(農地調整法中改正法律)
法令番号: 法律第六十四號
公布年月日: 昭和20年12月29日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル農地調整法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十年十二月二十八日
內閣總理大臣 男爵 幣原喜重郞
司法大臣 岩田宙造
農林大臣 松村謙三
法律第六十四號
農地調整法中左ノ通改正ス
第二條 本法ニ於テ農地トハ耕作ノ目的ニ供セラルル土地ヲ謂フ
本法ニ於テ小作料トハ耕作ノ目的ヲ以テ農地ガ賃借セラルル場合ニ於ケル借賃(農地以外ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ガ農地ニ附隨シテ賃借セラレ其ノ借賃ガ農地ノ借賃ト契約上分別シ得ザル場合ニ在リテハ農地以外ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ノ借賃ヲ含ム)又ハ耕作ノ目的ヲ以テ永小作權ガ設定セラルル場合ニ於ケル小作料ヲ謂フ
第三條第一項中「兵役」ヲ「疾病」ニ、「市町村」ヲ「市町村、市町村農業會」ニ改ム
第四條 都道府縣、市町村、市町村農業會其ノ他命令ヲ以テ定ムル團體ガ命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ要スル土地ヲ取得スルノ必要アルトキ又ハ當該土地ノ開發ニ必要ナル他ノ土地ノ使用收益ノ權利ヲ取得スルノ必要アルトキハ地方長官ノ認可ヲ受ケ土地ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者ニ對シ土地ノ讓渡又ハ使用收益ノ權利ノ設定若ハ讓渡ニ關スル協議ヲ求ムルコトヲ得
地方長官前項ノ認可ヲ爲サントスルトキハ當該土地ノ所在スル市町村ニ設置セラレタル市町村農地委員會ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
第一項ノ場合ニ於テ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ同項ノ團體ハ當該土地ノ讓渡又ハ使用收益ノ權利ノ設定若ハ讓渡ニ關シ命令ノ定ムル所ニ依リ都道府縣農地委員會ノ裁定ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ團體前項ノ申請ヲ爲シタルトキハ同時ニ當該申請ニ係ル土地ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者ニ通知スベシ
第四條ノ二 前條第三項ノ規定ニ依ル裁定ノ申請アリタルトキハ都道府縣農地委員會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ公示スベシ
前條第三項ノ規定ニ依ル裁定ノ申請ニ係ル土地ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者ハ前項ノ公示ノ日ヨリ二週間內ニ都道府縣農地委員會ニ意見書ヲ差出スコトヲ得
前條第三項ノ規定ニ依ル裁定ノ申請ニ係ル土地ノ上ニ建物其ノ他ノ工作物(以下工作物ト稱ス)ヲ所有スル者ハ前項ノ意見書ニ於テ都道府縣農地委員會ニ對シ當該土地ノ讓渡又ハ使用收益ノ權利ノ設定若ハ讓渡ヲ爲スベキ旨ノ裁定アル場合ニ於テハ當該工作物ニ付テモ讓渡ヲ爲スベキ旨ノ裁定又ハ當該工作物ノ移轉料ニ關スル裁定アルベキ旨ノ申請ヲ爲スコトヲ得但シ當該工作物ガ前條第四項ノ通知アリタル後ニ設置セラレタルモノナルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四條ノ三 都道府縣農地委員會ハ前條第二項ノ期間ヲ經過シタル後審議ヲ開始スベシ
都道府縣農地委員會ハ前項ノ審議ヲ開始シタル日ヨリ二週間內ニ裁定ヲ爲スベシ
都道府縣農地委員會ガ前項ノ期間內ニ裁定ヲ爲サザルトキハ地方長官ハ之ニ代リテ裁定ヲ爲スコトヲ得
第四條第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
裁定ハ其ノ申請ノ範圍ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ第六項ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
土地ノ讓渡ヲ爲スベキ旨ノ裁定ヲ爲サントスル場合ニ於テ當該土地ノ上ニ存スル工作物ニ付前條第三項ノ規定ニ依ル申請アリタルトキハ當該工作物ニ付テモ讓渡ヲ爲スベキ旨ノ裁定又ハ當該工作物ノ移轉料ニ關スル裁定ヲ爲スコトヲ要ス
土地ノ讓渡又ハ使用收益ノ權利ノ設定若ハ讓渡ヲ爲スベキ旨ノ裁定ニ於テハ左ニ揭グル事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 讓渡ヲ爲スベキ土地ノ區域又ハ設定若ハ讓渡ヲ爲スベキ使用收益ノ權利ノ種類及當該權利ノ目的タル土地ノ區域竝ニ讓渡ヲ爲スベキ工作物
二 對價(工作物ノ移轉料ヲ含ム以下同ジ)竝ニ其ノ支拂ノ方法及時期
三 土地又ハ工作物ノ引渡ノ時期及土地ノ使用收益ノ權利ノ存續期間
裁定ハ其ノ理由ヲ附シ文書ヲ以テ之ヲ爲スベシ
都道府縣農地委員會ガ裁定ヲ爲シタルトキハ其ノ裁定書ノ謄本ヲ添ヘ地方長官ニ報吿スベシ
第四條ノ四 第四條第一項ノ規定ニ依ル認可又ハ前條第二項若ハ第三項ノ規定ニ依ル土地ノ讓渡ヲ爲スベキ旨ノ裁定ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル農地ニ付テハ之ヲ爲スコトヲ得ズ
一 自作地
二 農地ノ所有者ガ其ノ住所又ハ居所ノ存スル市町村及其ノ隣接市町村ノ區域內ニ於テ勅令ヲ以テ定ムル面積(以下一定ノ面積ト稱ス)ヲ超エザル農地ヲ所有スル場合其ノ所有ニ係ル當該區域內ノ農地
三 農地ノ所有者ガ其ノ住所又ハ居所ノ存スル市町村及其ノ隣接市町村ノ區域內ニ於テ一定ノ面積ヲ超ユル農地ヲ所有スル場合其ノ一定ノ面積ヲ超エザル範圍內ニ於テ保有セントスル當該區域內ノ農地
四 都市計畫法ニ依ル土地區劃整理施行地區內ニ在ル農地ニシテ地方長官ノ指定スル區域內ニ在ルモノ
五 自作地ニ非ザルモ市町村農地委員會ニ於テ近ク其ノ所有者ガ自作ヲ爲スモノト認メ且其ノ自作ヲ相當ト認ムル農地
六 其ノ他命令ヲ以テ定ムル農地
第四條ノ五 地方長官第四條ノ三第九項ノ規定ニ依ル報吿ヲ受ケ又ハ同條第三項ノ規定ニ依ル裁定ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ公示シ且裁定書ノ謄本ヲ申請人及當該裁定ニ係ル土地ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者ニ送付スベシ
土地若ハ工作物ノ讓渡又ハ土地ノ使用收益ノ權利ノ設定若ハ讓渡ヲ爲スベキ旨ノ裁定又ハ工作物ノ移轉料ニ關スル裁定ニ付前項ノ規定ニ依ル公示アリタルトキハ其ノ裁定ニ定ムル所ニ依リ當事者間ニ協議調ヒタルモノト看做ス
