朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル耕地整理法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年四月十二日
內閣總理大臣兼大藏大臣 侯爵 桂太郞
內務大臣 法學博士 男爵 平田東助
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
法律第三十號
耕地整理法
第一章 總則
第一條 本法ニ於テ耕地整理ト稱スルハ土地ノ農業上ノ利用ヲ增進スル目的ヲ以テ本法ニ依リ左ノ各號ノ一ニ該當スル事項ヲ行フヲ謂フ
一 土地ノ交換、分合、開墾、地目變換其ノ他區劃形質ノ變更若ハ道路、堤塘、畦畔、溝渠、溜池等ノ變更廢置又ハ之ニ伴フ灌漑排水ニ關スル設備若ハ工事
二 前號ノ事項施行ノ爲若ハ施行ノ結果必要ナル工作物ノ設置其ノ他ノ設備又ハ其ノ維持管理
三 前二號ノ事項ニ關シ必要アルトキ國、府縣、郡、市町村其ノ他公共團體ノ認許ヲ得テ行フ營造物ノ修繕
第二條 本法ニ於テ關係人ト稱スルハ整理施行地ニ付所有權以外ノ登記シタル權利ヲ有スル者ヲ謂フ
第三條 耕地整理ヲ施行セムトスルトキハ設計書ヲ作リ關係人ノ同意書ヲ添ヘ數人共同シテ施行セムトスルモノニ在リテハ尙規約ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ關係人ノ同意ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ添附スヘシ
設計書、規約若ハ整理施行地區ヲ變更シ若ハ一人ニテ施行スル耕地整理ヲ變シテ數人共同ノ施行ト爲シ又ハ事業ヲ停止若ハ廢止セムトスルトキハ之ニ關スル必要ノ事項ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ耕地整理施行ノ爲爲シタル借入金アルトキハ債權者ノ同意ヲ得ルニ非サレハ事業ヲ廢止シ、整理施行地區ヲ減少シ又ハ債務ノ分擔ニ關スル規約ヲ變更スルコトヲ得ス
前項整理施行地區ノ變更ニ依リ新ニ整理施行地區ニ編入セラルヘキ土地ニ付テハ第一項ノ同意書ニ關スル規定ヲ準用ス
地方長官第一項又ハ第二項ノ認可ヲ與ヘタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スヘシ
設計書、規約若ハ整理施行地區ノ變更又ハ事業ノ停止若ハ廢止ハ前項ノ吿示アル迄之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
前五項ノ規定ハ耕地整理組合ニ之ヲ適用セス
第四條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ爲シタル處分、手續其ノ他ノ行爲ハ整理施行地ノ所有者、占有者又ハ關係人ノ承繼人ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第五條 整理施行地ノ所有者ニ屬スル耕地整理ニ關スル權利義務ハ土地ノ所有權ト共ニ其ノ承繼人ニ移轉ス
第六條 本法中別ニ規定アル場合ヲ除クノ外土地ノ所有者、占有者、關係人其ノ他整理施行地ニ付權利ヲ有スル者ハ耕地整理ノ施行ニ對シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス
第七條 地方長官又ハ郡長耕地整理ニ關スル調査ヲ爲ス爲必要アルトキハ官吏又ハ吏員ヲシテ他人ノ土地ニ立入リ測量又ハ檢査ヲ爲シ障害ノ竹木土石等ヲ移轉若ハ除却セシムルコトヲ得但シ之ニ依リ生シタル損害ハ之ヲ補償スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ豫メ其ノ土地ノ占有者ニ之ヲ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テハ公吿ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第八條 前條ノ規定ハ耕地整理施行若ハ耕地整理組合設立ノ認可ヲ申請セムトスル者又ハ整理施行者カ整理施行ノ爲必要ナル準備ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ市町村長ノ許可ヲ受クヘシ
第九條 耕地整理施行若ハ耕地整理組合設立ノ認可ヲ申請セムトスル者又ハ整理施行者ハ整理施行地ヲ管轄スル登記所、土地臺帳所管廳、市役所又ハ町村役場ニ就キ無償ニテ耕地整理ニ關シ必要ナル簿書ノ閱覽又ハ謄寫ヲ求ムルコトヲ得但シ耕地整理組合ノ組合長ヲ除クノ外其ノ資格ニ關スル市町村長ノ證明書ヲ提出スヘシ
第十條 耕地整理施行ノ爲土地又ハ建物ニ付登記又ハ登錄ヲ爲ストキハ登錄稅ヲ免除ス
前項ノ規定ハ耕地整理ノ施行ニ伴ヒ大字若ハ字ノ名稱又ハ其ノ區域ニ變更アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十一條 耕地整理ヲ施行スル爲國有ニ屬スル道路、堤塘、溝渠、溜池等ノ全部又ハ一部ヲ廢止シタルニ依リ不用ニ歸シタル土地ハ無償ニテ之ヲ整理施行地ノ所有者ニ交付ス
耕地整理ノ施行ニ依リ開設シタル道路、堤塘、溝渠、溜池等ニシテ前項廢止シタルモノニ代ルヘキモノハ無償ニテ之ヲ國有地ニ編入ス
第十二條 本法ニ依ル開墾、地目變換其ノ他土地ノ區劃形質ノ變更又ハ道路、堤塘、溝渠、溜池等ノ變更廢置ニ關シテハ地租條例第十條ノ一乃至第十一條、第十六條乃至第十九條ノ規定ヲ適用セス
第十三條 耕地整理ヲ施行シタル土地ノ地價ハ整理施行地區內土地ノ現地價ノ合計額ヲ每筆相當ニ配賦シテ之ヲ定ム但シ第十一條第二項ニ依リ國有地ニ編入シタル土地ノ面積カ同條第一項ニ依リ交付シタル土地ノ面積ヨリ多キ場合ニ於テハ整理施行地ノ現地價ノ平均額ヲ其ノ面積ノ差額ニ乘シタル金額ヲ現地價ノ合計額ヨリ控除シタル額ヲ以テ現地價ノ合計額ト看做ス
整理施行地ノ地租ハ其ノ整理施行地區ノ全部ニ付土地臺帳ノ整理ヲ完了スル迄從前ノ地域、地目及地價ニ依リ之ヲ徵收ス
規約ヲ以テ整理施行地區ヲ數區ニ分チタル場合ニ於テハ其ノ各區ヲ以テ前二項ノ整理施行地區ト看做ス
第十四條 耕地整理ヲ施行スルニ當リ其ノ地區內ノ土地總面積ノ五分ノ一以上ニ當ル土地ニ付開墾ヲ爲シ又ハ地目ヲ變換スル場合ニ於テハ工事完了ノトキ開墾又ハ變換シタル土地ニ對シ從前ノ地域ニ依リ其ノ地價ヲ修正シ前條第一項ノ現地價トス
前項ノ場合ニ於テ開墾シタル土地ニ付テハ工事著手ノ年ヨリ二十年目、變換シタル土地ニ付テハ工事完了ノ年ヨリ六年目ニ至リ修正地價ニ依リ其ノ地租ヲ徵收ス但シ開墾シタル土地ニシテ工事著手ノ年ヨリ二十年目ニ達シ地味成熟ニ至ラサルモノニ對シテハ更ニ十年以內ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
地租ヲ課セサル土地ヲ整理施行地區ニ編入シ地租ヲ課スヘキ土地ト爲シタルトキハ第十一條第一項ニ依リ交付シタル土地ヲ除クノ外工事完了ノトキ從前ノ地域ニ依リ其ノ地價ヲ設定シ前條第一項ノ現地價トス
第十五條 整理施行地區內ノ土地中開墾著手後九年、地目若ハ地類ノ變換後五年ヲ經過セサルモノ又ハ地租ノ免除若ハ輕減ニ關スル各種ノ年期ヲ有スルモノアルトキハ左ノ各號ノ定ムル所ニ依ル
一 開墾若ハ地類ノ變換ヲ爲シタル土地、地目ヲ變換シ地價ノ修正ナキ土地又ハ鍬下年期、新開免租年期、地價据置年期ヲ有スル土地ハ工事著手ノ際地價ヲ修正シ又ハ設定ス
二 荒地免租年期又ハ低價年期ヲ有スル土地ハ工事完了ノトキ從前ノ地域ニ依リ其ノ地價ヲ修正ス
三 第一號ニ依リ地價ヲ修正シ又ハ設定シタル土地ニ付テハ開墾著手後十年目、地目若ハ地類ノ變換後六年目又ハ年期明ニ至リ修正地價又ハ設定地價ニ依リ地租ヲ徵收ス但シ工事完了シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
四 工事完了シタルトキハ第一號若ハ第二號ニ記載シタル土地又ハ地目ヲ變換シ地價ノ修正アリタル土地ニ付テハ修正地價又ハ設定地價ヲ以テ第十三條第一項ノ現地價トス
第十六條 工事完了シタルトキニ於テ開墾著手後九年、地目若ハ地類ノ變換後五年ヲ經過セサル土地若ハ前條ニ記載スル年期ヲ有スルモノニシテ年期ノ終了セサル土地又ハ第十四條第二項ニ該當スル土地アルトキハ事業關係者ハ其ノ協議ヲ以テ修正地租ト從前ノ地租トノ差額ノ利益若ハ負擔又ハ地租ノ免除ヲ受クヘキ土地及金額ヲ定メ政府ニ申吿シ殘年期間又ハ第十四條第二項ニ定ムル期間中ハ其ノ金額ヲ加除シテ其ノ土地ノ地租ヲ納ムヘシ但シ協議一致セサルトキハ政府ニ於テ之ヲ定ム
第十七條 換地ハ別ニ規定アル場合ヲ除クノ外第三十條第四項ノ吿示ノ日ヨリ之ヲ從前ノ土地ト看做ス
前項ノ規定ハ行政上又ハ裁判上ノ處分ニシテ從前ノ土地ニ專屬スルモノニ影響ヲ及ホサス
第十八條 賃借地ニ付耕地整理施行ノ爲賃借ヲ爲シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ賃借人ハ整理施行者ニ對シ解除ニ依リ生シタル損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得但シ整理施行者ハ規約ノ定ムル所ニ依リ賃貸人ニ對シ求償スルコトヲ得
