地価公示法
法令番号: 法律第49号
公布年月日: 昭和44年6月23日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

近年の産業・人口の都市集中による土地需給の不均衡から地価が高騰し、不当なつけ値による取引価格が一般化している。また、公共用地の取得価格も事業間で統一性を欠き、周辺地価を引き上げているとの批判もある。そこで、都市地域の標準地について正常な価格を公示する制度を確立し、適正な地価形成に寄与する必要がある。昭和39年の衆議院決議以降の検討と住宅宅地審議会の答申を踏まえ、この法案を提出するに至った。

参照した発言:
第61回国会 衆議院 建設委員会 第7号

審議経過

第61回国会

衆議院
(昭和44年3月14日)
参議院
(昭和44年3月18日)
衆議院
(昭和44年4月16日)
(昭和44年4月18日)
(昭和44年4月23日)
(昭和44年4月24日)
参議院
(昭和44年5月8日)
(昭和44年5月20日)
(昭和44年6月5日)
(昭和44年6月10日)
(昭和44年6月12日)
(昭和44年6月17日)
(昭和44年6月19日)
(昭和44年6月20日)
地価公示法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十四年六月二十三日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第四十九号
地価公示法
目次
第一章
総則(第一条)
第二章
地価の公示の手続(第二条―第七条)
第三章
公示価格の効力(第八条―第十一条)
第四章
土地鑑定委員会(第十二条―第二十一条)
第五章
雑則(第二十二条―第二十六条)
第六章
罰則(第二十七条―第二十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、都市及びその周辺の地域において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。
第二章 地価の公示の手続
(標準地の価格の判定等)
第二条 土地鑑定委員会は、建設省令で定める市街化区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の規定による市街化区域をいう。)内の標準地について、毎年一回、建設省令で定めるところにより、二人以上の不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行なつて、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。
2 前項の「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引(農地、採草放牧地又は森林の取引(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引を除く。)を除く。)において通常成立すると認められる価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格)をいう。
(標準地の選定)
第三条 前条第一項の標準地は、土地鑑定委員会が、建設省令で定めるところにより、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定するものとする。
(標準地についての鑑定評価の基準)
第四条 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、第二条第一項の規定により標準地の鑑定評価を行なうにあたつては、建設省令で定めるところにより、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案してこれを行なわなければならない。
(鑑定評価書の提出)
第五条 第二条第一項の規定により標準地の鑑定評価を行なつた不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、土地鑑定委員会に対し、鑑定評価額その他の建設省令で定める事項を記載した鑑定評価書を提出しなければならない。
(標準地の価格等の公示)
第六条 土地鑑定委員会は、第二条第一項の規定により標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、次に掲げる事項を官報で公示しなければならない。
一 標準地の所在の郡、市、区、町村及び字並びに地番
二 標準地の単位面積当たりの価格及び価格判定の基準日
三 標準地の地積及び形状
四 標準地及びその周辺の土地の利用の現況
五 その他建設省令で定める事項
(公示に係る事項を記載した書面等の送付及び閲覧)
第七条 土地鑑定委員会は、前条の規定による公示をしたときは、すみやかに、関係市町村(都の特別区の存する区域にあつては特別区、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあつては当該市の区。次項において同じ。)の長に対して、公示した事項のうち当該市町村が属する都道府県に存する標準地に係る部分を記載した書面及び当該標準地の所在を表示する図面を送付しなければならない。
2 関係市町村の長は、政令で定めるところにより、前項の図書を当該市町村の事務所において一般の閲覧に供しなければならない。
第三章 公示価格の効力
(不動産鑑定士等の土地についての鑑定評価の準則)
第八条 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、第二条第一項の市街化区域内の土地について鑑定評価を行なう場合において、当該土地の正常な価格(第二条第二項に規定する正常な価格をいう。)を求めるときは、第六条の規定により公示された標準地の価格(以下「公示価格」という。)を規準としなければならない。
(公共事業の用に供する土地の取得価格の算定の準則)
第九条 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律によつて土地を収用することができる事業を行なう者は、第二条第一項の市街化区域内の土地を当該事業の用に供するため取得する場合(当該土地に関して地上権その他当該土地の使用又は収益を制限する権利が存する場合においては、当該土地を取得し、かつ、当該権利を消滅させる場合)において、当該土地の取得価格(当該土地に関して地上権その他当該土地の使用又は収益を制限する権利が存する場合においては、当該権利を消滅させるための対価を含む。)を定めるときは、公示価格を規準としなければならない。
