朕は、帝國議會の協贊を經た特別都市計畫法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月十日
内閣總理大臣 吉田茂
法律第十九號
特別都市計畫法
第一條 この法律は、特別都市計畫に關し、都市計畫法の特例を定めるものである。
この法律で特別都市計畫とは、戰爭で災害を受けた市(東京都の區の存する區域を含む。第十八條を除き第二條以下これに同じ。)町村の區域により行ふ都市計畫をいふ。
前項の市町村は、主務大臣が、これを指定する。
特別都市計畫事業は、行政官廳は、これを執行しない。
第二條 この法律で宅地とは、勅令により公共の用に供するものと定める土地以外の土地をいふ。
この法律で借地權とは、借地法にいふ借地權をいひ、借地とは、借地權の存する宅地をいふ。
第三條 主務大臣は、特別都市計畫上必要と認めるときは、第一條第三項の市町村の區域内において又はその區域外にわたり、特別都市計畫の施設として緑地地域を指定することができる。
第一條第三項の市町村の區域外にわたり緑地地域を指定しようとするときは、區域外關係市町村の意見を徴しなければならない。
第一項の規定により指定する地域内における建築物又は土地に關する工事若しくは權利に關する制限で特別都市計畫上必要なものは、勅令で、これを定める。
第四條 行政廳が執行する特別都市計畫事業に必要な費用を、都市計畫法第六條の規定により、公共團體が負擔する場合には、國庫は、勅令の定めるところにより、その費用の全部又は一部を補助する。
第五條 行政廳が、特別都市計畫事業として施行する土地區劃整理については、耕地整理法(都市計畫法第十二條第二項で準用する同法をいふ。以下これに同じ。)第四十三條第一項の規定にかかはらず、同項に掲げる土地(名勝地、舊蹟地及び古墳墓地を除く。)は、同項但書に定める認許又は同意を得ないでも、これを土地區劃整理施行地區に編入することができる。
前項の土地區劃整理については、耕地整理法第三十一條の規定にかかはらず、整理施行地の全部について工事が完了する前においても、換地處分をなすことができる。
第六條 前條第一項の土地區劃整理の施行地區に編入された土地について、所有者(その土地に地上權、賃借權又は永小作權がある場合は、これらの權利の權利者を含む。)の同意があつた場合には、勅令の定めるところにより、換地を交付しないで金錢で清算することができる。
前項の規定により換地を交付しないで金錢で清算する場合において、同項に掲げる權利者があるときは、その權利についても金錢で清算する。
第七條 第五條第一項の土地區劃整理について、宅地地積の規模を適正ならしめるために必要があるときは、土地區劃整理委員會の意見を聞いて、過小宅地に對し、地積を増して換地を交付し、又は換地を交付しないで金錢で清算することができる。
前項の規定により、過小宅地に對し、地積を増して換地を交付するために必要があるときは、大なる地積の宅地に對し地積を減じて換地を交付することができる。
前二項の規定により、地積を増し又は減じて換地を交付する場合に、その換地について存する地上權、賃借權又は永小作權に對し、又、第一項の規定により換地を交付しないで金錢で清算する場合に、從前の土地について存するこれらの權利に對しては、各〻これらの權利の全部又は一部について、金錢で清算することができる。
第八條 第五條第一項の土地區劃整理について、借地地積の規模を適正ならしめるために必要があるときは、土地區劃整理委員會の意見を聞いて、過小借地の借地權に對し、その地積を増して權利の目的たる土地若しくはその部分を指定し、又は從前の權利を消滅せしめて金錢で清算することができる。
前項の規定により、過小借地の借地權に對し、その地積を増して權利の目的たる土地又はその部分を指定するために必要があるときは、所有者を同じくする土地について存する他の地上權、賃借權、永小作權又は地役權について、その地積を減じてこれらの權利の目的たる土地若しくはその部分を指定し、又はこれらの權利を消滅せしめて金錢で清算することができる。
前二項の規定により、地積を増し又は減じて權利の目的たる土地又はその部分を指定する場合に、その増減のあつた部分については、金錢で清算する。