第十九條 耕地整理施行ノ爲賃借地ノ利用ヲ妨ケラルルトキハ賃借人ハ借賃ノ相當ノ減額又ハ前拂シタル借賃ノ相當ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得
第二十條 耕地整理施行ノ爲著シク賃貸地ノ利用ヲ增シタルトキハ賃貸人ハ借賃ノ相當ノ增額ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ニ於テ賃借人ハ契約ノ解除ヲ爲シ其ノ義務ヲ免ルルコトヲ得
第二十一條 耕地整理施行ノ爲地上權、永小作權又ハ地役權ヲ設定シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ地上權者、永小作權者又ハ地役權者ハ其ノ權利ヲ抛棄スルコトヲ得
第十八條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條 整理施行地ノ上ニ存スル地役權ハ耕地整理施行ノ後仍從前ノ土地ノ上ニ存ス
耕地整理施行ノ爲地役權者カ其ノ權利ヲ行使スル利益ヲ受クルコトヲ要セサルニ至リタルトキハ其ノ地役權ハ消滅ス
耕地整理施行ノ爲從前ト同一ノ利益ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル地役權者ハ其ノ利益ヲ保存スル範圍內ニ於テ地役權ノ設定ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條 第十九條及第二十條ノ規定ハ地上權、永小作權又ハ地役權ニ之ヲ準用ス
第二十四條 前六條ノ規定ニ依ル賃貸借ノ解除、地上權若ハ永小作權ノ抛棄、地役權ノ抛棄若ハ設定又ハ借賃、地代、小作料若ハ地役ノ對價ノ減額、拂戾若ハ增額ノ請求ハ第三十條第四項ノ吿示ノ日ヨリ三十日ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二十五條 整理施行地又ハ之ニ存スル建物ニシテ先取特權、質權又ハ抵當權ノ目的タル場合ニ於テ第二十七條、第二十八條、第三十條第一項、第二項又ハ第四十四條第二項ノ規定ニ依リ拂渡スヘキ金錢アルトキハ整理施行者ハ其ノ金額ヲ供託スヘシ但シ關係人ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ整理施行地又ハ之ニ存スル建物カ訴訟ノ目的タリ又ハ整理施行地區ニ編入後訴訟ノ目的ト爲リタル爲訴訟當事者ヨリ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
先取特權者、質權者、抵當權者又ハ訴訟當事者ハ第二項ノ規定ニ依リ供託シタル金錢ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十六條 第三條ノ規定ニ依ル整理施行者カ其ノ事業ノ爲借入レタル金額及其ノ利息其ノ他耕地整理ノ施行ニ依リ生シタル債務ニ付テハ共同施行者連帶シテ其ノ責ニ任ス但シ規約ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
帝室及國ハ前項ノ責ニ任セス
第二十七條 整理施行者ハ耕地整理施行ノ爲必要アルトキハ整理施行地區內ノ工作物又ハ木石等ヲ移轉シ、除却シ又ハ破毀スルコトヲ得但シ之ニ依リ生シタル損害ハ之ヲ補償スヘシ
第二十八條 第三條ノ規定ニ依ル整理施行者又ハ耕地整理組合員ハ耕地整理施行ノ爲受ケタル損害ニ對シ第七條、第八條又ハ前條ノ場合ヲ除クノ外補償ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十九條 整理施行地ニ付權利ヲ有スル者耕地整理施行ノ認可若ハ整理施行地區變更ノ認可又ハ耕地整理組合ノ設立若ハ組合地區變更ノ認可ノ吿示アリタル後ニ於テ監督官廳ノ許可ヲ得スシテ土地ノ形質ヲ變更シ又ハ工作物ノ新築、改築、增築若ハ大修繕ヲ爲シ又ハ物件ヲ附加增置シタルトキハ之ニ關スル損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得ス
前項吿示ノ後ニ於テ土地ニ付權利ヲ取得シタル者ハ從前ノ權利者ノ爲シ得ヘキ範圍內ニ於テノミ損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得
第三十條 換地ハ從前ノ土地ノ地目、面積、等位等ヲ標準トシテ之ヲ交付スヘシ但シ地目、面積、等位等ヲ以テ相殺ヲ爲スコト能ハサル部分ニ關シテハ金錢ヲ以テ之ヲ淸算スヘシ
特別ノ事情ノ爲前項ノ規定ニ依ルコト能ハサルモノノ處分ニ關シテハ規約ノ定ムル所ニ依ル
前二項ノ規定ニ依ル處分ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
地方長官前項ノ認可ヲ與ヘタルトキハ之ヲ吿示スヘシ
第三十一條 前條ノ規定ニ依ル處分ハ整理施行地ノ全部ニ付工事完了シタル後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三十二條 整理施行地二以上ノ市町村、大字又ハ字ニ涉ル場合ニ於テ一筆ノ土地ノ區域ハ二以上ノ市町村、大字又ハ字ニ涉リテ之ヲ定ムルコトヲ得ス
第三十三條 數筆ノ土地ヲ分合シテ換地ヲ交付スル場合ニ於テ旣登記ノ土地ニ對スル換地ハ各筆每ニ之ヲ割當ツヘシ
第三十四條 本法中土地所有者ノ數ヲ計算スル場合ニ於テハ共有者ハ之ヲ一人ト看做ス但シ共有者ノミ共同シテ耕地整理ヲ施行スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テ第五十條、第五十五條第二項、第五十六條第二項、第六十五條第二項又ハ第六十八條第二項中土地ノ面積又ハ地價ハ共有者ノ持分ニ依リ之ヲ定ム
第三十五條 住所又ハ居所ノ不分明其ノ他ノ事由ニ依リ耕地整理ニ關スル書類ノ送付ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ整理施行者又ハ監督官廳カ公吿ヲ爲ストキハ其ノ公吿ノ日ヲ以テ書類ヲ發送シタルモノト看做シ二十日ヲ經過スルトキハ其ノ末日ニ於テ書類ノ送付ヲ了リタルモノト看做ス
第三十六條 第三十條第三項ノ認可ヲ受ケタルトキハ整理施行者ハ遲滯ナク旣登記ノ土地及建物ニ付登記ヲ申請スヘシ
第三十七條 整理施行地區內ノ土地及其ノ上ニ存スル建物ノ登記ニ付テハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第三十八條 共同施行又ハ耕地整理組合ニ依ル耕地整理ノ事業ニシテ郡、市町村又ハ水利組合ニ依リ施行スルコトヲ得ルニ至リタルトキハ特別ノ事情アル場合ヲ除クノ外命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ事業ヲ郡、市町村若ハ水利組合ニ引繼キ又ハ耕地整理組合ヲ普通水利組合ニ變更スヘシ
前項ノ規定ニ依ル引繼又ハ變更アリタルトキハ地方長官ハ其ノ旨ヲ吿示スヘシ
第三條第五項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十九條 監督官廳ハ主務大臣ノ定ムル所ニ從ヒ本法ノ規定ニ依ル職權ノ一部ヲ下級監督官廳ニ委任スルコトヲ得
第四十條 本法中府縣、郡、市町村、郡長、市町村長、市役所又ハ町村役場トアルハ府縣制、郡制、市制、町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之ニ準スヘキモノニ該當ス
第二章 耕地整理組合
第一款 總則
第四十一條 耕地整理ヲ施行スル爲必要アルトキハ耕地整理組合ヲ設立スルコトヲ得
耕地整理組合ハ法人トス
第四十二條 耕地整理組合ハ整理施行地ヲ以テ其ノ地區トス
第四十三條 左ニ揭クル土地ハ之ヲ耕地整理組合ノ地區ニ編入スルコトヲ得ス但シ第一號乃至第三號ノ土地ニ付テハ主務官廳又ハ公共團體ノ認許、第四號乃至第八號ノ土地ニ付テハ土地所有者、關係人及建物ニ付登記シタル權利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 御料地、國有地
二 官ノ用ニ供スル土地
三 府縣、郡、市町村其ノ他勅令ヲ以テ指定スル公共團體ノ公用又ハ公共ノ用ニ供スル土地
四 名勝地、舊蹟地
五 古墳墓地、墳墓地
六 社寺境內地
七 鐵道用地、軌道用地
八 建物アル宅地
第四十四條 特別ノ價値又ハ用途アル土地ハ土地所有者及關係人ノ同意ヲ得ルニ非サレハ之ヲ耕地整理組合ノ地區ニ編入スルコトヲ得ス但シ之ヲ編入スルニ非サレハ耕地整理ヲ適當ニ施行スルコト能ハサルトキハ此ノ限ニ在ラス
土地收用法第四十七條乃至第四十九條、第五十一條乃至第五十四條、第五十六條、第五十八條、第六十條及第六十一條ノ規定ハ前項但書ノ場合ニ之ヲ準用ス但シ組合ノ設立又ハ地區變更ノ認可ノ吿示ヲ以テ土地收用法第十九條ノ規定ニ依ル公吿又ハ通知ト看做ス
第一項但書ノ場合ニ於テ補償金ノ拂渡又ハ供託ヲ爲ササルトキハ土地所有者又ハ關係人ハ其ノ土地ニ付工事ノ施行ヲ拒ムコトヲ得但シ第八十七條第一項ノ規定ニ依リ決定ヲ得タル金額ヲ供託シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四十五條 耕地整理組合設立ノ認可アリタルトキハ其ノ地區內ニ土地ヲ所有スル者ハ總テ之ヲ組合員トス但シ第十一條第一項ノ土地ニ關シテハ此ノ限ニ在ラス
