朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル鹽專賣法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十七年十二月三十一日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 淸浦奎吾
大藏大臣 男爵 曾禰荒助
法律第十一號
鹽專賣法
第一條 政府ハ鹽ノ專賣權ヲ有ス
第二條 政府ハ便宜ノ地ニ鹽取扱所ヲ設置シ鹽ノ收納及賣渡ヲ取扱ハシム
第三條 鹽ハ政府又ハ政府ノ命ヲ受ケタル者ニ非サレハ之ヲ外國ヨリ輸入シ又ハ本法ヲ施行セサル地ヨリ移入スルコトヲ得ス
第四條 鹽ハ政府ノ許可ヲ受ケタル者ニ非サレハ之ヲ製造スルコトヲ得ス
第五條 政府ヨリ賣渡シタル鹽ニ非サレハ所有シ、所持シ、讓渡シ、質入シ又ハ消費スルコトヲ得ス但シ納付期日前若ハ正當ノ事由ニ因リ納付ヲ遲延シタル場合ニ於テ又ハ製造者ノ自家用ノ爲所有、所持スルハ此ノ限ニ在ラス
第六條 政府ハ製鹽地ノ區域又ハ鹽ノ製造期間若ハ生產高ヲ制限スルコトヲ得
前項ニ依ル制限ハ鹽ノ試製ニ之ヲ適用セス
第七條 鹽製造者ノ製造シタル鹽ハ政府之ヲ收納ス但シ命令ノ定ムル制限數量以內ノ鹽ニシテ鹽製造者ノ自家用ニ供スルモノ又ハ政府ヨリ賣渡シタル鹽ニ依リ再製シタル鹽ハ此ノ限ニ在ラス
第八條 鹽ノ賠償價格ハ政府之ヲ定メ豫メ公示スヘシ
第九條 鹽ヲ製造セムトスル者ハ製鹽ノ方法、採鹹地名、地番、製鹽段別、製鹽場、貯藏場及一年ノ生產見込高ヲ定メ政府ニ申請シ許可ヲ受クヘシ之ヲ變更セムトスルトキ亦同シ
第十條 鹽ノ製造業ト鹽ノ賣買業トハ同一ノ場所ニ於テ相兼ヌルコトヲ得ス
但シ政府ノ賣渡シタル鹽ニ依リ再製スルハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 相續ニ因リ鹽ノ製造ヲ承繼シタルトキハ其ノ旨政府ニ屆出ツヘシ
相續ニ因ルノ外鹽ノ製造ヲ承繼セムトスルトキハ政府ノ許可ヲ受クヘシ
第十二條 鹽製造者鹽ノ製造ヲ廢止セムトスルトキハ少クトモ一箇月前ニ政府ニ申吿スヘシ但シ政府ノ許可ヲ受ケテ製造ヲ廢止スルハ此ノ限ニ在ラス
第十三條 鹽製造者本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタルトキハ政府ハ製造ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第十四條 鹽製造者鹽ヲ製造シタルトキハ總テ之ヲ政府ニ納付スヘシ但シ第七條但書ニ該當スルモノハ此ノ限ニ在ラス
政府ハ鹽製造者ヲシテ前項ニ依リ納付スヘキ鹽ヲ其ノ指定シタル者ニ引渡スヘキコトヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ政府カ鹽ノ數量ヲ定メ引渡ヲ命シタルトキ製造者之ヲ政府ニ納付シタルモノト看做ス
第十五條 鹽製造者鹽ヲ納付シタルトキハ政府ハ鑑定人ヲシテ其ノ品質ヲ鑑定セシメ相當ノ賠償金ヲ交付スヘシ
製造者前項ノ鑑定ニ不服ナルトキハ再鑑定ヲ求ムルコトヲ得但シ賠償金ノ請求ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
再鑑定ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 鹽製造者ノ納付セムトスル鹽ニシテ其ノ品質甚シク粗惡ナルモノニ付テハ政府ハ更ニ相當ノ處理ヲ爲シタル上納付スヘキコトヲ命スルコトヲ得
第十七條 政府ハ鹽ノ製造又ハ包裝ノ方法、納付場所、納付期日及其ノ運搬通路ヲ定ムルコトヲ得
第十八條 政府ハ定價ヲ以テ鹽ノ賣渡ヲ爲スヘシ
前項ノ定價ハ賠償金ヲ交付シテ收納シタル鹽ニ付テハ賣渡當時ノ品質ニ相當スル賠償金ニ一石ニ付金二圓五十錢又ハ百斤ニ付金一圓四十八錢ノ割合ノ金額ヲ加算シタルモノヲ超エテ之ヲ定ムルコトヲ得ス
第十九條 左ニ揭クル鹽ニ付テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ定價ヲ以テ之ヲ賣渡スコトヲ得
一 外國ニ輸出スルモノ
二 命令ヲ以テ指定スル用途ニ使用スルモノ
前條ニ依リテ賣渡シタル鹽ニシテ命令ノ定ムル用途ニ使用セラレタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ下付ス
