第一條 新規ナル工業的發明ヲ爲シタル者ハ其ノ發明ニ付特許ヲ受クルコトヲ得
第二條 特許權者又ハ特許出願者ハ其ノ發明ノ改良又ハ擴張ニ係ル新規ノ發明ニ付獨立ノ特許ニ代ヘ追加ノ特許ヲ受クルコトヲ得
第四條 本法ニ於テ發明ノ新規ト稱スルハ發明カ左ノ各號ノ一ニ該當スルコトナキヲ謂フ
一 特許出願前帝國內ニ於テ公然知ラレ又ハ公然用井ラレタルモノ
二 特許出願前帝國內ニ頒布セラレタル刊行物ニ容易ニ實施スルコトヲ得ヘキ程度ニ於テ記載セラレタルモノ
第五條 特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ試驗ノ爲其ノ者ノ發明ヲ前條各號ノ一ニ該當スルニ至ラシメタル場合ニ於テ其ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許ヲ出願シタルトキハ其ノ者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノト看做ス
特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者ノ意ニ反シテ其ノ者ノ發明カ前條各號ノ一ニ該當スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許ヲ出願シタルトキ亦前項ニ同シ
第六條 特許ヲ受クルノ權利ヲ有スル者カ政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覽會又ハ工業所有權保護同盟條約國ノ版圖內ニ開設スル官設若ハ官許ノ萬國博覽會ニ出品ノ爲其ノ者ノ發明ヲ第四條各號ノ一ニ該當スルニ至ラシメタル場合ニ於テ其ノ開會ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ者カ特許ヲ出願シタルトキハ其ノ者ノ發明ハ之ヲ新規ナルモノト看做ス
前項ニ揭クル萬國博覽會ヲ除クノ外外國ノ版圖內ニ開設スル官設又ハ官許ノ博覽會ニ出品スル發明ニ付保護ヲ與フルノ必要アルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 特許出願ハ一發明每ニ之ヲ爲スヘシ但シ二以上ノ發明カ牽連シテ利用上一發明ヲ爲スモノト認メ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第八條 同一發明ニ付テハ最先ノ出願者ニ限リ特許ス但シ同日ノ各別ノ出願者アルトキハ出願者ノ協議ニ依リ特許シ協議調ハサルトキハ共ニ特許セス
第九條 二以上ノ發明ヲ包含スル特許出願ヲ二以上ノ出願ト爲シタルトキハ各出願ハ最初出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス
追加ノ特許出願ヲ獨立ノ特許出願ニ、獨立ノ特許出願ヲ追加ノ特許出願ニ變更シタルトキ亦前項ニ同シ
第十條 特許出願カ特許ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者又ハ特許ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ノ爲シタルモノナルニ因リ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル場合ニ於テ其ノ特許出願ノ後ニ爲シタル正當權利者ノ出願ハ其ノ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル特許出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ特許ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル日ヨリ三十日ヲ、出願公告アリタル場合ニ於テハ出願公告ノ日ヨリ三十日ヲ經過シタル後ノ出願ニ係ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 特許カ特許ヲ受クルノ權利ノ承繼人ニ非サル者又ハ特許ヲ受クルノ權利ヲ冒認シタル者ノ受ケタルモノナルニ因リ其ノ特許ヲ無效トスル審決確定シ又ハ判決アリタル場合ニ於テ其ノ特許ノ出願ノ後ニ爲シタル正當權利者ノ出願ハ其ノ無效ト爲リタル特許ノ出願ノ時ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ其ノ特許ノ出願公告ノ日ヨリ五年ヲ經過シタル後ノ出願又ハ其ノ審決確定シ若ハ判決アリタル日ヨリ三十日ヲ經過シタル後ノ出願ニ係ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十二條 特許ヲ受クルノ權利ハ之ヲ移轉スルコトヲ得但シ擔保ニ供スルコトヲ得ス
特許ヲ受クルノ權利カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