第四十六條 耕地整理組合ノ名稱中ニハ耕地整理組合ナル文字ヲ用ウヘシ
耕地整理組合ニ非サルモノハ耕地整理組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
第四十七條 組合員又ハ組合員タルヘキ者ニシテ組合ノ地區所在ノ市町村若ハ其ノ鄰接市町村ニ住所若ハ居所ヲ有セサル者又ハ土地ノ共有者ハ耕地整理ニ關スル一切ノ行爲ヲ爲サシムル爲組合ノ地區所在ノ市町村若ハ其ノ鄰接市町村ニ住所若ハ居所ヲ有スル者又ハ共有者中ノ一人ヲ以テ代表者ト爲シ之ヲ組合ニ通知スヘシ
前項ノ代表者ノ權限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四十八條 前條ノ委任ノ終了ハ組合ニ通知アル迄之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四十九條 第四十七條第一項ノ手續ヲ爲ササル土地共有者ニ對スル書類ノ送付ハ其ノ一人ニ對シ之ヲ發送シタル時ニ於テ完了シタルモノト看做ス
第二款 組合ノ設立及解散
第五十條 耕地整理組合ヲ設立セムトスルトキハ組合ノ地區タルヘキ區域內ノ土地所有者總數ノ二分ノ一以上ニシテ其ノ區域內ノ土地ノ總面積及總地價ノ各三分ノ二以上ニ當ル土地所有者ノ同意ヲ得テ設計書及規約ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第五十一條 耕地整理組合ハ前條地方長官ノ認可ニ依リ成立ス
前項ノ場合ニ於テハ地方長官ハ組合設立ノ旨ヲ吿示スヘシ
組合ハ前項ノ吿示アル迄其ノ成立ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
第五十二條 組合設立ニ關スル費用ハ組合設立ノ後組合ノ負擔トス
第五十三條 組合ハ左ノ事由ニ依リ解散ス但シ第二號ノ場合ニ於テ還了セサル組合債アルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 規約ニ定メタル事由ノ發生
二 目的タル事項ノ完成又ハ完成ノ不能
三 總會ノ議決
四 合併
五 事業ヲ郡、市町村又ハ水利組合ニ引繼キタルトキ
六 普通水利組合ニ變更シタルトキ
七 組合員一人ト爲リタルトキ
八 監督官廳ノ處分
前項ノ場合ニ於テ地方長官ハ第三號又ハ第四號ニ該當スルトキヲ除クノ外其ノ旨ヲ吿示スヘシ
第五十四條 組合ニ於テ設計書若ハ規約ノ變更、組合ノ解散、合併、地區ノ變更又ハ事業ノ停止ヲ爲サムトスルトキハ之ニ關スル必要ノ事項ヲ定メ總會ノ議決ヲ經テ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ組合債ヲ負擔スルトキハ債權者ノ同意ヲ得ルニ非サレハ組合ノ解散、合併、地區ノ減少又ハ債務分擔ニ關スル規約ノ變更ヲ爲スコトヲ得ス
地方長官前項ノ認可ヲ與ヘタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スヘシ
第五十五條 組合ノ地區ヲ變更スル場合ニ於テ新ニ組合ノ地區ニ編入セラルヘキ土地アルトキハ組合長ハ設計書案及規約案ヲ作リ編入區域ノ土地所有者ノ總會議ニ付シ其ノ議決ヲ前條ノ總會ノ議決ニ添附スヘシ
前項ノ總會議ノ議決ヲ爲スニハ第五十條ノ條件ヲ具備スルコトヲ要ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ土地所有者ノ代理人ヲ許スコトヲ得
第六十六條ノ規定ハ第一項ノ總會議ニ之ヲ準用ス
第五十六條 前條ノ總會議ハ編入區域ノ土地所有者ノ同意ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第五十條ノ規定ハ前項ノ同意ニ之ヲ準用ス
第五十七條 設計書若ハ規約ノ變更、組合ノ解散、合併、地區ノ變更又ハ事業ノ停止ハ第五十三條第二項又ハ第五十四條第二項ノ吿示アル迄之ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
第五十八條 組合ヲ合併シタルトキハ合併ニ依リ解散シタル組合ニ屬スル權利義務ハ合併後存續シ又ハ合併ニ依リ設立シタル組合ニ移轉ス
第五十九條 組合員一人ト爲リタル爲組合解散ノ場合ニ於テハ其ノ事業ハ一切ノ權利義務ト共ニ土地所有者ニ移轉ス
前項ノ土地所有者ハ之ヲ第三條ノ規定ニ依ル整理施行者ト看做ス
第六十條 組合解散シタルトキハ第五十三條第一項第四號、第六號又ハ第七號ノ場合ヲ除クノ外淸算ヲ爲スヘシ
組合ハ解散ノ後ト雖淸算ノ目的ノ範圍內ニ於テハ仍存續スルモノト看做ス
第三款 組合ノ會議
第六十一條 別ニ規定アルモノノ外左ニ揭クル事項ハ總會ノ表決ヲ經ヘシ
一 第三十條第一項、第二項ノ規定ニ依ル處分ヲ爲ス事
二 組合債ヲ起シ、起債ノ方法、利息ノ定率若ハ償還ノ方法ヲ定メ又ハ之ヲ變更スル事
三 經費ノ收支豫算ヲ定ムル事
四 豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ又ハ權利ノ抛棄ヲ爲ス事
五 組合長、組合副長若ハ評議員ヲ選任シ又ハ解任スル事
六 組合費、夫役現品ノ分賦收入ニ關スル事
七 事業報吿書及收支決算書ヲ承認スル事
八 工作物又ハ設備ノ維持管理方法ヲ定ムル事
九 訴願、訴訟及和解ニ關スル事
十 規約ニ定メタル事項
十一 其ノ他組合長ニ於テ重要ナリト認メタル事項
第六十二條 總會ハ規約ノ定ムル所ニ依リ其ノ權限ニ屬スル事項ヲ評議員會ニ委任シ又ハ組合長ヲシテ專決セシムルコトヲ得
評議員會ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十三條 總會ノ表決ヲ經ヘキ事件ニシテ臨時急施ヲ要シ總會ヲ招集スル暇ナシト認ムルトキハ組合長ハ專決處分シ次ノ總會ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ但シ設計書、規約若ハ組合地區ノ變更又ハ組合ノ解散若ハ合併ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
組合長前項ノ處分ヲ爲サムトスルトキハ其ノ處分前評議員會ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但シ評議員ヲ置カサル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第六十四條 總會ハ總組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
第六十五條 總會ハ組合長之ヲ招集ス
組合員總數ノ五分ノ一以上ニ當ル者又ハ組合地區內ノ土地ノ總面積若ハ總地價ノ五分ノ一以上ニ當ル者ヨリ會議ノ目的及其ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スルトキハ組合長ハ十四日以內ニ之ヲ招集スヘシ
第六十六條 總會ヲ招集スルニハ會日ヨリ五日前ニ會議ノ日時、場所及目的ヲ記載シテ各組合員ニ通知ヲ發スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ニ於テハ期間ヲ二日迄短縮スルコトヲ得
第六十七條 組合員ハ各一箇ノ表決權ヲ有ス但シ規約ヲ以テ表決權總數ノ五分ノ一ヲ超過セサル範圍內ニ於テ一人ニ付二箇以上ノ表決權ヲ有セシムルコトヲ得
前項ノ規定ハ第六十八條第二項ノ場合ニ之ヲ適用セス
第六十八條 總會ノ議事ハ別ニ規定アルモノヲ除クノ外組合員ノ半數以上出席シ出席者ノ表決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第五十四條又ハ第六十一條第一號、第二號若ハ第五號ノ事項ノ表決ヲ爲スニハ第五十條ノ條件ヲ具備スルコトヲ要ス但シ命令又ハ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第六十九條 組合員ハ總會ニ於テ書面又ハ代理人ヲ以テ表決ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ表決權ヲ行フ者ハ出席者ト看做ス
第七十條 第三十一條但書ノ規定ニ依リ第三十條ノ處分ヲ爲サムトスル場合ニ於テハ其ノ處分ヲ爲サムトスル土地ニ關スル組合員ノ總會議ヲ以テ總會ト看做ス
第七十一條 組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選擧シタル議員ヲ以テ組織スル組合會ヲ以テ總會ニ代フルコトヲ得
第七十二條 總會ニ關スル規定ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前二條ノ規定ニ依ル組合員ノ總會議又ハ組合會ニ之ヲ準用ス但シ組合會ニ於テハ組合ノ解散、合併又ハ地區ノ變更ノ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第四款 組合ノ管理
第七十三條 組合ニ組合長一人及組合副長一人又ハ數人ヲ置ク
組合長又ハ組合副長ハ組合員中ヨリ之ヲ選擧ス但シ特別ノ事情アルトキハ組合員ニ非サル者ヨリ之ヲ選擧スルコトヲ得