第四條ノ六 前條第二項ノ場合ニ於テ土地又ハ建物ノ所有權其ノ他ノ物權ノ取得ニ付對價ノ全部ノ支拂又ハ供託アリタルトキハ其ノ登記ハ登記權利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第四條ノ七 第四條ノ五第二項ノ場合ニ於テ土地又ハ工作物ノ所有權其ノ他ノ權利ノ取得ニ付對價ヲ支拂フベキ者裁定ニ定ムル時期迄ニ對價ノ全部ノ支拂又ハ供託ヲ爲サザルトキハ裁定ハ其ノ效力ヲ失フ
第四條ノ八 第四條ノ三第二項又ハ第三項ノ規定ニ依ル裁定ニ對シテ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得
違法ノ裁定ニ依リ權利ヲ障害セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四項ノ規定ニ依リ通常裁判所ニ出訴ヲ許シタル事項ニ關シテハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得ズ
第四條ノ三第二項又ハ第三項ノ規定ニ依ル裁定中對價ノ決定ニ對シテ不服アル者ハ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ裁定書ノ謄本ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
對價ヲ支拂フベキ者前項ノ出訴ヲ爲ストキハ其ノ對價ヲ供託スルコトヲ得但シ對價ヲ受クベキ者ノ請求アルトキハ自己ノ見積金額ヲ支拂フベシ
第四條ノ九 第四條ノ二、第四條ノ三又ハ第四條ノ五乃至第四條ノ七ノ規定ニ依リ爲シタル手續其ノ他ノ行爲ハ土地ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者ノ承繼人ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第四條ノ十 第四條乃至前條ノ規定ハ第四條第一項ノ團體又ハ市町村農地委員會ガ第三者ノ申出ニ依リ同項ノ自作農創設維持ノ事業トシテ當該第三者ヲシテ土地ノ所有權又ハ使用收益ノ權利ヲ取得セシムル場合ニ付之ヲ準用ス但シ第四條ノ五第二項中當事者トアルハ當該土地又ハ工作物ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者及當該第三者トス
第四條ノ十一 第四條乃至第四條ノ三及第四條ノ五乃至第四條ノ九ノ規定ハ農地開發營團、都道府縣、市町村農業會其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ガ開發(第四條第一項ノ團對ガ同項ノ自作農創設維持ノ事業トシテ行フ開發ヲ除ク)セントスル未墾地其ノ他其ノ開發ニ必要ナル土地ノ讓渡又ハ使用收益ノ權利ノ設定若ハ讓渡ニ付之ヲ準用ス
前項ニ於テ準用スル第四條ノ三第二項又ハ第三項ノ規定ニ依ル地方長官又ハ都道府縣農地委員會ガ未墾地ノ讓渡ノ對價ニ關シ裁定ヲ爲ス場合ニ於テハ當該未墾地ノ對價ハ近傍類似ノ農地ノ價格ヨリ命令ヲ以テ定ムル開墾費ヲ減ジタル額ヲ超エテ之ヲ定ムルコトヲ得ズ
第四條ノ十二 第四條乃至第四條ノ三及第四條ノ五乃至第四條ノ九ノ規定ハ第四條ノ五第二項(前二條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ基キ取得スル土地又ハ之ニ關スル權利ニ付擔保權ガ存スル場合當該擔保權ノ處理ニ付之ヲ準用ス
前項ノ規定ニ依リ擔保權ガ消滅スルトキハ當該土地又ハ之ニ關スル權利ノ對價ヲ支拂フベキ者ハ其ノ對價ヲ供託スルコトヲ要ス但シ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ場合ニ於テハ當該擔保權者ハ供託金ニ對シ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第五條 農地ノ所有權、賃借權、地上權其ノ他ノ權利ノ設定又ハ移轉ハ命令ノ定ムル所ニ依リ當事者ニ於テ地方長官又ハ市町村長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生セズ
第六條 前條ノ規定ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 第三條ノ團體ガ同條ノ事業ヲ行フ爲前條ニ揭グル權利ヲ取得スル場合
二 第四條第一項ノ自作農創設維持ノ事業ヲ行フ爲農地ヲ取得スル場合又ハ命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ依リ農地ヲ取得スル場合
三 農地ヲ耕作ノ目的ニ供スル爲前條ニ揭グル權利ヲ取得スル場合
四 前條ニ揭グル權利ノ取得ニ關シ當事者ノ一方ガ國、都道府縣又ハ農地開發營團ナル場合
五 土地收用法其ノ他ノ法令ニ依リ農地ヲ收用スル場合
六 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
第六條ノ二 農地ノ價格ハ第六條ノ四ニ定ムル場合ヲ除クノ外當該農地ノ地租法ニ依ル賃貸價格ニ主務大臣ノ定ムル率ヲ乘ジテ得タル額ヲ超エテ之ヲ契約シ、支拂ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ但シ農地ノ價格ニ付命令ノ定スル所ニ依リ讓渡人又ハ讓受人ニ於テ地方長官ノ許可ヲ受ケタル場合及命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣前項ノ率ヲ定メタルトキハ之ヲ吿示ス
第一項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル吿示アリタル際現ニ農地ニ付存スル讓渡契約ニシテ當該農地ニ付旣ニ讓受人ノ權利ニ關スル登記アリタルモノ又ハ當該農地ノ引渡ヲ完了シタルモノニ付テハ之ヲ適用セズ
第六條ノ三 地方長官市町村農地委員會ノ申請アリタル場合ニ於テ特ニ必要アリト認ムルトキハ都道府縣農地委員會ノ意見ヲ聽キ當該申請ニ係ル區域ニ付前條第一項ノ率ニ代ルベキ率ヲ定メ又ハ同項ニ規定スル以外ノ基準ニ依リ同項ノ額ニ代ルベキ額ヲ定ムルコトヲ得
地方長官前項ノ規定ニ依リ率又ハ額ヲ定メタルトキハ之ヲ公示ス
前項ノ現定ニ依リ公示アリタルトキハ其ノ率又ハ額ヲ以テ前條ノ率又ハ額ト看做ス
第六條ノ四 地租法ニ依ル賃貸價格ナキ農地ヲ讓渡ス場合ニハ其ノ價格ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ讓渡人又ハ讓受人ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ場合ニ於テ農地ノ價格ハ同項ノ認可アリタル額ヲ超エテ之ヲ契約シ、支拂ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ
第七條 中「前條」ヲ「第四條第一項又ハ第六條」ニ改ム
第七條ノ二 第四條第一項ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ農地ヲ取得シタル者ガ取得ノ時ヨリ二年內ニ當該農地ヲ耕作以外ノ目的ニ供スル爲讓渡シタル場合又ハ當該農地ガ取得ノ時ヨリ二年內ニ收用セラレタル場合ニ於テ當該農地ノ讓渡價格又ハ補償金額ガ當該農地ノ讓渡ニ因リ舊所有者ノ取得シタル金額ヲ超ユルトキハ舊所有者ハ農地ヲ讓渡シ又ハ收用セラレタル者ニ對シ其ノ超過額ヲ請求スルコトヲ得但シ當該農地ノ讓渡又ハ收用アリタル日ヨリ二年ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九條第三項中「豫メ其ノ旨ヲ市町村農地委員會ニ通知スベシ」ヲ「市町村農地委員會ノ承認ヲ受クベシ」ニ改ム
