(機構の業務の特例)
第三条 機構は、預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第三十四条に規定する業務のほか、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 特定住宅金融専門会社からその貸付債権その他の財産を譲り受けるとともに、その譲り受けた貸付債権その他の財産の回収、処分等を行うことを目的とする一の株式会社の設立の発起人となり、及び当該設立の発起人となった一の株式会社に出資すること。
二 前号の規定により出資して設立された株式会社(以下「債権処理会社」という。)に対し第七条各項、第八条若しくは第十条の規定による助成金の交付を行い、又は債権処理会社が行う資金の借入れに係る第十一条の規定による債務の保証を行うこと。
三 第十二条の約束に基づき債権処理会社から納付される金銭の収納を行い、及び第十三条の規定による国庫への納付を行うこと。
四 債権処理会社の業務の実施に必要な指導及び助言を行うこと。
六 第二号の助成金の交付を適切に行い、及び第三号の債権処理会社からの金銭の納付を的確に行わせるため、第八条に規定する譲受債権等に係る債権のうち、その債務者の財産が隠ぺいされているおそれがあるものその他その債務者の財産の実態を解明することが特に必要であると認められるものについて、当該債務者の財産の調査を行うこと。
七 第二号の助成金の交付を適切に行い、及び第三号の債権処理会社からの金銭の納付を的確に行わせるため、第八条に規定する譲受債権等に係る債権のうち、その債務者の財産に係る権利関係が複雑なものその他その回収に特に専門的な知識を必要とするものについて、機構が必要と認める場合には、債権処理会社からの委託を受けて、その取立てを行うこと。
2 機構の理事長は、前項に規定する業務を行う職員として、金融取引、不動産取引、民事手続等に関する法令及び実務に精通している者を任命するものとする。
(区分経理)
第四条 機構は、前条第一項に規定する業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定として特定住宅金融専門会社債権債務処理勘定(以下「住専勘定」という。)を設けて整理しなければならない。
(出資の認可)
第五条 機構は、第三条第一項第一号の規定により設立の発起人となった株式会社に同号の規定により出資しようとするときは、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
2 機構は、前項の認可を受けようとするときは、大蔵省令で定める事項を記載した認可申請書を大蔵大臣に提出しなければならない。
3 前項の認可申請書には、機構が設立の発起人となった株式会社の定款、事業計画その他大蔵省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。
4 大蔵大臣は、第一項の認可をしようとするときは、次に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画の内容が法令の規定に適合するものであること。
二 出資しようとする株式会社が、特定住宅金融専門会社から譲り受ける貸付債権等に係る債権の回収のため、十分な調査を行い、及び必要な民事手続を迅速かつ的確にとり得るものであると認められること。
三 出資しようとする株式会社が、特定住宅金融専門会社から譲り受ける財産の管理、処分等の業務を適切に行い得るものであると認められること。
5 機構は、債権処理会社に対する出資の額を変更しようとする場合には、大蔵省令で定める事項を記載した認可申請書を大蔵大臣に提出し、その認可を受けなければならない。
(緊急金融安定化基金)
第六条 機構は、住専勘定に次条各項の規定による助成金の交付を行うための基金を置き、特定住宅金融専門会社に係る貸付債権の回収等を促進し安定した金融機能の確保に資するために第二十四条第一項の規定により政府が交付する補助金をもってこれに充てるものとする。
2 前項の規定により置いた基金(以下「緊急金融安定化基金」という。)の運用によつて生じた利子その他の収入金は、緊急金融安定化基金に充てるものとする。
3 機構は、次条各項の規定による助成金の交付を新たに行う必要がなくなった場合において、緊急金融安定化基金に残高(第十三条第一項の規定により緊急金融安定化基金に充てた納付金の額を除く。)があるときは、当該残高に相当する金額を、緊急金融安定化基金から、国庫に納付しなければならない。
(財産の譲渡に伴う支援のための助成金の交付)
第七条 機構は、特定住宅金融専門会社が債権処理会社の設立の日から政令で定める日までの期間(次条及び第二十六条において「指定期間」という。)内に債権処理会社に譲渡した貸付債権その他の財産の譲渡の対価をもってしてもなお不足する特定住宅金融専門会社の債務処理に要する財源のうち第十二条第一号の契約により債権処理会社が支援するものに充てるものとして、緊急金融安定化基金から、緊急金融安定化基金の金額(前条第二項の規定により緊急金融安定化基金に充てた収入金の額を除く。)の範囲内で、債権処理会社に対し、助成金を交付することができる。