組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
組合長、組合副長共ニ闕員ト爲リタルトキハ地方長官ハ臨時代理者ヲ指定スルコトヲ得
地方長官前二項ノ規定ニ依リ認可ヲ與ヘ又ハ指定ヲ爲シタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スヘシ
組合長、組合副長又ハ臨時代理者ノ就任若ハ解任ハ前項ノ吿示アル迄之ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
第七十四條 組合長ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ管理ス
組合副長ハ組合長ヲ補佐シ組合長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理ス組合副長數人アルトキハ其ノ代理ノ順序ハ規約ノ定ムル所ニ依ル
第七十五條 組合長ノ權限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第七十六條 組合ニ評議員ヲ置ク但シ特別ノ事情アル爲地方長官ノ認可ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
評議員ハ組合員中ヨリ之ヲ選擧ス
評議員ハ組合長ノ諮詢ニ應シ竝業務及財產ノ狀況ヲ監査ス
組合長ハ規約ノ定ムル所ニ依リ評議員ヲシテ組合ノ事務ノ一部ヲ分掌セシムルコトヲ得
第七十七條 組合長ハ設計書、規約、組合員名簿、會議ノ議事錄其ノ他組合ニ關スル書類及帳簿ヲ事務所ニ備ヘ置クヘシ
組合員又ハ利害關係人ヨリ前項ノ書類又ハ帳簿ノ閱覽ヲ求メタルトキハ正當ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ拒ムコトヲ得ス
第五款 組合ノ財務
第七十八條 組合ノ費用ハ規約ノ定ムル所ニ依リ組合員之ヲ負擔ス
夫役現品ノ分賦及之ニ代ルヘキ金額ニ關スル規定ハ規約中ニ之ヲ定ムヘシ
第七十九條 組合員ニシテ組合費又ハ第三十條第一項、第二項ノ規定ニ依リ支拂フヘキ金錢ヲ滯納スルトキハ市町村ハ組合長ノ請求ニ依リ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス
前項ノ場合ニ於テ組合ハ其ノ徵收金額中百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
第一項ノ徵收金ハ組合地區內ノ土地ニ關シ市町村、水利組合其ノ他之ニ準スヘキモノノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有ス
前三項ノ規定ハ組合員カ夫役現品ニ代ルヘキ金錢ヲ滯納スル場合ニ之ヲ準用ス
第八十條 組合ニ於テ負債ヲ起シ、起債ノ方法、利息ノ定率若ハ償還ノ方法ヲ定メ又ハ之ヲ變更セムトスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ負債ハ起債ノ時ヨリ十五年以內ニ之ヲ還了スヘシ但シ特別ノ事由アル場合ニ限リ二十年迄延期スルコトヲ得
第八十一條 組合ニシテ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハサルトキハ帝室及國ヲ除クノ外組合員ハ之ニ付連帶無限ノ責任ヲ負擔ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三章 監督
第八十二條 耕地整理ハ第一次ニ郡長、第二次ニ地方長官、第三次ニ主務大臣之ヲ監督ス但シ整理施行ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合ニ於テハ第一次ニ地方長官、第二次ニ主務大臣之ヲ監督ス
第八十三條 主務大臣又ハ地方長官ニ於テ會議ノ表決又ハ整理施行者ノ行爲カ設計書、規約又ハ法令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ會議ノ表決ヲ取消シ、組合長若ハ組合副長ヲ解任シ、評議員若ハ組合會議員ノ改選、事業ノ停止若ハ組合ノ解散ヲ命シ又ハ整理施行ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第八十四條 監督官廳ハ整理施行者ヲシテ耕地整理事業ニ關スル報吿ヲ爲サシメ、書類、帳簿、出納又ハ工事ヲ檢査シ、設計書又ハ規約ノ變更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第八十五條 監督官廳ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依ル認可申請ニ對シ申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ認可ヲ與フルコトヲ得
第八十六條 第三條ノ規定ニ依ル耕地整理ノ施行若ハ整理施行地區ノ變更ニ異議アル關係人、第四十三條若ハ第四十四條ノ規定ニ違反シテ耕地整理組合ノ地區ニ編入シタル土地ノ所有者若ハ關係人又ハ第三條第二項但書若ハ第五十四條第一項但書ノ規定ニ依リ異議アル債權者ハ各耕地整理施行ノ認可若ハ整理施行地區變更ノ認可ノ吿示、耕地整理組合ノ設立若ハ組合地區變更ノ認可ノ吿示又ハ第三條第四項若ハ第五十四條第二項ノ規定ニ依リ當該事項ノ吿示アリタル日ヨリ六十日以內ニ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ訴願アリタル場合ニ於テハ地方長官ハ其ノ裁決アル迄目的タル土地ニ付耕地整理ノ施行ヲ停止スルコトヲ得
第八十七條 第四十四條第二項ノ規定ニ依ル補償金ニ付協議調ハサルカ又ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ地方長官ノ決定ヲ求ムヘシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ其ノ決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ九十日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十八條 總會議、總會又ハ組合會ノ招集手續又ハ表決カ違法ナル場合ニ於テ之ニ對シ不服アル者ハ其ノ表決ノ日ヨリ十四日以內ニ地方長官ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
前項異議ノ申立アリタル場合ニ於テ監督官廳ハ其ノ職權ニ依リ又ハ利害關係人ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ表決又ハ處分ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第八十九條 監督官廳ノ處分ニシテ本法中他ノ條項ニ於テ地方長官ノ吿示ヲ必要トスル事項ニ相當スルモノニ付テハ地方長官ハ之ヲ吿示スヘシ
整理施行者ハ前項ノ吿示アル迄其ノ受ケタル處分ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
前二項ノ規定ハ監督官廳ノ命令シタル停止處分ノ解除ニ之ヲ準用ス
第四章 罰則
第九十條 耕地整理施行ニ關シ設ケタル標識ヲ移轉、汚損、毀壞又ハ除却シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第九十一條 第三條ノ規定ニ依ル整理施行者又ハ耕地整理組合ノ組合長若ハ組合副長本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第九十二條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治三十年法律第三十九號ハ之ヲ廢止ス但シ現ニ土地ノ區劃形狀變更ノ許可ヲ得タル者ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
第九十三條 北海道ノ耕地整理ニ付テハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第九十四條 本法施行前耕地整理ニ關シ發起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者ニ付テハ以下數條ニ規定スルモノヲ除クノ外舊法ノ規定ヲ適用ス
第九十五條 本法第一條、第二條、第四條、第八條、第十條、第十七條、第二十七條、第二十八條、第三十條、第三十一條、第三十三條、第三十五條乃至第四十條、第八十二條、第八十四條及第八十五條ノ規定ハ本法施行前耕地整理ニ關シ發起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者ニ之ヲ適用ス
第九十六條 本法施行前耕地整理發起ノ認可ヲ得タル者ハ發起人又ハ整理委員ノ申請ニ依リ命令ノ定ムル所ニ從ヒ之ヲ本法ニ依ル耕地整理組合ト爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ耕地整理組合ト爲シタルトキハ耕地整理ニ關スル從前ノ設計書又ハ規約ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ反セサル範圍內ニ於テ本法ノ規定ニ依ル設計書又ハ規約ト看做ス
