朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル所得稅法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
內閣總理大臣 米內光政
大藏大臣 櫻內幸雄
法律第二十四號
所得稅法目次
第一章
總則
第二章
分類所得稅
第三章
綜合所得稅
第四章
申告、申請、調査及決定
第五章
所得調査委員會
第六章
審査、訴願及行政訴訟
第七章
徵收
第八章
雜則
第九章
罰則
所得稅法
第一章 總則
第一條 本法施行地ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ハ本法ニ依リ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條 前條ノ規定ニ該當セザル個人左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
一 本法施行地ニ資產又ハ事業ヲ有スルトキ
二 本法施行地ニ於テ公債、社債若ハ預金ノ利子又ハ合同運用信託ノ利益ノ支拂ヲ受クルトキ
三 本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ヲ受クルトキ
四 本法施行地ニ於テ俸給、給料、歲費、費用辨償(月額又ハ年額ヲ以テ支給スルモノニ限ル以下同ジ)、年金(郵便年金ヲ除ク以下同ジ)、恩給、賞與若ハ退職給與又ハ此等ノ性質ヲ有スル給與ノ支拂ヲ受クルトキ
第三條 法人左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
一 本法施行地ニ於テ公債、社債若ハ預金ノ利子又ハ合同運用信託ノ利益ノ支拂ヲ受クルトキ
二 本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ヲ受クルトキ
第四條 北海道、府縣、市町村其ノ他命令ヲ以テ指定スル公共團體、神社及民法第三十四條ノ規定ニ依リ設立シタル法人ニハ所得稅ヲ課セズ
第五條 命令ヲ以テ指定スル重要物產ノ製造、採掘又ハ採取ヲ業トスル個人ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生ズル所得ニ付所得稅ヲ免除ス
第六條 信託財產ニ付生ズル所得ニ關シテハ其ノ所得ヲ信託ノ利益トシテ享受スベキ受益者ガ信託財產ヲ有スルモノト看做シテ所得稅ヲ賦課ス但シ本法施行地ニ於テ信託利益ノ支拂ヲ爲ス合同運用信託ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ受益者不特定ナルトキ又ハ未ダ存在セザルトキハ委託者又ハ其ノ相續人ヲ以テ受益者ト看做ス
公益信託ノ信託財產ニ付生ズル所得ニハ所得稅ヲ課セズ
第七條 本法ニ於テ合同運用信託トハ信託會社ノ引受ケタル金錢信託ニシテ共同セザル多數ノ委託者ノ信託財產ヲ合同シテ運用スルモノヲ謂フ
第八條 左ノ金額ハ之ヲ法人ヨリ受クル利益ノ配當ト看做シ本法ヲ適用ス
一 株式ノ消却ニ因リ支拂ヲ受クル金額又ハ退社若ハ出資ノ減少ニ因リ持分ノ拂戾トシテ受クル金額ガ其ノ株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過金額
二 法人解散シタル場合ニ於テ殘餘財產ノ分配トシテ株主又ハ社員ノ受クル金額ガ其ノ株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過金額
三 法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ社員ガ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ因リテ取得スル株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額及金錢ノ總額ガ其ノ株主又ハ社員ノ有シタル株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過金額
第九條 所得稅ハ之ヲ分類所得稅及綜合所得稅ノ二種トス
第二章 分類所得稅
第十條 分類所得稅ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス
第一 不動產所得
不動產、不動產上ノ權利又ハ船舶ノ貸付(永小作權又ハ地上權ノ設定其ノ他他人ヲシテ不動產、不動產上ノ權利又ハ船舶ヲ使用セシムル一切ノ場合ヲ含ム以下同ジ)ニ因ル所得但シ甲種ノ事業所得ニ屬スルモノヲ除ク
第二 配當利子所得
甲種 本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル公債、社債又ハ預金(法人ニ對スル預金ニ限ル)ノ利子及合同運用信託ノ利益竝ニ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配
乙種 營業ニ非ザル貸金ノ利子竝ニ甲種ニ屬セザル公債、社債又ハ預金ノ利子、合同運用信託ノ利益及法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配
第三 事業所得
甲種 左ニ揭グル營業ノ所得
一 物品販賣業(動植物其ノ他普通ニ物品ト稱セザルモノノ販賣ヲ含ム)
二 金錢貸付業
三 物品貸付業(動植物其ノ他普通ニ物品ト稱セザルモノノ貸付ヲ含ム)
四 製造業(瓦斯電氣ノ供給、物品ノ加工修理ヲ含ム)
五 運送業(運送取扱ヲ含ム)
六 倉庫業
七 請負業
八 印刷業
九 出版業
十 寫眞業
十一 席貸業
十二 旅人宿業
十三 料理店業
十四 周旋業
十五 代理業
十六 仲立業
十七 問屋業
十八 鑛業
十九 砂鑛業
二十 湯屋業
二十一 理髮美容業
二十二 其ノ他命令ヲ以テ定ムル營業
乙種 農業、畜產業、水產業等ノ所得、醫師、辯護士等ノ所得其ノ他他ノ種目ニ屬セザル總テノ所得
第四 勤勞所得
甲種 本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル俸給、給料、歲費、費用辨償、年金、恩給(一時金タル恩給ヲ除ク)及賞與竝ニ此等ノ性質ヲ有スル給與但シ命令ヲ以テ定ムル個人ヨリ支拂ヲ受クルモノヲ除ク
乙種 甲種ニ屬セザル俸給、給料、歲費、費用辨償、年金、恩給(一時金タル恩給ヲ除ク)及賞與竝ニ此等ノ性質ヲ有スル給與
第五 山林ノ所得
第六 退職所得
甲種 本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル一時恩給及退職給與竝ニ此等ノ性質ヲ有スル給與
乙種 甲種ニ屬セザル一時恩給及退職給與竝ニ此等ノ性質ヲ有スル給與
第十一條 左ノ各號ニ該當スル所得ニハ分類所得稅ヲ課セズ
一 軍人及軍屬ノ從軍中ノ俸給、手當及賞與
二 傷痍疾病者ノ恩給竝ニ遺族ノ恩給及年金
三 旅費、學資金及法定扶養料
四 郵便貯金ノ利子及命令ヲ以テ定ムル當座預金ノ利子
五 元本三千圓ヲ超エザル銀行貯蓄預金、產業組合貯金其ノ他命令ヲ以テ定ムル預金ノ利子
六 乙種ノ事業所得中營利ヲ目的トスル繼續的行爲ヨリ生ジタルニ非ザル一時ノ所得
七 日本ノ國籍ヲ有セザル者ノ本法施行地外ニ於ケル資產、營業又ハ職業ヨリ生ズル所得
前項第五號ノ元本ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第十二條 分類所得稅ヲ課スベキ所得ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 不動產所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費(收入ヲ得ルニ必要ナル負債ノ利子ヲ含ム以下同ジ)ヲ控除シタル金額
二 甲種ノ配當利子所得ハ其ノ支拂ヲ受クベキ金額但シ法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ハ支拂ヲ受クベキ金額ヨリ其ノ十分ノ一ヲ控除シタル金額
三 乙種ノ配當利子所得中法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ、其ノ他ハ前年中ノ收入金額(無記名株式ノ配當竝ニ無記名ノ公債及社債ノ利子ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)
四 事業所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額但シ水產業ノ所得ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前三年間每年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額ノ平均ニ依リ算出シタル金額
五 甲種ノ勤勞所得ハ其ノ支拂ヲ受クベキ金額
六 乙種ノ勤勞所得ハ前年中ノ收入金額
七 山林ノ所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
八 甲種ノ退職所得ハ其ノ支拂ヲ受クベキ金額ヨリ支拂者ヲ異ニスル每ニ一萬圓ヲ控除シタル金額
九 乙種ノ退職所得ハ前年中ノ收入金額ヨリ支拂者ヲ異ニスル每ニ一萬圓ヲ控除シタル金額
所得稅及臨時利得稅ハ前項第一號、第四號及第七號ノ必要ノ經費ニ之ヲ算入セズ
營業利得ニ對スル臨時利得稅額ハ當該臨時利得稅ヲ課セラルベキ年分ノ甲種ノ事業所得金額ヨリ之ヲ控除ス
所得稅ヲ課スベキ甲種ノ事業所得ト其ノ他ノ甲種ノ事業所得トヲ有スル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ控除スベキ臨時利得稅ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
不動產所得、配當利子所得及山林ノ所得ニ付テハ被相續人ノ所得ハ之ヲ相續人ノ所得ト看做シ事業所得ニ付テハ相續シタル資產又ハ事業ハ相續人ガ引續キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十三條 公債又ハ社債ニ付元本ノ所有者ニ非ザル者ガ利子ノ支拂ヲ受クルトキハ乙種ノ配當利子所得ノ計算上元本ノ所有者ガ支拂ヲ受クルモノト看做ス但シ利子ノ生ズル期間中ニ元本ノ所有者ニ異動アリタルトキハ最後ノ所有者ヲ以テ利子ノ支拂ヲ受クル者ト看做ス
第十四條 不動產所得ハ二百五十圓ニ滿タザルトキハ分類所得稅ヲ課セズ
戶主及其ノ同居家族ノ不動產所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ不動產所得ニ付亦同ジ
第十五條 乙種ノ配當利子所得ハ百圓ニ滿タザルトキハ分類所得稅ヲ課セズ
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十六條 甲種ノ勤勞所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ年七百二十圓ノ割合ニ依リ給與ノ支給期間ニ應ジテ算出シタル金額ヲ其ノ給與ヨリ控除ス
同一ノ支拂者ヨリ賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ト其ノ他ノ給與トヲ併セ受クル者ニ在リテハ前項ノ控除ハ先ヅ賞與及賞與ノ性質ヲ有スル給與以外ノ給與ニ付之ヲ爲シ不足アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ニ及ブ
二以上ノ支拂者ヨリ甲種ノ勤勞所得ヲ受クル者ニ付テハ前二項ノ規定ニ依ル控除ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第十七條 事業所得及乙種ノ勤勞所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得ヨリ左ノ金額ヲ控除ス
一 事業所得ニ付テハ五百圓
二 乙種ノ勤勞所得ニ付テハ七百二十圓事業所得ト乙種ノ勤勞所得トヲ有スル者ノ事業所得ニ付テハ前項第一號ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ但シ乙種ノ勤勞所得ガ七百二十圓ニ滿タザルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ五百圓ト乙種ノ勤勞所得ノ七・二分ノ五ニ相當スル金額トノ差額ヲ事業所得ヨリ控除ス
第十八條 前年中ニ甲種ノ勤勞所得ニ付第十六條第一項ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケタル者ノ事業所得又ハ乙種ノ勤勞所得ニ付テハ前條ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ但シ前年中ニ甲種ノ勤勞所得ニ付第十六條第一項ノ規定ニ依リ控除シタル金額ガ七百二十圓ニ滿タザルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得ヨリ左ノ金額ヲ控除ス
一 事業所得ニ付テハ五百圓ト第十六條第一項ノ規定ニ依リ控除シタル金額ノ七・二分ノ五ニ相當スル金額トノ差額
二 乙種ノ勤勞所得ニ付テハ七百二十圓ト第十六條第一項ノ規定ニ依リ控除シタル金額トノ差額
三 前二號ノ所得ヲ併セ有スルトキハ其ノ所得ニ付テハ命令ノ定ムル金額
第十九條 同居ノ戶主及其ノ家族中二人以上ノ者ガ事業所得ヲ有スル場合ニ於テ前二條ノ規定ニ依リ其ノ事業所得ヨリ控除スベキ金額ハ總額ニ於テ五百圓ヲ超ユルコトヲ得ズ戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ事業所得ニ付亦同ジ
前項ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ前二條ノ規定ニ依リ控除スベキ金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ納稅義務者ノ一人又ハ數人ノ所得ヨリ之ヲ控除ス
第二十條 山林ノ所得ニ付テハ其ノ所得ヨリ五百圓ヲ控除ス
前條ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第二十一條 分類所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
第一 不動產所得 百分ノ十
第二 配當利子所得
甲種
一 國債ノ利子 百分ノ四
二 國債以外ノ公債ノ利子 百分ノ九
三 其ノ他 百分ノ十
