朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル農村負債整理組合法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月二十八日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
大藏大臣 高橋是淸
內務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 小山松吉
農林大臣 後藤文夫
法律第二十一號
農村負債整理組合法
第一章 總則
第一條 本法ハ農山漁村ニ居住スル者ノ經濟更生ヲ圖ル爲隣保共助ノ精神ニ則リ其ノ者ヲシテ負債整理組合ヲ組織セシメ組合ノ樹立シタル負債償還計畫及經濟更生計畫ヲ履行セシメ以テ其ノ負債ノ整理ヲ爲サシムルコトヲ目的トス
第二條 本法ニ於テ負債トハ負債整理組合ノ組合員ノ負擔スル私法上ノ金錢債務ニシテ組合設立前ニ生ジタルモノヲ謂フ但シ本法施行後ニ生ジタルモノハ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ケタルモノニ限ル
第三條 負債整理組合ノ組合員本法ニ依リ負債整理ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ負債整理組合ニ對シ其ノ旨ヲ申出ヅベシ
負債整理組合前項ノ申出ヲ受ケタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ組合員及債權者間ニ於ケル負債ノ金額、利率、償還期限、償還方法其ノ他ノ條件ノ緩和ニ關スル協定ニ付斡旋ヲ爲スベシ
第四條 前條ノ斡旋ニ依リ協定成ラザル負債ニ付テハ負債整理組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ市町村負債整理委員會ニ對シ其ノ協定ノ斡旋ヲ請求スルコトヲ得
市町村負債整理委員會ノ組織、權限其ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 前條ノ市町村負債整理委員會ノ斡旋ニ依リ協定成ラザルトキ又ハ負債整理組合ノ事務所ノ所在地タル市町村ニ市町村負債整理委員會ナキ爲其ノ斡旋ニ依ルコト能ハザルトキハ債務者タル組合員又ハ債權者ハ金錢債務臨時調停法第二條第一項ノ期日ニ關スル制限ノ規定ニ拘ラズ
同法ニ依ル調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第六條 第三條第一項ノ規定ニ依リ負債整理ノ申出アリタル負債ニ付金錢債務臨時調停法ニ依ル調停事件繫屬スルトキハ裁判所又ハ調停委員會ハ第三條第二項又ハ第四條ノ規定ニ依ル斡旋ノ終了ニ至ル迄其ノ調停手續ヲ中止スルコトヲ得
第七條 負債整理組合ヨリ負債整理資金ノ貸付ヲ受ケタル組合員ガ其ノ貸付ノ條件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル負債整理組合ノ不動產其ノ他ノモノノ取得ニ關シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第八條 信用組合其ノ他勅令ヲ以テ定ムル法人ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ケ第十一條ノ事業ヲ行フモノハ本章ノ適用ニ關シテハ之ヲ負債整理組合ト看做ス但シ第二條中組合設立前トアルハ行政官廳ノ認可前トス
前項ノ法人ガ第十一條ノ事業ノ認可ヲ申請スルコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ三年間トス
第九條 本法中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ之ニ準ズベキモノトス
第二章 負債整理組合
第十條 負債整理組合ハ組合員ノ經濟更生ヲ圖ル爲隣保共助ノ精神ニ則リ組合員ヲシテ其ノ負債ノ整理ヲ爲サシムルコトヲ目的トス
第十一條 負債整理組合ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
一 組合員ノ負債償還計畫及經濟更生計畫ノ樹立
二 債務者タル組合員及債權者間ニ於ケル負債ノ金額、利率、償還期限、償還方法其ノ他ノ條件ノ緩和ニ關スル協定ノ斡旋
三 組合員ニ對スル負債整理資金ノ貸付
四 前各號ニ揭グルモノノ外組合員ノ負債整理ニ必要ナル事業
負債整理組合ハ組合員ガ負債整理ノ爲其ノ所有地ヲ處分スル場合ニ於テ組合員タル小作人其ノ他ノ者ガ其ノ土地ヲ購入セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ニ要スル資金ノ貸付ヲ爲スコトヲ得
第十二條 負債整理組合ハ法人トス
第十三條 負債整理組合ハ一定ノ地區內ニ居住スル者ヲ以テ之ヲ組織ス
前項ノ地區ハ部落其ノ他之ニ準ズル區域ニ依ル但シ特別ノ事由アルトキハ町村ノ區域ニ依ルコトヲ得