(収用する土地に対する補償金の額の算定の準則)
第十条 土地収用法第七十一条の規定により、第二条第一項の市街化区域内の土地について、当該土地に対する同法第七十一条の事業の認定の告示の時における相当な価格を算定するときは、公示価格を規準として算定した当該土地の価格を考慮しなければならない。
(公示価格を規準とすることの意義)
第十一条 前三条の場合において、公示価格を規準とするとは、対象土地の価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして成立すると認められる価格)を求めるに際して、当該対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一又は二以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行ない、その結果に基づき、当該標準地の公示価格と当該対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。
第四章 土地鑑定委員会
(設置)
第十二条 この法律及び不動産の鑑定評価に関する法律(昭和三十八年法律第百五十二号)に基づく権限を行なわせるため、建設省に、土地鑑定委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第十三条 委員会の所掌事務は、次のとおりとする。
一 地価の公示に関すること。
二 不動産鑑定士試験に関すること。
三 その他法律(これに基づく命令を含む。)の定めるところにより委員会の権限に属させられた事項を処理すること。
2 委員会は、その所掌事務を行なうため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
(組織)
第十四条 委員会は、委員七人をもつて組織する。
2 委員のうち六人は、非常勤とする。
(委員)
第十五条 委員は、不動産の鑑定評価に関する事項又は土地に関する制度について学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、建設大臣が任命する。
2 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、建設大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、建設大臣は、直ちに、その委員を罷免しなければならない。
4 次の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられた者
5 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 委員は、第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、その職を失うものとする。
8 建設大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない行為があると認めるときは、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
(委員長)
第十六条 委員会に委員長を置き、委員の互選によつてこれを定める。
2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(会議)
第十七条 委員会は、委員長が召集する。
2 委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4 委員長に事故のある場合の第二項の規定の適用については、前条第三項に規定する委員は、委員長とみなす。
(委員の服務)
第十八条 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
2 委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 常勤の委員は、在任中、建設大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
(委員の給与)
第十九条 委員の給与は、別に法律で定める。
(庶務)
第二十条 委員会の庶務は、建設省計画局において処理する。
(政令への委任)
第二十一条 この法律に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
第五章 雑則
(土地の立入り)
第二十二条 委員又は委員会の命を受けた者若しくは委任を受けた者は、第二条第一項の規定による鑑定評価若しくは価格の判定は第三条の規定による標準地の選定を行なうために他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行なう必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入ることができる。
2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の三日前までに、その旨を土地の占有者に通知しなければならない。
3 第一項の規定により、建築物が所在し、又はかき、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとするときは、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を土地の占有者に告げなければならない。
4 日出前又は日没後においては、土地の占有者の承諾があつた場合を除き、前項に規定する土地に立ち入つてはならない。
5 土地の占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。
6 第一項の規定により、他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
7 前項に規定する証明書の様式は、建設省令で定める。
(土地の立入りに伴う損失の補償)
第二十三条 建設大臣は、前条第一項の規定による立入りにより他人に損失を与えたときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2 前項の規定による損失の補償については、建設大臣と損失を受けた者とが協議しなければならない。