第九條 第七條の過小宅地及び大なる地積の宅地竝びに前條の過小借地の意義その他前二條の場合に關して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第十條 第五條第一項の土地區劃整理を施行する場合において、換地に關する事項及び第十六條の規定による補償金の配當割合に關する事項は、土地區劃整理委員會の意見を聞いて、これを定める。
第十一條 土地區劃整理委員會は、土地區劃整理施行地區毎にこれを置き、行政廳がこれを監督する。
土地區劃整理委員會は、會長及び委員若干人を以てこれを組織する。
會長は、委員の中からこれを互選する。委員は、土地區劃整理施行地區内の土地の所有者及び借地權者が、各別にこれを選擧する。
土地所有者及び借地權者は、勅令の定めるものを除いて、その土地區劃整理施行地區にある土地區劃整理委員會の委員の選擧權及び被選擧權を有する。
第十二條 この法律に定めるものを除いて、土地區劃整理委員會に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三條 第五條第一項の土地區劃整理のために必要があるときは、換地豫定地を指定することができる。
前項の規定により換地豫定地を指定したときは、換地豫定地及び從前の土地の所有者にその旨を通知し、且つこれらの土地の全部又は一部について地上權、賃借權、永小作權又は質權を有する者その他命令で定める者(以下關係者といふ。)があるときは、これらの關係者にもその旨を通知する。
第十四條 從前の土地の所有者及び關係者は、前條第二項の通知を受けた日の翌日から、第七條第一項若しくは第二項又は耕地整理法第三十條第一項の規定による換地處分が效力を生ずるまで、換地豫定地の全部又は一部について、從前の土地に存する權利の内容たる使用收益と同じ使用收益をなすことができるが、從前の土地についてはその使用收益をなすことができない。
從前の土地の關係者が、前項の規定により使用收益をなすことのできる換地豫定地の範圍は、前條第二項の規定による通知と併せて、これらの關係者にこれを通知する。
第一項の場合に、換地豫定地に建築物その他の工作物が存するときその他特別の事情があるときは、換地豫定地について、別に使用開始の日を定めることができる。この場合には、從前の土地又は換地豫定地の所有者及び關係者にその旨を通知する。
換地豫定地の所有者及び關係者は、前條第二項の規定による通知を受けた日の翌日若しくは前項の規定による使用開始の日から、第七條第一項若しくは第二項又は耕地整理法第三十條第一項の規定による換地處分が效力を生ずるまで、換地豫定地の使用收益をなすことができない。
この場合において、その換地豫定地の所有者及び關係者がその使用收益をなすことができないために損害を受けたときは、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第三項の規定により換地豫定地について別に使用開始の日を定めたために、從前の土地の所有者及び關係者が、損害を受けたときは、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第十五條 第五條第一項の土地區劃整理のために必要があるときは、土地區劃整理施行地區内に存する建築物その他の工作物について、三箇月を下らない期限を定めて、所有者に對してはこれらの工作物の移轉を命じ、占有者に對しては立退を命ずることができる。
前項の規定により工作物の移轉を命ずる場合には、第十三條第一項の規定により、換地豫定地を指定しなければならない。
第一項の工作物の移轉又は立退に因り損害を受けたときは、勅令に特別の定のある場合を除いて、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第十六條 第五條第一項の土地區劃整理の施行により、土地區劃整理施行地區内における施行後の宅地の總地積が、施行前の宅地の總地積に比し、一割五分以上減少するに至つたときは、その一割五分を超える部分について、土地所有者及び關係者に對して、勅令の定めるところにより、補償金を交付する。
前項の土地區劃整理で主務大臣の指定するものについては、その土地區劃整理施行地區を數區に分ち、各區について、前項の規定を適用する。
第十七條 第十四條第四項及び第五項、第十五條第三項竝びに前條の規定による補償金は、補償審査會が、これを決定する。
前項の規定により、補償金額の決定があつたときは、地方長官は、その金額を補償金の交付を受ける者に通知する。
第十八條 補償審査會は、都道府縣又は主務大臣の指定する市毎にこれを置き、地方長官が、これを監督する。