第九條ノ二 小作料ハ金錢以外ノ物ヲ以テ又ハ金錢以外ノ物ヲ基準トシテ之ヲ契約シ、支拂ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ但シ小作料債務ガ辨濟期ニ在ルトキ債務者ガ債權者ノ承諾ヲ以テ其ノ支拂ニ代ヘテ他ノ給付ヲ爲ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ニ違反スル契約ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ金錢ニ換算セラレタル小作料ノ額又ハ減免條件(金錢ニ換算セラレタルモノガ第九條ノ三各號ニ揭グル小作料ノ額又ハ減免條件ニ比シ農地ノ賃借人又ハ永小作權者ニ不利ナル場合ニ在リテハ同條各號ニ揭グル小作料ノ額及減免條件)ヲ以テ契約ヲ爲シタルモノト看做ス
第九條ノ三 小作料ハ左ノ各號ニ揭グル小作料ノ額又ハ減免條件ニ比シ農地ノ賃借人又ハ永小作權者ニ不利ト爲ルベキ額又ハ減免條件ヲ以テ之ヲ契約シ、支拂ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ農地ノ所有者又ハ賃貸人ガ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 小作料統制令廢止ノ際小作料ノ定アル農地ニ付テハ其ノ小作料ノ額及減免條件(金錢以外ノ物ヲ以テ又ハ金錢以外ノ物ヲ基準トシテ定メラレタル小作料ノ額及減免條件ニ在リテハ命令ノ定ムル所ニ依リ金錢ニ換算セラレタル小作料ノ額及減免條件)
二 前號ニ該當セザル農地ニ付テハ小作料統制令廢止後ニ於ケル最初ノ小作料ノ額及減免條件
第九條ノ四 市町村農地委員會必要アリト認ムルトキハ地方長官ノ認可ヲ受ケ當該市町村ニ在ル農地ニ付前條各號ニ揭グル小作料ノ額又ハ減免條件ニ代ルベキ小作料ノ額又ハ減免條件ヲ定ムルコトヲ得
地方長官前項ノ認可ヲ爲サントスルトキハ都道府縣農地委員會ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
地方長官第一項ノ認可ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ公示スベシ
前項ノ規定ニ依ル公示アリタルトキハ其ノ小作料ノ額又ハ減免條件ヲ以テ前條各號ニ揭グル小作料ノ額又ハ減免條件ト看做ス
前四項ノ規定ハ公示セラレタル小作料ノ額又ハ減免條件ヲ變更スル場合ニ之ヲ準用ス
第九條ノ五 行政官廳前二條ノ規定ニ依ル小作料ノ額又ハ減免條件著シク不當ナリト認ムルトキハ第九條ノ三各號ニ揭グル小作料ノ額又ハ減免條件ニ代ルベキ小作料ノ額又ハ減免條件ヲ定ムルコトヲ得
地方長官前項ノ規定ニ依リ小作料ノ額又ハ減免條件ヲ定メントスルトキハ都道府縣農地委員會ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
前條第三項乃至第五項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九條ノ六 前二條ノ規定ハ裁判、裁判上ノ和解又ハ小作調停法ニ依ル調停ニ依リ定マリタル小作料ノ額又ハ減免條件ニ付テハ之ヲ適用セズ
第九條ノ七 第九條ノ二乃至前條ノ規定ハ敷金、補償金穀、修繕費及用排水費ノ負擔竝ニ小作料ノ及額減免條件以外ノ農地ノ賃貸借若ハ永小作又ハ之ニ附隨スル契約ノ條件ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ付之ヲ準用ス
第九條ノ八 何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ第六條ノ二第一項、第六條ノ四第二項又ハ第九條ノ二第一項若ハ第九條ノ三(第九條ノ七ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル制限ヲ免ルル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第十五條 市町村ニ市町村農地委員會ヲ置ク
市町村農地委員會ハ地方長官ノ監督ニ屬シ左ニ揭グル事項ヲ處理ス
一 本法ニ依リ其ノ權限ニ屬セシメタル事項
二 其ノ他農地關係ノ調整ニ關シ勅令ヲ以テ定ムル事項
第十五條ノ二 市町村農地委員會ハ會長及委員十八人ヲ以テ之ヲ組織ス
會長ハ委員ニ於テ互選シ其ノ選ニ當リタル者ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ當該市町村ノ區域內ニ於テ住所ヲ有スル者ニシテ德望經驗アルモノノ中ヨリ地方長官ノ選任シタル者三人及左ノ各號ノ區分ニ從ヒ各號ノ一ニ該當シ被選擧權ヲ有スル者ニ就キ當該各號ニ該當シ選擧權ヲ有スル者ノ選擧シタル者十五人ヲ以テ之ニ充ツ
一 農地ノ所有者ニシテ當該市町村ノ區域內ニ於テ所有スル農地ニ付耕作ノ業ヲ營マザルモノ又ハ當該市町村ノ區域內ニ於テ所有スル農地ノ面積ガ其ノ區域內ニ於テ耕作ノ業ヲ營ム農地ノ面積ノ二倍ヲ超ユルモノ
二 耕作ノ業ヲ營ム者ニシテ當該市町村ノ區域內ニ於テ農地ヲ所有セザルモノ又ハ當該市町村ノ區域內ニ於テ耕作ノ業ヲ營ム農地ノ面積ガ其ノ區域內ニ於テ所有スル農地ノ面積ノ二倍ヲ超ユルモノ
三 當該市町村ノ區域內ニ於テ農地ヲ所有シ且耕作ノ業ヲ營ム者ニシテ前二號ニ該當セザルモノ
前項各號ノ規定ニ依リ選擧セラルベキ委員ノ定數ハ各五人トス
委員ハ名譽職トス
第十五條ノ三 市町村ノ區域內ニ住所ヲ有シ當該市町村ノ區域內ニ於テ命令ヲ以テ定ムル面積ノ農地ヲ所有スル者又ハ命令ヲ以テ定ムル面積ノ農地ニ付耕作ノ業ヲ營ム者ハ市町村農地委員會ノ委員ノ選擧權及被選擧權ヲ有ス
第十五條ノ四 左ニ揭グルモノハ選擧權及被選擧權ヲ有セズ
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
左ニ揭グルモノハ被選擧權ヲ有セズ
一 未成年者
二 禁治產者又ハ準禁治產者
三 破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
第十五條ノ五 選擧ニ關スル事務ハ市町村長之ヲ擔任ス
第十五條ノ六 選擧ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
投票ハ選擧人自ラ投票所ニ到リ投票用紙ニ被選擧人一人ノ氏名ヲ自書シ之ヲ行フベシ但シ未成年者及禁治產者ニ在リテハ法定代理人、法人ニ在リテハ其ノ代表者之ヲ行フモノトス
選擧人(前項但書ノ法定代理人及代表者ヲ含ム)ニシテ命令ノ定ムル事由ニ因リ選擧ノ當日自ラ投票所ニ到リ投票ヲ行フコト能ハザルベキコトヲ證スル者ノ投票ニ關シテハ前項本文ノ規定ニ拘ラズ命令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ得
投票用紙ニハ選擧人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ズ