2 機構は、債権処理会社が前項の助成金の交付を受けるまでの間当該交付を受けていない部分の助成金の額に相当する金額の範囲内で資金の借入れをしたときは、当該借入れをした資金に係る利子の支払に充てるものとして、緊急金融安定化基金から、前条第二項の規定により緊急金融安定化基金に充てた収入金の額の範囲内で、債権処理会社に対し、助成金を交付することができる。
(譲受債権等に係る損失についての助成金の交付)
第八条 機構は、債権処理会社が指定期間内に特定住宅金融専門会社から譲り受けた貸付債権その他の財産(第十二条及び第二十四条において「譲受債権等」という。)のそれぞれにつきその取得価額を下回る金額で回収が行われたことその他の政令で定める事由により債権処理会社に損失が生じた場合においては、当該損失の金額として政令で定める金額の一部を補てんするものとして、同条第二項の規定による政府の補助金の額の範囲内で、債権処理会社に対し、助成金を交付することができる。
(金融安定化拠出基金)
第九条 機構は、運営委員会(預金保険法第十四条に規定する運営委員会をいう。以下同じ。)の議決を経て、住専勘定に第三条第一項第一号の規定による出資、次条の規定による助成金の交付及び第十一条の規定による債務の保証に係る保証債務の履行を行うための基金を置き、特定住宅金融専門会社に係る貸付債権の回収等を促進し安定した金融機能の確保に資するために特定住宅金融専門会社に対する出資者又は貸付債権者であった金融機関その他の者が拠出する拠出金をもってこれに充てるものとする。
2 前項の規定により置いた基金(以下「金融安定化拠出基金」という。)の運用によつて生じた利子その他の収入金は、金融安定化拠出基金に充てるものとする。
3 機構は、金融安定化拠出基金の残高が第一項に規定する拠出金の合計額から金融安定化拠出基金を財源として第三条第一項第一号の出資に充てた金額を控除した金額に相当する金額(以下この条において「出資控除後の金額」という。)を下回る場合には、運営委員会の議決を経て、預金保険法第三十四条に規定する業務に係る勘定(第五項において「一般勘定」という。)から、金融安定化拠出基金の金額が出資控除後の金額に達するまでを限り、金融安定化拠出基金に繰入れをすることができる。この場合において、当該繰入れは、同条第三号に掲げる業務とみなす。
4 機構は、前項の規定による繰入れをしようとする場合には、あらかじめ、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
5 機構は、第三項の規定による繰入れをした場合において、金融安定化拠出基金の残高が出資控除後の金額を超えることとなつたときは、大蔵省令で定めるところにより、当該超えることとなつた部分の金額に相当する金額を、その合計額が同項の規定による繰入れをした金額の合計額に達するまでを限り、一般勘定に繰り入れるものとする。
(債権処理会社の円滑な業務の遂行のための助成金の交付)
第十条 機構は、第七条各項及び第八条に規定する助成金のほか、債権処理会社の円滑な業務の遂行のため必要があると認めるときは、金融安定化拠出基金から、債権処理会社に対し、助成金を交付することができる。
(債権処理会社の債務の保証)
第十一条 機構は、債権処理会社が特定住宅金融専門会社からの貸付債権その他の財産の譲受けのために必要とする資金その他債権処理会社の業務のために必要な資金の借入れをする場合には、その借入れに係る債務の保証を行うことができる。
(助成金の交付等の条件)
第十二条 機構は、債権処理会社が次に掲げる事項の約束をし、及びその履行をしている場合でなければ、第七条各項、第八条若しくは第十条の規定による助成金の交付又は前条の規定による債務の保証を行ってはならない。
一 債権処理会社は、特定住宅金融専門会社からの貸付債権その他の財産の譲受け及び特定住宅金融専門会社の債務処理に要する財源についての債権処理会社の支援に係る契約の締結をしようとするときは、あらかじめ、当該締結をしようとする契約の内容その他の大蔵省令で定める事項について機構の承認を受けること。
二 債権処理会社は、前号の契約の締結後速やかに、譲受債権等の回収、処分等を十五年以内を目途として完了する処理計画を作成し、機構の承認を受けること。
三 債権処理会社は、毎事業年度の開始前に(設立の日の属する事業年度にあっては、当該事業年度開始後速やかに)、当該事業年度以降の二年間について事業計画及び資金計画を作成し、機構の承認を受けること。
四 債権処理会社は、第二号の処理計画又は前号の事業計画若しくは資金計画を変更しようとするときは、あらかじめ、機構の承認を受けること。
五 債権処理会社は、毎事業年度、貸借対照表、損益計算書その他の大蔵省令で定める書類を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に機構に提出すること。
六 債権処理会社は、譲受債権等に係る債権についてその債務者の財産が隠ぺいされているおそれがあると認めたとき、その他その債務者の財産の実態を解明することが困難であると認めたときは、速やかに機構に報告すること。
七 債権処理会社は、譲受債権等に係る債権のうち、その債務者の財産に係る権利関係が複雑なものその他その回収に特に専門的な知識を必要とするものについて、機構の求めに応じ、その取立てを機構に委託すること。