補償審査會は、當該都道府縣の區域内(その區域内に主務大臣の指定する市があるときは、その市の區域を除く。)又は當該市の區域内にある土地について、前條に掲げる權限を行ふ。
補償審査會は、會長及び委員若干人を以てこれを組織する。
會長は、地方長官(第一項の規定により主務大臣の指定する市においては市長、以下これに同じ。)を以てこれに充てる。
委員は、關係各廳の一級又は二級の官吏、都議會、道府縣會又は市會の議員及び學識經驗ある者の中から、地方長官が、これを命じ又は委囑する。
補償審査會に臨時委員を置き、地方長官が、關係市區町村長及び關係市町村會議員の中から、これを委囑することができる。
臨時委員は、關係市區町村に關しない事項については、議事に參與することができない。
補償審査會に關する費用は、公共團體の負擔とする。
第十九條 この法律に定めるものを除いて、補償審査會に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十條 清算金を納付する義務ある者に對し、土地區劃整理施行地區内の土地に關する權利について、第六條、第七條第一項若しくは第三項、第八條又は耕地整理法第三十條第一項但書の規定による清算金又は第十六條の補償金を交付する場合には、その交付する清算金又は補償金は、その者から徴收する清算金にこれを充てることができる。但し、その補償金が耕地整理法第二十五條の規定により供託する必要のあるものであるときは、その補償金を交付すべき土地に關する權利について徴收する清算金にのみ、これを充てることができる。
第二十一條 第五條第一項の土地區劃整理について徴收する清算金については、勅令の定めるところにより、利子を附してその分納を認めることができる。
前項の利子は、これを清算金とみなす。
第二十二條 第五條第一項の土地區劃整理について、清算金に剩餘を生じたときは、その剩餘金は公共團體に歸屬する。
第二十三條 第五條第一項の土地區劃整理において、土地に關する權利について、清算金を徴收又は交付さるべき場合に、その土地に關する權利を讓渡したときは、當事者雙方は、連署して、遲滯なく、土地區劃整理施行者に、その旨を屆出なければならない。
前項の屆出をしない場合には、清算金の徴收又は交付に關し、その讓渡は、これを以て土地區劃整理施行者に對抗することができない。
土地に關する權利について清算金を徴收又は交付さるべき場合に、その土地に關する權利の分割讓渡について第一項の屆出があつたときは、土地區劃整理施行者は、遲滯なく、各當事者に對しその者から徴收すべき清算金額又はその者に交付すべき清算金額を通知しなければならない。
第二十四條 第五條第一項の土地區劃整理において、土地に關する權利について、清算金を徴收又は交付さるべき場合に、その土地に關する權利が消滅したときは、前條の規定を準用する。
第二十五條 第十四條第四項若しくは第五項、第十五條第三項又は第十六條の規定により補償を受くべき者が、補償金額の決定について不服があるときは、その決定の通知を受けた日から三箇月以内に、通常裁判所に出訴することができる。この場合においては、訴願し又は行政裁判所に出訴することができない。
第二十六條 都市計畫法第二十三條乃至第二十六條の規定は、この法律又はこの法律に基いて發する命令によりなす處分について、これを準用する。
第二十七條 耕地整理法第二十五條の規定は、第六條、第七條第一項及び第三項、第八條、第十四條第四項及び第五項、第十五條第三項竝びに第十六條の規定により拂ひ渡すべき金錢について、これを準用する。
第二十八條 第五條第一項の土地區劃整理について、耕地整理法を準用し難い事項に關しては、勅令で必要な規定を設けることができる。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
神宮關係特別都市計畫法は、これを廢止する。
神宮關係特別都市計畫法に基き、この法律施行前に發生した事由に因り交付する補償金、この法律施行前に行政官廳のなした處分に基く損失補償及び費用の負擔竝びに補償に關する訴訟に關しては、同法はこの法律施行の後においても、なほその效力を有する。
この法律施行の際現に公共團體が都市計畫事業として施行してゐる土地區劃整理は、命令の定めるところにより、これを、第五條第一項の土地區劃整理とみなすことができる。