第十五條ノ七 投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選人トス得票數同ジキトキハ年齡多キ者ヲ取リ年齡モ亦同ジキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條ノ八 委員ハ正當ノ事由ナクシテ其ノ職ヲ辭スルコトヲ得ズ
第十五條ノ九 委員ノ任期ハ一年トス但シ第十五條ノ二第三項ノ規定ニ依リ地方長官ノ選任シタル委員ニ在リテハ特別ノ事由アルトキハ任期中ト雖モ之ヲ解任スルコトヲ妨ゲズ
補闕委員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
委員ハ其ノ任期滿了シタルトキト雖モ後任ノ委員就任スル迄仍其ノ職務ヲ行フ
第十五條ノ十 第十五條ノ二第三項ノ規定ニ依リ選擧セラレタル委員被選擧權ヲ有セザルニ至リタルトキ又ハ其ノ屬シタル第十五條ノ二第三項ノ區分ニ屬セザルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第十五條ノ十一 市町村農地委員會ハ定員ノ過半數ニ當ル委員出席スルニ非ザレバ會議ヲ開クコトヲ得ズ
議事ハ出席員ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ會長ノ決スル所ニ依ル
第十五條ノ十二 委員ハ自己及自己ト同一戶籍內ニ在ル者ニ關スル事件ニ付議事ニ與ルコトヲ得ズ
第十五條ノ十三 都道府縣ニ都道府縣農地委員會ヲ置ク
都道府縣農地委員會ハ主務大臣及地方長官ノ監督ニ屬シ左ニ揭グル事項ヲ處理ス
一 本法ニ依リ其ノ權限ニ屬セシメタル事項
二 其ノ他農地關係ノ調整ニ關シ勅令ヲ以テ定ムル事項
第十五條ノ十四 都道府縣農地委員會ハ會長及委員ヲ以テ之ヲ組織ス
會長ハ地方長官ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ左ニ揭グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 郡(北海道ニ在リテハ支廳長ノ管轄區域)每ニ町村農地委員會ノ會長タル者ノ中ヨリ一人ヲ互選シ其ノ選ニ當リタル者(郡ノ區域內ニ町村農地委員會一ナル場合ニ於テハ其ノ町村農地委員會ノ會長タル者)
二 市農地委員會ノ會長タル者ノ中ヨリ一人ヲ互選シ其ノ選ニ當リタル者(市農地委員會一ナル場合ニ於テハ其ノ市農地委員會ノ會長タル者)
三 學識經驗アル者ノ中ヨリ主務大臣ノ選任シタル者 五人乃至十人
第十五條ノ十五 第十五條ノ二第五項、第十五條ノ八乃至第十五條ノ十二ノ規定ハ都道府縣農地委員會ニ之ヲ準用ス
第十五條ノ十六 市町村農地委員會及都道府縣農地委員會ハ第十五條又ハ第十五條ノ十三ニ規定スル事項ヲ處理スル爲必要アルトキハ農地ノ所有者又ハ耕作者其ノ他關係者ニ對シ其ノ出頭ヲ求メ若ハ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ委員ヲシテ農地其ノ他必要ナル場所ニ就キ所要ノ調查ヲ爲サシムルコトヲ得
第十五條ノ十七 市町村農地委員會ニ關スル費用ハ市町村、都道府縣農地委員會ニ關スル費用ハ都道府縣之ヲ負擔ス
第十五條ノ十八 第十五條乃至前條ニ規定スルモノノ外市町村農地委員會及都道府縣農地委員會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條中「第四條」ヲ「第四條第一項」ニ改ム
第十七條 行政官廳必要アリト認ムルトキハ農地其ノ他ノ土地若ハ物件ニ關シ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ日出ヨリ日沒迄ノ間農地其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ其ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢查セシムルコトヲ得
第十七條ノ二 第十五條ノ二第三項各號ノ區分ノ何レカニ付被選擧權者ノ數同條第四項ニ規定スル定數ニ滿タザル市町村其ノ他特別ノ事情アル市町村ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ市町村農地委員會ヲ置カザルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ本法ニ依リ市町村農地委員會ノ權限ニ屬セシメタル事項ハ市町村長之ヲ處理ス
第十七條ノ三 本法中町村又ハ町村長ニ關スル規定ハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズルモノニ、市又ハ市長ニ關スル規定ハ東京都ノ區ノ存スル區域、京都市、大阪市、橫濱市、名古屋市及神戶市ニ在リテハ地方長官ノ指定スル區又ハ區長ニ之ヲ適用ス
東京都ノ區ノ存スル區域ハ第四條ノ四ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ一市ト看做ス
第十七條ノ四 第六條ノ二第一項、第六條ノ四第二項、第九條ノ二第一項若ハ第九條ノ三(第九條ノ七ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)又ハ第九條ノ八ノ規定ニ違反シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第十七條ノ五 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第九條第三項ノ規定ニ違反シタル者
二 第十七條ノ規定ニ依ル報吿ヲ怠リ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ當該官吏ノ臨檢檢查ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第十七條ノ六 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第十七條ノ四又ハ前條第一號若ハ第二號前段ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
第一條 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 第六條ノ四ノ改正規定ハ同條ノ規定施行ノ際現ニ農地ニ付存スル讓渡契約ニシテ當該農地ニ付旣ニ讓受人ノ權利ニ關スル登記アリタルモノ又ハ當該農地ノ引渡ヲ完了シタルモノニ付テハ之ヲ適用セズ
第三條 第九條ノ二ノ改正規定ハ昭和二十年以前ノ產米ヲ以テスル小作料ノ支拂及其ノ受領ニ付テハ之ヲ適用セズ
第四條 從前ノ規定ニ依ル市町村農地委員會又ハ都道府縣農地委員會ハ本法ニ依ル市町村農地委員會又ハ都道府縣農地委員會ノ成立ニ至ル迄存續スルモノトシ本法ニ依リ市町村農地委員會又ハ都道府縣農地委員會ノ權限ニ屬セシメラレタル事項ヲ處理ス
前項ニ規定スルモノヲ除クノ外第十五條乃至第十五條ノ十八ノ改正規定施行ノ際市町村農地委員會又ハ都道府縣農地委員會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 小作料統制令、臨時農地價格統制令及臨時農地等管理令ハ之ヲ廢止ス