3 前項の規定による協議が成立しないときは、建設大臣又は損失を受けた者は、建設省令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
(秘密を守る義務)
第二十四条 第二条第一項の規定により標準地の鑑定評価を行なつた不動産鑑定士又は不動産鑑定士補は、正当な理由がなく、その鑑定評価に際して知ることのできた秘密を漏らしてはならない。
(鑑定評価命令)
第二十五条 委員会は、第二条第一項の鑑定評価のため必要があると認めるときは、不動産鑑定士又は不動産鑑定士補に対し、標準地の鑑定評価を命ずることができる。
2 前項の規定に基づく命令により標準地の鑑定評価を行なつた不動産鑑定士又は不動産鑑定士補に対しては、建設省令で定めるところにより、旅費及び報酬を支給する。
(不動産の鑑定評価に関する法律の特例)
第二十六条 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補が第二条第一項の規定により行なう標準地の鑑定評価についての不動産の鑑定評価に関する法律の適用に関しては、当該標準地の鑑定評価は、同法第二条第二項に規定する不動産の鑑定評価に含まれないものにする。
第六章 罰則
第二十七条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二条第一項の規定による標準地の鑑定評価について、虚偽の鑑定評価を行なつた者
二 第二十四条の規定に違反して、標準地の鑑定評価に際して知ることのできた秘密を漏らした者
第二十八条 第二十二条第五項の規定に違反して、同条第一項の規定による土地の立入りを拒み、又は妨げた者は、十万円以下の罰金に処する。
第二十九条 第二十五条第一項の規定により標準地の鑑定評価を命ぜられた者が、正当な理由がなく、鑑定評価を行なわないとき、又は第五条に規定する鑑定評価書を提出しないときは、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和四十四年七月一日から施行する。ただし、第十五条第一項中両議院の同意を得ることに係る部分は、公布の日から施行する。
(最初に行なう地価の公示等の特例)
2 建設省令で定める都市計画区域で、昭和四十五年一月一日までに都市計画法第七条第一項の規定による市街化区域(以下「市街化区域」という。)が定められていないものについては、当該都市計画区域に係る市街化区域が定められ、当該市街化域内の標準地について第六条の規定による地価の公示がされるまでの間、当該都市計画区域に係る用途地域(都市計画法第八条第一項第一号に規定する用途地域をいう。)を第二条第一項の市街化区域とみなして、この法律の規定を適用する。
3 この法律の施行後最初に行なう第六条の規定による地価の公示は、この法律の施行の日から起算して十月をこえない範囲内において建設省令で定める日にするものとする。
(最初の委員の任命)
4 この法律の施行後最初に任命される委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第十五条第二項及び第三項の規定を準用する。
(建設省設置法の一部改正)
5 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条中第十八号の四を第十八号の五とし、第十八号の三の次に次の一号を加える。
十八の四 地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号)の施行に関する事務を管理すること。
第四条第三項及び第四条の二第三項中「第十八号の四」を「第十八号の五」に改める。
第十条第一項の表中
不動産鑑定士審査会
不動産鑑定士試験並びに特別不動産鑑定士試験及び特別不動産鑑定士補試験に関する事項を処理し、又は不動産鑑定士及び不動産鑑定士補に対する懲戒処分について建設大臣に意見を述べること。
土地鑑定委員会
地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律に基づく権限を行なうこと。
に改める。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
6 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十三号の四の次に次の一号を加える。
十三の五 土地鑑定委員会の常勤の委員
第一条第十九号の四の次に次の一号を加える。
十九の五 土地鑑定委員会の非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「科学技術会議の常勤の議員」を
科学技術会議の常勤の議員
土地鑑定委員会の常勤の委員
に改める。
(特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律の一部改正)
7 特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(昭和四十二年法律第百四十二号)の一部を次のように改正する。
附則第五項中「、当該俸給月額」を「当該俸給月額」に、「とし、以下「暫定手当支給額」という」を「、同日における当該暫定手当の月額の定めがない者にあつては政令で定めるこれに相当する額とし、以下「暫定手当支給額」という」に改める。
(不動産の鑑定評価に関する法律の一部改正)
8 不動産の鑑定評価に関する法律の一部を次のように改正する。
第十二条、第十三条及び第四十三条第三項中「不動産鑑定士審査会」を「土地鑑定委員会」に改める。
第四十七条の前の見出しを削り、同条から第五十一条までを次のように改める。
(試験委員)
第四十七条 不動産鑑定士試験の問題の作成及び採点を行なわせるため、土地鑑定委員会に試験委員を置く。
2 試験委員は、試験の施行ごとに、土地鑑定委員会の推薦に基づき、建設大臣が任命する。
第四十八条から第五十一条まで 削除
(不動産の鑑定評価に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
9 前項の規定による改正前の不動産の鑑定評価に関する法律の規定によつて不動産鑑定士審査会がした処分、手続その他の行為は、改正後の不動産の鑑定評価に関する法律の規定によつて土地鑑定委員会がした処分、手続その他の行為とみなす。
内閣総理大臣 佐藤栄作
建設大臣 坪川信三