第一項ノ規定ニ依ル耕地整理組合ハ耕地整理ニ關スル參加土地所有者共同ノ權利義務ヲ承繼ス
第九十七條 本法施行前耕地整理發起ノ認可ヲ申請シ未タ之ヲ得ルニ至ラサル者ハ命令ノ定ムル所ニ從ヒ之ヲ本法第五十條ノ規定ニ依ル耕地整理組合設立ノ申請ト爲スコトヲ得
第九十八條 舊法又ハ明治三十年法律第三十九號ニ依リ爲シタル處分ニ對スル訴願ニ關シテハ各舊法又ハ明治三十年法律第三十九號ノ規定ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル耕地整理法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年四月十二日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
内務大臣 法学博士 男爵 平田東助
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
法律第三十号
耕地整理法
第一章 総則
第一条 本法ニ於テ耕地整理ト称スルハ土地ノ農業上ノ利用ヲ増進スル目的ヲ以テ本法ニ依リ左ノ各号ノ一ニ該当スル事項ヲ行フヲ謂フ
一 土地ノ交換、分合、開墾、地目変換其ノ他区画形質ノ変更若ハ道路、堤塘、畦畔、溝渠、溜池等ノ変更廃置又ハ之ニ伴フ灌漑排水ニ関スル設備若ハ工事
二 前号ノ事項施行ノ為若ハ施行ノ結果必要ナル工作物ノ設置其ノ他ノ設備又ハ其ノ維持管理
三 前二号ノ事項ニ関シ必要アルトキ国、府県、郡、市町村其ノ他公共団体ノ認許ヲ得テ行フ営造物ノ修繕
第二条 本法ニ於テ関係人ト称スルハ整理施行地ニ付所有権以外ノ登記シタル権利ヲ有スル者ヲ謂フ
第三条 耕地整理ヲ施行セムトスルトキハ設計書ヲ作リ関係人ノ同意書ヲ添ヘ数人共同シテ施行セムトスルモノニ在リテハ尚規約ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ関係人ノ同意ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ添附スヘシ
設計書、規約若ハ整理施行地区ヲ変更シ若ハ一人ニテ施行スル耕地整理ヲ変シテ数人共同ノ施行ト為シ又ハ事業ヲ停止若ハ廃止セムトスルトキハ之ニ関スル必要ノ事項ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ耕地整理施行ノ為為シタル借入金アルトキハ債権者ノ同意ヲ得ルニ非サレハ事業ヲ廃止シ、整理施行地区ヲ減少シ又ハ債務ノ分担ニ関スル規約ヲ変更スルコトヲ得ス
前項整理施行地区ノ変更ニ依リ新ニ整理施行地区ニ編入セラルヘキ土地ニ付テハ第一項ノ同意書ニ関スル規定ヲ準用ス
地方長官第一項又ハ第二項ノ認可ヲ与ヘタルトキハ其ノ旨ヲ告示スヘシ
設計書、規約若ハ整理施行地区ノ変更又ハ事業ノ停止若ハ廃止ハ前項ノ告示アル迄之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
前五項ノ規定ハ耕地整理組合ニ之ヲ適用セス
第四条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ依リ為シタル処分、手続其ノ他ノ行為ハ整理施行地ノ所有者、占有者又ハ関係人ノ承継人ニ対シテモ其ノ効力ヲ有ス
第五条 整理施行地ノ所有者ニ属スル耕地整理ニ関スル権利義務ハ土地ノ所有権ト共ニ其ノ承継人ニ移転ス
第六条 本法中別ニ規定アル場合ヲ除クノ外土地ノ所有者、占有者、関係人其ノ他整理施行地ニ付権利ヲ有スル者ハ耕地整理ノ施行ニ対シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス
第七条 地方長官又ハ郡長耕地整理ニ関スル調査ヲ為ス為必要アルトキハ官吏又ハ吏員ヲシテ他人ノ土地ニ立入リ測量又ハ検査ヲ為シ障害ノ竹木土石等ヲ移転若ハ除却セシムルコトヲ得但シ之ニ依リ生シタル損害ハ之ヲ補償スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ予メ其ノ土地ノ占有者ニ之ヲ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ為スコト能ハサル場合ニ於テハ公告ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第八条 前条ノ規定ハ耕地整理施行若ハ耕地整理組合設立ノ認可ヲ申請セムトスル者又ハ整理施行者カ整理施行ノ為必要ナル準備ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ市町村長ノ許可ヲ受クヘシ
第九条 耕地整理施行若ハ耕地整理組合設立ノ認可ヲ申請セムトスル者又ハ整理施行者ハ整理施行地ヲ管轄スル登記所、土地台帳所管庁、市役所又ハ町村役場ニ就キ無償ニテ耕地整理ニ関シ必要ナル簿書ノ閲覧又ハ謄写ヲ求ムルコトヲ得但シ耕地整理組合ノ組合長ヲ除クノ外其ノ資格ニ関スル市町村長ノ証明書ヲ提出スヘシ
第十条 耕地整理施行ノ為土地又ハ建物ニ付登記又ハ登録ヲ為ストキハ登録税ヲ免除ス
前項ノ規定ハ耕地整理ノ施行ニ伴ヒ大字若ハ字ノ名称又ハ其ノ区域ニ変更アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十一条 耕地整理ヲ施行スル為国有ニ属スル道路、堤塘、溝渠、溜池等ノ全部又ハ一部ヲ廃止シタルニ依リ不用ニ帰シタル土地ハ無償ニテ之ヲ整理施行地ノ所有者ニ交付ス
耕地整理ノ施行ニ依リ開設シタル道路、堤塘、溝渠、溜池等ニシテ前項廃止シタルモノニ代ルヘキモノハ無償ニテ之ヲ国有地ニ編入ス
第十二条 本法ニ依ル開墾、地目変換其ノ他土地ノ区画形質ノ変更又ハ道路、堤塘、溝渠、溜池等ノ変更廃置ニ関シテハ地租条例第十条ノ一乃至第十一条、第十六条乃至第十九条ノ規定ヲ適用セス
第十三条 耕地整理ヲ施行シタル土地ノ地価ハ整理施行地区内土地ノ現地価ノ合計額ヲ毎筆相当ニ配賦シテ之ヲ定ム但シ第十一条第二項ニ依リ国有地ニ編入シタル土地ノ面積カ同条第一項ニ依リ交付シタル土地ノ面積ヨリ多キ場合ニ於テハ整理施行地ノ現地価ノ平均額ヲ其ノ面積ノ差額ニ乗シタル金額ヲ現地価ノ合計額ヨリ控除シタル額ヲ以テ現地価ノ合計額ト看做ス
整理施行地ノ地租ハ其ノ整理施行地区ノ全部ニ付土地台帳ノ整理ヲ完了スル迄従前ノ地域、地目及地価ニ依リ之ヲ徴収ス
規約ヲ以テ整理施行地区ヲ数区ニ分チタル場合ニ於テハ其ノ各区ヲ以テ前二項ノ整理施行地区ト看做ス
第十四条 耕地整理ヲ施行スルニ当リ其ノ地区内ノ土地総面積ノ五分ノ一以上ニ当ル土地ニ付開墾ヲ為シ又ハ地目ヲ変換スル場合ニ於テハ工事完了ノトキ開墾又ハ変換シタル土地ニ対シ従前ノ地域ニ依リ其ノ地価ヲ修正シ前条第一項ノ現地価トス
前項ノ場合ニ於テ開墾シタル土地ニ付テハ工事著手ノ年ヨリ二十年目、変換シタル土地ニ付テハ工事完了ノ年ヨリ六年目ニ至リ修正地価ニ依リ其ノ地租ヲ徴収ス但シ開墾シタル土地ニシテ工事著手ノ年ヨリ二十年目ニ達シ地味成熟ニ至ラサルモノニ対シテハ更ニ十年以内ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
地租ヲ課セサル土地ヲ整理施行地区ニ編入シ地租ヲ課スヘキ土地ト為シタルトキハ第十一条第一項ニ依リ交付シタル土地ヲ除クノ外工事完了ノトキ従前ノ地域ニ依リ其ノ地価ヲ設定シ前条第一項ノ現地価トス
第十五条 整理施行地区内ノ土地中開墾著手後九年、地目若ハ地類ノ変換後五年ヲ経過セサルモノ又ハ地租ノ免除若ハ軽減ニ関スル各種ノ年期ヲ有スルモノアルトキハ左ノ各号ノ定ムル所ニ依ル
一 開墾若ハ地類ノ変換ヲ為シタル土地、地目ヲ変換シ地価ノ修正ナキ土地又ハ鍬下年期、新開免租年期、地価据置年期ヲ有スル土地ハ工事著手ノ際地価ヲ修正シ又ハ設定ス
二 荒地免租年期又ハ低価年期ヲ有スル土地ハ工事完了ノトキ従前ノ地域ニ依リ其ノ地価ヲ修正ス
三 第一号ニ依リ地価ヲ修正シ又ハ設定シタル土地ニ付テハ開墾著手後十年目、地目若ハ地類ノ変換後六年目又ハ年期明ニ至リ修正地価又ハ設定地価ニ依リ地租ヲ徴収ス但シ工事完了シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
四 工事完了シタルトキハ第一号若ハ第二号ニ記載シタル土地又ハ地目ヲ変換シ地価ノ修正アリタル土地ニ付テハ修正地価又ハ設定地価ヲ以テ第十三条第一項ノ現地価トス
第十六条 工事完了シタルトキニ於テ開墾著手後九年、地目若ハ地類ノ変換後五年ヲ経過セサル土地若ハ前条ニ記載スル年期ヲ有スルモノニシテ年期ノ終了セサル土地又ハ第十四条第二項ニ該当スル土地アルトキハ事業関係者ハ其ノ協議ヲ以テ修正地租ト従前ノ地租トノ差額ノ利益若ハ負担又ハ地租ノ免除ヲ受クヘキ土地及金額ヲ定メ政府ニ申告シ残年期間又ハ第十四条第二項ニ定ムル期間中ハ其ノ金額ヲ加除シテ其ノ土地ノ地租ヲ納ムヘシ但シ協議一致セサルトキハ政府ニ於テ之ヲ定ム
第十七条 換地ハ別ニ規定アル場合ヲ除クノ外第三十条第四項ノ告示ノ日ヨリ之ヲ従前ノ土地ト看做ス