乙種 百分ノ十
第三 事業所得
甲種 百分ノ八・五
乙種 百分ノ七・五
第四 勤勞所得 百分ノ六
第五 山林ノ所得
所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
千六百圓以下ノ金額 百分ノ五
千六百圓ヲ超ユル金額 百分ノ七・五
第六 退職所得
所得金額ヲ支拂者ノ異ナル每ニ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
二萬圓以下ノ金額 百分ノ六
二萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十二
十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
五十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ四十
銀行貯蓄預金、產業組合貯金其ノ他命令ヲ以テ定ムル預金ノ利子及產業組合、工業組合、商業組合等命令ヲ以テ定ムル法人ヨリ受クル剩餘金ノ分配ニ付テハ前項中配當利子所得甲種第三號ニ規定スル稅率百分ノ十ハ之ヲ百分ノ五トス
第十七條又ハ第十八條ノ規定ニ依ル控除前ノ事業所得ノ金額ガ千圓以下ナルトキハ第一項中甲種及乙種ノ事業所得ニ付規定スル稅率百分ノ八・五及百分ノ七・五ハ各之ヲ百分ノ六トス
戶主及其ノ同居家族ノ事業所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ事業所得ニ付亦同ジ
第二十二條 第一條ノ規定ニ該當セザル個人又ハ本法施行地ニ本店若ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ノ甲種ノ配當利子所得ニ對スル分類所得稅ハ前條ノ規定ニ拘ラズ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
一 國債ノ利子 百分ノ九
二 國債以外ノ公債ノ利子 百分ノ十四
三 前條第二項ニ規定スル預金ノ利子及剩餘金ノ分配 百分ノ十
四 其ノ他 百分ノ十五
第一條ノ規定ニ該當セザル個人ノ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益又ハ剩餘金ノ處分タル賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ニ對スル分類所得稅ハ前條ノ規定ニ拘ラズ百分ノ十五ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
第二十三條 信託會社ガ其ノ引受ケタル合同運用信託ノ信託財產ニ付納付シタル甲種ノ配當利子所得ニ對スル分類所得稅額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ當該合同運用信託ノ利益ニ對スル分類所得稅額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ甲種ノ配當利子所得ニ對スル分類所得稅ハ甲種ノ配當利子所得ノ計算上當該合同運用信託ノ利益ニ之ヲ加算ス
第二十四條 甲種ノ勤勞所得ニ對スル分類所得稅ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ年一月一日現在ノ扶養家族一人ニ付年百五十圓ノ割合ニ依リ給與ノ支給期間ニ應ジテ算出シタル金額ノ百分ノ八ニ相當スル金額ヲ分類所得稅額ヨリ控除ス
同一ノ支拂者ヨリ賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ト其ノ他ノ給與トヲ併セ受クル者ニ在リテハ前項ノ控除ハ先ヅ賞與及賞與ノ性質ヲ有スル給與以外ノ給與ニ對スル分類所得稅ニ付之ヲ爲シ不足アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ニ對スル分類所得稅ニ及ブ
二以上ノ支拂者ヨリ甲種ノ勤勞所得ヲ受クル者ニ付テハ前二項ノ規定ニ依ル控除ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第一項ノ扶養家族ガ前年中ニ甲種ノ勤勞所得ヲ有シ又ハ其ノ年分ノ事業所得、乙種ノ勤勞所得若ハ山林ノ所得ヲ有スル場合ニ於テ第十六條第一項、第十七條、第十八條又ハ第二十條第一項ノ規定ニ依リ此等ノ所得ヨリ控除スル金額ガ總額ニ於テ百五十圓ヲ超ユルトキハ其ノ扶養家族ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ
第一項ノ扶養家族ニ付第二十五條第一項ノ規定ニ依ル控除ヲ爲ストキハ其ノ扶養家族ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ
甲種ノ勤勞所得ヲ有スル者綜合所得稅ノ賦課ヲ受クル者ナルトキハ賦課ヲ受クル年ノ七月一日ヨリ翌年六月三十日迄ニ受クル給與ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ
第二十五條 不動產所得、事業所得、乙種ノ勤勞所得又ハ山林ノ所得ニ對スル分類所得稅ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ年一月一日現在ノ扶養家族一人ニ付百五十圓ノ百分ノ八ニ相當スル金額ヲ分類所得稅額ヨリ控除ス
前條第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第一項ノ扶養家族ニ付前條第一項ノ規定ニ依ル控除ヲ爲ストキハ其ノ扶養家族ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ
戶主及其ノ同居家族ノ分類所得稅ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付第一項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ分類所得稅ニ付亦同ジ
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ納稅義務者ノ一人又ハ數人ノ分類所得稅額ヨリ之ヲ控除ス
第一項ノ所得ヲ有スル者綜合所得稅ノ賦課ヲ受クル者ナルトキハ同項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ
第二十六條 本法ニ於テ扶養家族トハ當該所得ヲ有スル者ノ同居ノ妻竝ニ同居ノ戶主及家族中年齡十八歲未滿若ハ六十歲以上又ハ不具癈疾ノ者ヲ謂フ
前項ニ規定スル不具癈疾者ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條ノ二 自己若ハ家族又ハ其ノ相續人ヲ保險金受取人トスル生命保險契約ノ爲ニ拂込ミタル保險料アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ保險料中年額二百圓以內ニ於テ命令ヲ以テ定ムル金額ノ百分ノ六ニ相當スル金額ヲ不動產所得、事業所得、勤勞所得又ハ山林ノ所得ニ對スル分類所得稅額ヨリ控除ス
第二十七條 第二十四條、第二十五條及前條ノ規定ハ第二條ノ規定ニ依ル納稅義務者ニハ之ヲ適用セズ
第三章 綜合所得稅
第二十八條 綜合所得稅ハ個人ノ總所得ニ付之ヲ賦課ス但シ第一條ノ規定ニ該當セザル個人ニ在リテハ本法施行地ニ於ケル資產又ハ事業ヨリ生ズル所得ニ付テノミ綜合所得稅ヲ賦課ス
第二十九條 左ノ各號ニ該當スル所得ニ付テハ綜合所得稅ヲ課セズ
一 第十一條第一項第一號乃至第五號及第七號ノ所得
二 第三十條第一項第九號ノ所得中營利ヲ目的トスル繼續的行爲ヨリ生ジタルニ非ザル一時ノ所得
三 一時恩給及退職給與竝ニ此等ノ性質ヲ有スル給與
第三十條 個人ノ總所得ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 不動產、不動產上ノ權利又ハ船舶ノ貸付ニ因ル所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
二 本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル公債、社債、銀行預金及第二十一條第二項ニ規定スル預金ノ利子竝ニ命令ヲ以テ定ムル合同運用信託ノ利益ハ前年中ノ收入金額(無記名ノ公債及社債ノ利子ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ十分ノ四ヲ控除シタル金額
三 前號以外ノ公債、社債及預金ノ利子竝ニ合同運用信託ノ利益ハ前年中ノ收入金額(無記名ノ公債及社債ノ利子ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)
四 營業ニ非ザル貸金ノ利子ハ前年中ノ收入金額ヨリ其ノ元本ヲ得ルニ要シタル負債ノ利子ヲ控除シタル金額
五 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額(無記名株式ノ配當ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ元本ヲ得ルニ要シタル負債ノ利子ヲ控除シタル金額
六 山林ノ所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
七 俸給、給料、歲費、費用辨償、年金、恩給及賞與竝ニ此等ノ性質ヲ有スル給與ハ前年中ノ收入金額
八 水產業ノ所得ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前三年間每年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額ノ平均ニ依リ算出シタル金額
九 前各號以外ノ所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
所得稅及臨時利得稅ハ前項第一號、第六號、第八號及第九號ノ必要ノ經費ニ之ヲ算入セズ
營業利得ニ對スル臨時利得稅額ハ當該臨時利得稅ヲ課セラルベキ年分ノ總所得金額ヨリ之ヲ控除ス
第十二條第四項ノ規定ハ前項ノ臨時利得稅額ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第一項第一號乃至第六號ノ所得ニ付テハ被相續人ノ所得ハ之ヲ相續人ノ所得ト看做シ第八號及第九號ノ所得ニ付テハ相續シタル資產又ハ事業ハ相續人ガ引續キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十三條ノ規定ハ個人ノ總所得ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第三十一條 前條ノ規定ニ依リ算出シタル總所得金額一萬圓以下ナルトキハ其ノ所得中同條第一項第七號ノ所得ニ付其ノ十分ノ一ヲ控除ス
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
第三十二條 總所得金額五千圓以下ナルトキハ綜合所得稅ヲ課セズ前條ノ規定ニ依ル控除ヲ爲シタル爲五千圓以下ト爲リタルトキ亦同ジ
第八條ニ規定スル利益ノ配當、山林ノ所得及其ノ他ノ所得ハ各之ヲ區分シ其ノ各所得ニ付前項ノ規定ヲ適用ス
前條第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十三條 綜合所得稅ハ總所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用シテ之ヲ賦課ス但シ第八條ニ規定スル利益ノ配當及山林ノ所得ハ各他ノ所得ト之ヲ區分シ其ノ所得ヲ五分シタル金額中千圓ヲ超エ五千圓以下ノ金額ニ對シテハ百分ノ五ノ稅率ヲ、五千圓ヲ超ユル金額ニ對シテハ本項ノ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ各其ノ稅額トス
五千圓ヲ超ユル金額 百分ノ十
八千圓ヲ超ユル金額 百分ノ十五
一萬二千圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十
二萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
三萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ三十
五萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ三十五
八萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ四十
十二萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ四十五
二十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ五十
三十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ五十五
五十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ六十
八十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ六十五
前項ノ場合ニ於テ戶主及其ノ同居家族ノ總所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ對シ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ各其ノ總所得金額ニ按分シテ各其ノ稅額ヲ定ム戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ總所得金額ニ付亦同ジ
總所得中ニ法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ニシテ甲種ノ配當利子所得トシテ分類所得稅ヲ課セラレタルモノアルトキハ總所得金額ニ對シ前二項ノ規定ヲ適用シテ算出シタル金額ト當該利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ノ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額(無記名株式ノ配當ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)ノ百分ノ一ニ相當スル金額トノ合計額ヲ以テ總所得ニ對スル綜合所得稅ノ稅額トス