第十四條 負債整理組合ノ組織ハ無限責任及保證責任ノ二種トス
無限責任ノ組合ニ在リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全員ガ連帶無限ノ責任ヲ負擔シ保證責任ノ組合ニ在リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額(保證金額)ヲ限度トシテ責任ヲ負擔ス
第十五條 負債整理組合ヲ設立セントスルトキハ設立者ハ規約ヲ作成シ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ニ設立ノ認可ヲ申請スベシ
規約ニハ本法ニ規定アルモノヲ除クノ外左ニ揭グル事項ヲ記載シ設立者之ニ署名又ハ記名捺印スルコトヲ要ス
一 目的
二 名稱
三 組織
四 地區
五 事務所ノ所在地
六 組合員ノ加入脫退ニ關スル規定
七 事業ノ執行ニ關スル規定
八 役員ニ關スル規定
九 損失分擔ニ關スル規定
十 組合ガ公吿ヲ爲ス方法
十一 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
十二 無限責任ノ組合ニ在リテハ組合費ノ分擔ニ關スル規定
十三 保證責任ノ組合ニ在リテハ出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法竝ニ保證金額ニ關スル規定
第十六條 前條第一項ノ認可ノ申請ヲ爲スコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ三年間トス
第十七條 負債整理組合ハ其ノ設立ノ日ヨリ二週間以內ニ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一 第十五條第二項第一號乃至第五號及第十一號ニ揭ゲタル事項
二 設立認可ノ年月日
三 理事及監事ノ氏名及住所
四 保證責任ノ組合ニ在リテハ出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
前項ニ揭グル事項ニ變更アリタルトキハ二週間以內ニ其ノ登記ヲ爲スベシ
第十八條 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十九條 負債整理組合ガ本法ニ基キテ爲ス登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
第二十條 負債整理組合ノ設立登記ノ申請書ニハ無限責任ノ組合ニ在リテハ產業組合法第十六條ノ五第一項第三號ニ揭グル事項ヲ、保證責任ノ組合ニ在リテハ同條同項第一號、第二號及第四號ニ揭グル事項ヲ記載シタル組合原簿ヲ添附スベシ
組合員ノ加入ニ因ル變更登記ノ申請書ニハ無限責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ氏名及住所ヲ、保證責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ氏名、住所及保證金額ヲ記載シタル組合原簿ヲ添附スベシ
第十七條第三項及第十八條竝ニ產業組合法第十六條ノ四第一項及第十六條ノ五第二項ノ規定ハ組合原簿ニ之ヲ準用ス但シ同法第十六條ノ四第一項中地方長官トアルハ事務所所在地ノ登記所トス
第二十一條 負債整理組合ハ規約ノ定ムル所ニ依リ其ノ組合員ヲシテ組合ノ負債償還ノ一部ニ充ツル爲積立金ヲ醵出セシムルコトヲ得
前項ノ積立金ノ管理、處分其ノ他必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條 負債整理組合ノ組合員ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外總組合員ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非ザレバ脫退スルコトヲ得ズ
脫退シタル組合員ハ脫退前ニ生ジタル組合ノ債務ニ付第十四條第二項ノ規定ニ依ル責任ヲ負擔ス
第二十三條 負債整理組合ニ加入シタル組合員ハ其ノ加入前ニ生ジタル組合ノ債務ニ付テモ亦第十四條第二項ノ規定ニ依ル責任ヲ負擔ス
第二十四條 產業組合法第三條、第四條、第六條、第七條、第二十三條、第二十五條乃至第三十一條ノ二、第三十二條乃至第三十八條、第三十九條、第四十九條、第六十條第一項(淸算ニ關スル規定ヲ除ク)、第六十條ノ二、第六十一條(淸算ニ關スル規定ヲ除ク)、第六十二條、第六十五條、第六十八條、第六十九條、第七十四條ノ二第一項及第九十三條ノ二、民法第四十七條、第四十八條、第六十條、第七十三條乃至第八十二條及第八十四條第一號竝ニ非訟事件手續法第三十五條第二項、第三十六條、第三十七條ノ二、第百十七條、第百十九條乃至第百二十二條、第百三十六條乃至第百三十八條、第百四十二條、第百四十三條、第百四十七條乃至第百五十七條、第百七十五條乃至第百七十七條及第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ負債整理組合ニ之ヲ準用ス但シ產業組合法第九十三條ノ二中三百圓トアルハ二百圓トシ民法第四十八條及第七十七條中一週間トアルハ二週間トス