前項ノ規定施行前小作料統制令、臨時農地價格統制令又ハ臨時農地等管理令ニ基キ爲シタル許可若ハ認可又ハ許可若ハ認可ノ申請ハ之ヲ本法ノ相當規定ニ基キテ爲シタルモノト看做ス
第一項ノ規定施行前ニ爲シタル行爲ニ關スル罰則ノ適用ニ付テハ小作料統制令、臨時農地價格統制令及臨時農地等管理令ハ仍其ノ效力ヲ有ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル農地調整法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十年十二月二十八日
内閣総理大臣 男爵 幣原喜重郎
司法大臣 岩田宙造
農林大臣 松村謙三
法律第六十四号
農地調整法中左ノ通改正ス
第二条 本法ニ於テ農地トハ耕作ノ目的ニ供セラルル土地ヲ謂フ
本法ニ於テ小作料トハ耕作ノ目的ヲ以テ農地ガ賃借セラルル場合ニ於ケル借賃(農地以外ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ガ農地ニ附随シテ賃借セラレ其ノ借賃ガ農地ノ借賃ト契約上分別シ得ザル場合ニ在リテハ農地以外ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ノ借賃ヲ含ム)又ハ耕作ノ目的ヲ以テ永小作権ガ設定セラルル場合ニ於ケル小作料ヲ謂フ
第三条第一項中「兵役」ヲ「疾病」ニ、「市町村」ヲ「市町村、市町村農業会」ニ改ム
第四条 都道府県、市町村、市町村農業会其ノ他命令ヲ以テ定ムル団体ガ命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ要スル土地ヲ取得スルノ必要アルトキ又ハ当該土地ノ開発ニ必要ナル他ノ土地ノ使用収益ノ権利ヲ取得スルノ必要アルトキハ地方長官ノ認可ヲ受ケ土地ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者ニ対シ土地ノ譲渡又ハ使用収益ノ権利ノ設定若ハ譲渡ニ関スル協議ヲ求ムルコトヲ得
地方長官前項ノ認可ヲ為サントスルトキハ当該土地ノ所在スル市町村ニ設置セラレタル市町村農地委員会ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
第一項ノ場合ニ於テ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ同項ノ団体ハ当該土地ノ譲渡又ハ使用収益ノ権利ノ設定若ハ譲渡ニ関シ命令ノ定ムル所ニ依リ都道府県農地委員会ノ裁定ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ団体前項ノ申請ヲ為シタルトキハ同時ニ当該申請ニ係ル土地ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者ニ通知スベシ
第四条ノ二 前条第三項ノ規定ニ依ル裁定ノ申請アリタルトキハ都道府県農地委員会ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ公示スベシ
前条第三項ノ規定ニ依ル裁定ノ申請ニ係ル土地ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者ハ前項ノ公示ノ日ヨリ二週間内ニ都道府県農地委員会ニ意見書ヲ差出スコトヲ得
前条第三項ノ規定ニ依ル裁定ノ申請ニ係ル土地ノ上ニ建物其ノ他ノ工作物(以下工作物ト称ス)ヲ所有スル者ハ前項ノ意見書ニ於テ都道府県農地委員会ニ対シ当該土地ノ譲渡又ハ使用収益ノ権利ノ設定若ハ譲渡ヲ為スベキ旨ノ裁定アル場合ニ於テハ当該工作物ニ付テモ譲渡ヲ為スベキ旨ノ裁定又ハ当該工作物ノ移転料ニ関スル裁定アルベキ旨ノ申請ヲ為スコトヲ得但シ当該工作物ガ前条第四項ノ通知アリタル後ニ設置セラレタルモノナルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四条ノ三 都道府県農地委員会ハ前条第二項ノ期間ヲ経過シタル後審議ヲ開始スベシ
都道府県農地委員会ハ前項ノ審議ヲ開始シタル日ヨリ二週間内ニ裁定ヲ為スベシ
都道府県農地委員会ガ前項ノ期間内ニ裁定ヲ為サザルトキハ地方長官ハ之ニ代リテ裁定ヲ為スコトヲ得
第四条第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
裁定ハ其ノ申請ノ範囲ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ第六項ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
土地ノ譲渡ヲ為スベキ旨ノ裁定ヲ為サントスル場合ニ於テ当該土地ノ上ニ存スル工作物ニ付前条第三項ノ規定ニ依ル申請アリタルトキハ当該工作物ニ付テモ譲渡ヲ為スベキ旨ノ裁定又ハ当該工作物ノ移転料ニ関スル裁定ヲ為スコトヲ要ス
土地ノ譲渡又ハ使用収益ノ権利ノ設定若ハ譲渡ヲ為スベキ旨ノ裁定ニ於テハ左ニ掲グル事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 譲渡ヲ為スベキ土地ノ区域又ハ設定若ハ譲渡ヲ為スベキ使用収益ノ権利ノ種類及当該権利ノ目的タル土地ノ区域並ニ譲渡ヲ為スベキ工作物
二 対価(工作物ノ移転料ヲ含ム以下同ジ)並ニ其ノ支払ノ方法及時期
三 土地又ハ工作物ノ引渡ノ時期及土地ノ使用収益ノ権利ノ存続期間
裁定ハ其ノ理由ヲ附シ文書ヲ以テ之ヲ為スベシ
都道府県農地委員会ガ裁定ヲ為シタルトキハ其ノ裁定書ノ謄本ヲ添ヘ地方長官ニ報告スベシ
第四条ノ四 第四条第一項ノ規定ニ依ル認可又ハ前条第二項若ハ第三項ノ規定ニ依ル土地ノ譲渡ヲ為スベキ旨ノ裁定ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル農地ニ付テハ之ヲ為スコトヲ得ズ
一 自作地
二 農地ノ所有者ガ其ノ住所又ハ居所ノ存スル市町村及其ノ隣接市町村ノ区域内ニ於テ勅令ヲ以テ定ムル面積(以下一定ノ面積ト称ス)ヲ超エザル農地ヲ所有スル場合其ノ所有ニ係ル当該区域内ノ農地
三 農地ノ所有者ガ其ノ住所又ハ居所ノ存スル市町村及其ノ隣接市町村ノ区域内ニ於テ一定ノ面積ヲ超ユル農地ヲ所有スル場合其ノ一定ノ面積ヲ超エザル範囲内ニ於テ保有セントスル当該区域内ノ農地
四 都市計画法ニ依ル土地区画整理施行地区内ニ在ル農地ニシテ地方長官ノ指定スル区域内ニ在ルモノ
五 自作地ニ非ザルモ市町村農地委員会ニ於テ近ク其ノ所有者ガ自作ヲ為スモノト認メ且其ノ自作ヲ相当ト認ムル農地
六 其ノ他命令ヲ以テ定ムル農地
第四条ノ五 地方長官第四条ノ三第九項ノ規定ニ依ル報告ヲ受ケ又ハ同条第三項ノ規定ニ依ル裁定ヲ為シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ公示シ且裁定書ノ謄本ヲ申請人及当該裁定ニ係ル土地ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者ニ送付スベシ
