農村負債整理資金特別融通及損失補償法
法令番号: 法律第七十七號
公布年月日: 昭和12年8月14日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル農村負債整理資金特別融通及損失補償法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年八月十三日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
內務大臣 馬場鍈一
司法大臣 鹽野季彥
大藏大臣 賀屋興宣
農林大臣 伯爵 有馬賴寧
法律第七十七號
農村負債整理資金特別融通及損失補償法
第一條 市町村又ハ產業組合中央金庫ハ負債整理事業ヲ助成スル爲必要アリト認ムルトキハ負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ニ對シ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ特別融通ヲ爲スコトヲ得
產業組合中央金庫ノ爲ス前項ノ特別融通ハ所屬信用組合ガ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ場合又ハ所屬信用組合ガ其ノ組合員タル負債整理組合若ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ニ對シ負債整理資金ヲ融通スル場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ信用組合ニ對シ之ヲ爲スモノトス
日本勸業銀行、農工銀行又ハ北海道拓殖銀行(以下融資銀行ト稱ス)ハ負債整理組合ノ組合員、農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ組織者又ハ命令ノ定ムル所ニ依リ負債ノ整理ヲ爲ス者ニ對シ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ特別融通ヲ爲スコトヲ得
第二條 市町村、產業組合中央金庫又ハ融資銀行ガ前條ノ規定ニ依リ特別融通ヲ爲スコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ十年間トシ其ノ融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ二十五年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三條 融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲ス場合ニ於ケル貸付金額ハ日本勸業銀行法第十八條又ハ農工銀行法第十條ノ規定ニ拘ラズ其ノ擔保タル不動產ニ付鑑定シタル價格以內トス
第四條 產業組合中央金庫特別融通及損失補償法第三條及第四條ノ規定ハ產業組合中央金庫ガ第一條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲ス場合ニ、不動產融資及損失補償法第四條及第五條ノ規定ハ融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第五條 北海道府縣ハ第一條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲スニ因リ市町村ガ損失ヲ受ケタルトキ之ニ對シ其ノ特別融通總額ノ十分ノ三以內ノ金額(市町村ニ對スル損失補償金)ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
政府ハ前項ノ損失補償ノ契約ニ基キ北海道府縣ガ損失補償ヲ爲シタルトキ之ニ對シ其ノ市町村ニ對スル損失補償金ノ三分ノ二ニ相當スル金額ヲ補給スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ北海道府縣ガ市町村ニ對シテ爲ス損失補償ノ契約ニ於テハ北海道府縣ノ市町村ニ對スル損失補償金中其ノ六分ノ一ニ相當スル金額ヲ當該市町村ニ於テ負擔スベキ旨ヲ定ムベシ但シ特別ノ事由アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市町村ノ負擔スベキ金額ノ割合ニ付別段ノ定ヲ爲シ又ハ市町村ヲシテ負擔ヲ爲サシメザルコトヲ得
第六條 政府ハ第一條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲スニ因リ產業組合中央金庫又ハ融資銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ產業組合中央金庫ニ對シテハ其ノ特別融通總額ノ十分ノ三以內、融資銀行ニ對シテハ其ノ特別融通總額ノ十分ノ二以內ノ金額ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
第七條 第五條第一項及前條ノ損失ヲ決定スル基準ハ主務大臣大藏大臣ニ協議シテ之ヲ定ム
第八條 第五條第二項及第六條ノ規定ニ依ル政府ノ補給金及補償金ノ總額ハ一億二千萬圓ヲ超ユルコトヲ得ズ
第九條 第一條ノ規定ニ依ル特別融通ヲ爲シタルニ因リ市町村、產業組合中央金庫又ハ融資銀行ノ受ケタル損失及其ノ額ハ負債整理資金特別融通損失審查會之ヲ決定ス
負債整理資金特別融通損失審查會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 第五條第二項及第六條ノ契約ニ基キ政府ガ北海道府縣、產業組合中央金庫及融資銀行ニ對シ支拂フベキ補給金又ハ補償金ハ國債證券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第十一條 政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付スル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
第十二條 本法ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第十三條 本法中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ之ニ準ズベキモノトス
附 則
第十四條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條 
農村負債整理組合法第三章ヲ削ル
從前ノ農村負債整理組合法第二十六條ノ規定ニ依ル特別融通ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル但シ同法第三十一條第一項ノ規定ニ依ル決定ハ本法第九條ノ負債整理資金特別融通損失審査會之ヲ行フ
第十六條 
農村負債整理組合法第七條ニ左ノ一項ヲ加フ
負債整理組合ガ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ事業遂行ノ爲必要ナル土地ヲ取得スル場合亦前項ニ同ジ
同法第八條第二項及同法第十六條中「六年間」ヲ「十三年間」ニ改ム
第十七條 
登錄稅法第十九條但書中「第十四號乃至第十六號」ヲ「第十四號乃至第十七號」ニ改メ同條第十五號及第十六號ヲ左ノ如ク改ム
十五 市町村、產業組合中央金庫、信用組合、日本勸業銀行、農工銀行、北海道拓殖銀行、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ負債整理ノ爲ノ資金貸付ノ場合ニ於ケル抵當權ノ取得ノ登記
十六 市町村、產業組合中央金庫、信用組合、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ヨリ負債整理ノ爲ノ資金ノ貸付ヲ受ケタル者ガ其ノ貸付ノ條件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル市町村、產業組合中央金庫、信用組合、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ所有權ノ取得ノ登記