農地調整法第四條ノ四第四號中「都市計畫法」の下に「又ハ特別都市計畫法」を加へる。
朕は、帝国議会の協賛を経た特別都市計画法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第十九号
特別都市計画法
第一条 この法律は、特別都市計画に関し、都市計画法の特例を定めるものである。
この法律で特別都市計画とは、戦争で災害を受けた市(東京都の区の存する区域を含む。第十八条を除き第二条以下これに同じ。)町村の区域により行ふ都市計画をいふ。
前項の市町村は、主務大臣が、これを指定する。
特別都市計画事業は、行政官庁は、これを執行しない。
第二条 この法律で宅地とは、勅令により公共の用に供するものと定める土地以外の土地をいふ。
この法律で借地権とは、借地法にいふ借地権をいひ、借地とは、借地権の存する宅地をいふ。
第三条 主務大臣は、特別都市計画上必要と認めるときは、第一条第三項の市町村の区域内において又はその区域外にわたり、特別都市計画の施設として緑地地域を指定することができる。
第一条第三項の市町村の区域外にわたり緑地地域を指定しようとするときは、区域外関係市町村の意見を徴しなければならない。
第一項の規定により指定する地域内における建築物又は土地に関する工事若しくは権利に関する制限で特別都市計画上必要なものは、勅令で、これを定める。
第四条 行政庁が執行する特別都市計画事業に必要な費用を、都市計画法第六条の規定により、公共団体が負担する場合には、国庫は、勅令の定めるところにより、その費用の全部又は一部を補助する。
第五条 行政庁が、特別都市計画事業として施行する土地区画整理については、耕地整理法(都市計画法第十二条第二項で準用する同法をいふ。以下これに同じ。)第四十三条第一項の規定にかかはらず、同項に掲げる土地(名勝地、旧蹟地及び古墳墓地を除く。)は、同項但書に定める認許又は同意を得ないでも、これを土地区画整理施行地区に編入することができる。
前項の土地区画整理については、耕地整理法第三十一条の規定にかかはらず、整理施行地の全部について工事が完了する前においても、換地処分をなすことができる。
第六条 前条第一項の土地区画整理の施行地区に編入された土地について、所有者(その土地に地上権、賃借権又は永小作権がある場合は、これらの権利の権利者を含む。)の同意があつた場合には、勅令の定めるところにより、換地を交付しないで金銭で清算することができる。
前項の規定により換地を交付しないで金銭で清算する場合において、同項に掲げる権利者があるときは、その権利についても金銭で清算する。
第七条 第五条第一項の土地区画整理について、宅地地積の規模を適正ならしめるために必要があるときは、土地区画整理委員会の意見を聞いて、過小宅地に対し、地積を増して換地を交付し、又は換地を交付しないで金銭で清算することができる。
前項の規定により、過小宅地に対し、地積を増して換地を交付するために必要があるときは、大なる地積の宅地に対し地積を減じて換地を交付することができる。
前二項の規定により、地積を増し又は減じて換地を交付する場合に、その換地について存する地上権、賃借権又は永小作権に対し、又、第一項の規定により換地を交付しないで金銭で清算する場合に、従前の土地について存するこれらの権利に対しては、各々これらの権利の全部又は一部について、金銭で清算することができる。
第八条 第五条第一項の土地区画整理について、借地地積の規模を適正ならしめるために必要があるときは、土地区画整理委員会の意見を聞いて、過小借地の借地権に対し、その地積を増して権利の目的たる土地若しくはその部分を指定し、又は従前の権利を消滅せしめて金銭で清算することができる。
前項の規定により、過小借地の借地権に対し、その地積を増して権利の目的たる土地又はその部分を指定するために必要があるときは、所有者を同じくする土地について存する他の地上権、賃借権、永小作権又は地役権について、その地積を減じてこれらの権利の目的たる土地若しくはその部分を指定し、又はこれらの権利を消滅せしめて金銭で清算することができる。
前二項の規定により、地積を増し又は減じて権利の目的たる土地又はその部分を指定する場合に、その増減のあつた部分については、金銭で清算する。
