に乗り組んでいた者、航空事故に際し人命又は航空機の救助に当たつた者その他の航空事故の関係者(以下「関係者」という。)から報告を徴すること。
二 航空事故の現場その他の必要と認める場所に立ち入つて、航空機その他の航空事故に関係のある物件を検査し、又は関係者に質問すること。
三 関係者に出頭を求めて質問すること。
四 航空機その他の航空事故に関係のある物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の提出を求め、又は提出物件を留め置くこと。
五 航空機その他の航空事故に関係のある物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の保全を命じ、又はその移動を禁止すること。
六 航空事故の現場に、公務により立ち入る者及び委員会が支障がないと認める者以外の者が立ち入ることを禁止すること。
3 委員会は、必要があると認めるときは、委員長、委員又は事務局の職員に前項各号に掲げる処分を、専門委員に同項第二号に掲げる処分をさせることができる。
4 前項の規定により第二項第二号に掲げる処分をする者は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
5 第二項又は第三項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(航空事故の発生の通報)
第十六条 運輸大臣は、航空法第七十六条第一項若しくは第二項の規定により航空事故について報告があつたとき、又は航空事故が発生したことを知つたときは、直ちに委員会にその旨を通報しなければならない。
(運輸大臣の援助)
第十七条 委員会は、航空事故調査を行なうため必要があると認めるときは、運輸大臣に対し、航空事故についての事実の調査又は物件の収集の援助その他の必要な援助を求めることができる。
2 運輸大臣は、前項の規定により航空事故についての事実の調査の援助を求められた場合において、必要があると認めるときは、その職員に第十五条第二項第二号に掲げる処分をさせることができる。
3 運輸大臣は、航空事故が発生したことを知つたときは、直ちに当該航空事故について事実の調査、物件の収集その他の委員会が航空事故調査を円滑に開始することができるための適切な措置をとらなければならない。
4 運輸大臣は、前項の規定による措置をとるため必要があると認めるときは、その職員に第十五条第二項各号に掲げる処分をさせることができる。
5 第十五条第四項及び第五項の規定は、第二項又は前項の規定により職員が処分をする場合について準用する。
(関係行政機関等の協力)
第十八条 委員会は、航空事故調査を行なうため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、資料又は情報の提供その他の必要な協力を求めることができる。
(原因関係者等の意見の聴取)
第十九条 委員会は、航空事故調査を終える前に、当該航空事故の原因に関係があると認められる者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
2 委員会は、必要があると認めるときは、航空事故調査を終える前に、聴聞会を開き、関係者又は学識経験のある者から、当該航空事故に関して意見をきくことができる。
3 旅客を運送する航空運送事業の用に供する航空機について発生した航空事故であつて一般的関心を有するものについては、前項の聴聞会を開かなければならない。
(報告書等)
第二十条 委員会は、航空事故調査を終えたときは、当該航空事故に関する次の事項を記載した報告書を作成し、これを運輸大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
一 航空事故調査の経過
二 認定した事実
三 事実を認定した理由
四 原因
2 前項の報告書には、少数意見を附記するものとする。
3 委員会は、航空事故調査を終える前においても、必要があると認めるときは、航空事故調査の経過について、運輸大臣に報告するとともに、公表するものとする。
(勧告)
第二十一条 委員会は、航空事故調査を終えた場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、航空事故の防止のため講ずべき施策について運輸大臣に勧告することができる。
2 運輸大臣は、前項の規定による勧告に基づき講じた施策について委員会に通報しなければならない。
(建議)
第二十二条 委員会は、必要があると認めるときは、航空事故の防止のため講ずべき施策について運輸大臣又は関係行政機関の長に建議することができる。
(政令への委任)
第二十三条 この法律に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
(不利益取扱いの禁止)
第二十四条 何人も、第十五条第二項若しくは第三項又は第十七条第二項若しくは第四項の規定による処分に応ずる行為をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを受けない。
(罰則)
第二十五条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第十五条第二項第一号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による報告の徴取に対し虚偽の報告をした者
二 第十五条第二項第二号、同条第三項若しくは第十七条第二項若しくは第四項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はこれらの規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
三 第十五条第二項第三号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
四 第十五条第二項第四号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による処分に違反して物件を提出しない者
五 第十五条第二項第五号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による処分に違反して物件を保全せず、又は移動した者
第二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、同条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第六条第一項中両議院の同意を得ることに係る部分は、公布の日から施行する。
(最初の委員長及び委員の任命)
2 この法律の施行後最初に任命される委員会の委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第六条第二項及び第三項の規定を準用する。
(運輸省設置法の一部改正)
3 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一節 運輸審議会(第五条―第十八条)」を
第一節
運輸審議会(第五条―第十八条)
第一節の二
航空事故調査委員会(第十八条の二)
に改める。
第二章第一節の次に次の一節を加える。
第一節の二 航空事故調査委員会
(航空事故調査委員会)
第十八条の二 運輸省に、航空事故調査委員会を置く。
2 航空事故調査委員会の組織及び所掌事務については、航空事故調査委員会設置法(昭和四十八年法律第百十三号)の定めるところによる。
第二十八条の二第一項第十五号を次のように改める。
十五 航空事故調査委員会の行なう航空事故調査に対する援助に関すること。
第五十五条の二第十一号を次のように改める。
十一 航空事故調査委員会の行なう航空事故調査に対する援助に関すること。
(航空法の一部改正)
4 航空法の一部を次のように改正する。
第百三十二条を次のように改める。
第百三十二条 削除
第百三十四条第三項を次のように改める。
3 前項の場合には、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
第百三十四条に次の一項を加える。
4 第二項の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第百五十八条第一号中「、第百三十二条第二項」を削り、同条第二号中「第百三十二条第二項又は」を削り、同条第三号を削り、同条第四号を同条第三号とする。
5 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
6 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十三号の五の次に次の一号を加える。
十三の六 航空事故調査委員会の委員長及び常勤の委員
第一条第二十四号を次のように改める。
二十四 航空事故調査委員会の非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「中央更生保護審査会委員長」を
中央更生保護審査会委員長
航空事故調査委員会委員長
に、「土地鑑定委員会の常勤の委員」を
土地鑑定委員会の常勤の委員
航空事故調査委員会の常勤の委員
に改める。
(自衛隊法の一部改正)
7 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
第百七条の見出し中「航空法」を「航空法等」に改め、同条第一項中「、第百三十二条第一項及び第二項」を削り、同条に次の二項を加える。
7 航空事故調査委員会設置法(昭和四十八年法律第百十三号)第三条の規定は、自衛隊の使用する航空機について発生した航空事故(自衛隊の使用する航空機が自衛隊以外の者が使用する航空機と衝突し、又は接触したことにより発生したものを除く。)については、適用しない。
8 長官は、航空事故の防止のために有益であると認める前項の航空事故に係る情報を航空事故調査委員会に提供するものとする。
法務大臣 田中伊三次
運輸大臣 新谷寅三郎
内閣総理大臣 田中角栄