十七 負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八條ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ同法第七條第二項ニ規定スル場合ニ於ケル土地所有權ノ取得ノ登記
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル農村負債整理資金特別融通及損失補償法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年八月十三日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
内務大臣 馬場鍈一
司法大臣 塩野季彦
大蔵大臣 賀屋興宣
農林大臣 伯爵 有馬頼寧
法律第七十七号
農村負債整理資金特別融通及損失補償法
第一条 市町村又ハ産業組合中央金庫ハ負債整理事業ヲ助成スル為必要アリト認ムルトキハ負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ニ対シ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ特別融通ヲ為スコトヲ得
産業組合中央金庫ノ為ス前項ノ特別融通ハ所属信用組合ガ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ場合又ハ所属信用組合ガ其ノ組合員タル負債整理組合若ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ニ対シ負債整理資金ヲ融通スル場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ信用組合ニ対シ之ヲ為スモノトス
日本勧業銀行、農工銀行又ハ北海道拓殖銀行(以下融資銀行ト称ス)ハ負債整理組合ノ組合員、農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ組織者又ハ命令ノ定ムル所ニ依リ負債ノ整理ヲ為ス者ニ対シ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ特別融通ヲ為スコトヲ得
第二条 市町村、産業組合中央金庫又ハ融資銀行ガ前条ノ規定ニ依リ特別融通ヲ為スコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ十年間トシ其ノ融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ二十五年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三条 融資銀行ガ第一条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為ス場合ニ於ケル貸付金額ハ日本勧業銀行法第十八条又ハ農工銀行法第十条ノ規定ニ拘ラズ其ノ担保タル不動産ニ付鑑定シタル価格以内トス
第四条 産業組合中央金庫特別融通及損失補償法第三条及第四条ノ規定ハ産業組合中央金庫ガ第一条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為ス場合ニ、不動産融資及損失補償法第四条及第五条ノ規定ハ融資銀行ガ第一条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
第五条 北海道府県ハ第一条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為スニ因リ市町村ガ損失ヲ受ケタルトキ之ニ対シ其ノ特別融通総額ノ十分ノ三以内ノ金額(市町村ニ対スル損失補償金)ヲ補償スルノ契約ヲ為スコトヲ得
政府ハ前項ノ損失補償ノ契約ニ基キ北海道府県ガ損失補償ヲ為シタルトキ之ニ対シ其ノ市町村ニ対スル損失補償金ノ三分ノ二ニ相当スル金額ヲ補給スルノ契約ヲ為スコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ北海道府県ガ市町村ニ対シテ為ス損失補償ノ契約ニ於テハ北海道府県ノ市町村ニ対スル損失補償金中其ノ六分ノ一ニ相当スル金額ヲ当該市町村ニ於テ負担スベキ旨ヲ定ムベシ但シ特別ノ事由アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市町村ノ負担スベキ金額ノ割合ニ付別段ノ定ヲ為シ又ハ市町村ヲシテ負担ヲ為サシメザルコトヲ得
第六条 政府ハ第一条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為スニ因リ産業組合中央金庫又ハ融資銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ産業組合中央金庫ニ対シテハ其ノ特別融通総額ノ十分ノ三以内、融資銀行ニ対シテハ其ノ特別融通総額ノ十分ノ二以内ノ金額ヲ補償スルノ契約ヲ為スコトヲ得
第七条 第五条第一項及前条ノ損失ヲ決定スル基準ハ主務大臣大蔵大臣ニ協議シテ之ヲ定ム
第八条 第五条第二項及第六条ノ規定ニ依ル政府ノ補給金及補償金ノ総額ハ一億二千万円ヲ超ユルコトヲ得ズ
第九条 第一条ノ規定ニ依ル特別融通ヲ為シタルニ因リ市町村、産業組合中央金庫又ハ融資銀行ノ受ケタル損失及其ノ額ハ負債整理資金特別融通損失審査会之ヲ決定ス
負債整理資金特別融通損失審査会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 第五条第二項及第六条ノ契約ニ基キ政府ガ北海道府県、産業組合中央金庫及融資銀行ニ対シ支払フベキ補給金又ハ補償金ハ国債証券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第十一条 政府ハ前条ノ規定ニ依リ交付スル為必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ発行スルコトヲ得
第十二条 本法ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
第十三条 本法中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ之ニ準ズベキモノトス
附 則
第十四条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五条 
農村負債整理組合法第三章ヲ削ル
従前ノ農村負債整理組合法第二十六条ノ規定ニ依ル特別融通ニ関シテハ仍従前ノ例ニ依ル但シ同法第三十一条第一項ノ規定ニ依ル決定ハ本法第九条ノ負債整理資金特別融通損失審査会之ヲ行フ
第十六条 
農村負債整理組合法第七条ニ左ノ一項ヲ加フ
負債整理組合ガ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ事業遂行ノ為必要ナル土地ヲ取得スル場合亦前項ニ同ジ
同法第八条第二項及同法第十六条中「六年間」ヲ「十三年間」ニ改ム
第十七条 
登録税法第十九条但書中「第十四号乃至第十六号」ヲ「第十四号乃至第十七号」ニ改メ同条第十五号及第十六号ヲ左ノ如ク改ム
十五 市町村、産業組合中央金庫、信用組合、日本勧業銀行、農工銀行、北海道拓殖銀行、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ負債整理ノ為ノ資金貸付ノ場合ニ於ケル抵当権ノ取得ノ登記
十六 市町村、産業組合中央金庫、信用組合、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ヨリ負債整理ノ為ノ資金ノ貸付ヲ受ケタル者ガ其ノ貸付ノ条件ヲ具備セザルニ至リタル場合ニ於ケル市町村、産業組合中央金庫、信用組合、負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ所有権ノ取得ノ登記
十七 負債整理組合又ハ農村負債整理組合法第八条ノ規定ニ依リ負債整理事業ヲ行フ法人ノ同法第七条第二項ニ規定スル場合ニ於ケル土地所有権ノ取得ノ登記