前項ノ規定ハ行政上又ハ裁判上ノ処分ニシテ従前ノ土地ニ専属スルモノニ影響ヲ及ホサス
第十八条 賃借地ニ付耕地整理施行ノ為賃借ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ賃借人ハ整理施行者ニ対シ解除ニ依リ生シタル損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得但シ整理施行者ハ規約ノ定ムル所ニ依リ賃貸人ニ対シ求償スルコトヲ得
第十九条 耕地整理施行ノ為賃借地ノ利用ヲ妨ケラルルトキハ賃借人ハ借賃ノ相当ノ減額又ハ前払シタル借賃ノ相当ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得
第二十条 耕地整理施行ノ為著シク賃貸地ノ利用ヲ増シタルトキハ賃貸人ハ借賃ノ相当ノ増額ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ニ於テ賃借人ハ契約ノ解除ヲ為シ其ノ義務ヲ免ルルコトヲ得
第二十一条 耕地整理施行ノ為地上権、永小作権又ハ地役権ヲ設定シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ地上権者、永小作権者又ハ地役権者ハ其ノ権利ヲ抛棄スルコトヲ得
第十八条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二条 整理施行地ノ上ニ存スル地役権ハ耕地整理施行ノ後仍従前ノ土地ノ上ニ存ス
耕地整理施行ノ為地役権者カ其ノ権利ヲ行使スル利益ヲ受クルコトヲ要セサルニ至リタルトキハ其ノ地役権ハ消滅ス
耕地整理施行ノ為従前ト同一ノ利益ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル地役権者ハ其ノ利益ヲ保存スル範囲内ニ於テ地役権ノ設定ヲ請求スルコトヲ得
第二十三条 第十九条及第二十条ノ規定ハ地上権、永小作権又ハ地役権ニ之ヲ準用ス
第二十四条 前六条ノ規定ニ依ル賃貸借ノ解除、地上権若ハ永小作権ノ抛棄、地役権ノ抛棄若ハ設定又ハ借賃、地代、小作料若ハ地役ノ対価ノ減額、払戻若ハ増額ノ請求ハ第三十条第四項ノ告示ノ日ヨリ三十日ヲ経過シタルトキハ之ヲ為スコトヲ得ス
第二十五条 整理施行地又ハ之ニ存スル建物ニシテ先取特権、質権又ハ抵当権ノ目的タル場合ニ於テ第二十七条、第二十八条、第三十条第一項、第二項又ハ第四十四条第二項ノ規定ニ依リ払渡スヘキ金銭アルトキハ整理施行者ハ其ノ金額ヲ供託スヘシ但シ関係人ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ整理施行地又ハ之ニ存スル建物カ訴訟ノ目的タリ又ハ整理施行地区ニ編入後訴訟ノ目的ト為リタル為訴訟当事者ヨリ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
先取特権者、質権者、抵当権者又ハ訴訟当事者ハ第二項ノ規定ニ依リ供託シタル金銭ニ対シテモ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第二十六条 第三条ノ規定ニ依ル整理施行者カ其ノ事業ノ為借入レタル金額及其ノ利息其ノ他耕地整理ノ施行ニ依リ生シタル債務ニ付テハ共同施行者連帯シテ其ノ責ニ任ス但シ規約ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
帝室及国ハ前項ノ責ニ任セス
第二十七条 整理施行者ハ耕地整理施行ノ為必要アルトキハ整理施行地区内ノ工作物又ハ木石等ヲ移転シ、除却シ又ハ破毀スルコトヲ得但シ之ニ依リ生シタル損害ハ之ヲ補償スヘシ
第二十八条 第三条ノ規定ニ依ル整理施行者又ハ耕地整理組合員ハ耕地整理施行ノ為受ケタル損害ニ対シ第七条、第八条又ハ前条ノ場合ヲ除クノ外補償ノ請求ヲ為スコトヲ得ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十九条 整理施行地ニ付権利ヲ有スル者耕地整理施行ノ認可若ハ整理施行地区変更ノ認可又ハ耕地整理組合ノ設立若ハ組合地区変更ノ認可ノ告示アリタル後ニ於テ監督官庁ノ許可ヲ得スシテ土地ノ形質ヲ変更シ又ハ工作物ノ新築、改築、増築若ハ大修繕ヲ為シ又ハ物件ヲ附加増置シタルトキハ之ニ関スル損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得ス
前項告示ノ後ニ於テ土地ニ付権利ヲ取得シタル者ハ従前ノ権利者ノ為シ得ヘキ範囲内ニ於テノミ損害ノ補償ヲ請求スルコトヲ得
第三十条 換地ハ従前ノ土地ノ地目、面積、等位等ヲ標準トシテ之ヲ交付スヘシ但シ地目、面積、等位等ヲ以テ相殺ヲ為スコト能ハサル部分ニ関シテハ金銭ヲ以テ之ヲ清算スヘシ
特別ノ事情ノ為前項ノ規定ニ依ルコト能ハサルモノノ処分ニ関シテハ規約ノ定ムル所ニ依ル
前二項ノ規定ニ依ル処分ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
地方長官前項ノ認可ヲ与ヘタルトキハ之ヲ告示スヘシ
第三十一条 前条ノ規定ニ依ル処分ハ整理施行地ノ全部ニ付工事完了シタル後ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三十二条 整理施行地二以上ノ市町村、大字又ハ字ニ渉ル場合ニ於テ一筆ノ土地ノ区域ハ二以上ノ市町村、大字又ハ字ニ渉リテ之ヲ定ムルコトヲ得ス
第三十三条 数筆ノ土地ヲ分合シテ換地ヲ交付スル場合ニ於テ既登記ノ土地ニ対スル換地ハ各筆毎ニ之ヲ割当ツヘシ
第三十四条 本法中土地所有者ノ数ヲ計算スル場合ニ於テハ共有者ハ之ヲ一人ト看做ス但シ共有者ノミ共同シテ耕地整理ヲ施行スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テ第五十条、第五十五条第二項、第五十六条第二項、第六十五条第二項又ハ第六十八条第二項中土地ノ面積又ハ地価ハ共有者ノ持分ニ依リ之ヲ定ム
第三十五条 住所又ハ居所ノ不分明其ノ他ノ事由ニ依リ耕地整理ニ関スル書類ノ送付ヲ為スコト能ハサル場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ整理施行者又ハ監督官庁カ公告ヲ為ストキハ其ノ公告ノ日ヲ以テ書類ヲ発送シタルモノト看做シ二十日ヲ経過スルトキハ其ノ末日ニ於テ書類ノ送付ヲ了リタルモノト看做ス
第三十六条 第三十条第三項ノ認可ヲ受ケタルトキハ整理施行者ハ遅滞ナク既登記ノ土地及建物ニ付登記ヲ申請スヘシ
第三十七条 整理施行地区内ノ土地及其ノ上ニ存スル建物ノ登記ニ付テハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第三十八条 共同施行又ハ耕地整理組合ニ依ル耕地整理ノ事業ニシテ郡、市町村又ハ水利組合ニ依リ施行スルコトヲ得ルニ至リタルトキハ特別ノ事情アル場合ヲ除クノ外命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ事業ヲ郡、市町村若ハ水利組合ニ引継キ又ハ耕地整理組合ヲ普通水利組合ニ変更スヘシ
前項ノ規定ニ依ル引継又ハ変更アリタルトキハ地方長官ハ其ノ旨ヲ告示スヘシ
第三条第五項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十九条 監督官庁ハ主務大臣ノ定ムル所ニ従ヒ本法ノ規定ニ依ル職権ノ一部ヲ下級監督官庁ニ委任スルコトヲ得
第四十条 本法中府県、郡、市町村、郡長、市町村長、市役所又ハ町村役場トアルハ府県制、郡制、市制、町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之ニ準スヘキモノニ該当ス
第二章 耕地整理組合
第一款 総則
第四十一条 耕地整理ヲ施行スル為必要アルトキハ耕地整理組合ヲ設立スルコトヲ得
耕地整理組合ハ法人トス
第四十二条 耕地整理組合ハ整理施行地ヲ以テ其ノ地区トス
第四十三条 左ニ掲クル土地ハ之ヲ耕地整理組合ノ地区ニ編入スルコトヲ得ス但シ第一号乃至第三号ノ土地ニ付テハ主務官庁又ハ公共団体ノ認許、第四号乃至第八号ノ土地ニ付テハ土地所有者、関係人及建物ニ付登記シタル権利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 御料地、国有地
二 官ノ用ニ供スル土地
三 府県、郡、市町村其ノ他勅令ヲ以テ指定スル公共団体ノ公用又ハ公共ノ用ニ供スル土地
四 名勝地、旧蹟地
五 古墳墓地、墳墓地
六 社寺境内地
七 鉄道用地、軌道用地
八 建物アル宅地
第四十四条 特別ノ価値又ハ用途アル土地ハ土地所有者及関係人ノ同意ヲ得ルニ非サレハ之ヲ耕地整理組合ノ地区ニ編入スルコトヲ得ス但シ之ヲ編入スルニ非サレハ耕地整理ヲ適当ニ施行スルコト能ハサルトキハ此ノ限ニ在ラス
土地収用法第四十七条乃至第四十九条、第五十一条乃至第五十四条、第五十六条、第五十八条、第六十条及第六十一条ノ規定ハ前項但書ノ場合ニ之ヲ準用ス但シ組合ノ設立又ハ地区変更ノ認可ノ告示ヲ以テ土地収用法第十九条ノ規定ニ依ル公告又ハ通知ト看做ス
