朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル農地調整法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年四月一日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
司法大臣 鹽野季彥
大藏大臣 賀屋興宣
農林大臣 伯爵 有馬賴寧
內務大臣 末次信正
法律第六十七號
農地調整法
第一條 本法ハ互讓相助ノ精神ニ則リ農地ノ所有者及耕作者ノ地位ノ安定及農業生產力ノ維持增進ヲ圖リ以テ農村ノ經濟更生及農村平和ノ保持ヲ期スル爲農地關係ノ調整ヲ爲スヲ以テ目的トス
第二條 本法ニ於テ農地トハ耕作ヲ目的トスル土地ヲ謂フ
第三條 農地ノ所有者又ハ耕作者ハ兵役其ノ他命令ヲ以テ定ムル事由ニ因リテ農地ヲ自ラ耕作シ又ハ管理スルコト能ハザルトキハ市町村其ノ他命令ヲ以テ定ムル團體ニ農地ノ管理又ハ買取ノ申出ヲ爲スコトヲ得
前項ノ申出アリタル場合ニ於テハ同項ノ團體ハ命令ノ定ムル所ニ依リ農地ノ管理又ハ買取ヲ爲スコトヲ得
第四條 道府縣、市町村其ノ他命令ヲ以テ定ムル團體ガ農村ノ經濟更生ノ爲命令ノ定ムル所ニ依リ自作農創設維持ニ要スル土地ヲ取得シ又ハ使用スルノ必要アルトキハ行政官廳ノ認可ヲ受ケ土地ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者ニ對シ土地ノ讓渡又ハ使用收益ノ權利ノ設定若ハ讓渡ニ關スル協議ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ團體ガ未墾地ヲ開發シテ同項ノ事業ヲ行ハントスル場合ニ於テ同項ノ規定ニ依ル協議調ハザルトキハ開發セントスル未墾地其ノ他其ノ開發ニ必要ナル土地又ハ其ノ使用收益ノ權利ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ關シテハ土地收用法ヲ適用ス
第五條 行政官廳農村ノ經濟更生ノ爲必要アリト認ムルトキハ農地ノ所有者ヲシテ農地處分ニ當リ命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ市町村農地委員會ニ其ノ旨ヲ通知セシムルコトヲ得
第六條 命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル自作地ノ所有者ハ命令ノ定ムル場合ヲ除クノ外行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ自作地ノ讓渡若ハ貸付ヲ爲シ又ハ之ニ付物權ヲ設定スルコトヲ得ズ
第七條 前條ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル自作地ニ付テハ其ノ旨ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ登記ヲ爲スニ非ザレバ前條ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル自作地タルコトヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第一項ノ規定ニ依ル登記ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 農地ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキモ農地ノ引渡アリタルトキハ爾後其ノ農地ニ付物權ヲ取得シタル者ニ對シ其ノ效力ヲ生ズ
民法第五百六十六條第一項及第三項ノ規定ハ登記セザル賃貸借ノ目的タル農地ガ賣買ノ目的物ナル場合ニ之ヲ準用ス
民法第五百三十三條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九條 農地ノ賃貸人ハ賃借人ガ宥恕スベキ事情ナキニ拘ラズ小作料ヲ滯納スル等信義ニ反シタル行爲ナキ限リ賃貸借ノ解約ヲ爲シ又ハ更新ヲ拒ムコトヲ得ズ但シ土地使用ノ目的ノ變更又ハ賃貸人ノ自作ヲ相當トスル場合其ノ他正當ノ事由アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
當事者ガ農地ノ賃貸借ノ期間ヲ定メタルトキハ當事者ガ期間滿了前六月乃至一年內ニ相手方ニ對シ更新拒絕ノ通知又ハ條件ヲ變更スルニ非ザレバ更新セザル旨ノ通知ヲ爲サザルトキハ從前ノ賃貸借ト同一ノ條件ヲ以テ更ニ賃貸借ヲ爲シタルモノト看做ス但シ賃貸人ノ疾病ニ因リテ自ラ耕作スルコト能ハザル爲其ノ他特別ノ事由ニ因リテ一時賃貸借ヲ爲シタルコト明ナル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