八 債権処理会社は、第六号に定めるもののほか、その業務の実施に支障が生じたときは、機構の指導又は助言を受けるため、速やかに機構に報告すること。
九 債権処理会社は、その役職員がその職務を行うことにより犯罪があると思料するときは直ちに所要の報告をさせる体制を整備するものとし、かつ、当該報告があったときは機構に報告するとともに告発に向けて所要の措置をとること。
十 債権処理会社は、第七条第一項に規定する特定住宅金融専門会社の債務処理に要する財源のうち第一号の契約により債権処理会社が支援するものについて同項の規定による助成金の交付を受けた場合において、譲受債権等のそれぞれにつきその取得価額を上回る金額で回収が行われたことその他の政令で定める事由により利益が生じたときは、当該利益の金額として政令で定める金額を、その合計額が同項の規定により交付された助成金の合計額に達するまでを限り、機構に納付すること。
十一 債権処理会社は、譲受債権等に係る損失で第八条に規定するものについて同条の規定による助成金の交付を受けた場合において、当該譲受債権等の全部又は一部の回収が行われたことその他の政令で定める事由により当該損失が減少をしたときは、当該減少をした損失の金額として政令で定める金額に政令で定める割合を乗じて得た金額を、その合計額が同条の規定により交付された助成金の合計額に達するまでを限り、機構に納付すること。
(債権処理会社からの納付金の処理)
第十三条 機構は、債権処理会社から前条第十号の規定による納付を受けたときは、これを緊急金融安定化基金に充てるものとする。
2 機構は、毎事業年度、政令で定めるところにより、当該事業年度中に前条第十号及び第十一号の規定により納付を受けた金額に相当する金額を、国庫へ納付しなければならない。
3 前項の規定により国庫へ納付した金額(前条第十号の規定による納付に係るものに限る。)は、緊急金融安定化基金を減額して整理するものとする。
(資金の融通のあっせん)
第十四条 機構は、特定住宅金融専門会社からの貸付債権その他の財産の譲受けのために債権処理会社が必要とする資金の融通のあっせんに努めるものとする。
(協力依頼等)
第十五条 機構は、第三条第一項に規定する業務を行うため必要があるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。
2 政府は、大蔵省、法務省、警察庁その他の関係行政庁の職員をもって構成する連絡協議会を設け、機構が第三条第一項に規定する業務を円滑に行うため必要な支援を行うものとする。
(資料の提出の請求等)
第十六条 機構は、第三条第一項第二号から第八号までに掲げる業務を行うため必要があるときは、債権処理会社に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができる。
(現況確認、質問、帳簿提示等)
第十七条 機構の職員は、第三条第一項第六号に掲げる業務を行う場合において必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者の事務所、住居その他のその者が所有し、若しくは占有する不動産に立ち入り、当該不動産の現況の確認をし、その者に質問し、又はその者の財産に関する帳簿若しくは書類(以下この条及び第三十三条において「帳簿等」という。)の提示及び当該帳簿等についての説明を求めることができる。ただし、住居に立ち入る場合においては、その居住者(当該居住者から当該住居の管理を委託された者を含む。)の承諾を得なければならない。
二 当該債務者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者
三 当該債務者に対し債権若しくは債務があり、又は当該債務者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者
(身分証明書の提示等)
第十八条 前条の場合において、機構の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
2 前条の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(債権の取立ての権限)
第十九条 機構は、第三条第一項第七号に掲げる業務を行う場合には、債権処理会社のために自己の名をもって、債権処理会社から委託を受けた債権の取立てに関する一切の裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する。
(運営委員会の権限の特例)
第二十条 第九条第一項及び第三項並びに第二十九条に規定するもののほか、次に掲げる事項は、運営委員会の議決を経なければならない。
一 第三条第一項第一号の規定による出資(第五条第五項の出資の額の変更を含む。)
二 第七条各項、第八条又は第十条の規定による助成金の交付
四 その他第三条第一項に規定する業務を行うため運営委員会が特に必要と認める事項
(借入金の特例)
第二十一条 機構は、第三条第一項に規定する業務を行うため必要があると認めるときは、第二十三条第一項の規定による政府の出資の金額の範囲内において、大蔵大臣の認可を受けて、資金の借入れ(借換えを含む。)をすることができる。
(基金の運用)
第二十二条 預金保険法第四十三条の規定は、緊急金融安定化基金及び金融安定化拠出基金の運用について準用する。