第一項但書ノ場合ニ於テ補償金ノ払渡又ハ供託ヲ為ササルトキハ土地所有者又ハ関係人ハ其ノ土地ニ付工事ノ施行ヲ拒ムコトヲ得但シ第八十七条第一項ノ規定ニ依リ決定ヲ得タル金額ヲ供託シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四十五条 耕地整理組合設立ノ認可アリタルトキハ其ノ地区内ニ土地ヲ所有スル者ハ総テ之ヲ組合員トス但シ第十一条第一項ノ土地ニ関シテハ此ノ限ニ在ラス
第四十六条 耕地整理組合ノ名称中ニハ耕地整理組合ナル文字ヲ用ウヘシ
耕地整理組合ニ非サルモノハ耕地整理組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
第四十七条 組合員又ハ組合員タルヘキ者ニシテ組合ノ地区所在ノ市町村若ハ其ノ隣接市町村ニ住所若ハ居所ヲ有セサル者又ハ土地ノ共有者ハ耕地整理ニ関スル一切ノ行為ヲ為サシムル為組合ノ地区所在ノ市町村若ハ其ノ隣接市町村ニ住所若ハ居所ヲ有スル者又ハ共有者中ノ一人ヲ以テ代表者ト為シ之ヲ組合ニ通知スヘシ
前項ノ代表者ノ権限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第四十八条 前条ノ委任ノ終了ハ組合ニ通知アル迄之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第四十九条 第四十七条第一項ノ手続ヲ為ササル土地共有者ニ対スル書類ノ送付ハ其ノ一人ニ対シ之ヲ発送シタル時ニ於テ完了シタルモノト看做ス
第二款 組合ノ設立及解散
第五十条 耕地整理組合ヲ設立セムトスルトキハ組合ノ地区タルヘキ区域内ノ土地所有者総数ノ二分ノ一以上ニシテ其ノ区域内ノ土地ノ総面積及総地価ノ各三分ノ二以上ニ当ル土地所有者ノ同意ヲ得テ設計書及規約ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第五十一条 耕地整理組合ハ前条地方長官ノ認可ニ依リ成立ス
前項ノ場合ニ於テハ地方長官ハ組合設立ノ旨ヲ告示スヘシ
組合ハ前項ノ告示アル迄其ノ成立ヲ以テ他人ニ対抗スルコトヲ得ス
第五十二条 組合設立ニ関スル費用ハ組合設立ノ後組合ノ負担トス
第五十三条 組合ハ左ノ事由ニ依リ解散ス但シ第二号ノ場合ニ於テ還了セサル組合債アルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 規約ニ定メタル事由ノ発生
二 目的タル事項ノ完成又ハ完成ノ不能
三 総会ノ議決
四 合併
五 事業ヲ郡、市町村又ハ水利組合ニ引継キタルトキ
六 普通水利組合ニ変更シタルトキ
七 組合員一人ト為リタルトキ
八 監督官庁ノ処分
前項ノ場合ニ於テ地方長官ハ第三号又ハ第四号ニ該当スルトキヲ除クノ外其ノ旨ヲ告示スヘシ
第五十四条 組合ニ於テ設計書若ハ規約ノ変更、組合ノ解散、合併、地区ノ変更又ハ事業ノ停止ヲ為サムトスルトキハ之ニ関スル必要ノ事項ヲ定メ総会ノ議決ヲ経テ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ組合債ヲ負担スルトキハ債権者ノ同意ヲ得ルニ非サレハ組合ノ解散、合併、地区ノ減少又ハ債務分担ニ関スル規約ノ変更ヲ為スコトヲ得ス
地方長官前項ノ認可ヲ与ヘタルトキハ其ノ旨ヲ告示スヘシ
第五十五条 組合ノ地区ヲ変更スル場合ニ於テ新ニ組合ノ地区ニ編入セラルヘキ土地アルトキハ組合長ハ設計書案及規約案ヲ作リ編入区域ノ土地所有者ノ総会議ニ付シ其ノ議決ヲ前条ノ総会ノ議決ニ添附スヘシ
前項ノ総会議ノ議決ヲ為スニハ第五十条ノ条件ヲ具備スルコトヲ要ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ土地所有者ノ代理人ヲ許スコトヲ得
第六十六条ノ規定ハ第一項ノ総会議ニ之ヲ準用ス
第五十六条 前条ノ総会議ハ編入区域ノ土地所有者ノ同意ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第五十条ノ規定ハ前項ノ同意ニ之ヲ準用ス
第五十七条 設計書若ハ規約ノ変更、組合ノ解散、合併、地区ノ変更又ハ事業ノ停止ハ第五十三条第二項又ハ第五十四条第二項ノ告示アル迄之ヲ以テ他人ニ対抗スルコトヲ得ス
第五十八条 組合ヲ合併シタルトキハ合併ニ依リ解散シタル組合ニ属スル権利義務ハ合併後存続シ又ハ合併ニ依リ設立シタル組合ニ移転ス
第五十九条 組合員一人ト為リタル為組合解散ノ場合ニ於テハ其ノ事業ハ一切ノ権利義務ト共ニ土地所有者ニ移転ス
前項ノ土地所有者ハ之ヲ第三条ノ規定ニ依ル整理施行者ト看做ス
第六十条 組合解散シタルトキハ第五十三条第一項第四号、第六号又ハ第七号ノ場合ヲ除クノ外清算ヲ為スヘシ
組合ハ解散ノ後ト雖清算ノ目的ノ範囲内ニ於テハ仍存続スルモノト看做ス
第三款 組合ノ会議
第六十一条 別ニ規定アルモノノ外左ニ掲クル事項ハ総会ノ表決ヲ経ヘシ
一 第三十条第一項、第二項ノ規定ニ依ル処分ヲ為ス事
二 組合債ヲ起シ、起債ノ方法、利息ノ定率若ハ償還ノ方法ヲ定メ又ハ之ヲ変更スル事
三 経費ノ収支予算ヲ定ムル事
四 予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負担ヲ為シ又ハ権利ノ抛棄ヲ為ス事
五 組合長、組合副長若ハ評議員ヲ選任シ又ハ解任スル事
六 組合費、夫役現品ノ分賦収入ニ関スル事
七 事業報告書及収支決算書ヲ承認スル事
八 工作物又ハ設備ノ維持管理方法ヲ定ムル事
九 訴願、訴訟及和解ニ関スル事
十 規約ニ定メタル事項
十一 其ノ他組合長ニ於テ重要ナリト認メタル事項
第六十二条 総会ハ規約ノ定ムル所ニ依リ其ノ権限ニ属スル事項ヲ評議員会ニ委任シ又ハ組合長ヲシテ専決セシムルコトヲ得
評議員会ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十三条 総会ノ表決ヲ経ヘキ事件ニシテ臨時急施ヲ要シ総会ヲ招集スル暇ナシト認ムルトキハ組合長ハ専決処分シ次ノ総会ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ但シ設計書、規約若ハ組合地区ノ変更又ハ組合ノ解散若ハ合併ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
組合長前項ノ処分ヲ為サムトスルトキハ其ノ処分前評議員会ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但シ評議員ヲ置カサル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第六十四条 総会ハ総組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
第六十五条 総会ハ組合長之ヲ招集ス
組合員総数ノ五分ノ一以上ニ当ル者又ハ組合地区内ノ土地ノ総面積若ハ総地価ノ五分ノ一以上ニ当ル者ヨリ会議ノ目的及其ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ総会ノ招集ヲ請求スルトキハ組合長ハ十四日以内ニ之ヲ招集スヘシ
第六十六条 総会ヲ招集スルニハ会日ヨリ五日前ニ会議ノ日時、場所及目的ヲ記載シテ各組合員ニ通知ヲ発スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ニ於テハ期間ヲ二日迄短縮スルコトヲ得
第六十七条 組合員ハ各一箇ノ表決権ヲ有ス但シ規約ヲ以テ表決権総数ノ五分ノ一ヲ超過セサル範囲内ニ於テ一人ニ付二箇以上ノ表決権ヲ有セシムルコトヲ得
前項ノ規定ハ第六十八条第二項ノ場合ニ之ヲ適用セス
第六十八条 総会ノ議事ハ別ニ規定アルモノヲ除クノ外組合員ノ半数以上出席シ出席者ノ表決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス
第五十四条又ハ第六十一条第一号、第二号若ハ第五号ノ事項ノ表決ヲ為スニハ第五十条ノ条件ヲ具備スルコトヲ要ス但シ命令又ハ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第六十九条 組合員ハ総会ニ於テ書面又ハ代理人ヲ以テ表決ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ表決権ヲ行フ者ハ出席者ト看做ス
第七十条 第三十一条但書ノ規定ニ依リ第三十条ノ処分ヲ為サムトスル場合ニ於テハ其ノ処分ヲ為サムトスル土地ニ関スル組合員ノ総会議ヲ以テ総会ト看做ス
第七十一条 組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選挙シタル議員ヲ以テ組織スル組合会ヲ以テ総会ニ代フルコトヲ得
第七十二条 総会ニ関スル規定ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前二条ノ規定ニ依ル組合員ノ総会議又ハ組合会ニ之ヲ準用ス但シ組合会ニ於テハ組合ノ解散、合併又ハ地区ノ変更ノ議決ヲ為スコトヲ得ス
第四款 組合ノ管理
第七十三条 組合ニ組合長一人及組合副長一人又ハ数人ヲ置ク
組合長又ハ組合副長ハ組合員中ヨリ之ヲ選挙ス但シ特別ノ事情アルトキハ組合員ニ非サル者ヨリ之ヲ選挙スルコトヲ得