第二十條 政府ハ命令ヲ以テ定メタル數量以上ニ非サレハ鹽ノ賣渡ヲ爲サス
第二十一條 鹽賣買業者ハ鹽ニ他物ヲ混和シテ販賣スルコトヲ得ス
第二十二條 鹽製造者及鹽賣買業者ハ帳簿ヲ調製シ政府ノ指示ニ從ヒ營業ニ關スル要件ヲ記載スヘシ
第二十三條 當該官吏ハ採鹹地、製鹽場、貯藏場其ノ他鹽ノ所在ト認ムル場所ニ立入リ鹹水、鹽、器具、器械、建築物又ハ帳簿書類ヲ檢査スルコトヲ得
當該官吏監督上必要ト認ムルトキハ前項ノ物件ニ封印ヲ施スコトヲ得
第二十四條 當該官吏ハ運搬中ニ在ル鹽ヲ檢査シ其ノ出所及到著先ヲ質問スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ當該官吏監督上必要ト認メタルトキハ其ノ運搬ヲ停止シ又ハ荷物若ハ船車ニ封印ヲ施スコトヲ得
第二十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ十圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處シ其ノ犯罪ニ係ル鹽ハ之ヲ沒收ス旣ニ讓渡シ又ハ消費シタルトキハ第十八條ノ賣渡定價ニ相當スル金額ヲ追徵ス
一 第三條、第四條又ハ第五條ニ違反シタル者
二 許可ヲ受ケサル土地ニ於テ鹽ヲ製造シタル者
三 情ヲ知リテ政府ヨリ賣渡ササル鹽ヲ讓受ケタル者
第二十六條 鹽製造者正當ノ事由ナクシテ政府ノ指定シタル者ニ引渡ヲ爲ササルトキハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス政府ノ指定シタル運搬通路ニ依ラスシテ鹽ヲ運搬シタルトキ亦同シ
第二十七條 鹽製造者政府ノ定メタル製造期間外ニ於テ鹽ヲ製造シ又ハ政府ノ許可シタル場所以外ニ於テ鹽ヲ製造シ若ハ貯藏シタルトキハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ其ノ犯罪ニ係ル鹽ハ之ヲ沒收ス情ヲ知リテ其ノ場所ヲ供與シタル者亦同シ
第二十八條 前條ニ該當スル場合ヲ除クノ外鹽製造者許可ヲ受ケスシテ第九條ニ依リ許可ヲ受ケタル事項ヲ變更シタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九條 第十條ニ違反シタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十條 第十一條又ハ第十二條ニ違反シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十一條 鹽賣買業者第二十一條ノ規定ニ違反シタルトキハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ犯罪ニ係ル物件ハ之ヲ沒收ス
第三十二條 鹽製造者又ハ鹽賣買業者其ノ營業ニ關スル帳簿ヲ調製セス又ハ其ノ記載ヲ怠リ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十三條 當該官吏ノ尋問ニ對シ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ當該官吏ノ職務執行ヲ拒ミ、之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第三十四條 政府ヨリ賣渡ササル鹽ニシテ犯人以外ノ所有ニ係ルモノハ政府之ヲ收納ス此ノ場合ニ於テハ他物ヲ混和シタル鹽ヲ除クノ外第十五條ニ準シ賠償金ヲ交付ス
第三十五條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減輕、再犯加重及數罪俱發ノ例ヲ用井ス
第三十六條 鹽製造者、鹽賣買業者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ當業者ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三十七條 鹽製造者又ハ鹽賣買業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出サルノ故ヲ以テ處罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第三十八條 間接國稅犯則者處分法及明治三十三年法律第五十二號ノ規定ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
