特許法施行令
法令番号: 勅令第四百六十號
公布年月日: 大正10年12月16日
法令の形式: 勅令
朕特許法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十年十二月十五日
內閣總理大臣 子爵 高橋是淸
農商務大臣 男爵 山本達雄
勅令第四百六十號
特許法施行令
第一章 軍事上祕密ヲ要スル發明
第一條 主務大臣カ軍事上祕密ヲ要スト認メタル發明ニ付特許ノ出願ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ發明ノ明細書及圖面其ノ他祕密ヲ要スル物件ヲ密封シ封印シテ特許局長官ニ之ヲ差出スヘシ
特許權者カ軍事上祕密ヲ要スル特許發明ニ付特許法第五十三條ノ許可ノ審判ノ請求ヲ爲ス場合亦前項ニ同シ
第二條 特許局長官ハ前條第一項ノ規定ニ依ラサル特許ノ出願アリタル場合ニ於テ其ノ發明カ軍事上祕密ヲ要スルモノト認メタルトキハ遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ移牒シ意見ヲ求ムヘシ
第三條 第一條ノ出願又ハ請求アリタルトキハ特許局長官ハ特ニ審査官又ハ審判官一人ヲ指定シ之ヲ審査又ハ審判セシム
特許スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ許可スヘシトノ審決確定シタルトキハ特許局長官ハ出願又ハ請求ニ係ル書類及物件ヲ密封シ之ニ封印スヘシ
拒絕ノ査定若ハ審決確定シ又ハ許可セストノ審決確定シタルトキハ特許局長官ハ出願又ハ請求ニ係ル書類及物件ヲ密封シ封印シテ主務大臣ニ之ヲ交付スヘシ
第四條 前條ノ規定ハ第一條第一項ノ規定ニ依ラサル特許ノ出願アリタル場合ニ於テ其ノ發明カ軍事上祕密ヲ要スル爲主務大臣ノ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第五條 第三條第二項ノ規定又ハ前條ニ依リ準用スル同項ノ規定ニ依リ密封シタル書類及物件ハ主務大臣ノ請求又ハ承諾アリタル場合ヲ除クノ外之ヲ開封スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ開封シタル書類及物件ハ特許局長官更ニ之ヲ密封シ封印スヘシ
第六條 主務大臣ハ前條第一項ニ規定スル書類及物件ノ交付ヲ請求スルコト得
前項ノ規定ニ依リ交付ヲ受ケタル書類及物件ハ主務大臣更ニ密封シ封印シテ之ヲ還付スヘシ
第七條 軍事上祕密ヲ要スル特許發明ニ對スル審判又ハ抗吿審判ノ請求ハ主務大臣密封シタル書類及物件ノ開封ヲ承諾シタル場合ニ限リ之ヲ受理スルコトヲ得
前項ノ審判又ハ抗吿審判ノ審決ニハ理由ヲ附セス
第八條 軍事上祕密ヲ要スル特許發明ニ關スル審判又ハ抗吿審判ノ口頭審理ハ之ヲ公開セス
第九條 軍事上祕密ヲ要スル特許發明カ祕密ニスルノ必要ナキニ至リタルトキハ主務大臣ハ其ノ旨ヲ特許局長官ニ通知スヘシ
前項ノ通知アリタルトキハ特許局長官ハ其ノ特許發明ヲ特許公報及特許發明明細書ニ記載スヘシ
第二章 特許權ノ存續期間ノ延長
第十條 重要ナル發明ノ特許權者カ正當ノ事由ニ依リ其ノ特許權ノ存續期間內ニ其ノ發明ヨリ生スヘキ相當ノ利益ヲ得ルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ存續期間ノ延長ヲ出願スルコトヲ得
第十一條 存續期間ノ延長ヲ出願スル者ハ存續期間滿了ノ日前六月乃至一年內ニ願書ニ特許發明ノ重要ナル事由、其ノ發明ノ實施ノ狀況、其ノ發明ニ關スル收支計算及相當ノ利益ヲ得サリシ事由ヲ詳記シタル書面ヲ添附シ特許局長官ヲ經由シテ之ヲ農商務大臣ニ差出スヘシ