產業組合法第十一條、第十二條、第十七條第一項、第十八條乃至第二十一條、第四十條乃至第四十二條、第四十五條、第四十八條、第五十三條、第五十六條及第五十七條ノ規定ハ保證責任ノ負債整理組合ニ之ヲ準用ス
第二十五條 負債整理組合ノ理事又ハ監事何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ組合ノ事業ノ範圍外ニ於テ貸付ヲ爲シ又ハ投機取引ノ爲ニ組合財產ヲ處分シタルトキハ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ハ刑法ニ正條アル場合ハ之ヲ適用セズ
第三章 負債整理事業資金特別融通及損失補償
第二十六條 市町村ハ負債整理事業ヲ助成スル爲必要アリト認ムルトキハ負債整理組合又ハ第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ニ對シ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ特別融通ヲ爲スコトヲ得
第二十七條 市町村ガ前條ノ規定ニ依リ特別融通ヲ爲スコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ五年間トシ其ノ融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ二十年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十八條 北海道府縣ハ第二十六條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲スニ因リ市町村ガ損失ヲ受ケタルトキ之ニ對シ其ノ特別融通總額ノ十分ノ三以內ノ金額(損失補償金)ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ主務大臣大藏大臣ニ協議シテ之ヲ定ム
第二十九條 政府ハ前條ノ損失補償ノ契約ニ基キ北海道府縣ガ損失補償ヲ爲シタルトキ之ニ對シ其ノ損失補償金ノ半額ニ相當スル金額ヲ補給スルノ契約ヲ爲スコトヲ得但シ補給金ノ總額ハ三千萬圓ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三十條 第二十八條ノ規定ニ依リ北海道府縣ガ市町村ニ對シテ爲ス損失補償ノ契約ニ於テハ北海道府縣ノ損失補償金中其ノ四分ノ一ニ相當スル金額ヲ當該市町村ニ於テ負擔スベキ旨ヲ定ムベシ但シ特別ノ事由アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市町村ノ負擔スベキ金額ノ割合ニ付別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 第二十六條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲シタルニ因リ市町村ノ受ケタル損失及其ノ額ハ負債整理事業資金特別融通損失審查會之ヲ決定ス
負債整理事業資金特別融通損失審查會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二條 第二十九條ノ契約ニ基キ政府ガ北海道府縣ニ對シ支拂フベキ補給金ハ國債證券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第三十三條 政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付スル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
第三十四條 本法ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
登錄稅法第十九條但書中「第十四號」ヲ「第十四號乃至第十六號」ニ改メ同條第八號中「自作農ノ創設維持」ノ下ニ「又ハ負債整理」ヲ加ヘ「又ハ產業組合聯合會」ヲ「、產業組合聯合會、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人」ニ改メ同條ニ左ノ二號ヲ加フ
十五 市町村、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ガ負債整理事業資金貸付ノ爲ニスル抵當權ノ取得ノ登記
十六 市町村、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ヨリ負債整理事業資金ノ貸付ヲ受ケタル者ガ其ノ貸付ノ條件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル市町村、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ所有權ノ取得ノ登記