前項ニ規定スル剩餘金ノ分配中ニ產業組合、工業組合、商業組合等命令ヲ以テ定ムル法人ヨリ受クルモノアルトキハ其ノ部分ノ收入金額ニ付テハ前項ニ規定スル割合百分ノ一ハ之ヲ百分ノ〇・五トス
第四章 申告、申請、調査及決定
第三十四條 不動產所得、乙種ノ配當利子所得、事業所得、乙種ノ勤勞所得、山林ノ所得若ハ乙種ノ退職所得ニ付分類所得稅ヲ納ムル義務アル者又ハ個人ノ總所得ニ付綜合所得稅ヲ納ムル義務アル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每年三月十五日迄ニ所得ノ種類及金額其ノ他必要ナル事項ヲ政府ニ申吿スベシ
第二十五條ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ前項ノ申吿ト同時ニ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スベシ
第三十五條 甲種ノ勤勞所得ヲ有スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第十六條ノ規定ニ依ル控除ニ關シ必要ナル事項ヲ政府ニ申吿スベシ
第二十四條ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ政府ニ提出スベシ
第三十六條 不動產所得、乙種ノ配當利子所得、事業所得、乙種ノ勤勞所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ノ金額竝ニ個人ノ總所得ノ金額ハ所得調査委員會ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調査委員會閉會後前項ノ所得ノ決定ニ付脫漏アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ決定ヲ爲スベカリシ年ノ翌年ヨリ三年間ハ仍所得調査委員會ノ調査ニ依リ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調査委員會閉會後第一項ノ所得ヲ有スル者納稅義務アルコトヲ申出デ又ハ納稅義務者所得金額ノ增加アルコトヲ申出デタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
納稅義務者第一項ノ規定ニ依ル所得ノ決定前ニ納稅管理人ノ申吿ヲ爲サズシテ本法施行地ニ住所及居所ヲ有セザルニ至ルトキハ第一項ノ規定ニ拘ラズ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
前四項ノ規定ハ第二十五條又ハ第二十六條ノ二ノ規定ニ依ル控除ニ因リ徵收稅額ナシト認ムル者ニ付テハ之ヲ適用セズ
第三十七條 五月三十一日迄ニ所得調査委員會成立セザルトキハ政府ニ於テ所得金額ヲ決定ス
所得調査委員會開會ノ日ヨリ第五十八條ノ期間內又ハ五月三十一日迄ニ調査結了セザルトキハ政府ニ於テ調査未濟ノ所得金額ヲ決定ス
第三十八條 政府ハ所得調査委員會ノ決議ヲ不當ト認ムルトキハ七日以內ノ期間ヲ定メ之ヲ再調査ニ付ス仍其ノ決議ヲ不當ト認ムルトキ又ハ再調査期間內ニ調査結了セザルトキハ政府ニ於テ所得金額ヲ決定ス
第三十九條 前三條ノ規定ニ依リ所得金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者ニ通知スベシ
本法施行地內ニ住所及居所ヲ有セザル納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲サザルトキハ前項ノ通知ハ公吿ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公吿ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第五章 所得調査委員會
第四十條 各稅務署所轄內ニ所得調査委員會ヲ置ク但シ稅務署所轄內ニ在ル市ニ付テハ命令ヲ以テ特ニ所得調査委員會ヲ置クコトヲ得
所得調査委員ノ定數ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム但シ定數ノ增減ハ改選期ニ於テスルノ外之ヲ爲スコトヲ得ズ
第四十一條 所得調査委員ハ各選擧區ニ於テ之ヲ選擧ス
所得調査委員ヲ選擧スルトキハ同時ニ之ト同數ノ補缺員ヲ選擧スベシ
第四十二條 所得調査委員及補缺員ノ選擧區域ハ所得調査委員會ヲ置クベキ區域ニ依リ投票區及開票區ハ市町村ノ區域ニ依ル但シ市制第六條又ハ第八十二條第三項ノ規定ニ依リ指定セラレタル市ニ在リテハ區ノ區域ニ依ル
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部又ハ役場事務ヲ共同處理スルモノハ之ヲ一町村ト看做シ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ町村ニ準ズベキモノヲ町村ト看做ス
第四十三條 選擧區域內ニ居住シ第三十六條第一項ノ所得又ハ個人ノ營業ニ付其ノ年法定ノ期限迄ニ所得金額又ハ純益金額ノ申吿ヲ爲シ且其ノ決定ヲ受ケタル者ニシテ選擧人名簿ニ登錄セラレタルモノハ所得調査委員及補缺員ヲ選擧シ又ハ所得調査委員若ハ補缺員ニ選擧セラルルコトヲ得但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
一 無能力者
二 破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
三 國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ經ザル者
四 六年ノ懲役若ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者
五 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
六 第九十四條又ハ第九十五條ノ規定ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リタル後又ハ時效ニ因ル場合ヲ除クノ外執行ノ免除ヲ受ケタル後五年ヲ經ザル者
七 第八十八條乃至第九十五條又ハ營業稅法第三十三條乃至第三十五條ノ規定ニ依リ罰金又ハ科料ノ刑ニ處セラレ其ノ裁判確定ノ後五年ヲ經ザル者
其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前選擧ヲ行フ場合ニ於テハ前年第三十六條第一項ノ所得又ハ個人ノ營業ニ付所得稅又ハ營業稅ヲ納メタルコトヲ以テ其ノ年所得金額又ハ純益金額ノ決定ヲ受ケタルモノト看做ス
前二項ノ場合ニ於テ被相續人ニ付爲シタル所得金額又ハ純益金額ノ決定ハ之ヲ相續人ニ付爲シタル所得金額又ハ純益金額ノ決定ト看做シ被相續人ノ爲シタル納稅又ハ申吿ハ之ヲ相續人ノ爲シタル納稅又ハ申吿ト看做ス
選擧人名簿ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十四條 投票及開票ニ關スル事務ハ市區町村長之ヲ擔任シ選擧會ニ關スル事務ハ稅務署長之ヲ擔任ス
第四十二條第二項ノ町村組合ニ付テハ其ノ組合管理者ヲ、町村制ヲ施行セザル地ニ付テハ町村長ニ準ズベキモノヲ町村長ト看做ス
第四十五條 稅務署長ハ所得調査委員及補缺員ノ選擧期日ヲ定メ之ヲ市區町村長ニ通知スベシ
市區町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ少クトモ選擧期日七日前其ノ旨ヲ公示スベシ
第四十六條 選擧ハ無記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ所得調査委員及補缺員ノ各選擧ニ付一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日投票時間內ニ自ラ投票所ニ到リ被選擧人各一人ノ氏名ヲ各別ノ投票用紙ニ記載シテ投票スベシ
投票用紙ハ選擧ノ當日投票所ニ於テ之ヲ選擧人ニ交付ス
第四十七條 市區町村長ハ投票ヲ調査シ直ニ其ノ結果ヲ稅務署長ニ報吿スベシ
第四十八條 稅務署長前條ノ報吿ヲ受ケタルトキハ選擧會ヲ開キ之ヲ調査スベシ
第四十九條 投票、開票及選擧會ニハ立會人ヲ立會ハシムベシ
立會人ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十條 投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選人トス投票ノ數同ジキトキハ年齡多キ者ヲ取リ年齡同ジキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
所得調査委員ニ當選シタル者同時ニ補缺員ニ當選スルモ補缺員タルコトヲ得ズ
第五十一條 所得調査委員及補缺員ノ選擧終了シタルトキハ稅務署長ハ當選人ノ氏名ヲ公示シ且之ヲ當選人及市區町村長ニ通知スベシ
市區町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ當選人ノ氏名ヲ公示スベシ
第五十二條 所得調査委員又ハ補缺員ニ當選シタル者ハ正當ノ事由ナクシテ之ヲ辭スルコトヲ得ズ
第五十三條 所得調査委員及補缺員ノ任期ハ選擧期日ノ屬スル月ヨリ四年トス
選擧區域ノ變更ニ因リ其ノ區域內ニ於ケル第三十六條第一項ノ所得ニ付其ノ年所得金額ノ決定ヲ受ケタル者及個人ノ營業ニ付其ノ年純益金額ノ決定ヲ受ケタル者ノ合計數ニ五分ノ一以上ノ增減ヲ來シタル場合ニ於テハ所得調査委員及補缺員ノ任期ハ選擧區域ノ變更アリタル月ヲ以テ終了スルモノトス但シ其ノ選擧區域ノ變更ノ月ガ一月又ハ二月ナルトキハ三月、四月乃至八月ナルトキハ九月、十二月ナルトキハ翌年三月ヲ以テ終了スルモノトス
第四十三條第二項ノ規定ハ其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前選擧區域ノ變更アリタル場合ニ付之ヲ準用ス
第五十四條 所得調査委員及補缺員ノ改選ハ前任者ノ任期終了ノ月ノ翌月ニ於テ之ヲ行フ
第五十五條 所得調査委員ニ缺員ヲ生ジタルトキハ投票ノ最多數ヲ得タル補缺員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ數同ジキトキハ年齡多キ者ヲ取リ年齡同ジキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
所得調査委員ニ缺員ヲ生ジ之ヲ補充スベキ補缺員ナキトキハ所得調査委員ノ補缺選擧ヲ行フ
第五十六條 前條ノ規定ニ依リ所得調査委員又ハ補缺員ト爲リタル者ハ前任者ノ殘任期間在任ス
選擧區域ノ變更ニ因リ新ニ選擧セラレタル所得調査委員及補缺員ノ任期ハ選擧區域變更前ニ於ケル所得調査委員及補缺員ノ選擧期日ノ屬スル月ヨリ四年ヲ以テ終了ス
第五十七條 所得調査委員又ハ補缺員第四十三條第一項各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキ、第三十六條第一項ノ所得ニ對スル所得稅若ハ營業稅ノ何レニ付テモ納稅義務ヲ有セザルニ至リタルトキ又ハ其ノ選擧區域內ニ居住セザルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第五十八條 所得調査委員會ノ開會日數ハ三十日以內トシ地方ノ情況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條 所得調査委員會ハ稅務署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第六十條 所得調査委員會ハ每年開會ノ始ニ於テ所得調査委員中ヨリ會長ヲ選擧スベシ
第六十一條 稅務署長ハ每年第三十六條第一項ノ所得ニ付納稅義務アリト認ムル者ノ所得金額ヲ調査シ其ノ調査書ヲ所得調査委員會ニ送付スベシ
前項ノ規定ハ第二十五條又ハ第二十六條ノ二ノ規定ニ依ル控除ニ因リ徵收稅額ナシト認ムル者ニ付テハ之ヲ適用セズ
前二項ノ規定ハ第三十六條第二項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第六十二條 所得調査委員會ハ定員ノ過半數ニ當ル委員出席スルニ非ザレバ決議ヲ爲スコトヲ得ズ
議事ハ出席員ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ會長ノ決スル所ニ依ル
第六十三條 所得調査委員ハ自己及自己ト同一戶籍內ニ在ル者ノ所得ニ關スル議事ニ與ルコトヲ得ズ
第六十四條 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ所得調査委員會ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第六十五條 所得調査委員ニハ手當及旅費ヲ給ス
第六十六條 所得調査委員ハ自己ノ所屬スル所得調査委員會ノ調査ニ依リ決定セラレタル課稅標準額ニ對スル審査ノ請求、訴願又ハ行政訴訟ニ付納稅義務者ノ代理ヲ爲シ若ハ其ノ相談ニ應ズルヲ以テ業ト爲シ又ハ報酬ヲ得テ此等ノ事務ヲ行フコトヲ得ズ
第六章 審査、訴願及行政訴訟
第六十七條 納稅義務者第三十九條ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル所得金額ニ對シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セズ
第六十八條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ所得審査委員會ノ決議ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得審査委員會ハ前條第一項ノ請求ヲ爲シタル者ニ對シ其ノ所得ニ關スル事實ヲ質問スルコトヲ得
第三十八條ノ規定ハ所得審査委員會ノ決議ニ付之ヲ準用ス
第六十九條 各稅務監督局所轄內ニ所得審査委員會ヲ置ク
所得審査委員會ハ左ノ所得審査委員ヲ以テ之ヲ組織ス
一 稅務監督局高等官中ヨリ大藏大臣ノ命ジタル者三人
二 稅務監督局所轄內各府縣又ハ北海道ニ於テ所得調査委員ノ互選シタル者府縣ニ在リテハ各一人北海道ニ在リテハ四人
所得審査委員會、所得審査委員及其ノ補缺員ニ關スル事項ハ本法ニ定ムルモノヲ除クノ外命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十條 所得調査委員ヨリ選擧セラレタル所得審査委員ニハ日當及旅費ヲ給ス