土地若ハ工作物ノ譲渡又ハ土地ノ使用収益ノ権利ノ設定若ハ譲渡ヲ為スベキ旨ノ裁定又ハ工作物ノ移転料ニ関スル裁定ニ付前項ノ規定ニ依ル公示アリタルトキハ其ノ裁定ニ定ムル所ニ依リ当事者間ニ協議調ヒタルモノト看做ス
第四条ノ六 前条第二項ノ場合ニ於テ土地又ハ建物ノ所有権其ノ他ノ物権ノ取得ニ付対価ノ全部ノ支払又ハ供託アリタルトキハ其ノ登記ハ登記権利者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第四条ノ七 第四条ノ五第二項ノ場合ニ於テ土地又ハ工作物ノ所有権其ノ他ノ権利ノ取得ニ付対価ヲ支払フベキ者裁定ニ定ムル時期迄ニ対価ノ全部ノ支払又ハ供託ヲ為サザルトキハ裁定ハ其ノ効力ヲ失フ
第四条ノ八 第四条ノ三第二項又ハ第三項ノ規定ニ依ル裁定ニ対シテ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得
違法ノ裁定ニ依リ権利ヲ障害セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四項ノ規定ニ依リ通常裁判所ニ出訴ヲ許シタル事項ニ関シテハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得ズ
第四条ノ三第二項又ハ第三項ノ規定ニ依ル裁定中対価ノ決定ニ対シテ不服アル者ハ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ裁定書ノ謄本ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月ヲ経過シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
対価ヲ支払フベキ者前項ノ出訴ヲ為ストキハ其ノ対価ヲ供託スルコトヲ得但シ対価ヲ受クベキ者ノ請求アルトキハ自己ノ見積金額ヲ支払フベシ
第四条ノ九 第四条ノ二、第四条ノ三又ハ第四条ノ五乃至第四条ノ七ノ規定ニ依リ為シタル手続其ノ他ノ行為ハ土地ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者ノ承継人ニ対シテモ其ノ効力ヲ有ス
第四条ノ十 第四条乃至前条ノ規定ハ第四条第一項ノ団体又ハ市町村農地委員会ガ第三者ノ申出ニ依リ同項ノ自作農創設維持ノ事業トシテ当該第三者ヲシテ土地ノ所有権又ハ使用収益ノ権利ヲ取得セシムル場合ニ付之ヲ準用ス但シ第四条ノ五第二項中当事者トアルハ当該土地又ハ工作物ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者及当該第三者トス
第四条ノ十一 第四条乃至第四条ノ三及第四条ノ五乃至第四条ノ九ノ規定ハ農地開発営団、都道府県、市町村農業会其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ガ開発(第四条第一項ノ団対ガ同項ノ自作農創設維持ノ事業トシテ行フ開発ヲ除ク)セントスル未墾地其ノ他其ノ開発ニ必要ナル土地ノ譲渡又ハ使用収益ノ権利ノ設定若ハ譲渡ニ付之ヲ準用ス
前項ニ於テ準用スル第四条ノ三第二項又ハ第三項ノ規定ニ依ル地方長官又ハ都道府県農地委員会ガ未墾地ノ譲渡ノ対価ニ関シ裁定ヲ為ス場合ニ於テハ当該未墾地ノ対価ハ近傍類似ノ農地ノ価格ヨリ命令ヲ以テ定ムル開墾費ヲ減ジタル額ヲ超エテ之ヲ定ムルコトヲ得ズ
第四条ノ十二 第四条乃至第四条ノ三及第四条ノ五乃至第四条ノ九ノ規定ハ第四条ノ五第二項(前二条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ基キ取得スル土地又ハ之ニ関スル権利ニ付担保権ガ存スル場合当該担保権ノ処理ニ付之ヲ準用ス
前項ノ規定ニ依リ担保権ガ消滅スルトキハ当該土地又ハ之ニ関スル権利ノ対価ヲ支払フベキ者ハ其ノ対価ヲ供託スルコトヲ要ス但シ協議又ハ裁定ニ於テ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ場合ニ於テハ当該担保権者ハ供託金ニ対シ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第五条 農地ノ所有権、賃借権、地上権其ノ他ノ権利ノ設定又ハ移転ハ命令ノ定ムル所ニ依リ当事者ニ於テ地方長官又ハ市町村長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生セズ
第六条 前条ノ規定ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニハ之ヲ適用セズ
一 第三条ノ団体ガ同条ノ事業ヲ行フ為前条ニ掲グル権利ヲ取得スル場合
二 第四条第一項ノ自作農創設維持ノ事業ヲ行フ為農地ヲ取得スル場合又ハ命令ヲ以テ定ムル自作農創設維持ノ事業ニ依リ農地ヲ取得スル場合
三 農地ヲ耕作ノ目的ニ供スル為前条ニ掲グル権利ヲ取得スル場合
四 前条ニ掲グル権利ノ取得ニ関シ当事者ノ一方ガ国、都道府県又ハ農地開発営団ナル場合
五 土地収用法其ノ他ノ法令ニ依リ農地ヲ収用スル場合
六 其ノ他命令ヲ以テ定ムル場合
第六条ノ二 農地ノ価格ハ第六条ノ四ニ定ムル場合ヲ除クノ外当該農地ノ地租法ニ依ル賃貸価格ニ主務大臣ノ定ムル率ヲ乗ジテ得タル額ヲ超エテ之ヲ契約シ、支払ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ但シ農地ノ価格ニ付命令ノ定スル所ニ依リ譲渡人又ハ譲受人ニ於テ地方長官ノ許可ヲ受ケタル場合及命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣前項ノ率ヲ定メタルトキハ之ヲ告示ス
第一項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル告示アリタル際現ニ農地ニ付存スル譲渡契約ニシテ当該農地ニ付既ニ譲受人ノ権利ニ関スル登記アリタルモノ又ハ当該農地ノ引渡ヲ完了シタルモノニ付テハ之ヲ適用セズ
第六条ノ三 地方長官市町村農地委員会ノ申請アリタル場合ニ於テ特ニ必要アリト認ムルトキハ都道府県農地委員会ノ意見ヲ聴キ当該申請ニ係ル区域ニ付前条第一項ノ率ニ代ルベキ率ヲ定メ又ハ同項ニ規定スル以外ノ基準ニ依リ同項ノ額ニ代ルベキ額ヲ定ムルコトヲ得
地方長官前項ノ規定ニ依リ率又ハ額ヲ定メタルトキハ之ヲ公示ス
前項ノ現定ニ依リ公示アリタルトキハ其ノ率又ハ額ヲ以テ前条ノ率又ハ額ト看做ス
第六条ノ四 地租法ニ依ル賃貸価格ナキ農地ヲ譲渡ス場合ニハ其ノ価格ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ譲渡人又ハ譲受人ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ場合ニ於テ農地ノ価格ハ同項ノ認可アリタル額ヲ超エテ之ヲ契約シ、支払ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ
第七条 中「前条」ヲ「第四条第一項又ハ第六条」ニ改ム