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル農村負債整理組合法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年三月二十八日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
大蔵大臣 高橋是清
内務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 小山松吉
農林大臣 後藤文夫
法律第二十一号
農村負債整理組合法
第一章 総則
第一条 本法ハ農山漁村ニ居住スル者ノ経済更生ヲ図ル為隣保共助ノ精神ニ則リ其ノ者ヲシテ負債整理組合ヲ組織セシメ組合ノ樹立シタル負債償還計画及経済更生計画ヲ履行セシメ以テ其ノ負債ノ整理ヲ為サシムルコトヲ目的トス
第二条 本法ニ於テ負債トハ負債整理組合ノ組合員ノ負担スル私法上ノ金銭債務ニシテ組合設立前ニ生ジタルモノヲ謂フ但シ本法施行後ニ生ジタルモノハ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官庁ノ認可ヲ受ケタルモノニ限ル
第三条 負債整理組合ノ組合員本法ニ依リ負債整理ヲ為サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ負債整理組合ニ対シ其ノ旨ヲ申出ヅベシ
負債整理組合前項ノ申出ヲ受ケタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ組合員及債権者間ニ於ケル負債ノ金額、利率、償還期限、償還方法其ノ他ノ条件ノ緩和ニ関スル協定ニ付斡旋ヲ為スベシ
第四条 前条ノ斡旋ニ依リ協定成ラザル負債ニ付テハ負債整理組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ市町村負債整理委員会ニ対シ其ノ協定ノ斡旋ヲ請求スルコトヲ得
市町村負債整理委員会ノ組織、権限其ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 前条ノ市町村負債整理委員会ノ斡旋ニ依リ協定成ラザルトキ又ハ負債整理組合ノ事務所ノ所在地タル市町村ニ市町村負債整理委員会ナキ為其ノ斡旋ニ依ルコト能ハザルトキハ債務者タル組合員又ハ債権者ハ金銭債務臨時調停法第二条第一項ノ期日ニ関スル制限ノ規定ニ拘ラズ
同法ニ依ル調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
第六条 第三条第一項ノ規定ニ依リ負債整理ノ申出アリタル負債ニ付金銭債務臨時調停法ニ依ル調停事件繋属スルトキハ裁判所又ハ調停委員会ハ第三条第二項又ハ第四条ノ規定ニ依ル斡旋ノ終了ニ至ル迄其ノ調停手続ヲ中止スルコトヲ得
第七条 負債整理組合ヨリ負債整理資金ノ貸付ヲ受ケタル組合員ガ其ノ貸付ノ条件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル負債整理組合ノ不動産其ノ他ノモノノ取得ニ関シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ
第八条 信用組合其ノ他勅令ヲ以テ定ムル法人ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官庁ノ認可ヲ受ケ第十一条ノ事業ヲ行フモノハ本章ノ適用ニ関シテハ之ヲ負債整理組合ト看做ス但シ第二条中組合設立前トアルハ行政官庁ノ認可前トス
前項ノ法人ガ第十一条ノ事業ノ認可ヲ申請スルコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ三年間トス
第九条 本法中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ之ニ準ズベキモノトス
第二章 負債整理組合
第十条 負債整理組合ハ組合員ノ経済更生ヲ図ル為隣保共助ノ精神ニ則リ組合員ヲシテ其ノ負債ノ整理ヲ為サシムルコトヲ目的トス
第十一条 負債整理組合ハ其ノ目的ヲ達スル為左ノ事業ヲ行フ
一 組合員ノ負債償還計画及経済更生計画ノ樹立
二 債務者タル組合員及債権者間ニ於ケル負債ノ金額、利率、償還期限、償還方法其ノ他ノ条件ノ緩和ニ関スル協定ノ斡旋
三 組合員ニ対スル負債整理資金ノ貸付
四 前各号ニ掲グルモノノ外組合員ノ負債整理ニ必要ナル事業
負債整理組合ハ組合員ガ負債整理ノ為其ノ所有地ヲ処分スル場合ニ於テ組合員タル小作人其ノ他ノ者ガ其ノ土地ヲ購入セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ニ要スル資金ノ貸付ヲ為スコトヲ得
第十二条 負債整理組合ハ法人トス