願書ニハ左ノ事項ヲ記載シ出願人記名捺印スヘシ
一 特許番號及發明ノ名稱
二 出願人ノ氏名名稱及住所
三 延長ノ期間
第十二條 特許局長官ハ意見書ヲ作リ之ヲ前條ノ願書ニ添ヘ農商務大臣ニ差出スヘシ
第十三條 存續期間延長ノ出願ニ付テハ農商務大臣ハ五人又ハ七人ノ審査委員ヲ命シ之ヲ審査セシムヘシ
第十四條 前條ノ審査ヲ終リタルトキハ農商務大臣ハ出願ノ許否ヲ決定スヘシ
決定ニハ理由ヲ附スヘシ
農商務大臣ハ決定ヲ爲シタルトキハ決定書ヲ出願人ニ送付スヘシ
第十五條 農商務大臣ハ出願ニ係ル期間ヲ短縮シ又ハ制限ヲ附シテ出願ヲ許可スルコトヲ得
第十六條 軍事上祕密ヲ要スル發明ニ係ル特許權ニシテ國ニ屬スルモノニ付主務大臣カ其ノ存續期間ノ延長ヲ出願シタルトキハ農商務大臣ハ前六條ノ規定ニ拘ラス其ノ出願ヲ許可スヘシ
軍事上祕密ヲ要スル發明ニ係ル特許權ニシテ國ニ屬セサルモノニ付存續期間延長ノ出願アリタル場合ニ於テ主務大臣カ其ノ延長ヲ必要ト認メタルトキ亦前項ニ同シ
第十七條 存續期間延長ノ許可アリタルトキハ特許局長官ハ之ヲ特許原簿ニ登錄シ特許證ヲ下付スヘシ
第三章 審判其ノ他ノ手續ニ關スル費用
第十八條 審判及抗吿審判ノ費用ニ關スル各當事者、參加人及參加申請人ノ負擔ニ付テハ民事訴訟法第七十二條乃至第七十八條、第八十條乃至第八十二條、第八十三條第一項及第八十六條ノ規定ヲ準用ス
第十九條 特許異議、特許法第五十三條ノ許可ニ付テノ許可異議又ハ此等ノ異議ノ參加ニ關シ生シタル證據調ノ費用ノ負擔ニ付テハ前條ノ規定ヲ準用ス
第二十條 前二條ノ費用及抗吿審判ノ審決ニ對スル出訴ノ費用ノ額ニ付テハ民事訴訟費用法ヲ準用ス
第二十一條 第十八條及前條ノ規定ハ再審ノ費用ニ付之ヲ準用ス
附 則
本令ハ大正十一年一月十一日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十二年勅令第二百七十九號、明治四十二年勅令第二百九十八號、同年勅令第二百九十九號及同年勅令第三百一號ハ之ヲ廢止ス
朕特許法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十年十二月十五日
内閣総理大臣 子爵 高橋是清
農商務大臣 男爵 山本達雄
勅令第四百六十号
特許法施行令
第一章 軍事上秘密ヲ要スル発明
第一条 主務大臣カ軍事上秘密ヲ要スト認メタル発明ニ付特許ノ出願ヲ為ス場合ニ於テハ其ノ発明ノ明細書及図面其ノ他秘密ヲ要スル物件ヲ密封シ封印シテ特許局長官ニ之ヲ差出スヘシ
特許権者カ軍事上秘密ヲ要スル特許発明ニ付特許法第五十三条ノ許可ノ審判ノ請求ヲ為ス場合亦前項ニ同シ
第二条 特許局長官ハ前条第一項ノ規定ニ依ラサル特許ノ出願アリタル場合ニ於テ其ノ発明カ軍事上秘密ヲ要スルモノト認メタルトキハ遅滞ナク之ヲ主務大臣ニ移牒シ意見ヲ求ムヘシ
第三条 第一条ノ出願又ハ請求アリタルトキハ特許局長官ハ特ニ審査官又ハ審判官一人ヲ指定シ之ヲ審査又ハ審判セシム
特許スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ許可スヘシトノ審決確定シタルトキハ特許局長官ハ出願又ハ請求ニ係ル書類及物件ヲ密封シ之ニ封印スヘシ
拒絶ノ査定若ハ審決確定シ又ハ許可セストノ審決確定シタルトキハ特許局長官ハ出願又ハ請求ニ係ル書類及物件ヲ密封シ封印シテ主務大臣ニ之ヲ交付スヘシ
第四条 前条ノ規定ハ第一条第一項ノ規定ニ依ラサル特許ノ出願アリタル場合ニ於テ其ノ発明カ軍事上秘密ヲ要スル為主務大臣ノ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第五条 第三条第二項ノ規定又ハ前条ニ依リ準用スル同項ノ規定ニ依リ密封シタル書類及物件ハ主務大臣ノ請求又ハ承諾アリタル場合ヲ除クノ外之ヲ開封スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ開封シタル書類及物件ハ特許局長官更ニ之ヲ密封シ封印スヘシ