農地ノ賃貸借ノ當事者賃貸借ノ解約ヲ爲シ又ハ更新ヲ拒マントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ其ノ旨ヲ市町村農地委員會ニ通知スベシ
第二項竝ニ民法第六百十七條及第六百十八條ノ規定ニ異ル小作條件ニシテ賃借人ニ不利ナルモノハ之ヲ定メザルモノト看做ス
第十條 小作關係ノ爭議ニ付公益上必要アリト認ムルトキハ小作官ハ小作調停法ニ依ル調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
小作關係ノ爭議ニ付訴訟ガ繫屬スルトキハ受訴裁判所ハ職權ヲ以テ小作官ノ意見ヲ聽キ事件ヲ小作調停法ニ依ル調停ニ付スルコトヲ得
第十一條 小作調停法ニ依ル調停ノ爲必要アリト認ムルトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ小作官ノ意見ヲ聽キ調停前ノ措置トシテ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル裁判ハ調停事件ノ繫屬スル裁判所ニ於テ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
第一項ノ規定ニ依ル裁判ニ違反シタル者ハ調停事件ノ繫屬スル裁判所ニ於テ五百圓以下ノ過料ニ處スルコトヲ得
非訟事件手續法第二百七條及第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第十二條 小作調停法ニ依ル調停委員會ニ於テ調停成ラザル場合ニ裁判所相當ト認ムルトキハ職權ヲ以テ小作官及調停委員ノ意見ヲ聽キ當事者雙方ノ利益ヲ衡平ニ考慮シ一切ノ事情ヲ斟酌シテ調停ニ代ヘ小作關係ノ存續、小作條件ノ變更其ノ他爭議ノ解決上必要ナル裁判ヲ爲スコトヲ得此ノ裁判ニ於テハ小作料ノ支拂、小作地ノ引渡其ノ他財產上ノ給付ヲ命ズルコトヲ得
前條第二項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル裁判ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ニ依ル裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間トス
前項ノ卽時抗吿ハ執行停止ノ效力ヲ有ス
第一項ノ規定ニ依ル裁判確定シタルトキハ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第十三條 小作關係ノ爭議ヲ除クノ外相隣關係其ノ他農地ノ利用關係ニ付爭議ヲ生ジタルトキハ當事者ハ裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ小作調停法及第十條乃至前條ノ規定ヲ準用ス
第十四條 裁判所第十二條又ハ前條ノ規定ニ依リ小作關係ノ存續、小作條件ノ變更其ノ他爭議ノ解決上必要ナル裁判ヲ爲サントスル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ市町村農地委員會又ハ道府縣農地委員會ノ意見ヲ聽クコトヲ得
第十五條 自作農創設維持、小作關係ノ調整、農地ノ交換分合其ノ他農地ニ關スル事項ヲ處理スル爲市町村ニ市町村農地委員會ヲ、道府縣ニ道府縣農地委員會ヲ置クコトヲ得
市町村農地委員會及道府縣農地委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 左ニ揭グル不動產ノ取得ニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
一 第三條又ハ第四條ノ團體ガ第三條又ハ第四條ノ事業ノ爲ニスル土地ノ取得
二 第四條又ハ第六條ノ自作農創設維持ノ事業ニ依ル個人ノ土地ノ取得
三 第四條又ハ第六條ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル土地ノ所有者ガ其ノ創設又ハ維持ノ條件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル事業者ノ土地ノ取得
第十七條 本法ニ於テ町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズルモノトス
附 則
第十八條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ依リ本法施行前ニ創設又ハ維持セラレタル自作地ニ付テハ其ノ旨ノ登記ヲ爲スコトヲ得