第七条ノ二 第四条第一項ノ自作農創設維持ノ事業ニ依リ農地ヲ取得シタル者ガ取得ノ時ヨリ二年内ニ当該農地ヲ耕作以外ノ目的ニ供スル為譲渡シタル場合又ハ当該農地ガ取得ノ時ヨリ二年内ニ収用セラレタル場合ニ於テ当該農地ノ譲渡価格又ハ補償金額ガ当該農地ノ譲渡ニ因リ旧所有者ノ取得シタル金額ヲ超ユルトキハ旧所有者ハ農地ヲ譲渡シ又ハ収用セラレタル者ニ対シ其ノ超過額ヲ請求スルコトヲ得但シ当該農地ノ譲渡又ハ収用アリタル日ヨリ二年ヲ経過シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九条第三項中「予メ其ノ旨ヲ市町村農地委員会ニ通知スベシ」ヲ「市町村農地委員会ノ承認ヲ受クベシ」ニ改ム
第九条ノ二 小作料ハ金銭以外ノ物ヲ以テ又ハ金銭以外ノ物ヲ基準トシテ之ヲ契約シ、支払ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ但シ小作料債務ガ弁済期ニ在ルトキ債務者ガ債権者ノ承諾ヲ以テ其ノ支払ニ代ヘテ他ノ給付ヲ為ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ニ違反スル契約ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ金銭ニ換算セラレタル小作料ノ額又ハ減免条件(金銭ニ換算セラレタルモノガ第九条ノ三各号ニ掲グル小作料ノ額又ハ減免条件ニ比シ農地ノ賃借人又ハ永小作権者ニ不利ナル場合ニ在リテハ同条各号ニ掲グル小作料ノ額及減免条件)ヲ以テ契約ヲ為シタルモノト看做ス
第九条ノ三 小作料ハ左ノ各号ニ掲グル小作料ノ額又ハ減免条件ニ比シ農地ノ賃借人又ハ永小作権者ニ不利ト為ルベキ額又ハ減免条件ヲ以テ之ヲ契約シ、支払ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ農地ノ所有者又ハ賃貸人ガ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 小作料統制令廃止ノ際小作料ノ定アル農地ニ付テハ其ノ小作料ノ額及減免条件(金銭以外ノ物ヲ以テ又ハ金銭以外ノ物ヲ基準トシテ定メラレタル小作料ノ額及減免条件ニ在リテハ命令ノ定ムル所ニ依リ金銭ニ換算セラレタル小作料ノ額及減免条件)
二 前号ニ該当セザル農地ニ付テハ小作料統制令廃止後ニ於ケル最初ノ小作料ノ額及減免条件
第九条ノ四 市町村農地委員会必要アリト認ムルトキハ地方長官ノ認可ヲ受ケ当該市町村ニ在ル農地ニ付前条各号ニ掲グル小作料ノ額又ハ減免条件ニ代ルベキ小作料ノ額又ハ減免条件ヲ定ムルコトヲ得
地方長官前項ノ認可ヲ為サントスルトキハ都道府県農地委員会ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
地方長官第一項ノ認可ヲ為シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ公示スベシ
前項ノ規定ニ依ル公示アリタルトキハ其ノ小作料ノ額又ハ減免条件ヲ以テ前条各号ニ掲グル小作料ノ額又ハ減免条件ト看做ス
前四項ノ規定ハ公示セラレタル小作料ノ額又ハ減免条件ヲ変更スル場合ニ之ヲ準用ス
第九条ノ五 行政官庁前二条ノ規定ニ依ル小作料ノ額又ハ減免条件著シク不当ナリト認ムルトキハ第九条ノ三各号ニ掲グル小作料ノ額又ハ減免条件ニ代ルベキ小作料ノ額又ハ減免条件ヲ定ムルコトヲ得
地方長官前項ノ規定ニ依リ小作料ノ額又ハ減免条件ヲ定メントスルトキハ都道府県農地委員会ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
前条第三項乃至第五項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九条ノ六 前二条ノ規定ハ裁判、裁判上ノ和解又ハ小作調停法ニ依ル調停ニ依リ定マリタル小作料ノ額又ハ減免条件ニ付テハ之ヲ適用セズ
第九条ノ七 第九条ノ二乃至前条ノ規定ハ敷金、補償金穀、修繕費及用排水費ノ負担並ニ小作料ノ及額減免条件以外ノ農地ノ賃貸借若ハ永小作又ハ之ニ附随スル契約ノ条件ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ付之ヲ準用ス
第九条ノ八 何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ第六条ノ二第一項、第六条ノ四第二項又ハ第九条ノ二第一項若ハ第九条ノ三(第九条ノ七ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル制限ヲ免ルル行為ヲ為スコトヲ得ズ
第十五条 市町村ニ市町村農地委員会ヲ置ク
市町村農地委員会ハ地方長官ノ監督ニ属シ左ニ掲グル事項ヲ処理ス
一 本法ニ依リ其ノ権限ニ属セシメタル事項
二 其ノ他農地関係ノ調整ニ関シ勅令ヲ以テ定ムル事項
第十五条ノ二 市町村農地委員会ハ会長及委員十八人ヲ以テ之ヲ組織ス
会長ハ委員ニ於テ互選シ其ノ選ニ当リタル者ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ当該市町村ノ区域内ニ於テ住所ヲ有スル者ニシテ徳望経験アルモノノ中ヨリ地方長官ノ選任シタル者三人及左ノ各号ノ区分ニ従ヒ各号ノ一ニ該当シ被選挙権ヲ有スル者ニ就キ当該各号ニ該当シ選挙権ヲ有スル者ノ選挙シタル者十五人ヲ以テ之ニ充ツ
一 農地ノ所有者ニシテ当該市町村ノ区域内ニ於テ所有スル農地ニ付耕作ノ業ヲ営マザルモノ又ハ当該市町村ノ区域内ニ於テ所有スル農地ノ面積ガ其ノ区域内ニ於テ耕作ノ業ヲ営ム農地ノ面積ノ二倍ヲ超ユルモノ
二 耕作ノ業ヲ営ム者ニシテ当該市町村ノ区域内ニ於テ農地ヲ所有セザルモノ又ハ当該市町村ノ区域内ニ於テ耕作ノ業ヲ営ム農地ノ面積ガ其ノ区域内ニ於テ所有スル農地ノ面積ノ二倍ヲ超ユルモノ
三 当該市町村ノ区域内ニ於テ農地ヲ所有シ且耕作ノ業ヲ営ム者ニシテ前二号ニ該当セザルモノ
前項各号ノ規定ニ依リ選挙セラルベキ委員ノ定数ハ各五人トス
委員ハ名誉職トス
第十五条ノ三 市町村ノ区域内ニ住所ヲ有シ当該市町村ノ区域内ニ於テ命令ヲ以テ定ムル面積ノ農地ヲ所有スル者又ハ命令ヲ以テ定ムル面積ノ農地ニ付耕作ノ業ヲ営ム者ハ市町村農地委員会ノ委員ノ選挙権及被選挙権ヲ有ス
第十五条ノ四 左ニ掲グルモノハ選挙権及被選挙権ヲ有セズ
一 六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者
二 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
左ニ掲グルモノハ被選挙権ヲ有セズ
一 未成年者
二 禁治産者又ハ準禁治産者
三 破産者ニシテ復権ヲ得ザルモノ
第十五条ノ五 選挙ニ関スル事務ハ市町村長之ヲ担任ス
第十五条ノ六 選挙ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
投票ハ選挙人自ラ投票所ニ到リ投票用紙ニ被選挙人一人ノ氏名ヲ自書シ之ヲ行フベシ但シ未成年者及禁治産者ニ在リテハ法定代理人、法人ニ在リテハ其ノ代表者之ヲ行フモノトス
選挙人(前項但書ノ法定代理人及代表者ヲ含ム)ニシテ命令ノ定ムル事由ニ因リ選挙ノ当日自ラ投票所ニ到リ投票ヲ行フコト能ハザルベキコトヲ証スル者ノ投票ニ関シテハ前項本文ノ規定ニ拘ラズ命令ヲ以テ特別ノ定ヲ為スコトヲ得
投票用紙ニハ選挙人ノ氏名ヲ記載スルコトヲ得ズ