第十三条 負債整理組合ハ一定ノ地区内ニ居住スル者ヲ以テ之ヲ組織ス
前項ノ地区ハ部落其ノ他之ニ準ズル区域ニ依ル但シ特別ノ事由アルトキハ町村ノ区域ニ依ルコトヲ得
第十四条 負債整理組合ノ組織ハ無限責任及保証責任ノ二種トス
無限責任ノ組合ニ在リテハ組合財産ヲ以テ其ノ債務ヲ完済スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全員ガ連帯無限ノ責任ヲ負担シ保証責任ノ組合ニ在リテハ組合財産ヲ以テ其ノ債務ヲ完済スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額(保証金額)ヲ限度トシテ責任ヲ負担ス
第十五条 負債整理組合ヲ設立セントスルトキハ設立者ハ規約ヲ作成シ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ニ設立ノ認可ヲ申請スベシ
規約ニハ本法ニ規定アルモノヲ除クノ外左ニ掲グル事項ヲ記載シ設立者之ニ署名又ハ記名捺印スルコトヲ要ス
一 目的
二 名称
三 組織
四 地区
五 事務所ノ所在地
六 組合員ノ加入脱退ニ関スル規定
七 事業ノ執行ニ関スル規定
八 役員ニ関スル規定
九 損失分担ニ関スル規定
十 組合ガ公告ヲ為ス方法
十一 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
十二 無限責任ノ組合ニ在リテハ組合費ノ分担ニ関スル規定
十三 保証責任ノ組合ニ在リテハ出資一口ノ金額及其ノ払込ノ方法並ニ保証金額ニ関スル規定
第十六条 前条第一項ノ認可ノ申請ヲ為スコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ三年間トス
第十七条 負債整理組合ハ其ノ設立ノ日ヨリ二週間以内ニ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一 第十五条第二項第一号乃至第五号及第十一号ニ掲ゲタル事項
二 設立認可ノ年月日
三 理事及監事ノ氏名及住所
四 保証責任ノ組合ニ在リテハ出資一口ノ金額及其ノ払込ノ方法
前項ニ掲グル事項ニ変更アリタルトキハ二週間以内ニ其ノ登記ヲ為スベシ
第十八条 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十九条 負債整理組合ガ本法ニ基キテ為ス登記ニ付テハ登録税ヲ課セズ
第二十条 負債整理組合ノ設立登記ノ申請書ニハ無限責任ノ組合ニ在リテハ産業組合法第十六条ノ五第一項第三号ニ掲グル事項ヲ、保証責任ノ組合ニ在リテハ同条同項第一号、第二号及第四号ニ掲グル事項ヲ記載シタル組合原簿ヲ添附スベシ
組合員ノ加入ニ因ル変更登記ノ申請書ニハ無限責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ氏名及住所ヲ、保証責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ氏名、住所及保証金額ヲ記載シタル組合原簿ヲ添附スベシ
第十七条第三項及第十八条並ニ産業組合法第十六条ノ四第一項及第十六条ノ五第二項ノ規定ハ組合原簿ニ之ヲ準用ス但シ同法第十六条ノ四第一項中地方長官トアルハ事務所所在地ノ登記所トス
第二十一条 負債整理組合ハ規約ノ定ムル所ニ依リ其ノ組合員ヲシテ組合ノ負債償還ノ一部ニ充ツル為積立金ヲ醵出セシムルコトヲ得
前項ノ積立金ノ管理、処分其ノ他必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二条 負債整理組合ノ組合員ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外総組合員ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非ザレバ脱退スルコトヲ得ズ
脱退シタル組合員ハ脱退前ニ生ジタル組合ノ債務ニ付第十四条第二項ノ規定ニ依ル責任ヲ負担ス
第二十三条 負債整理組合ニ加入シタル組合員ハ其ノ加入前ニ生ジタル組合ノ債務ニ付テモ亦第十四条第二項ノ規定ニ依ル責任ヲ負担ス
第二十四条 産業組合法第三条、第四条、第六条、第七条、第二十三条、第二十五条乃至第三十一条ノ二、第三十二条乃至第三十八条、第三十九条、第四十九条、第六十条第一項(清算ニ関スル規定ヲ除ク)、第六十条ノ二、第六十一条(清算ニ関スル規定ヲ除ク)、第六十二条、第六十五条、第六十八条、第六十九条、第七十四条ノ二第一項及第九十三条ノ二、民法第四十七条、第四十八条、第六十条、第七十三条乃至第八十二条及第八十四条第一号並ニ非訟事件手続法第三十五条第二項、第三十六条、第三十七条ノ二、第百十七条、第百十九条乃至第百二十二条、第百三十六条乃至第百三十八条、第百四十二条、第百四十三条、第百四十七条乃至第百五十七条、第百七十五条乃至第百七十七条及第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ負債整理組合ニ之ヲ準用ス但シ産業組合法第九十三条ノ二中三百円トアルハ二百円トシ民法第四十八条及第七十七条中一週間トアルハ二週間トス