第六條、第七條第二項及第三項竝ニ第十六條第二號及第三號ノ規定ハ前項ノ自作地ニ關シ之ヲ準用ス
第二十條 第八條及第九條ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ存スル農地ノ賃貸借ニモ亦之ヲ適用ス但シ本法施行ノ際現ニ存スル農地ノ賃貸借ニシテ本法施行後一年內ニ其ノ期間滿了スベキモノニ付當事者ガ其ノ期間滿了前一年內ニ相手方ニ對シテ爲シタル更新拒絕ノ通知又ハ條件ヲ變更スルニ非ザレバ更新セザル旨ノ通知ハ第九條第二項ノ期間內ニ爲サザルモノト雖モ之ヲ同條同項ノ期間內ニ爲シタルモノト看做ス
第二十一條 第十條第二項及第十一條乃至第十四條ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ繫屬スル小作關係其ノ他農地ノ利用關係ニ關スル訴訟事件又ハ調停事件ニモ亦之ヲ適用ス
第二十二條 
登錄稅法第十九條但書中「第八號、第九號」ヲ「第八號乃至第九號ノ四」ニ改ム
同法同條第八號中「自作農ノ創設維持又ハ」及「北海道府縣市町村、產業組合、產業組合聯合會、」ヲ削リ同號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
八ノ二 農地調整法第四條、第六條又ハ第十九條ノ自作農創設維持ノ事業ニ依ル個人ノ土地所有權ノ取得ノ登記
同法同條第九號ヲ左ノ如ク改ム
九 農地調整法第三條若ハ第四條ノ團體又ハ第六條若ハ第十九條ノ事業ヲ行フ者ニ對シ同法第三條、第四條、第六條又ハ第十九條ノ事業ニ要スル資金ノ貸付ヲ爲ス者カ其ノ貸付ノ爲ニスル抵當權ノ取得ノ登記
九ノ二 農地調整法第三條又ハ第四條ノ團體カ同法第三條又ハ第四條ノ事業ノ爲ニスル土地ノ權利ノ取得ノ登記
九ノ三 農地調整法第四條、第六條又ハ第十九條ノ事業ヲ行フ者カ自作農創設維持ノ爲ニスル抵當權ノ取得ノ登記
九ノ四 農地調整法第七條又ハ第十九條ノ規定ニ依ル登記
同法同條第十二號ヲ左ノ如ク改ム
十二 農地調整法第四條、第六條又ハ第十九條ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル土地ノ所有者カ其ノ創設又ハ維持ノ條件ヲ具備セサルニ至リタル場合ニ於ケル事業者ノ土地所有權ノ取得ノ登記
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル農地調整法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年四月一日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
司法大臣 塩野季彦
大蔵大臣 賀屋興宣
農林大臣 伯爵 有馬頼寧
内務大臣 末次信正
法律第六十七号
農地調整法
第一条 本法ハ互譲相助ノ精神ニ則リ農地ノ所有者及耕作者ノ地位ノ安定及農業生産力ノ維持増進ヲ図リ以テ農村ノ経済更生及農村平和ノ保持ヲ期スル為農地関係ノ調整ヲ為スヲ以テ目的トス
第二条 本法ニ於テ農地トハ耕作ヲ目的トスル土地ヲ謂フ
第三条 農地ノ所有者又ハ耕作者ハ兵役其ノ他命令ヲ以テ定ムル事由ニ因リテ農地ヲ自ラ耕作シ又ハ管理スルコト能ハザルトキハ市町村其ノ他命令ヲ以テ定ムル団体ニ農地ノ管理又ハ買取ノ申出ヲ為スコトヲ得
前項ノ申出アリタル場合ニ於テハ同項ノ団体ハ命令ノ定ムル所ニ依リ農地ノ管理又ハ買取ヲ為スコトヲ得
第四条 道府県、市町村其ノ他命令ヲ以テ定ムル団体ガ農村ノ経済更生ノ為命令ノ定ムル所ニ依リ自作農創設維持ニ要スル土地ヲ取得シ又ハ使用スルノ必要アルトキハ行政官庁ノ認可ヲ受ケ土地ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者ニ対シ土地ノ譲渡又ハ使用収益ノ権利ノ設定若ハ譲渡ニ関スル協議ヲ求ムルコトヲ得
前項ノ団体ガ未墾地ヲ開発シテ同項ノ事業ヲ行ハントスル場合ニ於テ同項ノ規定ニ依ル協議調ハザルトキハ開発セントスル未墾地其ノ他其ノ開発ニ必要ナル土地又ハ其ノ使用収益ノ権利ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル収用又ハ使用ニ関シテハ土地収用法ヲ適用ス
第五条 行政官庁農村ノ経済更生ノ為必要アリト認ムルトキハ農地ノ所有者ヲシテ農地処分ニ当リ命令ノ定ムル所ニ依リ予メ市町村農地委員会ニ其ノ旨ヲ通知セシムルコトヲ得