特許ヲ受クルノ權利ノ承繼ハ承繼人カ特許出願前ニ在リテハ特許ヲ出願シ特許出願後ニ在リテハ出願人名義ノ變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ出願又ハ屆出ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十三條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル法定又ハ指定ノ期間ノ計算ハ左ノ規定ニ依ル
一 期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但シ其ノ期間カ午前零時ヨリ始ルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 期間ヲ定ムルニ月又ハ年ヲ以テシタルトキハ曆ニ從フ月又ハ年ノ始ヨリ期間ヲ起算セサルトキハ其ノ期間ハ最後ノ月又ハ年ニ於テ其ノ起算日ニ應當スル日ノ前日ヲ以テ滿了ス但シ最後ノ月ニ應當日ナキトキハ其ノ月ノ末日ヲ以テ滿了ス
特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付テノ法定又ハ指定ノ期間ノ末日カ日曜日又ハ一般ノ祝祭日ニ當ルヘキトキハ其ノ日ノ翌日ヲ以テ其ノ期間ノ末日トス
第十四條 被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ其ノ勤務ニ關シ爲シタル發明ニ付テハ性質上使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ノ業務範圍ニ屬シ且其ノ發明ヲ爲スニ至リタル行爲カ被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ任務ニ屬スル場合ノモノヲ除クノ外豫メ使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ヲシテ特許ヲ受クルノ權利又ハ特許權ヲ承繼セシムルコトヲ定メタル契約又ハ勤務規程ノ條項ハ之ヲ無效トス
使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ハ被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ其ノ勤務ニ關シ爲シタル發明ニシテ性質上使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ノ業務範圍ニ屬シ且其ノ發明ヲ爲スニ至リタル行爲カ被用者、法人ノ役員又ハ公務員ノ任務ニ屬スル場合ノモノニ付其ノ被用者、法人ノ役員若ハ公務員カ特許ヲ受ケタルトキ又ハ其ノ者ノ特許ヲ受クルノ權利ヲ承繼シタル者カ特許ヲ受ケタルトキハ其ノ發明ニ付實施權ヲ有ス
被用者、法人ノ役員又ハ公務員ハ前項ノ發明ニ付テノ特許ヲ受クルノ權利又ハ特許權ヲ豫メ定メタル契約又ハ勤務規程ニ依リ使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ヲシテ承繼セシメタル場合ニ於テ相當ノ補償金ヲ受クルノ權利ヲ有ス
使用者、法人又ハ職務ヲ執行セシムル者ニ於テ旣ニ支拂ヒタル報酬アルトキハ裁判所ハ前項ノ補償金ヲ定ムルニ付之ヲ斟酌スルコトヲ得
本條ニ於テ法人ノ役員ト稱スルハ法人ノ業務ヲ執行スル役員ヲ謂ヒ公務員ト稱スルハ刑法第七條第一項ノ公務員ヲ謂フ
第十五條 特許出願ニ係ル發明カ軍事上祕密ヲ要シ又ハ軍事上若ハ公益上必要ナルモノナルトキハ特許ヲ與ヘス、特許ヲ受クルノ權利ヲ政府ニ於テ收用シ又ハ制限ヲ附シテ特許ヲ與フルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ特許ヲ與ヘス、權利ヲ收用シ又ハ制限ヲ附シテ特許ヲ與フル場合ニ於テハ政府ハ相當ノ補償金ヲ支給ス
第十六條 帝國內ニ住所ヲモ居所ヲモ有セサル者ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外帝國內ニ住所又ハ居所ヲ有スル代理人ニ依ルニ非サレハ特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲シ又ハ特許權若ハ特許ニ關スル權利ヲ主張スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ出願若ハ請求又ハ主張ヲ爲ス代理人ハ特ニ授ケラレタル權限ノ外本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル手續竝民事訴訟、私訴及告訴ニ付本人ヲ代表ス