間接國稅犯則者處分法中收稅官吏及稅務署長ニ屬スル職務ヲ行フヘキ官吏ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九條 鹽製造者其ノ製造ノ許可ヲ取消サレ又ハ鹽製造者若ハ鹽賣買業者其ノ業務ヲ廢止スルモ製鹽場、貯藏場又ハ販賣場ニ鹽ノ現在スル間ハ仍本法ノ規定ヲ適用ス
第四十條 本法ニ依リ收納シタル鹽ノ賠償金ノ仕拂ニ關シテハ主任ノ官吏ニ現金前渡ヲ爲スコトヲ得
附 則
第四十一條 本法ハ明治三十八年六月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第四十四條第四項及第四十五條ハ此ノ限ニ在ラス
第四十二條 本法ハ勅令ヲ以テ指定シタル地方ニ之ヲ施行セス
第四十三條 本法施行ノ際鹽消費者ノ所有ニ係ル鹽ニ關シテハ第五條ヲ適用セス
第四十四條 本法施行ノ際製造者ノ所有又ハ所持スル鹽ハ政府ニ納付スヘシ此ノ場合ニ於テハ第十五條ニ準シ賠償金ヲ交付ス
本法施行ノ際販賣ノ目的ヲ以テ所有シ又ハ所持スル鹽ニ付テハ百斤ニ付金一圓三十錢ノ割合ニ依リ鹽稅ヲ納ムヘシ
前項ノ鹽ヲ所有シ又ハ所持スル者ハ其ノ數量及所在ヲ政府ニ申吿スヘシ申吿ヲ怠リ又ハ不正ノ申吿ヲ爲シタルトキハ其ノ數量ニ對スル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金ニ處ス
鹽稅ノ徵收ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二項ニ依ル納稅濟ノ鹽ハ政府ノ賣渡シタル鹽ト看做ス
納稅期日前ニ於ケル鹽ノ所有又ハ所持ニ關シテハ第五條ヲ適用セス
第四十五條 本法發布前ヨリ鹽ヲ製造スル者ハ本法發布ノ日ヨリ三箇月以內ニ命令ノ定ムル所ニ依リ許可ヲ受クヘシ
前項ニ依リ許可ヲ受ケタル者ハ第九條ニ依リ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第四十六條 本法施行ノ際鹽ヲ製造スル者ハ本法施行ノ日ヨリ一箇月以內ニ本法ニ依リ許可ヲ受クヘシ其ノ期間內ハ鹽ノ製造ヲ爲スコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル塩専売法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十七年十二月三十一日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 清浦奎吾
大蔵大臣 男爵 曽祢荒助
法律第十一号
塩専売法
第一条 政府ハ塩ノ専売権ヲ有ス
第二条 政府ハ便宜ノ地ニ塩取扱所ヲ設置シ塩ノ収納及売渡ヲ取扱ハシム
第三条 塩ハ政府又ハ政府ノ命ヲ受ケタル者ニ非サレハ之ヲ外国ヨリ輸入シ又ハ本法ヲ施行セサル地ヨリ移入スルコトヲ得ス
第四条 塩ハ政府ノ許可ヲ受ケタル者ニ非サレハ之ヲ製造スルコトヲ得ス
第五条 政府ヨリ売渡シタル塩ニ非サレハ所有シ、所持シ、譲渡シ、質入シ又ハ消費スルコトヲ得ス但シ納付期日前若ハ正当ノ事由ニ因リ納付ヲ遅延シタル場合ニ於テ又ハ製造者ノ自家用ノ為所有、所持スルハ此ノ限ニ在ラス
第六条 政府ハ製塩地ノ区域又ハ塩ノ製造期間若ハ生産高ヲ制限スルコトヲ得
前項ニ依ル制限ハ塩ノ試製ニ之ヲ適用セス
第七条 塩製造者ノ製造シタル塩ハ政府之ヲ収納ス但シ命令ノ定ムル制限数量以内ノ塩ニシテ塩製造者ノ自家用ニ供スルモノ又ハ政府ヨリ売渡シタル塩ニ依リ再製シタル塩ハ此ノ限ニ在ラス
第八条 塩ノ賠償価格ハ政府之ヲ定メ予メ公示スヘシ
第九条 塩ヲ製造セムトスル者ハ製塩ノ方法、採鹹地名、地番、製塩段別、製塩場、貯蔵場及一年ノ生産見込高ヲ定メ政府ニ申請シ許可ヲ受クヘシ之ヲ変更セムトスルトキ亦同シ
第十条 塩ノ製造業ト塩ノ売買業トハ同一ノ場所ニ於テ相兼ヌルコトヲ得ス
但シ政府ノ売渡シタル塩ニ依リ再製スルハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 相続ニ因リ塩ノ製造ヲ承継シタルトキハ其ノ旨政府ニ届出ツヘシ