第六条 命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル自作地ノ所有者ハ命令ノ定ムル場合ヲ除クノ外行政官庁ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ自作地ノ譲渡若ハ貸付ヲ為シ又ハ之ニ付物権ヲ設定スルコトヲ得ズ
第七条 前条ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル自作地ニ付テハ其ノ旨ノ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ登記ヲ為スニ非ザレバ前条ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル自作地タルコトヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第一項ノ規定ニ依ル登記ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 農地ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキモ農地ノ引渡アリタルトキハ爾後其ノ農地ニ付物権ヲ取得シタル者ニ対シ其ノ効力ヲ生ズ
民法第五百六十六条第一項及第三項ノ規定ハ登記セザル賃貸借ノ目的タル農地ガ売買ノ目的物ナル場合ニ之ヲ準用ス
民法第五百三十三条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九条 農地ノ賃貸人ハ賃借人ガ宥恕スベキ事情ナキニ拘ラズ小作料ヲ滞納スル等信義ニ反シタル行為ナキ限リ賃貸借ノ解約ヲ為シ又ハ更新ヲ拒ムコトヲ得ズ但シ土地使用ノ目的ノ変更又ハ賃貸人ノ自作ヲ相当トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
当事者ガ農地ノ賃貸借ノ期間ヲ定メタルトキハ当事者ガ期間満了前六月乃至一年内ニ相手方ニ対シ更新拒絶ノ通知又ハ条件ヲ変更スルニ非ザレバ更新セザル旨ノ通知ヲ為サザルトキハ従前ノ賃貸借ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ賃貸借ヲ為シタルモノト看做ス但シ賃貸人ノ疾病ニ因リテ自ラ耕作スルコト能ハザル為其ノ他特別ノ事由ニ因リテ一時賃貸借ヲ為シタルコト明ナル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
農地ノ賃貸借ノ当事者賃貸借ノ解約ヲ為シ又ハ更新ヲ拒マントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ予メ其ノ旨ヲ市町村農地委員会ニ通知スベシ
第二項並ニ民法第六百十七条及第六百十八条ノ規定ニ異ル小作条件ニシテ賃借人ニ不利ナルモノハ之ヲ定メザルモノト看做ス
第十条 小作関係ノ争議ニ付公益上必要アリト認ムルトキハ小作官ハ小作調停法ニ依ル調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
小作関係ノ争議ニ付訴訟ガ繋属スルトキハ受訴裁判所ハ職権ヲ以テ小作官ノ意見ヲ聴キ事件ヲ小作調停法ニ依ル調停ニ付スルコトヲ得
第十一条 小作調停法ニ依ル調停ノ為必要アリト認ムルトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ小作官ノ意見ヲ聴キ調停前ノ措置トシテ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル裁判ハ調停事件ノ繋属スル裁判所ニ於テ非訟事件手続法ニ依リ之ヲ為ス
第一項ノ規定ニ依ル裁判ニ違反シタル者ハ調停事件ノ繋属スル裁判所ニ於テ五百円以下ノ過料ニ処スルコトヲ得
非訟事件手続法第二百七条及第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第十二条 小作調停法ニ依ル調停委員会ニ於テ調停成ラザル場合ニ裁判所相当ト認ムルトキハ職権ヲ以テ小作官及調停委員ノ意見ヲ聴キ当事者双方ノ利益ヲ衡平ニ考慮シ一切ノ事情ヲ斟酌シテ調停ニ代ヘ小作関係ノ存続、小作条件ノ変更其ノ他争議ノ解決上必要ナル裁判ヲ為スコトヲ得此ノ裁判ニ於テハ小作料ノ支払、小作地ノ引渡其ノ他財産上ノ給付ヲ命ズルコトヲ得
前条第二項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル裁判ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ニ依ル裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間トス