特許權者又ハ特許權ニ關シ登錄シタル權利ヲ有スル者ノ代理人ニシテ第一項ノ規定ニ依リ手續又ハ主張ヲ爲スモノノ選任若ハ變更又ハ代理權若ハ其ノ變更消滅ハ登錄ヲ受クルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十七條 特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲ス者ノ代理人ニシテ前條第三項ニ規定スル代理人ニ非サルモノノ選任若ハ變更又ハ代理權若ハ其ノ變更消滅ハ特許局ニ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ特許局ニ對抗スルコトヲ得ス
第十八條 特許ニ關スル代理人數人アルトキハ特許局ニ對シテハ共同又ハ各別ニ本人ヲ代表ス
第十九條 特許局長官ニ於テ特許ニ關スル代理人ヲ適當ナラスト認ムルトキハ其ノ改任ヲ命スルコトヲ得
特許局長官又ハ審判長ニ於テ當事者、參加人若ハ特許異議申立人又ハ其ノ代理人カ手續又ハ演述ヲ爲スノ能力ナシト認ムルトキハ辨理士ヲ以テ代理セシムヘキコトヲ命スルコトヲ得
前二項ニ規定スル命令アリタル後第一項ノ代理人又ハ前項ノ當事者、參加人、特許異議申立人若ハ代理人ノ特許局ニ對シ爲シタル行爲ハ之ヲ無效ト爲スコトヲ得
第二十條 特許局ニ對シ爲スヘキ事項ノ代理業ハ辨理士ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第二十一條 數人共同シテ特許ニ關スル出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲ス者又ハ特許權ノ共有者ハ特許局ニ對シ各人互ニ代表スルモノトス但シ特ニ代表者ヲ定メ特許局ニ屆出テタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十二條 特許權者帝國內ニ住所ヲモ居所ヲモ有セサルトキハ第十六條第二項ノ代理人ノ住所又ハ居所、其ノ代理人ナキモノニ在リテハ特許局ノ所在地ヲ以テ民事訴訟法第十七條ノ財產所在地ト看做ス
第二十三條 特許局長官ハ外國又ハ遠隔若ハ交通不便ノ地ニ在ル者ノ爲請求ニ依リ又ハ職權ヲ以テ特許局ニ對シ手續ヲ爲スヘキ法定ノ期間ヲ延長スルコトヲ得
第二十四條 出願、請求其ノ他ノ手續ヲ爲シタル者之ニ關スル爾後ノ行爲ニ付指定ノ期間ヲ懈怠シタルトキ又ハ登錄ヲ受クル際納付スヘキ特許料ノ納付ヲ怠リタルトキハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外特許局長官ハ其ノ出願、請求其ノ他ノ手續ヲ無效ト爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ出願、請求其ノ他ノ手續ヲ無效ト爲シタル場合ニ於テ其ノ期間ノ懈怠カ宥恕スヘキ障礙ニ因ルモノト認ムルトキハ其ノ障礙ノ止ミタル日ヨリ十四日以內ニシテ其ノ期間滿了後一年以內ノ請求ニ依リ特許局長官ハ懈怠ノ結果ヲ免レシムルコトヲ得
第二十五條 天災其ノ他避クヘカラサル事變ニ因リ法定ノ期間ヲ懈怠シタル場合ニ於テ其ノ障礙ノ止ミタル日ヨリ十四日以內ニシテ其ノ期間滿了後一年以內ノ請求ニ依リ特許局長官又ハ審判長ハ懈怠ノ結果ヲ免レシムルコトヲ得但シ第七十四條ニ規定スル特許異議ノ申立期間ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十六條 特許局ニ差出スヘキ書類其ノ他ノ物件ニ付差出ノ效力ヲ生スヘキ時期ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ特許權者又ハ特許ニ關スル權利ヲ有スル者ノ爲シタル又ハ其ノ者ニ對シ爲サレタル手續ノ效力ハ其ノ特許權又ハ特許ニ關スル權利ノ承繼人ニ及フ
第二十八條 特許局ニ事件ノ繫屬中ニ於テ特許權又ハ特許ニ關スル權利ノ移轉アリタルトキハ特許局ハ承繼人ニ對シ手續ヲ續行スルコトヲ得
第二十九條 本法ニ規定スルモノノ外特許局ニ繫ル手續ノ中斷中止及中斷中止シタル手續ノ續行ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條 特許ニ關シ證明、特許證ノ複本、書類ノ謄本若ハ圖面ノ調製ヲ求メ又ハ書類ノ閱覽若ハ謄寫ヲ爲サムトスル者ハ特許局長官ニ之ヲ申請スルコトヲ得但シ特許局長官ニ於テ祕密ヲ要スト認ムルモノニ付テハ之ヲ許可セス
第三十一條 軍事上祕密ヲ要スル發明ニ付テハ本法ニ規定スルモノノ外命令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第三十二條 外國人ニシテ帝國內ニ住所ヲモ營業所ヲモ有セサルモノハ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ヲ除クノ外特許權又ハ特許ニ關スル權利ヲ享有スルコトヲ得ス
第三十三條 特許ニ關シ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定ニ從フ