相続ニ因ルノ外塩ノ製造ヲ承継セムトスルトキハ政府ノ許可ヲ受クヘシ
第十二条 塩製造者塩ノ製造ヲ廃止セムトスルトキハ少クトモ一箇月前ニ政府ニ申告スヘシ但シ政府ノ許可ヲ受ケテ製造ヲ廃止スルハ此ノ限ニ在ラス
第十三条 塩製造者本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ違反シタルトキハ政府ハ製造ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第十四条 塩製造者塩ヲ製造シタルトキハ総テ之ヲ政府ニ納付スヘシ但シ第七条但書ニ該当スルモノハ此ノ限ニ在ラス
政府ハ塩製造者ヲシテ前項ニ依リ納付スヘキ塩ヲ其ノ指定シタル者ニ引渡スヘキコトヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ政府カ塩ノ数量ヲ定メ引渡ヲ命シタルトキ製造者之ヲ政府ニ納付シタルモノト看做ス
第十五条 塩製造者塩ヲ納付シタルトキハ政府ハ鑑定人ヲシテ其ノ品質ヲ鑑定セシメ相当ノ賠償金ヲ交付スヘシ
製造者前項ノ鑑定ニ不服ナルトキハ再鑑定ヲ求ムルコトヲ得但シ賠償金ノ請求ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
再鑑定ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 塩製造者ノ納付セムトスル塩ニシテ其ノ品質甚シク粗悪ナルモノニ付テハ政府ハ更ニ相当ノ処理ヲ為シタル上納付スヘキコトヲ命スルコトヲ得
第十七条 政府ハ塩ノ製造又ハ包装ノ方法、納付場所、納付期日及其ノ運搬通路ヲ定ムルコトヲ得
第十八条 政府ハ定価ヲ以テ塩ノ売渡ヲ為スヘシ
前項ノ定価ハ賠償金ヲ交付シテ収納シタル塩ニ付テハ売渡当時ノ品質ニ相当スル賠償金ニ一石ニ付金二円五十銭又ハ百斤ニ付金一円四十八銭ノ割合ノ金額ヲ加算シタルモノヲ超エテ之ヲ定ムルコトヲ得ス
第十九条 左ニ掲クル塩ニ付テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ定価ヲ以テ之ヲ売渡スコトヲ得
一 外国ニ輸出スルモノ
二 命令ヲ以テ指定スル用途ニ使用スルモノ
前条ニ依リテ売渡シタル塩ニシテ命令ノ定ムル用途ニ使用セラレタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ下付ス
第二十条 政府ハ命令ヲ以テ定メタル数量以上ニ非サレハ塩ノ売渡ヲ為サス
第二十一条 塩売買業者ハ塩ニ他物ヲ混和シテ販売スルコトヲ得ス
第二十二条 塩製造者及塩売買業者ハ帳簿ヲ調製シ政府ノ指示ニ従ヒ営業ニ関スル要件ヲ記載スヘシ
第二十三条 当該官吏ハ採鹹地、製塩場、貯蔵場其ノ他塩ノ所在ト認ムル場所ニ立入リ鹹水、塩、器具、器械、建築物又ハ帳簿書類ヲ検査スルコトヲ得
当該官吏監督上必要ト認ムルトキハ前項ノ物件ニ封印ヲ施スコトヲ得
第二十四条 当該官吏ハ運搬中ニ在ル塩ヲ検査シ其ノ出所及到著先ヲ質問スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ当該官吏監督上必要ト認メタルトキハ其ノ運搬ヲ停止シ又ハ荷物若ハ船車ニ封印ヲ施スコトヲ得
第二十五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ十円以上五百円以下ノ罰金ニ処シ其ノ犯罪ニ係ル塩ハ之ヲ没収ス既ニ譲渡シ又ハ消費シタルトキハ第十八条ノ売渡定価ニ相当スル金額ヲ追徴ス
一 第三条、第四条又ハ第五条ニ違反シタル者
二 許可ヲ受ケサル土地ニ於テ塩ヲ製造シタル者
三 情ヲ知リテ政府ヨリ売渡ササル塩ヲ譲受ケタル者
第二十六条 塩製造者正当ノ事由ナクシテ政府ノ指定シタル者ニ引渡ヲ為ササルトキハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス政府ノ指定シタル運搬通路ニ依ラスシテ塩ヲ運搬シタルトキ亦同シ
第二十七条 塩製造者政府ノ定メタル製造期間外ニ於テ塩ヲ製造シ又ハ政府ノ許可シタル場所以外ニ於テ塩ヲ製造シ若ハ貯蔵シタルトキハ五円以上百円以下ノ罰金ニ処シ其ノ犯罪ニ係ル塩ハ之ヲ没収ス情ヲ知リテ其ノ場所ヲ供与シタル者亦同シ