前項ノ即時抗告ハ執行停止ノ効力ヲ有ス
第一項ノ規定ニ依ル裁判確定シタルトキハ裁判上ノ和解ト同一ノ効力ヲ有ス
第十三条 小作関係ノ争議ヲ除クノ外相隣関係其ノ他農地ノ利用関係ニ付争議ヲ生ジタルトキハ当事者ハ裁判所ニ調停ノ申立ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ小作調停法及第十条乃至前条ノ規定ヲ準用ス
第十四条 裁判所第十二条又ハ前条ノ規定ニ依リ小作関係ノ存続、小作条件ノ変更其ノ他争議ノ解決上必要ナル裁判ヲ為サントスル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ市町村農地委員会又ハ道府県農地委員会ノ意見ヲ聴クコトヲ得
第十五条 自作農創設維持、小作関係ノ調整、農地ノ交換分合其ノ他農地ニ関スル事項ヲ処理スル為市町村ニ市町村農地委員会ヲ、道府県ニ道府県農地委員会ヲ置クコトヲ得
市町村農地委員会及道府県農地委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 左ニ掲グル不動産ノ取得ニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ
一 第三条又ハ第四条ノ団体ガ第三条又ハ第四条ノ事業ノ為ニスル土地ノ取得
二 第四条又ハ第六条ノ自作農創設維持ノ事業ニ依ル個人ノ土地ノ取得
三 第四条又ハ第六条ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル土地ノ所有者ガ其ノ創設又ハ維持ノ条件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル事業者ノ土地ノ取得
第十七条 本法ニ於テ町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズルモノトス
附 則
第十八条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九条 命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ依リ本法施行前ニ創設又ハ維持セラレタル自作地ニ付テハ其ノ旨ノ登記ヲ為スコトヲ得
第六条、第七条第二項及第三項並ニ第十六条第二号及第三号ノ規定ハ前項ノ自作地ニ関シ之ヲ準用ス
第二十条 第八条及第九条ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ存スル農地ノ賃貸借ニモ亦之ヲ適用ス但シ本法施行ノ際現ニ存スル農地ノ賃貸借ニシテ本法施行後一年内ニ其ノ期間満了スベキモノニ付当事者ガ其ノ期間満了前一年内ニ相手方ニ対シテ為シタル更新拒絶ノ通知又ハ条件ヲ変更スルニ非ザレバ更新セザル旨ノ通知ハ第九条第二項ノ期間内ニ為サザルモノト雖モ之ヲ同条同項ノ期間内ニ為シタルモノト看做ス
第二十一条 第十条第二項及第十一条乃至第十四条ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ繋属スル小作関係其ノ他農地ノ利用関係ニ関スル訴訟事件又ハ調停事件ニモ亦之ヲ適用ス
第二十二条 
登録税法第十九条但書中「第八号、第九号」ヲ「第八号乃至第九号ノ四」ニ改ム
同法同条第八号中「自作農ノ創設維持又ハ」及「北海道府県市町村、産業組合、産業組合連合会、」ヲ削リ同号ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
八ノ二 農地調整法第四条、第六条又ハ第十九条ノ自作農創設維持ノ事業ニ依ル個人ノ土地所有権ノ取得ノ登記
同法同条第九号ヲ左ノ如ク改ム
九 農地調整法第三条若ハ第四条ノ団体又ハ第六条若ハ第十九条ノ事業ヲ行フ者ニ対シ同法第三条、第四条、第六条又ハ第十九条ノ事業ニ要スル資金ノ貸付ヲ為ス者カ其ノ貸付ノ為ニスル抵当権ノ取得ノ登記
九ノ二 農地調整法第三条又ハ第四条ノ団体カ同法第三条又ハ第四条ノ事業ノ為ニスル土地ノ権利ノ取得ノ登記
九ノ三 農地調整法第四条、第六条又ハ第十九条ノ事業ヲ行フ者カ自作農創設維持ノ為ニスル抵当権ノ取得ノ登記
九ノ四 農地調整法第七条又ハ第十九条ノ規定ニ依ル登記
同法同条第十二号ヲ左ノ如ク改ム
十二 農地調整法第四条、第六条又ハ第十九条ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ創設又ハ維持セラレタル土地ノ所有者カ其ノ創設又ハ維持ノ条件ヲ具備セサルニ至リタル場合ニ於ケル事業者ノ土地所有権ノ取得ノ登記