第九条 第七条の過小宅地及び大なる地積の宅地並びに前条の過小借地の意義その他前二条の場合に関して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第十条 第五条第一項の土地区画整理を施行する場合において、換地に関する事項及び第十六条の規定による補償金の配当割合に関する事項は、土地区画整理委員会の意見を聞いて、これを定める。
第十一条 土地区画整理委員会は、土地区画整理施行地区毎にこれを置き、行政庁がこれを監督する。
土地区画整理委員会は、会長及び委員若干人を以てこれを組織する。
会長は、委員の中からこれを互選する。委員は、土地区画整理施行地区内の土地の所有者及び借地権者が、各別にこれを選挙する。
土地所有者及び借地権者は、勅令の定めるものを除いて、その土地区画整理施行地区にある土地区画整理委員会の委員の選挙権及び被選挙権を有する。
第十二条 この法律に定めるものを除いて、土地区画整理委員会に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三条 第五条第一項の土地区画整理のために必要があるときは、換地予定地を指定することができる。
前項の規定により換地予定地を指定したときは、換地予定地及び従前の土地の所有者にその旨を通知し、且つこれらの土地の全部又は一部について地上権、賃借権、永小作権又は質権を有する者その他命令で定める者(以下関係者といふ。)があるときは、これらの関係者にもその旨を通知する。
第十四条 従前の土地の所有者及び関係者は、前条第二項の通知を受けた日の翌日から、第七条第一項若しくは第二項又は耕地整理法第三十条第一項の規定による換地処分が効力を生ずるまで、換地予定地の全部又は一部について、従前の土地に存する権利の内容たる使用収益と同じ使用収益をなすことができるが、従前の土地についてはその使用収益をなすことができない。
従前の土地の関係者が、前項の規定により使用収益をなすことのできる換地予定地の範囲は、前条第二項の規定による通知と併せて、これらの関係者にこれを通知する。
第一項の場合に、換地予定地に建築物その他の工作物が存するときその他特別の事情があるときは、換地予定地について、別に使用開始の日を定めることができる。この場合には、従前の土地又は換地予定地の所有者及び関係者にその旨を通知する。
換地予定地の所有者及び関係者は、前条第二項の規定による通知を受けた日の翌日若しくは前項の規定による使用開始の日から、第七条第一項若しくは第二項又は耕地整理法第三十条第一項の規定による換地処分が効力を生ずるまで、換地予定地の使用収益をなすことができない。
この場合において、その換地予定地の所有者及び関係者がその使用収益をなすことができないために損害を受けたときは、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第三項の規定により換地予定地について別に使用開始の日を定めたために、従前の土地の所有者及び関係者が、損害を受けたときは、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第十五条 第五条第一項の土地区画整理のために必要があるときは、土地区画整理施行地区内に存する建築物その他の工作物について、三箇月を下らない期限を定めて、所有者に対してはこれらの工作物の移転を命じ、占有者に対しては立退を命ずることができる。
前項の規定により工作物の移転を命ずる場合には、第十三条第一項の規定により、換地予定地を指定しなければならない。
第一項の工作物の移転又は立退に因り損害を受けたときは、勅令に特別の定のある場合を除いて、通常生ずる損害に限り、これを補償する。
第十六条 第五条第一項の土地区画整理の施行により、土地区画整理施行地区内における施行後の宅地の総地積が、施行前の宅地の総地積に比し、一割五分以上減少するに至つたときは、その一割五分を超える部分について、土地所有者及び関係者に対して、勅令の定めるところにより、補償金を交付する。
前項の土地区画整理で主務大臣の指定するものについては、その土地区画整理施行地区を数区に分ち、各区について、前項の規定を適用する。
第十七条 第十四条第四項及び第五項、第十五条第三項並びに前条の規定による補償金は、補償審査会が、これを決定する。
前項の規定により、補償金額の決定があつたときは、地方長官は、その金額を補償金の交付を受ける者に通知する。
第十八条 補償審査会は、都道府県又は主務大臣の指定する市毎にこれを置き、地方長官が、これを監督する。