第十五条ノ七 投票ノ多数ヲ得タル者ヲ以テ当選人トス得票数同ジキトキハ年齢多キ者ヲ取リ年齢モ亦同ジキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第十五条ノ八 委員ハ正当ノ事由ナクシテ其ノ職ヲ辞スルコトヲ得ズ
第十五条ノ九 委員ノ任期ハ一年トス但シ第十五条ノ二第三項ノ規定ニ依リ地方長官ノ選任シタル委員ニ在リテハ特別ノ事由アルトキハ任期中ト雖モ之ヲ解任スルコトヲ妨ゲズ
補闕委員ハ其ノ前任者ノ残任期間在任ス
委員ハ其ノ任期満了シタルトキト雖モ後任ノ委員就任スル迄仍其ノ職務ヲ行フ
第十五条ノ十 第十五条ノ二第三項ノ規定ニ依リ選挙セラレタル委員被選挙権ヲ有セザルニ至リタルトキ又ハ其ノ属シタル第十五条ノ二第三項ノ区分ニ属セザルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第十五条ノ十一 市町村農地委員会ハ定員ノ過半数ニ当ル委員出席スルニ非ザレバ会議ヲ開クコトヲ得ズ
議事ハ出席員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ会長ノ決スル所ニ依ル
第十五条ノ十二 委員ハ自己及自己ト同一戸籍内ニ在ル者ニ関スル事件ニ付議事ニ与ルコトヲ得ズ
第十五条ノ十三 都道府県ニ都道府県農地委員会ヲ置ク
都道府県農地委員会ハ主務大臣及地方長官ノ監督ニ属シ左ニ掲グル事項ヲ処理ス
一 本法ニ依リ其ノ権限ニ属セシメタル事項
二 其ノ他農地関係ノ調整ニ関シ勅令ヲ以テ定ムル事項
第十五条ノ十四 都道府県農地委員会ハ会長及委員ヲ以テ之ヲ組織ス
会長ハ地方長官ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ左ニ掲グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 郡(北海道ニ在リテハ支庁長ノ管轄区域)毎ニ町村農地委員会ノ会長タル者ノ中ヨリ一人ヲ互選シ其ノ選ニ当リタル者(郡ノ区域内ニ町村農地委員会一ナル場合ニ於テハ其ノ町村農地委員会ノ会長タル者)
二 市農地委員会ノ会長タル者ノ中ヨリ一人ヲ互選シ其ノ選ニ当リタル者(市農地委員会一ナル場合ニ於テハ其ノ市農地委員会ノ会長タル者)
三 学識経験アル者ノ中ヨリ主務大臣ノ選任シタル者 五人乃至十人
第十五条ノ十五 第十五条ノ二第五項、第十五条ノ八乃至第十五条ノ十二ノ規定ハ都道府県農地委員会ニ之ヲ準用ス
第十五条ノ十六 市町村農地委員会及都道府県農地委員会ハ第十五条又ハ第十五条ノ十三ニ規定スル事項ヲ処理スル為必要アルトキハ農地ノ所有者又ハ耕作者其ノ他関係者ニ対シ其ノ出頭ヲ求メ若ハ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ委員ヲシテ農地其ノ他必要ナル場所ニ就キ所要ノ調査ヲ為サシムルコトヲ得
第十五条ノ十七 市町村農地委員会ニ関スル費用ハ市町村、都道府県農地委員会ニ関スル費用ハ都道府県之ヲ負担ス
第十五条ノ十八 第十五条乃至前条ニ規定スルモノノ外市町村農地委員会及都道府県農地委員会ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条中「第四条」ヲ「第四条第一項」ニ改ム
第十七条 行政官庁必要アリト認ムルトキハ農地其ノ他ノ土地若ハ物件ニ関シ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ日出ヨリ日没迄ノ間農地其ノ他必要ナル場所ニ臨検シ其ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
第十七条ノ二 第十五条ノ二第三項各号ノ区分ノ何レカニ付被選挙権者ノ数同条第四項ニ規定スル定数ニ満タザル市町村其ノ他特別ノ事情アル市町村ニハ勅令ノ定ムル所ニ依リ市町村農地委員会ヲ置カザルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ本法ニ依リ市町村農地委員会ノ権限ニ属セシメタル事項ハ市町村長之ヲ処理ス
第十七条ノ三 本法中町村又ハ町村長ニ関スル規定ハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズルモノニ、市又ハ市長ニ関スル規定ハ東京都ノ区ノ存スル区域、京都市、大阪市、横浜市、名古屋市及神戸市ニ在リテハ地方長官ノ指定スル区又ハ区長ニ之ヲ適用ス
東京都ノ区ノ存スル区域ハ第四条ノ四ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ一市ト看做ス
第十七条ノ四 第六条ノ二第一項、第六条ノ四第二項、第九条ノ二第一項若ハ第九条ノ三(第九条ノ七ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)又ハ第九条ノ八ノ規定ニ違反シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
第十七条ノ五 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第九条第三項ノ規定ニ違反シタル者
二 第十七条ノ規定ニ依ル報告ヲ怠リ若ハ虚偽ノ報告ヲ為シ又ハ当該官吏ノ臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第十七条ノ六 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第十七条ノ四又ハ前条第一号若ハ第二号前段ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ各本条ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
第一条 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 第六条ノ四ノ改正規定ハ同条ノ規定施行ノ際現ニ農地ニ付存スル譲渡契約ニシテ当該農地ニ付既ニ譲受人ノ権利ニ関スル登記アリタルモノ又ハ当該農地ノ引渡ヲ完了シタルモノニ付テハ之ヲ適用セズ
第三条 第九条ノ二ノ改正規定ハ昭和二十年以前ノ産米ヲ以テスル小作料ノ支払及其ノ受領ニ付テハ之ヲ適用セズ
第四条 従前ノ規定ニ依ル市町村農地委員会又ハ都道府県農地委員会ハ本法ニ依ル市町村農地委員会又ハ都道府県農地委員会ノ成立ニ至ル迄存続スルモノトシ本法ニ依リ市町村農地委員会又ハ都道府県農地委員会ノ権限ニ属セシメラレタル事項ヲ処理ス
前項ニ規定スルモノヲ除クノ外第十五条乃至第十五条ノ十八ノ改正規定施行ノ際市町村農地委員会又ハ都道府県農地委員会ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 小作料統制令、臨時農地価格統制令及臨時農地等管理令ハ之ヲ廃止ス
前項ノ規定施行前小作料統制令、臨時農地価格統制令又ハ臨時農地等管理令ニ基キ為シタル許可若ハ認可又ハ許可若ハ認可ノ申請ハ之ヲ本法ノ相当規定ニ基キテ為シタルモノト看做ス
第一項ノ規定施行前ニ為シタル行為ニ関スル罰則ノ適用ニ付テハ小作料統制令、臨時農地価格統制令及臨時農地等管理令ハ仍其ノ効力ヲ有ス