第六条 主務大臣ハ前条第一項ニ規定スル書類及物件ノ交付ヲ請求スルコト得
前項ノ規定ニ依リ交付ヲ受ケタル書類及物件ハ主務大臣更ニ密封シ封印シテ之ヲ還付スヘシ
第七条 軍事上秘密ヲ要スル特許発明ニ対スル審判又ハ抗告審判ノ請求ハ主務大臣密封シタル書類及物件ノ開封ヲ承諾シタル場合ニ限リ之ヲ受理スルコトヲ得
前項ノ審判又ハ抗告審判ノ審決ニハ理由ヲ附セス
第八条 軍事上秘密ヲ要スル特許発明ニ関スル審判又ハ抗告審判ノ口頭審理ハ之ヲ公開セス
第九条 軍事上秘密ヲ要スル特許発明カ秘密ニスルノ必要ナキニ至リタルトキハ主務大臣ハ其ノ旨ヲ特許局長官ニ通知スヘシ
前項ノ通知アリタルトキハ特許局長官ハ其ノ特許発明ヲ特許公報及特許発明明細書ニ記載スヘシ
第二章 特許権ノ存続期間ノ延長
第十条 重要ナル発明ノ特許権者カ正当ノ事由ニ依リ其ノ特許権ノ存続期間内ニ其ノ発明ヨリ生スヘキ相当ノ利益ヲ得ルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ存続期間ノ延長ヲ出願スルコトヲ得
第十一条 存続期間ノ延長ヲ出願スル者ハ存続期間満了ノ日前六月乃至一年内ニ願書ニ特許発明ノ重要ナル事由、其ノ発明ノ実施ノ状況、其ノ発明ニ関スル収支計算及相当ノ利益ヲ得サリシ事由ヲ詳記シタル書面ヲ添附シ特許局長官ヲ経由シテ之ヲ農商務大臣ニ差出スヘシ
願書ニハ左ノ事項ヲ記載シ出願人記名捺印スヘシ
一 特許番号及発明ノ名称
二 出願人ノ氏名名称及住所
三 延長ノ期間
第十二条 特許局長官ハ意見書ヲ作リ之ヲ前条ノ願書ニ添ヘ農商務大臣ニ差出スヘシ
第十三条 存続期間延長ノ出願ニ付テハ農商務大臣ハ五人又ハ七人ノ審査委員ヲ命シ之ヲ審査セシムヘシ
第十四条 前条ノ審査ヲ終リタルトキハ農商務大臣ハ出願ノ許否ヲ決定スヘシ
決定ニハ理由ヲ附スヘシ
農商務大臣ハ決定ヲ為シタルトキハ決定書ヲ出願人ニ送付スヘシ
第十五条 農商務大臣ハ出願ニ係ル期間ヲ短縮シ又ハ制限ヲ附シテ出願ヲ許可スルコトヲ得
第十六条 軍事上秘密ヲ要スル発明ニ係ル特許権ニシテ国ニ属スルモノニ付主務大臣カ其ノ存続期間ノ延長ヲ出願シタルトキハ農商務大臣ハ前六条ノ規定ニ拘ラス其ノ出願ヲ許可スヘシ
軍事上秘密ヲ要スル発明ニ係ル特許権ニシテ国ニ属セサルモノニ付存続期間延長ノ出願アリタル場合ニ於テ主務大臣カ其ノ延長ヲ必要ト認メタルトキ亦前項ニ同シ
第十七条 存続期間延長ノ許可アリタルトキハ特許局長官ハ之ヲ特許原簿ニ登録シ特許証ヲ下付スヘシ
第三章 審判其ノ他ノ手続ニ関スル費用
第十八条 審判及抗告審判ノ費用ニ関スル各当事者、参加人及参加申請人ノ負担ニ付テハ民事訴訟法第七十二条乃至第七十八条、第八十条乃至第八十二条、第八十三条第一項及第八十六条ノ規定ヲ準用ス
第十九条 特許異議、特許法第五十三条ノ許可ニ付テノ許可異議又ハ此等ノ異議ノ参加ニ関シ生シタル証拠調ノ費用ノ負担ニ付テハ前条ノ規定ヲ準用ス
第二十条 前二条ノ費用及抗告審判ノ審決ニ対スル出訴ノ費用ノ額ニ付テハ民事訴訟費用法ヲ準用ス
第二十一条 第十八条及前条ノ規定ハ再審ノ費用ニ付之ヲ準用ス
附 則
本令ハ大正十一年一月十一日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十二年勅令第二百七十九号、明治四十二年勅令第二百九十八号、同年勅令第二百九十九号及同年勅令第三百一号ハ之ヲ廃止ス