第七十一條 第六十八條第一項ノ決定ニ對シ不服アル者ハ訴願ヲ爲シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第七章 徵收
第七十二條 甲種ノ配當利子所得、甲種ノ勤勞所得又ハ甲種ノ退職所得ニ對スル分類所得稅ハ支拂者支拂ノ際之ヲ徵收シ翌月十日迄ニ政府ニ納付スベシ
第七十三條 不動產所得、乙種ノ配當利子所得、事業所得、乙種ノ勤勞所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ニ對スル分類所得稅竝ニ個人ノ總所得ニ對スル綜合所得稅ハ其ノ年額ヲ四分シ左ノ四期ニ於テ之ヲ徵收ス但シ納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲サズシテ本法施行地ニ住所及居所ヲ有セザルニ至ルトキハ直ニ其ノ所得稅ヲ徵收スルコトヲ得
第一期 其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年九月一日ヨリ三十日限
第三期 其ノ年十一月一日ヨリ三十日限
第四期 翌年二月一日ヨリ末日限
第七十四條 第七十二條ノ規定ニ依リ徵收スベキ分類所得稅ヲ徵收セザルトキ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セザルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ支拂者ヨリ徵收ス
法人解散シタル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依リ徵收セラルル稅金ヲ納付セズシテ殘餘財產ヲ分配シタルトキハ其ノ稅金ニ付淸算人連帶シテ納稅ノ義務アルモノトス
第八章 雜則
第七十五條 納稅義務者災害、失業其ノ他ノ事由ニ因リ著シク資力ヲ喪失シ納稅困難ト認ムルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ所得稅ヲ輕減又ハ免除スルコトヲ得
第七十六條 政府ハ前條ノ規定ニ依リ輕減又ハ免除セラルル所得稅ニ付輕減又ハ免除ニ關スル處分ノ確定スルニ至ル迄稅金ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
第七十七條 本法施行地ニ於テ利子ノ支拂ヲ爲スベキ公債又ハ社債ヲ募集シタル者(委託募集ノ場合ハ委託ヲ受ケ募集シタル者)ハ遲滯ナク其ノ公債又ハ社債ニ付命令ヲ以テ定ムル事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スベシ
第七十八條 本法施行地ニ於テ無記名ノ公債、社債又ハ株式ニ付利子又ハ配當ノ支拂ヲ受クル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ氏名又ハ名稱、住所其ノ他必要ナル事項ヲ利子又ハ配當ノ支拂ノ取扱者ニ吿知スベシ
利子又ハ配當ノ支拂ノ取扱者ハ前項ノ吿知ヲ爲サシメタル後其ノ支拂ヲ爲スベシ
第七十九條 俸給、給料、歲費、費用辨償、年金、恩給若ハ賞與又ハ此等ノ性質ヲ有スル給與ノ支拂ヲ爲ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ必要ナル事項ヲ政府ニ申吿スベシ
第八十條 左ニ揭グル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ支拂調書ヲ政府ニ提出スベシ
一 俸給、給料、歲費、費用辨償、年金、恩給若ハ賞與又ハ此等ノ性質ヲ有スル給與ノ支拂ヲ爲ス者
二 公債、社債若ハ預金ノ利子又ハ合同運用信託ノ利益ノ支拂ヲ爲ス者
三 利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ヲ爲ス法人
合同運用信託以外ノ信託ノ受託者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ各信託ニ付計算書ヲ政府ニ提出スベシ
第八十一條 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者又ハ納稅義務アリト認ムル者ニ質問ヲ爲シ又ハ其ノ營業ニ關スル帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ前條第一項又ハ第二項ノ支拂調書又ハ計算書ヲ提出スル義務アル者ニ質問ヲ爲シ又ハ之ニ關スル帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
第八十二條 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者若ハ納稅義務アリト認ムル者ニ金錢若ハ物品ヲ支拂フノ義務ヲ有スト認ムル者ニ對シ又ハ納稅義務者若ハ納稅義務アリト認ムル者ヨリ金錢若ハ物品ノ支拂ヲ受クルノ權利ヲ有スト認ムル者ニ對シ其ノ金額、數量、價格、支拂期日等ニ付質問スルコトヲ得
第八十三條 政府ハ第七十二條ノ規定ニ依リ甲種ノ勤勞所得ニ對スル分類所得稅ヲ徵收シタル者及第八十條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ支拂調書又ハ計算書ヲ提出シタル者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ交付スルコトヲ得
第八十四條 不動產所得、乙種ノ配當利子所得、事業所得、乙種ノ勤勞所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ニ對スル分類所得稅竝ニ個人ノ總所得ニ對スル綜合所得稅ハ納稅義務者ノ住所地、住所ナキトキハ居所地ヲ以テ納稅地トス但シ住所地以外ニ在ル者ハ申吿シテ居所地ニ於テ所得稅ヲ納ムルコトヲ得
本法施行地ニ住所及居所ナキ者ハ納稅地ヲ定メ政府ニ申吿スベシ申吿ナキトキハ政府其ノ納稅地ヲ指定ス
第八十五條 納稅義務者納稅地ニ現住セザルトキハ其ノ所得ノ申吿、納稅其ノ他所得稅ニ關スル一切ノ事項ヲ處理セシムル爲其ノ地ニ於テ納稅管理人ヲ定メ政府ニ申吿スベシ本法施行地外ニ住所又ハ居所ヲ移サントスルトキ亦同ジ
第八十六條 同族會社ノ行爲又ハ計算ニシテ其ノ株主若ハ社員又ハ之ト親族、使用人、命令ヲ以テ定ムル出資關係アル法人等特殊ノ關係アル者ノ所得ニ付所得稅逋脫ノ目的アリト認メラルルモノアル場合ニ於テハ其ノ行爲又ハ計算ニ拘ラズ政府ハ其ノ認ムル所ニ依リ此等ノ者ノ所得金額ヲ計算スルコトヲ得
前項ノ同族會社トハ法人稅法第十七條第三項ニ規定スル法人ヲ謂フ
第八十七條 北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ所得稅ノ附加稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第九章 罰則
第八十八條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ所得稅ヲ逋脫シタル者ハ其ノ逋脫シタル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處ス但シ自首シ又ハ稅務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
前項ノ場合ニ於テ第三十六條第一項ノ所得ニ付所得稅ヲ逋脫シタル者ノ所得金額ハ同條第二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ之ヲ決定シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス
第八十九條 第六十六條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十條 正當ノ事由ナクシテ第八十條第一項若ハ第二項ノ規定ニ依リ政府ニ提出スベキ支拂調書若ハ計算書ヲ提出セズ又ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル支拂調書若ハ計算書ヲ提出シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十一條 無記名ノ公債、社債又ハ株式ニ付利子又ハ配當ノ支拂ヲ受クルニ際シ第七十八條第一項ニ規定スル事項ニ付虛僞ノ吿知ヲ爲シタル者及同條第二項ノ規定ニ違反シ吿知ヲ爲サシメズシテ支拂ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十二條 第八十一條ノ規定ニ依ル帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル帳簿書類ヲ呈示シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十三條 所得ノ調査又ハ審査ノ事務ニ從事シ又ハ從事シタル者其ノ調査又ハ審査ニ關シ知得タル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十四條 所得調査委員、其ノ補缺員、所得審査委員又ハ其ノ補缺員ノ選擧ニ關シ當選ヲ得又ハ得シメ若ハ得シメザル目的ヲ以テ選擧人又ハ選擧運動者ニ對シ金錢物品其ノ他ノ財產上ノ利益若ハ公私ノ職務ノ供與ヲ爲シ、饗應接待ヲ爲シ又ハ其等ノ申込若ハ約束ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ供與若ハ饗應接待ヲ受ケ若ハ要求シ又ハ其等ノ申込ヲ承諾シタル者亦前項ニ同ジ
前二項ニ規定スル行爲ニ關シ周旋又ハ勸誘ヲ爲シタル者亦第一項ニ同ジ
第九十五條 所得調査委員、其ノ補缺員、所得審査委員又ハ其ノ補缺員ノ選擧ニ關シ投票ヲ得又ハ得シメ若ハ得シメザル目的ヲ以テ戶別訪問ヲ爲シ又ハ連續シテ個個ノ選擧人ニ面接シ若ハ電話ニ依リ選擧運動ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十六條 第八十八條第一項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ
附 則
第九十七條 本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第九十八條 不動產所得、乙種ノ配當利子所得、事業所得、乙種ノ勤勞所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ニ付テハ昭和十五年分分類所得稅ヨリ、個人ノ總所得ニ付テハ昭和十五年分綜合所得稅ヨリ本法ヲ適用ス
第九十九條 法人ノ本法施行前ニ終了シタル各事業年度分ノ所得及本法施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ル淸算所得ニ對スル所得稅竝ニ本法施行前ニ賦課シ若ハ賦課スベカリシ又ハ徵收シ若ハ徵收スベカリシ第二種又ハ第三種ノ所得ニ對スル所得稅ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
第百條 第八條ノ規定ハ同條第二號及第三號ニ揭グル金額ニシテ本法施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ルモノニハ之ヲ適用セズ
第百一條 左ニ揭グル所得ニ付テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ昭和十五年分又ハ昭和十六年分ニ限リ所得稅ヲ輕減若ハ免除シ又ハ所得金額ノ計算ニ關シ特例ヲ設クルコトヲ得
一 昭和十四年一月一日ヨリ昭和十六年一月一日ニ至ル期間引續キ有シタルニ非ザル資產、營業又ハ職業ノ所得
二 昭和十四年一月一日ヨリ昭和十六年一月一日ニ至ル期間引續キ支給ヲ受ケタルニ非ザル俸給、給料、歲費、費用辨償、年金及恩給竝ニ此等ノ性質ヲ有スル給與
三 水產業ノ所得
第百二條 乙種ノ勤勞所得ニ屬スル賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ニ付テハ昭和十四年三月一日以後同年十二月三十一日迄ノ收入金額ニ限リ昭和十五年分ノ乙種ノ勤勞所得トシテ之ヲ計算ス
第百三條 昭和十四年分ノ第三種所得金額(同居ノ戶主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル)五千圓ヲ超ユル者ノ本法施行後昭和十五年七月三十一日迄ニ支拂ヲ受クル甲種ノ勤勞所得ニ對スル分類所得稅ニ付テハ第二十四條第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ爲サズ
第百四條 第三十條第一項第二號ノ所得ニシテ其ノ支拂期ガ本法施行前ニ屬スルモノハ個人ノ總所得トシテ之ヲ計算セズ
賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ニ付テハ昭和十四年三月一日以後同年十二月三十一日迄ノ收入金額ニ限リ昭和十五年分ノ個人ノ總所得トシテ之ヲ計算ス
第百五條 貯蓄銀行法第九條第一項ノ規定ニ依リ貯蓄銀行ノ供託シタル國債ノ利子ニ對シテハ第二十一條第一項ノ規定ニ拘ラズ當分ノ內百分ノ三ノ稅率ニ依リ分類所得稅ヲ賦課ス
第百六條 個人ノ總所得中本法施行地ニ於テ支拂ヲ受クル公債、社債、銀行預金及第二十一條第二項ニ規定スル預金ノ利子竝ニ命令ヲ以テ定ムル合同運用信託ノ利益ニ付テハ當分ノ內納稅義務者ノ申請ニ依リ他ノ所得ト之ヲ區分シ利子又ハ利益ノ支拂ノ際其ノ利子金額又ハ利益金額ヲ課稅標準トシ百分ノ十五ノ稅率ニ依リ其ノ綜合所得稅ヲ賦課スルコトヲ得
前項ニ規定スル綜合所得稅ハ其ノ利子又ハ利益支拂ノ際支拂者ニ於テ之ヲ徵收シ翌月十日迄ニ政府ニ納付スベシ
第七十四條ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第二十四條第六項又ハ第二十五條第六項ノ規定ハ第一項ニ規定スルモノノ外他ニ綜合所得稅ノ賦課ヲ受ケザル者ニ付テハ之ヲ適用セズ
第百七條 信託會社ガ其ノ引受ケタル合同運用信託ノ信託財產ニ付從前ノ規定ニ依リ納付シタル第二種ノ所得ニ對スル所得稅額及資本利子稅額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ當該合同運用信託ノ利益ニ對スル分類所得稅額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ第二種ノ所得ニ對スル所得稅及資本利子稅ハ甲種ノ配當利子所得ノ計算上當該合同運用信託ノ利益ニ之ヲ加算ス