組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
組合長、組合副長共ニ闕員ト為リタルトキハ地方長官ハ臨時代理者ヲ指定スルコトヲ得
地方長官前二項ノ規定ニ依リ認可ヲ与ヘ又ハ指定ヲ為シタルトキハ其ノ旨ヲ告示スヘシ
組合長、組合副長又ハ臨時代理者ノ就任若ハ解任ハ前項ノ告示アル迄之ヲ以テ他人ニ対抗スルコトヲ得ス
第七十四条 組合長ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ管理ス
組合副長ハ組合長ヲ補佐シ組合長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理ス組合副長数人アルトキハ其ノ代理ノ順序ハ規約ノ定ムル所ニ依ル
第七十五条 組合長ノ権限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第七十六条 組合ニ評議員ヲ置ク但シ特別ノ事情アル為地方長官ノ認可ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
評議員ハ組合員中ヨリ之ヲ選挙ス
評議員ハ組合長ノ諮詢ニ応シ並業務及財産ノ状況ヲ監査ス
組合長ハ規約ノ定ムル所ニ依リ評議員ヲシテ組合ノ事務ノ一部ヲ分掌セシムルコトヲ得
第七十七条 組合長ハ設計書、規約、組合員名簿、会議ノ議事録其ノ他組合ニ関スル書類及帳簿ヲ事務所ニ備ヘ置クヘシ
組合員又ハ利害関係人ヨリ前項ノ書類又ハ帳簿ノ閲覧ヲ求メタルトキハ正当ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ拒ムコトヲ得ス
第五款 組合ノ財務
第七十八条 組合ノ費用ハ規約ノ定ムル所ニ依リ組合員之ヲ負担ス
夫役現品ノ分賦及之ニ代ルヘキ金額ニ関スル規定ハ規約中ニ之ヲ定ムヘシ
第七十九条 組合員ニシテ組合費又ハ第三十条第一項、第二項ノ規定ニ依リ支払フヘキ金銭ヲ滞納スルトキハ市町村ハ組合長ノ請求ニ依リ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス
前項ノ場合ニ於テ組合ハ其ノ徴収金額中百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
第一項ノ徴収金ハ組合地区内ノ土地ニ関シ市町村、水利組合其ノ他之ニ準スヘキモノノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有ス
前三項ノ規定ハ組合員カ夫役現品ニ代ルヘキ金銭ヲ滞納スル場合ニ之ヲ準用ス
第八十条 組合ニ於テ負債ヲ起シ、起債ノ方法、利息ノ定率若ハ償還ノ方法ヲ定メ又ハ之ヲ変更セムトスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ負債ハ起債ノ時ヨリ十五年以内ニ之ヲ還了スヘシ但シ特別ノ事由アル場合ニ限リ二十年迄延期スルコトヲ得
第八十一条 組合ニシテ其ノ債務ヲ完済スルコト能ハサルトキハ帝室及国ヲ除クノ外組合員ハ之ニ付連帯無限ノ責任ヲ負担ス但シ規約ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三章 監督
第八十二条 耕地整理ハ第一次ニ郡長、第二次ニ地方長官、第三次ニ主務大臣之ヲ監督ス但シ整理施行ノ区域郡市若ハ数郡ニ渉リ又ハ市内ニ止ル場合ニ於テハ第一次ニ地方長官、第二次ニ主務大臣之ヲ監督ス
第八十三条 主務大臣又ハ地方長官ニ於テ会議ノ表決又ハ整理施行者ノ行為カ設計書、規約又ハ法令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ会議ノ表決ヲ取消シ、組合長若ハ組合副長ヲ解任シ、評議員若ハ組合会議員ノ改選、事業ノ停止若ハ組合ノ解散ヲ命シ又ハ整理施行ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第八十四条 監督官庁ハ整理施行者ヲシテ耕地整理事業ニ関スル報告ヲ為サシメ、書類、帳簿、出納又ハ工事ヲ検査シ、設計書又ハ規約ノ変更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第八十五条 監督官庁ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ依ル認可申請ニ対シ申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ認可ヲ与フルコトヲ得
第八十六条 第三条ノ規定ニ依ル耕地整理ノ施行若ハ整理施行地区ノ変更ニ異議アル関係人、第四十三条若ハ第四十四条ノ規定ニ違反シテ耕地整理組合ノ地区ニ編入シタル土地ノ所有者若ハ関係人又ハ第三条第二項但書若ハ第五十四条第一項但書ノ規定ニ依リ異議アル債権者ハ各耕地整理施行ノ認可若ハ整理施行地区変更ノ認可ノ告示、耕地整理組合ノ設立若ハ組合地区変更ノ認可ノ告示又ハ第三条第四項若ハ第五十四条第二項ノ規定ニ依リ当該事項ノ告示アリタル日ヨリ六十日以内ニ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ訴願アリタル場合ニ於テハ地方長官ハ其ノ裁決アル迄目的タル土地ニ付耕地整理ノ施行ヲ停止スルコトヲ得
第八十七条 第四十四条第二項ノ規定ニ依ル補償金ニ付協議調ハサルカ又ハ協議ヲ為スコト能ハサルトキハ地方長官ノ決定ヲ求ムヘシ
前項ノ決定ニ不服アル者ハ其ノ決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ九十日以内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十八条 総会議、総会又ハ組合会ノ招集手続又ハ表決カ違法ナル場合ニ於テ之ニ対シ不服アル者ハ其ノ表決ノ日ヨリ十四日以内ニ地方長官ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
前項異議ノ申立アリタル場合ニ於テ監督官庁ハ其ノ職権ニ依リ又ハ利害関係人ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ表決又ハ処分ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
第八十九条 監督官庁ノ処分ニシテ本法中他ノ条項ニ於テ地方長官ノ告示ヲ必要トスル事項ニ相当スルモノニ付テハ地方長官ハ之ヲ告示スヘシ
整理施行者ハ前項ノ告示アル迄其ノ受ケタル処分ヲ以テ他人ニ対抗スルコトヲ得ス
前二項ノ規定ハ監督官庁ノ命令シタル停止処分ノ解除ニ之ヲ準用ス
第四章 罰則
第九十条 耕地整理施行ニ関シ設ケタル標識ヲ移転、汚損、毀壊又ハ除却シタル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス
第九十一条 第三条ノ規定ニ依ル整理施行者又ハ耕地整理組合ノ組合長若ハ組合副長本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ五十円以下ノ過料ニ処ス
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第九十二条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治三十年法律第三十九号ハ之ヲ廃止ス但シ現ニ土地ノ区画形状変更ノ許可ヲ得タル者ニ関シテハ仍従前ノ例ニ依ル
第九十三条 北海道ノ耕地整理ニ付テハ勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第九十四条 本法施行前耕地整理ニ関シ発起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者ニ付テハ以下数条ニ規定スルモノヲ除クノ外旧法ノ規定ヲ適用ス
第九十五条 本法第一条、第二条、第四条、第八条、第十条、第十七条、第二十七条、第二十八条、第三十条、第三十一条、第三十三条、第三十五条乃至第四十条、第八十二条、第八十四条及第八十五条ノ規定ハ本法施行前耕地整理ニ関シ発起又ハ施行ノ認可ヲ得タル者ニ之ヲ適用ス
第九十六条 本法施行前耕地整理発起ノ認可ヲ得タル者ハ発起人又ハ整理委員ノ申請ニ依リ命令ノ定ムル所ニ従ヒ之ヲ本法ニ依ル耕地整理組合ト為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ耕地整理組合ト為シタルトキハ耕地整理ニ関スル従前ノ設計書又ハ規約ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ反セサル範囲内ニ於テ本法ノ規定ニ依ル設計書又ハ規約ト看做ス
第一項ノ規定ニ依ル耕地整理組合ハ耕地整理ニ関スル参加土地所有者共同ノ権利義務ヲ承継ス
第九十七条 本法施行前耕地整理発起ノ認可ヲ申請シ未タ之ヲ得ルニ至ラサル者ハ命令ノ定ムル所ニ従ヒ之ヲ本法第五十条ノ規定ニ依ル耕地整理組合設立ノ申請ト為スコトヲ得
第九十八条 旧法又ハ明治三十年法律第三十九号ニ依リ為シタル処分ニ対スル訴願ニ関シテハ各旧法又ハ明治三十年法律第三十九号ノ規定ニ依ル