産業組合法第十一条、第十二条、第十七条第一項、第十八条乃至第二十一条、第四十条乃至第四十二条、第四十五条、第四十八条、第五十三条、第五十六条及第五十七条ノ規定ハ保証責任ノ負債整理組合ニ之ヲ準用ス
第二十五条 負債整理組合ノ理事又ハ監事何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ組合ノ事業ノ範囲外ニ於テ貸付ヲ為シ又ハ投機取引ノ為ニ組合財産ヲ処分シタルトキハ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ規定ハ刑法ニ正条アル場合ハ之ヲ適用セズ
第三章 負債整理事業資金特別融通及損失補償
第二十六条 市町村ハ負債整理事業ヲ助成スル為必要アリト認ムルトキハ負債整理組合又ハ第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ニ対シ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ特別融通ヲ為スコトヲ得
第二十七条 市町村ガ前条ノ規定ニ依リ特別融通ヲ為スコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ五年間トシ其ノ融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ二十年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二十八条 北海道府県ハ第二十六条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為スニ因リ市町村ガ損失ヲ受ケタルトキ之ニ対シ其ノ特別融通総額ノ十分ノ三以内ノ金額(損失補償金)ヲ補償スルノ契約ヲ為スコトヲ得
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ主務大臣大蔵大臣ニ協議シテ之ヲ定ム
第二十九条 政府ハ前条ノ損失補償ノ契約ニ基キ北海道府県ガ損失補償ヲ為シタルトキ之ニ対シ其ノ損失補償金ノ半額ニ相当スル金額ヲ補給スルノ契約ヲ為スコトヲ得但シ補給金ノ総額ハ三千万円ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三十条 第二十八条ノ規定ニ依リ北海道府県ガ市町村ニ対シテ為ス損失補償ノ契約ニ於テハ北海道府県ノ損失補償金中其ノ四分ノ一ニ相当スル金額ヲ当該市町村ニ於テ負担スベキ旨ヲ定ムベシ但シ特別ノ事由アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市町村ノ負担スベキ金額ノ割合ニ付別段ノ定ヲ為スコトヲ得
第三十一条 第二十六条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為シタルニ因リ市町村ノ受ケタル損失及其ノ額ハ負債整理事業資金特別融通損失審査会之ヲ決定ス
負債整理事業資金特別融通損失審査会ノ組織及権限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二条 第二十九条ノ契約ニ基キ政府ガ北海道府県ニ対シ支払フベキ補給金ハ国債証券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第三十三条 政府ハ前条ノ規定ニ依リ交付スル為必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ発行スルコトヲ得
第三十四条 本法ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
登録税法第十九条但書中「第十四号」ヲ「第十四号乃至第十六号」ニ改メ同条第八号中「自作農ノ創設維持」ノ下ニ「又ハ負債整理」ヲ加ヘ「又ハ産業組合連合会」ヲ「、産業組合連合会、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人」ニ改メ同条ニ左ノ二号ヲ加フ
十五 市町村、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ガ負債整理事業資金貸付ノ為ニスル抵当権ノ取得ノ登記
十六 市町村、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ヨリ負債整理事業資金ノ貸付ヲ受ケタル者ガ其ノ貸付ノ条件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル市町村、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ所有権ノ取得ノ登記