第百八條 所得調査委員、其ノ補缺員、所得審査委員及其ノ補缺員ニ關シテハ昭和十五年七月三十一日迄ハ仍從前ノ例ニ依ル
第百九條 改正前ノ所得稅法第七十四條乃至第七十六條又ハ營業收益稅法第二十八條乃至第三十條ノ規定ニ依リ處罰セラレタル後五年ヲ經ザル者ハ第四十三條ノ規定ニ拘ラズ所得調査委員及補缺員ヲ選擧シ又ハ所得調査委員若ハ補缺員ニ選擧セラルルコトヲ得ズ
所得調査委員又ハ補缺員改正前ノ所得稅法第七十四條乃至第七十六條又ハ營業收益稅法第二十八條乃至第三十條ノ規定ニ依リ處罰セラレタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第百十條 昭和十五年ニ限リ第二十四條第一項及第二十五條第一項ノ規定中一月一日トアルハ三月一日、第二十四條第六項ノ規定中七月一日トアルハ八月一日、第三十四條第一項ノ規定中三月十五日トアルハ四月三十日、第三十七條ノ規定中五月三十一日トアルハ六月三十日、第七十三條ノ規定中其ノ年七月一日ヨリ三十一日限トアルハ其ノ年八月一日ヨリ三十一日限トス
第百十一條 宗敎團體法第三十五條第一項ノ佛堂ニ對シテハ所得稅ヲ課セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル所得税法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
内閣総理大臣 米内光政
大蔵大臣 桜内幸雄
法律第二十四号
所得税法目次
第一章
総則
第二章
分類所得税
第三章
綜合所得税
第四章
申告、申請、調査及決定
第五章
所得調査委員会
第六章
審査、訴願及行政訴訟
第七章
徴収
第八章
雑則
第九章
罰則
所得税法
第一章 総則
第一条 本法施行地ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ハ本法ニ依リ所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第二条 前条ノ規定ニ該当セザル個人左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
一 本法施行地ニ資産又ハ事業ヲ有スルトキ
二 本法施行地ニ於テ公債、社債若ハ預金ノ利子又ハ合同運用信託ノ利益ノ支払ヲ受クルトキ
三 本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ヲ受クルトキ
四 本法施行地ニ於テ俸給、給料、歳費、費用弁償(月額又ハ年額ヲ以テ支給スルモノニ限ル以下同ジ)、年金(郵便年金ヲ除ク以下同ジ)、恩給、賞与若ハ退職給与又ハ此等ノ性質ヲ有スル給与ノ支払ヲ受クルトキ
第三条 法人左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
一 本法施行地ニ於テ公債、社債若ハ預金ノ利子又ハ合同運用信託ノ利益ノ支払ヲ受クルトキ
二 本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ヲ受クルトキ
第四条 北海道、府県、市町村其ノ他命令ヲ以テ指定スル公共団体、神社及民法第三十四条ノ規定ニ依リ設立シタル法人ニハ所得税ヲ課セズ
第五条 命令ヲ以テ指定スル重要物産ノ製造、採掘又ハ採取ヲ業トスル個人ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生ズル所得ニ付所得税ヲ免除ス
第六条 信託財産ニ付生ズル所得ニ関シテハ其ノ所得ヲ信託ノ利益トシテ享受スベキ受益者ガ信託財産ヲ有スルモノト看做シテ所得税ヲ賦課ス但シ本法施行地ニ於テ信託利益ノ支払ヲ為ス合同運用信託ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ受益者不特定ナルトキ又ハ未ダ存在セザルトキハ委託者又ハ其ノ相続人ヲ以テ受益者ト看做ス
公益信託ノ信託財産ニ付生ズル所得ニハ所得税ヲ課セズ
第七条 本法ニ於テ合同運用信託トハ信託会社ノ引受ケタル金銭信託ニシテ共同セザル多数ノ委託者ノ信託財産ヲ合同シテ運用スルモノヲ謂フ
第八条 左ノ金額ハ之ヲ法人ヨリ受クル利益ノ配当ト看做シ本法ヲ適用ス
一 株式ノ消却ニ因リ支払ヲ受クル金額又ハ退社若ハ出資ノ減少ニ因リ持分ノ払戻トシテ受クル金額ガ其ノ株式ノ払込済金額又ハ出資金額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過金額
二 法人解散シタル場合ニ於テ残余財産ノ分配トシテ株主又ハ社員ノ受クル金額ガ其ノ株式ノ払込済金額又ハ出資金額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過金額
三 法人合併ヲ為シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ社員ガ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ因リテ取得スル株式ノ払込済金額又ハ出資金額及金銭ノ総額ガ其ノ株主又ハ社員ノ有シタル株式ノ払込済金額又ハ出資金額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過金額
第九条 所得税ハ之ヲ分類所得税及綜合所得税ノ二種トス
第二章 分類所得税
第十条 分類所得税ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス
第一 不動産所得
不動産、不動産上ノ権利又ハ船舶ノ貸付(永小作権又ハ地上権ノ設定其ノ他他人ヲシテ不動産、不動産上ノ権利又ハ船舶ヲ使用セシムル一切ノ場合ヲ含ム以下同ジ)ニ因ル所得但シ甲種ノ事業所得ニ属スルモノヲ除ク
第二 配当利子所得
甲種 本法施行地ニ於テ支払ヲ受クル公債、社債又ハ預金(法人ニ対スル預金ニ限ル)ノ利子及合同運用信託ノ利益並ニ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配
乙種 営業ニ非ザル貸金ノ利子並ニ甲種ニ属セザル公債、社債又ハ預金ノ利子、合同運用信託ノ利益及法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配
第三 事業所得
甲種 左ニ掲グル営業ノ所得
一 物品販売業(動植物其ノ他普通ニ物品ト称セザルモノノ販売ヲ含ム)
二 金銭貸付業
三 物品貸付業(動植物其ノ他普通ニ物品ト称セザルモノノ貸付ヲ含ム)
四 製造業(瓦斯電気ノ供給、物品ノ加工修理ヲ含ム)
五 運送業(運送取扱ヲ含ム)
六 倉庫業
七 請負業
八 印刷業
九 出版業
十 写真業
十一 席貸業
十二 旅人宿業
十三 料理店業
十四 周旋業
十五 代理業
十六 仲立業
十七 問屋業
十八 鉱業
十九 砂鉱業
二十 湯屋業
二十一 理髪美容業
二十二 其ノ他命令ヲ以テ定ムル営業
乙種 農業、畜産業、水産業等ノ所得、医師、弁護士等ノ所得其ノ他他ノ種目ニ属セザル総テノ所得
第四 勤労所得
甲種 本法施行地ニ於テ支払ヲ受クル俸給、給料、歳費、費用弁償、年金、恩給(一時金タル恩給ヲ除ク)及賞与並ニ此等ノ性質ヲ有スル給与但シ命令ヲ以テ定ムル個人ヨリ支払ヲ受クルモノヲ除ク
乙種 甲種ニ属セザル俸給、給料、歳費、費用弁償、年金、恩給(一時金タル恩給ヲ除ク)及賞与並ニ此等ノ性質ヲ有スル給与
第五 山林ノ所得
第六 退職所得
甲種 本法施行地ニ於テ支払ヲ受クル一時恩給及退職給与並ニ此等ノ性質ヲ有スル給与
乙種 甲種ニ属セザル一時恩給及退職給与並ニ此等ノ性質ヲ有スル給与
第十一条 左ノ各号ニ該当スル所得ニハ分類所得税ヲ課セズ
一 軍人及軍属ノ従軍中ノ俸給、手当及賞与
二 傷痍疾病者ノ恩給並ニ遺族ノ恩給及年金
三 旅費、学資金及法定扶養料
四 郵便貯金ノ利子及命令ヲ以テ定ムル当座預金ノ利子
五 元本三千円ヲ超エザル銀行貯蓄預金、産業組合貯金其ノ他命令ヲ以テ定ムル預金ノ利子
六 乙種ノ事業所得中営利ヲ目的トスル継続的行為ヨリ生ジタルニ非ザル一時ノ所得
七 日本ノ国籍ヲ有セザル者ノ本法施行地外ニ於ケル資産、営業又ハ職業ヨリ生ズル所得
前項第五号ノ元本ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第十二条 分類所得税ヲ課スベキ所得ハ左ノ各号ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 不動産所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費(収入ヲ得ルニ必要ナル負債ノ利子ヲ含ム以下同ジ)ヲ控除シタル金額
二 甲種ノ配当利子所得ハ其ノ支払ヲ受クベキ金額但シ法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ハ支払ヲ受クベキ金額ヨリ其ノ十分ノ一ヲ控除シタル金額
三 乙種ノ配当利子所得中法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ、其ノ他ハ前年中ノ収入金額(無記名株式ノ配当並ニ無記名ノ公債及社債ノ利子ニ付テハ支払ヲ受ケタル金額)
四 事業所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額但シ水産業ノ所得ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前三年間毎年ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額ノ平均ニ依リ算出シタル金額
五 甲種ノ勤労所得ハ其ノ支払ヲ受クベキ金額
六 乙種ノ勤労所得ハ前年中ノ収入金額
七 山林ノ所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
八 甲種ノ退職所得ハ其ノ支払ヲ受クベキ金額ヨリ支払者ヲ異ニスル毎ニ一万円ヲ控除シタル金額
九 乙種ノ退職所得ハ前年中ノ収入金額ヨリ支払者ヲ異ニスル毎ニ一万円ヲ控除シタル金額
所得税及臨時利得税ハ前項第一号、第四号及第七号ノ必要ノ経費ニ之ヲ算入セズ
営業利得ニ対スル臨時利得税額ハ当該臨時利得税ヲ課セラルベキ年分ノ甲種ノ事業所得金額ヨリ之ヲ控除ス
所得税ヲ課スベキ甲種ノ事業所得ト其ノ他ノ甲種ノ事業所得トヲ有スル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ控除スベキ臨時利得税ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
不動産所得、配当利子所得及山林ノ所得ニ付テハ被相続人ノ所得ハ之ヲ相続人ノ所得ト看做シ事業所得ニ付テハ相続シタル資産又ハ事業ハ相続人ガ引続キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十三条 公債又ハ社債ニ付元本ノ所有者ニ非ザル者ガ利子ノ支払ヲ受クルトキハ乙種ノ配当利子所得ノ計算上元本ノ所有者ガ支払ヲ受クルモノト看做ス但シ利子ノ生ズル期間中ニ元本ノ所有者ニ異動アリタルトキハ最後ノ所有者ヲ以テ利子ノ支払ヲ受クル者ト看做ス
第十四条 不動産所得ハ二百五十円ニ満タザルトキハ分類所得税ヲ課セズ
戸主及其ノ同居家族ノ不動産所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ不動産所得ニ付亦同ジ
第十五条 乙種ノ配当利子所得ハ百円ニ満タザルトキハ分類所得税ヲ課セズ
前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第十六条 甲種ノ勤労所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ年七百二十円ノ割合ニ依リ給与ノ支給期間ニ応ジテ算出シタル金額ヲ其ノ給与ヨリ控除ス
同一ノ支払者ヨリ賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ト其ノ他ノ給与トヲ併セ受クル者ニ在リテハ前項ノ控除ハ先ヅ賞与及賞与ノ性質ヲ有スル給与以外ノ給与ニ付之ヲ為シ不足アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ニ及ブ
二以上ノ支払者ヨリ甲種ノ勤労所得ヲ受クル者ニ付テハ前二項ノ規定ニ依ル控除ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第十七条 事業所得及乙種ノ勤労所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得ヨリ左ノ金額ヲ控除ス
一 事業所得ニ付テハ五百円
二 乙種ノ勤労所得ニ付テハ七百二十円事業所得ト乙種ノ勤労所得トヲ有スル者ノ事業所得ニ付テハ前項第一号ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ但シ乙種ノ勤労所得ガ七百二十円ニ満タザルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ五百円ト乙種ノ勤労所得ノ七・二分ノ五ニ相当スル金額トノ差額ヲ事業所得ヨリ控除ス
第十八条 前年中ニ甲種ノ勤労所得ニ付第十六条第一項ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケタル者ノ事業所得又ハ乙種ノ勤労所得ニ付テハ前条ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ但シ前年中ニ甲種ノ勤労所得ニ付第十六条第一項ノ規定ニ依リ控除シタル金額ガ七百二十円ニ満タザルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所得ヨリ左ノ金額ヲ控除ス
一 事業所得ニ付テハ五百円ト第十六条第一項ノ規定ニ依リ控除シタル金額ノ七・二分ノ五ニ相当スル金額トノ差額
二 乙種ノ勤労所得ニ付テハ七百二十円ト第十六条第一項ノ規定ニ依リ控除シタル金額トノ差額
三 前二号ノ所得ヲ併セ有スルトキハ其ノ所得ニ付テハ命令ノ定ムル金額
第十九条 同居ノ戸主及其ノ家族中二人以上ノ者ガ事業所得ヲ有スル場合ニ於テ前二条ノ規定ニ依リ其ノ事業所得ヨリ控除スベキ金額ハ総額ニ於テ五百円ヲ超ユルコトヲ得ズ戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ事業所得ニ付亦同ジ