補償審査会は、当該都道府県の区域内(その区域内に主務大臣の指定する市があるときは、その市の区域を除く。)又は当該市の区域内にある土地について、前条に掲げる権限を行ふ。
補償審査会は、会長及び委員若干人を以てこれを組織する。
会長は、地方長官(第一項の規定により主務大臣の指定する市においては市長、以下これに同じ。)を以てこれに充てる。
委員は、関係各庁の一級又は二級の官吏、都議会、道府県会又は市会の議員及び学識経験ある者の中から、地方長官が、これを命じ又は委嘱する。
補償審査会に臨時委員を置き、地方長官が、関係市区町村長及び関係市町村会議員の中から、これを委嘱することができる。
臨時委員は、関係市区町村に関しない事項については、議事に参与することができない。
補償審査会に関する費用は、公共団体の負担とする。
第十九条 この法律に定めるものを除いて、補償審査会に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十条 清算金を納付する義務ある者に対し、土地区画整理施行地区内の土地に関する権利について、第六条、第七条第一項若しくは第三項、第八条又は耕地整理法第三十条第一項但書の規定による清算金又は第十六条の補償金を交付する場合には、その交付する清算金又は補償金は、その者から徴収する清算金にこれを充てることができる。但し、その補償金が耕地整理法第二十五条の規定により供託する必要のあるものであるときは、その補償金を交付すべき土地に関する権利について徴収する清算金にのみ、これを充てることができる。
第二十一条 第五条第一項の土地区画整理について徴収する清算金については、勅令の定めるところにより、利子を附してその分納を認めることができる。
前項の利子は、これを清算金とみなす。
第二十二条 第五条第一項の土地区画整理について、清算金に剰余を生じたときは、その剰余金は公共団体に帰属する。
第二十三条 第五条第一項の土地区画整理において、土地に関する権利について、清算金を徴収又は交付さるべき場合に、その土地に関する権利を譲渡したときは、当事者双方は、連署して、遅滞なく、土地区画整理施行者に、その旨を届出なければならない。
前項の届出をしない場合には、清算金の徴収又は交付に関し、その譲渡は、これを以て土地区画整理施行者に対抗することができない。
土地に関する権利について清算金を徴収又は交付さるべき場合に、その土地に関する権利の分割譲渡について第一項の届出があつたときは、土地区画整理施行者は、遅滞なく、各当事者に対しその者から徴収すべき清算金額又はその者に交付すべき清算金額を通知しなければならない。
第二十四条 第五条第一項の土地区画整理において、土地に関する権利について、清算金を徴収又は交付さるべき場合に、その土地に関する権利が消滅したときは、前条の規定を準用する。
第二十五条 第十四条第四項若しくは第五項、第十五条第三項又は第十六条の規定により補償を受くべき者が、補償金額の決定について不服があるときは、その決定の通知を受けた日から三箇月以内に、通常裁判所に出訴することができる。この場合においては、訴願し又は行政裁判所に出訴することができない。
第二十六条 都市計画法第二十三条乃至第二十六条の規定は、この法律又はこの法律に基いて発する命令によりなす処分について、これを準用する。
第二十七条 耕地整理法第二十五条の規定は、第六条、第七条第一項及び第三項、第八条、第十四条第四項及び第五項、第十五条第三項並びに第十六条の規定により払ひ渡すべき金銭について、これを準用する。
第二十八条 第五条第一項の土地区画整理について、耕地整理法を準用し難い事項に関しては、勅令で必要な規定を設けることができる。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
神宮関係特別都市計画法は、これを廃止する。
神宮関係特別都市計画法に基き、この法律施行前に発生した事由に因り交付する補償金、この法律施行前に行政官庁のなした処分に基く損失補償及び費用の負担並びに補償に関する訴訟に関しては、同法はこの法律施行の後においても、なほその効力を有する。
この法律施行の際現に公共団体が都市計画事業として施行してゐる土地区画整理は、命令の定めるところにより、これを、第五条第一項の土地区画整理とみなすことができる。
農地調整法第四条ノ四第四号中「都市計画法」の下に「又ハ特別都市計画法」を加へる。