第二十八条 前条ニ該当スル場合ヲ除クノ外塩製造者許可ヲ受ケスシテ第九条ニ依リ許可ヲ受ケタル事項ヲ変更シタルトキハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第二十九条 第十条ニ違反シタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第三十条 第十一条又ハ第十二条ニ違反シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第三十一条 塩売買業者第二十一条ノ規定ニ違反シタルトキハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス其ノ犯罪ニ係ル物件ハ之ヲ没収ス
第三十二条 塩製造者又ハ塩売買業者其ノ営業ニ関スル帳簿ヲ調製セス又ハ其ノ記載ヲ怠リ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第三十三条 当該官吏ノ尋問ニ対シ虚偽ノ答弁ヲ為シ又ハ当該官吏ノ職務執行ヲ拒ミ、之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス其ノ刑法ニ正条アルモノハ刑法ニ依ル
第三十四条 政府ヨリ売渡ササル塩ニシテ犯人以外ノ所有ニ係ルモノハ政府之ヲ収納ス此ノ場合ニ於テハ他物ヲ混和シタル塩ヲ除クノ外第十五条ニ準シ賠償金ヲ交付ス
第三十五条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減軽、再犯加重及数罪俱発ノ例ヲ用井ス
第三十六条 塩製造者、塩売買業者カ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ依リ当業者ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三十七条 塩製造者又ハ塩売買業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出サルノ故ヲ以テ処罰ヲ免カルルコトヲ得ス
第三十八条 間接国税犯則者処分法及明治三十三年法律第五十二号ノ規定ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
間接国税犯則者処分法中収税官吏及税務署長ニ属スル職務ヲ行フヘキ官吏ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九条 塩製造者其ノ製造ノ許可ヲ取消サレ又ハ塩製造者若ハ塩売買業者其ノ業務ヲ廃止スルモ製塩場、貯蔵場又ハ販売場ニ塩ノ現在スル間ハ仍本法ノ規定ヲ適用ス
第四十条 本法ニ依リ収納シタル塩ノ賠償金ノ仕払ニ関シテハ主任ノ官吏ニ現金前渡ヲ為スコトヲ得
附 則
第四十一条 本法ハ明治三十八年六月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第四十四条第四項及第四十五条ハ此ノ限ニ在ラス
第四十二条 本法ハ勅令ヲ以テ指定シタル地方ニ之ヲ施行セス
第四十三条 本法施行ノ際塩消費者ノ所有ニ係ル塩ニ関シテハ第五条ヲ適用セス
第四十四条 本法施行ノ際製造者ノ所有又ハ所持スル塩ハ政府ニ納付スヘシ此ノ場合ニ於テハ第十五条ニ準シ賠償金ヲ交付ス
本法施行ノ際販売ノ目的ヲ以テ所有シ又ハ所持スル塩ニ付テハ百斤ニ付金一円三十銭ノ割合ニ依リ塩税ヲ納ムヘシ
前項ノ塩ヲ所有シ又ハ所持スル者ハ其ノ数量及所在ヲ政府ニ申告スヘシ申告ヲ怠リ又ハ不正ノ申告ヲ為シタルトキハ其ノ数量ニ対スル税金ノ三倍ニ相当スル罰金ニ処ス
塩税ノ徴収ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二項ニ依ル納税済ノ塩ハ政府ノ売渡シタル塩ト看做ス
納税期日前ニ於ケル塩ノ所有又ハ所持ニ関シテハ第五条ヲ適用セス
第四十五条 本法発布前ヨリ塩ヲ製造スル者ハ本法発布ノ日ヨリ三箇月以内ニ命令ノ定ムル所ニ依リ許可ヲ受クヘシ
前項ニ依リ許可ヲ受ケタル者ハ第九条ニ依リ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第四十六条 本法施行ノ際塩ヲ製造スル者ハ本法施行ノ日ヨリ一箇月以内ニ本法ニ依リ許可ヲ受クヘシ其ノ期間内ハ塩ノ製造ヲ為スコトヲ得