前項ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ前二条ノ規定ニ依リ控除スベキ金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ納税義務者ノ一人又ハ数人ノ所得ヨリ之ヲ控除ス
第二十条 山林ノ所得ニ付テハ其ノ所得ヨリ五百円ヲ控除ス
前条ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第二十一条 分類所得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
第一 不動産所得 百分ノ十
第二 配当利子所得
甲種
一 国債ノ利子 百分ノ四
二 国債以外ノ公債ノ利子 百分ノ九
三 其ノ他 百分ノ十
乙種 百分ノ十
第三 事業所得
甲種 百分ノ八・五
乙種 百分ノ七・五
第四 勤労所得 百分ノ六
第五 山林ノ所得
所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用ス
千六百円以下ノ金額 百分ノ五
千六百円ヲ超ユル金額 百分ノ七・五
第六 退職所得
所得金額ヲ支払者ノ異ナル毎ニ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用ス
二万円以下ノ金額 百分ノ六
二万円ヲ超ユル金額 百分ノ十二
十万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
五十万円ヲ超ユル金額 百分ノ四十
銀行貯蓄預金、産業組合貯金其ノ他命令ヲ以テ定ムル預金ノ利子及産業組合、工業組合、商業組合等命令ヲ以テ定ムル法人ヨリ受クル剰余金ノ分配ニ付テハ前項中配当利子所得甲種第三号ニ規定スル税率百分ノ十ハ之ヲ百分ノ五トス
第十七条又ハ第十八条ノ規定ニ依ル控除前ノ事業所得ノ金額ガ千円以下ナルトキハ第一項中甲種及乙種ノ事業所得ニ付規定スル税率百分ノ八・五及百分ノ七・五ハ各之ヲ百分ノ六トス
戸主及其ノ同居家族ノ事業所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ事業所得ニ付亦同ジ
第二十二条 第一条ノ規定ニ該当セザル個人又ハ本法施行地ニ本店若ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ノ甲種ノ配当利子所得ニ対スル分類所得税ハ前条ノ規定ニ拘ラズ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
一 国債ノ利子 百分ノ九
二 国債以外ノ公債ノ利子 百分ノ十四
三 前条第二項ニ規定スル預金ノ利子及剰余金ノ分配 百分ノ十
四 其ノ他 百分ノ十五
第一条ノ規定ニ該当セザル個人ノ本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益又ハ剰余金ノ処分タル賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ニ対スル分類所得税ハ前条ノ規定ニ拘ラズ百分ノ十五ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
第二十三条 信託会社ガ其ノ引受ケタル合同運用信託ノ信託財産ニ付納付シタル甲種ノ配当利子所得ニ対スル分類所得税額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ当該合同運用信託ノ利益ニ対スル分類所得税額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ甲種ノ配当利子所得ニ対スル分類所得税ハ甲種ノ配当利子所得ノ計算上当該合同運用信託ノ利益ニ之ヲ加算ス
第二十四条 甲種ノ勤労所得ニ対スル分類所得税ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ年一月一日現在ノ扶養家族一人ニ付年百五十円ノ割合ニ依リ給与ノ支給期間ニ応ジテ算出シタル金額ノ百分ノ八ニ相当スル金額ヲ分類所得税額ヨリ控除ス
同一ノ支払者ヨリ賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ト其ノ他ノ給与トヲ併セ受クル者ニ在リテハ前項ノ控除ハ先ヅ賞与及賞与ノ性質ヲ有スル給与以外ノ給与ニ対スル分類所得税ニ付之ヲ為シ不足アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ニ対スル分類所得税ニ及ブ
二以上ノ支払者ヨリ甲種ノ勤労所得ヲ受クル者ニ付テハ前二項ノ規定ニ依ル控除ハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第一項ノ扶養家族ガ前年中ニ甲種ノ勤労所得ヲ有シ又ハ其ノ年分ノ事業所得、乙種ノ勤労所得若ハ山林ノ所得ヲ有スル場合ニ於テ第十六条第一項、第十七条、第十八条又ハ第二十条第一項ノ規定ニ依リ此等ノ所得ヨリ控除スル金額ガ総額ニ於テ百五十円ヲ超ユルトキハ其ノ扶養家族ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ
第一項ノ扶養家族ニ付第二十五条第一項ノ規定ニ依ル控除ヲ為ストキハ其ノ扶養家族ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ
甲種ノ勤労所得ヲ有スル者綜合所得税ノ賦課ヲ受クル者ナルトキハ賦課ヲ受クル年ノ七月一日ヨリ翌年六月三十日迄ニ受クル給与ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ
第二十五条 不動産所得、事業所得、乙種ノ勤労所得又ハ山林ノ所得ニ対スル分類所得税ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ年一月一日現在ノ扶養家族一人ニ付百五十円ノ百分ノ八ニ相当スル金額ヲ分類所得税額ヨリ控除ス
前条第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第一項ノ扶養家族ニ付前条第一項ノ規定ニ依ル控除ヲ為ストキハ其ノ扶養家族ニ付テハ第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ
戸主及其ノ同居家族ノ分類所得税ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付第一項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ分類所得税ニ付亦同ジ
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ金額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ納税義務者ノ一人又ハ数人ノ分類所得税額ヨリ之ヲ控除ス
第一項ノ所得ヲ有スル者綜合所得税ノ賦課ヲ受クル者ナルトキハ同項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ
第二十六条 本法ニ於テ扶養家族トハ当該所得ヲ有スル者ノ同居ノ妻並ニ同居ノ戸主及家族中年齢十八歳未満若ハ六十歳以上又ハ不具廃疾ノ者ヲ謂フ
前項ニ規定スル不具廃疾者ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条ノ二 自己若ハ家族又ハ其ノ相続人ヲ保険金受取人トスル生命保険契約ノ為ニ払込ミタル保険料アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ保険料中年額二百円以内ニ於テ命令ヲ以テ定ムル金額ノ百分ノ六ニ相当スル金額ヲ不動産所得、事業所得、勤労所得又ハ山林ノ所得ニ対スル分類所得税額ヨリ控除ス
第二十七条 第二十四条、第二十五条及前条ノ規定ハ第二条ノ規定ニ依ル納税義務者ニハ之ヲ適用セズ
第三章 綜合所得税
第二十八条 綜合所得税ハ個人ノ総所得ニ付之ヲ賦課ス但シ第一条ノ規定ニ該当セザル個人ニ在リテハ本法施行地ニ於ケル資産又ハ事業ヨリ生ズル所得ニ付テノミ綜合所得税ヲ賦課ス
第二十九条 左ノ各号ニ該当スル所得ニ付テハ綜合所得税ヲ課セズ
一 第十一条第一項第一号乃至第五号及第七号ノ所得
二 第三十条第一項第九号ノ所得中営利ヲ目的トスル継続的行為ヨリ生ジタルニ非ザル一時ノ所得
三 一時恩給及退職給与並ニ此等ノ性質ヲ有スル給与
第三十条 個人ノ総所得ハ左ノ各号ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 不動産、不動産上ノ権利又ハ船舶ノ貸付ニ因ル所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
二 本法施行地ニ於テ支払ヲ受クル公債、社債、銀行預金及第二十一条第二項ニ規定スル預金ノ利子並ニ命令ヲ以テ定ムル合同運用信託ノ利益ハ前年中ノ収入金額(無記名ノ公債及社債ノ利子ニ付テハ支払ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ十分ノ四ヲ控除シタル金額
三 前号以外ノ公債、社債及預金ノ利子並ニ合同運用信託ノ利益ハ前年中ノ収入金額(無記名ノ公債及社債ノ利子ニ付テハ支払ヲ受ケタル金額)
四 営業ニ非ザル貸金ノ利子ハ前年中ノ収入金額ヨリ其ノ元本ヲ得ルニ要シタル負債ノ利子ヲ控除シタル金額
五 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ収入金額(無記名株式ノ配当ニ付テハ支払ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ元本ヲ得ルニ要シタル負債ノ利子ヲ控除シタル金額
六 山林ノ所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
七 俸給、給料、歳費、費用弁償、年金、恩給及賞与並ニ此等ノ性質ヲ有スル給与ハ前年中ノ収入金額
八 水産業ノ所得ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前三年間毎年ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額ノ平均ニ依リ算出シタル金額
九 前各号以外ノ所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
所得税及臨時利得税ハ前項第一号、第六号、第八号及第九号ノ必要ノ経費ニ之ヲ算入セズ
営業利得ニ対スル臨時利得税額ハ当該臨時利得税ヲ課セラルベキ年分ノ総所得金額ヨリ之ヲ控除ス
第十二条第四項ノ規定ハ前項ノ臨時利得税額ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第一項第一号乃至第六号ノ所得ニ付テハ被相続人ノ所得ハ之ヲ相続人ノ所得ト看做シ第八号及第九号ノ所得ニ付テハ相続シタル資産又ハ事業ハ相続人ガ引続キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十三条ノ規定ハ個人ノ総所得ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第三十一条 前条ノ規定ニ依リ算出シタル総所得金額一万円以下ナルトキハ其ノ所得中同条第一項第七号ノ所得ニ付其ノ十分ノ一ヲ控除ス
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同ジ
第三十二条 総所得金額五千円以下ナルトキハ綜合所得税ヲ課セズ前条ノ規定ニ依ル控除ヲ為シタル為五千円以下ト為リタルトキ亦同ジ
第八条ニ規定スル利益ノ配当、山林ノ所得及其ノ他ノ所得ハ各之ヲ区分シ其ノ各所得ニ付前項ノ規定ヲ適用ス
前条第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十三条 綜合所得税ハ総所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用シテ之ヲ賦課ス但シ第八条ニ規定スル利益ノ配当及山林ノ所得ハ各他ノ所得ト之ヲ区分シ其ノ所得ヲ五分シタル金額中千円ヲ超エ五千円以下ノ金額ニ対シテハ百分ノ五ノ税率ヲ、五千円ヲ超ユル金額ニ対シテハ本項ノ税率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ各其ノ税額トス
五千円ヲ超ユル金額 百分ノ十
八千円ヲ超ユル金額 百分ノ十五
一万二千円ヲ超ユル金額 百分ノ二十
二万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
三万円ヲ超ユル金額 百分ノ三十
五万円ヲ超ユル金額 百分ノ三十五
八万円ヲ超ユル金額 百分ノ四十
十二万円ヲ超ユル金額 百分ノ四十五
二十万円ヲ超ユル金額 百分ノ五十
三十万円ヲ超ユル金額 百分ノ五十五
五十万円ヲ超ユル金額 百分ノ六十
八十万円ヲ超ユル金額 百分ノ六十五
前項ノ場合ニ於テ戸主及其ノ同居家族ノ総所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ対シ税率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ各其ノ総所得金額ニ按分シテ各其ノ税額ヲ定ム戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ総所得金額ニ付亦同ジ
総所得中ニ法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ニシテ甲種ノ配当利子所得トシテ分類所得税ヲ課セラレタルモノアルトキハ総所得金額ニ対シ前二項ノ規定ヲ適用シテ算出シタル金額ト当該利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ノ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ収入金額(無記名株式ノ配当ニ付テハ支払ヲ受ケタル金額)ノ百分ノ一ニ相当スル金額トノ合計額ヲ以テ総所得ニ対スル綜合所得税ノ税額トス
前項ニ規定スル剰余金ノ分配中ニ産業組合、工業組合、商業組合等命令ヲ以テ定ムル法人ヨリ受クルモノアルトキハ其ノ部分ノ収入金額ニ付テハ前項ニ規定スル割合百分ノ一ハ之ヲ百分ノ〇・五トス
第四章 申告、申請、調査及決定
第三十四条 不動産所得、乙種ノ配当利子所得、事業所得、乙種ノ勤労所得、山林ノ所得若ハ乙種ノ退職所得ニ付分類所得税ヲ納ムル義務アル者又ハ個人ノ総所得ニ付綜合所得税ヲ納ムル義務アル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎年三月十五日迄ニ所得ノ種類及金額其ノ他必要ナル事項ヲ政府ニ申告スベシ
第二十五条ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ前項ノ申告ト同時ニ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スベシ
第三十五条 甲種ノ勤労所得ヲ有スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第十六条ノ規定ニ依ル控除ニ関シ必要ナル事項ヲ政府ニ申告スベシ
第二十四条ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ政府ニ提出スベシ
第三十六条 不動産所得、乙種ノ配当利子所得、事業所得、乙種ノ勤労所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ノ金額並ニ個人ノ総所得ノ金額ハ所得調査委員会ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調査委員会閉会後前項ノ所得ノ決定ニ付脱漏アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ決定ヲ為スベカリシ年ノ翌年ヨリ三年間ハ仍所得調査委員会ノ調査ニ依リ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調査委員会閉会後第一項ノ所得ヲ有スル者納税義務アルコトヲ申出デ又ハ納税義務者所得金額ノ増加アルコトヲ申出デタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
納税義務者第一項ノ規定ニ依ル所得ノ決定前ニ納税管理人ノ申告ヲ為サズシテ本法施行地ニ住所及居所ヲ有セザルニ至ルトキハ第一項ノ規定ニ拘ラズ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
前四項ノ規定ハ第二十五条又ハ第二十六条ノ二ノ規定ニ依ル控除ニ因リ徴収税額ナシト認ムル者ニ付テハ之ヲ適用セズ
第三十七条 五月三十一日迄ニ所得調査委員会成立セザルトキハ政府ニ於テ所得金額ヲ決定ス
所得調査委員会開会ノ日ヨリ第五十八条ノ期間内又ハ五月三十一日迄ニ調査結了セザルトキハ政府ニ於テ調査未済ノ所得金額ヲ決定ス
第三十八条 政府ハ所得調査委員会ノ決議ヲ不当ト認ムルトキハ七日以内ノ期間ヲ定メ之ヲ再調査ニ付ス仍其ノ決議ヲ不当ト認ムルトキ又ハ再調査期間内ニ調査結了セザルトキハ政府ニ於テ所得金額ヲ決定ス
第三十九条 前三条ノ規定ニ依リ所得金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納税義務者ニ通知スベシ
本法施行地内ニ住所及居所ヲ有セザル納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為サザルトキハ前項ノ通知ハ公告ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ七日ヲ経過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第五章 所得調査委員会
第四十条 各税務署所轄内ニ所得調査委員会ヲ置ク但シ税務署所轄内ニ在ル市ニ付テハ命令ヲ以テ特ニ所得調査委員会ヲ置クコトヲ得
所得調査委員ノ定数ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム但シ定数ノ増減ハ改選期ニ於テスルノ外之ヲ為スコトヲ得ズ
第四十一条 所得調査委員ハ各選挙区ニ於テ之ヲ選挙ス
所得調査委員ヲ選挙スルトキハ同時ニ之ト同数ノ補欠員ヲ選挙スベシ
第四十二条 所得調査委員及補欠員ノ選挙区域ハ所得調査委員会ヲ置クベキ区域ニ依リ投票区及開票区ハ市町村ノ区域ニ依ル但シ市制第六条又ハ第八十二条第三項ノ規定ニ依リ指定セラレタル市ニ在リテハ区ノ区域ニ依ル
町村組合ニシテ町村ノ事務ノ全部又ハ役場事務ヲ共同処理スルモノハ之ヲ一町村ト看做シ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ町村ニ準ズベキモノヲ町村ト看做ス
第四十三条 選挙区域内ニ居住シ第三十六条第一項ノ所得又ハ個人ノ営業ニ付其ノ年法定ノ期限迄ニ所得金額又ハ純益金額ノ申告ヲ為シ且其ノ決定ヲ受ケタル者ニシテ選挙人名簿ニ登録セラレタルモノハ所得調査委員及補欠員ヲ選挙シ又ハ所得調査委員若ハ補欠員ニ選挙セラルルコトヲ得但シ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
一 無能力者
二 破産者ニシテ復権ヲ得ザルモノ
三 国税滞納処分ヲ受ケタル後一年ヲ経ザル者
四 六年ノ懲役若ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ又ハ旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者
五 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
六 第九十四条又ハ第九十五条ノ規定ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リタル後又ハ時効ニ因ル場合ヲ除クノ外執行ノ免除ヲ受ケタル後五年ヲ経ザル者
七 第八十八条乃至第九十五条又ハ営業税法第三十三条乃至第三十五条ノ規定ニ依リ罰金又ハ科料ノ刑ニ処セラレ其ノ裁判確定ノ後五年ヲ経ザル者
其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前選挙ヲ行フ場合ニ於テハ前年第三十六条第一項ノ所得又ハ個人ノ営業ニ付所得税又ハ営業税ヲ納メタルコトヲ以テ其ノ年所得金額又ハ純益金額ノ決定ヲ受ケタルモノト看做ス
前二項ノ場合ニ於テ被相続人ニ付為シタル所得金額又ハ純益金額ノ決定ハ之ヲ相続人ニ付為シタル所得金額又ハ純益金額ノ決定ト看做シ被相続人ノ為シタル納税又ハ申告ハ之ヲ相続人ノ為シタル納税又ハ申告ト看做ス
選挙人名簿ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十四条 投票及開票ニ関スル事務ハ市区町村長之ヲ担任シ選挙会ニ関スル事務ハ税務署長之ヲ担任ス
第四十二条第二項ノ町村組合ニ付テハ其ノ組合管理者ヲ、町村制ヲ施行セザル地ニ付テハ町村長ニ準ズベキモノヲ町村長ト看做ス
第四十五条 税務署長ハ所得調査委員及補欠員ノ選挙期日ヲ定メ之ヲ市区町村長ニ通知スベシ
市区町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ少クトモ選挙期日七日前其ノ旨ヲ公示スベシ
第四十六条 選挙ハ無記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ所得調査委員及補欠員ノ各選挙ニ付一人一票ニ限ル
選挙人ハ選挙ノ当日投票時間内ニ自ラ投票所ニ到リ被選挙人各一人ノ氏名ヲ各別ノ投票用紙ニ記載シテ投票スベシ
投票用紙ハ選挙ノ当日投票所ニ於テ之ヲ選挙人ニ交付ス
第四十七条 市区町村長ハ投票ヲ調査シ直ニ其ノ結果ヲ税務署長ニ報告スベシ
第四十八条 税務署長前条ノ報告ヲ受ケタルトキハ選挙会ヲ開キ之ヲ調査スベシ
第四十九条 投票、開票及選挙会ニハ立会人ヲ立会ハシムベシ
立会人ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十条 投票ノ多数ヲ得タル者ヲ以テ当選人トス投票ノ数同ジキトキハ年齢多キ者ヲ取リ年齢同ジキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
所得調査委員ニ当選シタル者同時ニ補欠員ニ当選スルモ補欠員タルコトヲ得ズ
第五十一条 所得調査委員及補欠員ノ選挙終了シタルトキハ税務署長ハ当選人ノ氏名ヲ公示シ且之ヲ当選人及市区町村長ニ通知スベシ
市区町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ当選人ノ氏名ヲ公示スベシ
第五十二条 所得調査委員又ハ補欠員ニ当選シタル者ハ正当ノ事由ナクシテ之ヲ辞スルコトヲ得ズ
第五十三条 所得調査委員及補欠員ノ任期ハ選挙期日ノ属スル月ヨリ四年トス
選挙区域ノ変更ニ因リ其ノ区域内ニ於ケル第三十六条第一項ノ所得ニ付其ノ年所得金額ノ決定ヲ受ケタル者及個人ノ営業ニ付其ノ年純益金額ノ決定ヲ受ケタル者ノ合計数ニ五分ノ一以上ノ増減ヲ来シタル場合ニ於テハ所得調査委員及補欠員ノ任期ハ選挙区域ノ変更アリタル月ヲ以テ終了スルモノトス但シ其ノ選挙区域ノ変更ノ月ガ一月又ハ二月ナルトキハ三月、四月乃至八月ナルトキハ九月、十二月ナルトキハ翌年三月ヲ以テ終了スルモノトス
第四十三条第二項ノ規定ハ其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前選挙区域ノ変更アリタル場合ニ付之ヲ準用ス
第五十四条 所得調査委員及補欠員ノ改選ハ前任者ノ任期終了ノ月ノ翌月ニ於テ之ヲ行フ
第五十五条 所得調査委員ニ欠員ヲ生ジタルトキハ投票ノ最多数ヲ得タル補欠員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ数同ジキトキハ年齢多キ者ヲ取リ年齢同ジキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
所得調査委員ニ欠員ヲ生ジ之ヲ補充スベキ補欠員ナキトキハ所得調査委員ノ補欠選挙ヲ行フ
第五十六条 前条ノ規定ニ依リ所得調査委員又ハ補欠員ト為リタル者ハ前任者ノ残任期間在任ス
選挙区域ノ変更ニ因リ新ニ選挙セラレタル所得調査委員及補欠員ノ任期ハ選挙区域変更前ニ於ケル所得調査委員及補欠員ノ選挙期日ノ属スル月ヨリ四年ヲ以テ終了ス
第五十七条 所得調査委員又ハ補欠員第四十三条第一項各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキ、第三十六条第一項ノ所得ニ対スル所得税若ハ営業税ノ何レニ付テモ納税義務ヲ有セザルニ至リタルトキ又ハ其ノ選挙区域内ニ居住セザルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第五十八条 所得調査委員会ノ開会日数ハ三十日以内トシ地方ノ情況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九条 所得調査委員会ハ税務署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第六十条 所得調査委員会ハ毎年開会ノ始ニ於テ所得調査委員中ヨリ会長ヲ選挙スベシ
第六十一条 税務署長ハ毎年第三十六条第一項ノ所得ニ付納税義務アリト認ムル者ノ所得金額ヲ調査シ其ノ調査書ヲ所得調査委員会ニ送付スベシ
前項ノ規定ハ第二十五条又ハ第二十六条ノ二ノ規定ニ依ル控除ニ因リ徴収税額ナシト認ムル者ニ付テハ之ヲ適用セズ
前二項ノ規定ハ第三十六条第二項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第六十二条 所得調査委員会ハ定員ノ過半数ニ当ル委員出席スルニ非ザレバ決議ヲ為スコトヲ得ズ
議事ハ出席員ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ会長ノ決スル所ニ依ル
第六十三条 所得調査委員ハ自己及自己ト同一戸籍内ニ在ル者ノ所得ニ関スル議事ニ与ルコトヲ得ズ
第六十四条 税務署長又ハ其ノ代理官ハ所得調査委員会ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第六十五条 所得調査委員ニハ手当及旅費ヲ給ス
第六十六条 所得調査委員ハ自己ノ所属スル所得調査委員会ノ調査ニ依リ決定セラレタル課税標準額ニ対スル審査ノ請求、訴願又ハ行政訴訟ニ付納税義務者ノ代理ヲ為シ若ハ其ノ相談ニ応ズルヲ以テ業ト為シ又ハ報酬ヲ得テ此等ノ事務ヲ行フコトヲ得ズ
第六章 審査、訴願及行政訴訟
第六十七条 納税義務者第三十九条ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル所得金額ニ対シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ為スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ税金ノ徴収ヲ猶予セズ
第六十八条 前条第一項ノ請求アリタルトキハ所得審査委員会ノ決議ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得審査委員会ハ前条第一項ノ請求ヲ為シタル者ニ対シ其ノ所得ニ関スル事実ヲ質問スルコトヲ得
第三十八条ノ規定ハ所得審査委員会ノ決議ニ付之ヲ準用ス
第六十九条 各税務監督局所轄内ニ所得審査委員会ヲ置ク
所得審査委員会ハ左ノ所得審査委員ヲ以テ之ヲ組織ス
一 税務監督局高等官中ヨリ大蔵大臣ノ命ジタル者三人
二 税務監督局所轄内各府県又ハ北海道ニ於テ所得調査委員ノ互選シタル者府県ニ在リテハ各一人北海道ニ在リテハ四人
所得審査委員会、所得審査委員及其ノ補欠員ニ関スル事項ハ本法ニ定ムルモノヲ除クノ外命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十条 所得調査委員ヨリ選挙セラレタル所得審査委員ニハ日当及旅費ヲ給ス
第七十一条 第六十八条第一項ノ決定ニ対シ不服アル者ハ訴願ヲ為シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第七章 徴収
第七十二条 甲種ノ配当利子所得、甲種ノ勤労所得又ハ甲種ノ退職所得ニ対スル分類所得税ハ支払者支払ノ際之ヲ徴収シ翌月十日迄ニ政府ニ納付スベシ
第七十三条 不動産所得、乙種ノ配当利子所得、事業所得、乙種ノ勤労所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ニ対スル分類所得税並ニ個人ノ総所得ニ対スル綜合所得税ハ其ノ年額ヲ四分シ左ノ四期ニ於テ之ヲ徴収ス但シ納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為サズシテ本法施行地ニ住所及居所ヲ有セザルニ至ルトキハ直ニ其ノ所得税ヲ徴収スルコトヲ得
第一期 其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年九月一日ヨリ三十日限
第三期 其ノ年十一月一日ヨリ三十日限
第四期 翌年二月一日ヨリ末日限
第七十四条 第七十二条ノ規定ニ依リ徴収スベキ分類所得税ヲ徴収セザルトキ又ハ其ノ徴収シタル税金ヲ納付セザルトキハ国税徴収ノ例ニ依リ之ヲ支払者ヨリ徴収ス
法人解散シタル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依リ徴収セラルル税金ヲ納付セズシテ残余財産ヲ分配シタルトキハ其ノ税金ニ付清算人連帯シテ納税ノ義務アルモノトス
第八章 雑則
第七十五条 納税義務者災害、失業其ノ他ノ事由ニ因リ著シク資力ヲ喪失シ納税困難ト認ムルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ所得税ヲ軽減又ハ免除スルコトヲ得
第七十六条 政府ハ前条ノ規定ニ依リ軽減又ハ免除セラルル所得税ニ付軽減又ハ免除ニ関スル処分ノ確定スルニ至ル迄税金ノ徴収ヲ猶予スルコトヲ得
第七十七条 本法施行地ニ於テ利子ノ支払ヲ為スベキ公債又ハ社債ヲ募集シタル者(委託募集ノ場合ハ委託ヲ受ケ募集シタル者)ハ遅滞ナク其ノ公債又ハ社債ニ付命令ヲ以テ定ムル事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スベシ
第七十八条 本法施行地ニ於テ無記名ノ公債、社債又ハ株式ニ付利子又ハ配当ノ支払ヲ受クル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ氏名又ハ名称、住所其ノ他必要ナル事項ヲ利子又ハ配当ノ支払ノ取扱者ニ告知スベシ
利子又ハ配当ノ支払ノ取扱者ハ前項ノ告知ヲ為サシメタル後其ノ支払ヲ為スベシ
第七十九条 俸給、給料、歳費、費用弁償、年金、恩給若ハ賞与又ハ此等ノ性質ヲ有スル給与ノ支払ヲ為ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ必要ナル事項ヲ政府ニ申告スベシ
第八十条 左ニ掲グル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ支払調書ヲ政府ニ提出スベシ
一 俸給、給料、歳費、費用弁償、年金、恩給若ハ賞与又ハ此等ノ性質ヲ有スル給与ノ支払ヲ為ス者
二 公債、社債若ハ預金ノ利子又ハ合同運用信託ノ利益ノ支払ヲ為ス者
三 利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ヲ為ス法人
合同運用信託以外ノ信託ノ受託者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ各信託ニ付計算書ヲ政府ニ提出スベシ
第八十一条 税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納税義務者又ハ納税義務アリト認ムル者ニ質問ヲ為シ又ハ其ノ営業ニ関スル帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査スルコトヲ得
税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ前条第一項又ハ第二項ノ支払調書又ハ計算書ヲ提出スル義務アル者ニ質問ヲ為シ又ハ之ニ関スル帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査スルコトヲ得
第八十二条 税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納税義務者若ハ納税義務アリト認ムル者ニ金銭若ハ物品ヲ支払フノ義務ヲ有スト認ムル者ニ対シ又ハ納税義務者若ハ納税義務アリト認ムル者ヨリ金銭若ハ物品ノ支払ヲ受クルノ権利ヲ有スト認ムル者ニ対シ其ノ金額、数量、価格、支払期日等ニ付質問スルコトヲ得
第八十三条 政府ハ第七十二条ノ規定ニ依リ甲種ノ勤労所得ニ対スル分類所得税ヲ徴収シタル者及第八十条第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ支払調書又ハ計算書ヲ提出シタル者ニ対シ命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ交付スルコトヲ得
第八十四条 不動産所得、乙種ノ配当利子所得、事業所得、乙種ノ勤労所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ニ対スル分類所得税並ニ個人ノ総所得ニ対スル綜合所得税ハ納税義務者ノ住所地、住所ナキトキハ居所地ヲ以テ納税地トス但シ住所地以外ニ在ル者ハ申告シテ居所地ニ於テ所得税ヲ納ムルコトヲ得
本法施行地ニ住所及居所ナキ者ハ納税地ヲ定メ政府ニ申告スベシ申告ナキトキハ政府其ノ納税地ヲ指定ス
第八十五条 納税義務者納税地ニ現住セザルトキハ其ノ所得ノ申告、納税其ノ他所得税ニ関スル一切ノ事項ヲ処理セシムル為其ノ地ニ於テ納税管理人ヲ定メ政府ニ申告スベシ本法施行地外ニ住所又ハ居所ヲ移サントスルトキ亦同ジ
第八十六条 同族会社ノ行為又ハ計算ニシテ其ノ株主若ハ社員又ハ之ト親族、使用人、命令ヲ以テ定ムル出資関係アル法人等特殊ノ関係アル者ノ所得ニ付所得税逋脱ノ目的アリト認メラルルモノアル場合ニ於テハ其ノ行為又ハ計算ニ拘ラズ政府ハ其ノ認ムル所ニ依リ此等ノ者ノ所得金額ヲ計算スルコトヲ得
前項ノ同族会社トハ法人税法第十七条第三項ニ規定スル法人ヲ謂フ
第八十七条 北海道、府県、市町村其ノ他ノ公共団体ハ所得税ノ附加税ヲ課スルコトヲ得ズ
第九章 罰則
第八十八条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ依リ所得税ヲ逋脱シタル者ハ其ノ逋脱シタル税金ノ三倍ニ相当スル罰金又ハ科料ニ処ス但シ自首シ又ハ税務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
前項ノ場合ニ於テ第三十六条第一項ノ所得ニ付所得税ヲ逋脱シタル者ノ所得金額ハ同条第二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ之ヲ決定シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス
第八十九条 第六十六条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第九十条 正当ノ事由ナクシテ第八十条第一項若ハ第二項ノ規定ニ依リ政府ニ提出スベキ支払調書若ハ計算書ヲ提出セズ又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル支払調書若ハ計算書ヲ提出シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第九十一条 無記名ノ公債、社債又ハ株式ニ付利子又ハ配当ノ支払ヲ受クルニ際シ第七十八条第一項ニ規定スル事項ニ付虚偽ノ告知ヲ為シタル者及同条第二項ノ規定ニ違反シ告知ヲ為サシメズシテ支払ヲ為シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第九十二条 第八十一条ノ規定ニ依ル帳簿書類其ノ他ノ物件ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル帳簿書類ヲ呈示シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第九十三条 所得ノ調査又ハ審査ノ事務ニ従事シ又ハ従事シタル者其ノ調査又ハ審査ニ関シ知得タル秘密ヲ正当ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第九十四条 所得調査委員、其ノ補欠員、所得審査委員又ハ其ノ補欠員ノ選挙ニ関シ当選ヲ得又ハ得シメ若ハ得シメザル目的ヲ以テ選挙人又ハ選挙運動者ニ対シ金銭物品其ノ他ノ財産上ノ利益若ハ公私ノ職務ノ供与ヲ為シ、饗応接待ヲ為シ又ハ其等ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ供与若ハ饗応接待ヲ受ケ若ハ要求シ又ハ其等ノ申込ヲ承諾シタル者亦前項ニ同ジ
前二項ニ規定スル行為ニ関シ周旋又ハ勧誘ヲ為シタル者亦第一項ニ同ジ
第九十五条 所得調査委員、其ノ補欠員、所得審査委員又ハ其ノ補欠員ノ選挙ニ関シ投票ヲ得又ハ得シメ若ハ得シメザル目的ヲ以テ戸別訪問ヲ為シ又ハ連続シテ個個ノ選挙人ニ面接シ若ハ電話ニ依リ選挙運動ヲ為シタル者ハ一年以下ノ禁錮又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第九十六条 第八十八条第一項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ規定ヲ適用セズ
附 則
第九十七条 本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第九十八条 不動産所得、乙種ノ配当利子所得、事業所得、乙種ノ勤労所得、山林ノ所得及乙種ノ退職所得ニ付テハ昭和十五年分分類所得税ヨリ、個人ノ総所得ニ付テハ昭和十五年分綜合所得税ヨリ本法ヲ適用ス
第九十九条 法人ノ本法施行前ニ終了シタル各事業年度分ノ所得及本法施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ル清算所得ニ対スル所得税並ニ本法施行前ニ賦課シ若ハ賦課スベカリシ又ハ徴収シ若ハ徴収スベカリシ第二種又ハ第三種ノ所得ニ対スル所得税ニ関シテハ仍従前ノ例ニ依ル
第百条 第八条ノ規定ハ同条第二号及第三号ニ掲グル金額ニシテ本法施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ルモノニハ之ヲ適用セズ
第百一条 左ニ掲グル所得ニ付テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ昭和十五年分又ハ昭和十六年分ニ限リ所得税ヲ軽減若ハ免除シ又ハ所得金額ノ計算ニ関シ特例ヲ設クルコトヲ得
一 昭和十四年一月一日ヨリ昭和十六年一月一日ニ至ル期間引続キ有シタルニ非ザル資産、営業又ハ職業ノ所得
二 昭和十四年一月一日ヨリ昭和十六年一月一日ニ至ル期間引続キ支給ヲ受ケタルニ非ザル俸給、給料、歳費、費用弁償、年金及恩給並ニ此等ノ性質ヲ有スル給与
三 水産業ノ所得
第百二条 乙種ノ勤労所得ニ属スル賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ニ付テハ昭和十四年三月一日以後同年十二月三十一日迄ノ収入金額ニ限リ昭和十五年分ノ乙種ノ勤労所得トシテ之ヲ計算ス
第百三条 昭和十四年分ノ第三種所得金額(同居ノ戸主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル)五千円ヲ超ユル者ノ本法施行後昭和十五年七月三十一日迄ニ支払ヲ受クル甲種ノ勤労所得ニ対スル分類所得税ニ付テハ第二十四条第一項ノ規定ニ依ル控除ハ之ヲ為サズ
第百四条 第三十条第一項第二号ノ所得ニシテ其ノ支払期ガ本法施行前ニ属スルモノハ個人ノ総所得トシテ之ヲ計算セズ
賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ニ付テハ昭和十四年三月一日以後同年十二月三十一日迄ノ収入金額ニ限リ昭和十五年分ノ個人ノ総所得トシテ之ヲ計算ス
第百五条 貯蓄銀行法第九条第一項ノ規定ニ依リ貯蓄銀行ノ供託シタル国債ノ利子ニ対シテハ第二十一条第一項ノ規定ニ拘ラズ当分ノ内百分ノ三ノ税率ニ依リ分類所得税ヲ賦課ス
第百六条 個人ノ総所得中本法施行地ニ於テ支払ヲ受クル公債、社債、銀行預金及第二十一条第二項ニ規定スル預金ノ利子並ニ命令ヲ以テ定ムル合同運用信託ノ利益ニ付テハ当分ノ内納税義務者ノ申請ニ依リ他ノ所得ト之ヲ区分シ利子又ハ利益ノ支払ノ際其ノ利子金額又ハ利益金額ヲ課税標準トシ百分ノ十五ノ税率ニ依リ其ノ綜合所得税ヲ賦課スルコトヲ得
前項ニ規定スル綜合所得税ハ其ノ利子又ハ利益支払ノ際支払者ニ於テ之ヲ徴収シ翌月十日迄ニ政府ニ納付スベシ
第七十四条ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第二十四条第六項又ハ第二十五条第六項ノ規定ハ第一項ニ規定スルモノノ外他ニ綜合所得税ノ賦課ヲ受ケザル者ニ付テハ之ヲ適用セズ
第百七条 信託会社ガ其ノ引受ケタル合同運用信託ノ信託財産ニ付従前ノ規定ニ依リ納付シタル第二種ノ所得ニ対スル所得税額及資本利子税額ハ命令ノ定ムル所ニ依リ当該合同運用信託ノ利益ニ対スル分類所得税額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スベキ第二種ノ所得ニ対スル所得税及資本利子税ハ甲種ノ配当利子所得ノ計算上当該合同運用信託ノ利益ニ之ヲ加算ス
第百八条 所得調査委員、其ノ補欠員、所得審査委員及其ノ補欠員ニ関シテハ昭和十五年七月三十一日迄ハ仍従前ノ例ニ依ル
第百九条 改正前ノ所得税法第七十四条乃至第七十六条又ハ営業収益税法第二十八条乃至第三十条ノ規定ニ依リ処罰セラレタル後五年ヲ経ザル者ハ第四十三条ノ規定ニ拘ラズ所得調査委員及補欠員ヲ選挙シ又ハ所得調査委員若ハ補欠員ニ選挙セラルルコトヲ得ズ
所得調査委員又ハ補欠員改正前ノ所得税法第七十四条乃至第七十六条又ハ営業収益税法第二十八条乃至第三十条ノ規定ニ依リ処罰セラレタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第百十条 昭和十五年ニ限リ第二十四条第一項及第二十五条第一項ノ規定中一月一日トアルハ三月一日、第二十四条第六項ノ規定中七月一日トアルハ八月一日、第三十四条第一項ノ規定中三月十五日トアルハ四月三十日、第三十七条ノ規定中五月三十一日トアルハ六月三十日、第七十三条ノ規定中其ノ年七月一日ヨリ三十一日限トアルハ其ノ年八月一日ヨリ三十一日限トス
第百十一条 宗教団体法第三十五条第一項ノ仏堂ニ対シテハ所得税ヲ課セズ