(目的)
第一条 この法律は、次条に規定する平和条約国籍離脱者及び平和条約国籍離脱者の子孫について、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)の特例を定めることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「平和条約国籍離脱者」とは、日本国との平和条約の規定に基づき同条約の最初の効力発生の日(以下「平和条約発効日」という。)において日本の国籍を離脱した者で、次の各号の一に該当するものをいう。
一 昭和二十年九月二日以前から引き続き本邦に在留する者
二 昭和二十年九月三日から平和条約発効日までの間に本邦で出生し、その後引き続き本邦に在留する者であって、その実親である父又は母が、昭和二十年九月二日以前から当該出生の時(当該出生前に死亡したときは、当該死亡の時)まで引き続き本邦に在留し、かつ、次のイ又はロに該当する者であったもの
イ 日本国との平和条約の規定に基づき平和条約発効日において日本の国籍を離脱した者
ロ 平和条約発効日までに死亡し又は当該出生の時後平和条約発効日までに日本の国籍を喪失した者であって、当該死亡又は喪失がなかったとしたならば日本国との平和条約の規定に基づき平和条約発効日において日本の国籍を離脱したこととなるもの
2 この法律において「平和条約国籍離脱者の子孫」とは、平和条約国籍離脱者の直系卑属として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留する者で、次の各号の一に該当するものをいう。
二 前号に掲げる者のほか、当該在留する者から当該平和条約国籍離脱者の孫にさかのぼるすべての世代の者(当該在留する者が当該平和条約国籍離脱者の孫であるときは、当該孫。以下この号において同じ。)について、その父又は母が、平和条約国籍離脱者の直系卑属として本邦で出生し、その後当該世代の者の出生の時(当該出生前に死亡したときは、当該死亡の時)まで引き続き本邦に在留していた者であったもの
(法定特別永住者)
第三条 平和条約国籍離脱者又は平和条約国籍離脱者の子孫でこの法律の施行の際次の各号の一に該当しているものは、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住することができる。
一 次のいずれかに該当する者
イ 附則第十条の規定による改正前のポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律(昭和二十七年法律第百二十六号)(以下「旧昭和二十七年法律第百二十六号」という。)第二条第六項の規定により在留する者
ロ 附則第六条の規定による廃止前の日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和四十年法律第百四十六号)(以下「旧日韓特別法」という。)に基づく永住の許可を受けている者
ハ 附則第七条の規定による改正前の入管法(以下「旧入管法」という。)別表第二の上欄の永住者の在留資格をもって在留する者
二 旧入管法別表第二の上欄の平和条約関連国籍離脱者の子の在留資格をもって在留する者
(特別永住許可)
第四条 平和条約国籍離脱者の子孫で出生その他の事由により入管法第三章に規定する上陸の手続を経ることなく本邦に在留することとなるものは、法務大臣の許可を受けて、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住することができる。
2 法務大臣は、前項に規定する者が、当該出生その他の事由が生じた日から六十日以内に同項の許可の申請をしたときは、これを許可するものとする。
3 第一項の許可の申請は、居住地の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区。以下同じ。)の事務所に自ら出頭し、当該市町村の長に、法務省令で定めるところにより、特別永住許可申請書その他の書類及び写真を提出して行わなければならない。ただし、十六歳に満たない者については、写真を提出することを要しない。
4 十六歳に満たない者についての第一項の許可の申請は、親権を行う者又は後見人が代わってしなければならない。
5 第三項の場合において、申請をしようとする者が疾病その他身体の故障により出頭することができないときは、法務省令で定めるところにより、代理人を出頭させることができる。
6 市町村の長は、第三項の書類及び写真の提出があったときは、第一項の許可を受けようとする者が申請に係る居住地に居住しているかどうか、及び提出された書類の成立が真正であるかどうかを審査した上、これらの書類(法務省令で定める書類を除く。)及び写真を、都道府県知事を経由して、法務大臣に送付しなければならない。
第五条 平和条約国籍離脱者又は平和条約国籍離脱者の子孫で入管法別表第二の上欄の在留資格(永住者の在留資格を除く。)をもって在留するものは、法務大臣の許可を受けて、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住することができる。
2 法務大臣は、前項に規定する者が同項の許可の申請をしたときは、これを許可するものとする。この場合において、当該許可を受けた者に係る在留資格及び在留期間の決定は、その効力を失う。
3 第一項の許可の申請は、地方入国管理局に自ら出頭し、法務省令で定めるところにより、特別永住許可申請書その他の書類を提出して行わなければならない。
4 前条第四項及び第五項の規定は、前項の申請について準用する。
(特別永住許可書の交付)
第六条 法務大臣は、第四条の許可をする場合には、特別永住者として本邦で永住することを許可する旨を記載した書面(以下「特別永住許可書」という。)を、都道府県知事及び市町村の長を経由して、交付するものとする。
2 法務大臣は、前条の許可をする場合には、入国審査官に、特別永住許可書を交付させるものとする。
(上陸のための審査の特例)
第七条 入管法第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けて上陸する特別永住者に関しては、入管法第七条第一項中「第一号及び第四号」とあるのは、「第一号」とする。
(在留できる期間等の特例)
第八条 第四条第一項に規定する者に関しては、入管法第二十二条の二第一項中「六十日」とあるのは「六十日(その末日が地方自治法第四条の二第一項の地方公共団体の休日に当たるときは、地方公共団体の休日の翌日までの期間)」と、入管法第七十条第八号中「第二十二条の二第四項において準用する第二十二条第二項及び第三項の規定」とあるのは「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第四条第二項及び第六条第一項の規定」とする。
(退去強制の特例)
第九条 特別永住者については、入管法第二十四条の規定による退去強制は、その者が次の各号の一に該当する場合に限って、することができる。
一 刑法(明治四十年法律第四十五号)第二編第二章又は第三章に規定する罪により禁 錮以上の刑に処せられた者。ただし、執行猶予の言渡しを受けた者及び同法第七十七条第一項第三号の罪により刑に処せられた者を除く。
二 刑法第二編第四章に規定する罪により禁 錮以上の刑に処せられた者
三 外国の元首、外交使節又はその公館に対する犯罪行為により禁 錮以上の刑に処せられた者で、法務大臣においてその犯罪行為により日本国の外交上の重大な利益が害されたと認定したもの
四 無期又は七年を超える懲役又は禁 錮に処せられた者で、法務大臣においてその犯罪行為により日本国の重大な利益が害されたと認定したもの
2 法務大臣は、前項第三号の認定をしようとするときは、あらかじめ外務大臣と協議しなければならない。
3 特別永住者に関しては、入管法第二十七条、第三十一条第三項、第三十九条第一項、第四十三条第一項、第四十五条第一項、第四十七条第一項及び第二項、第六十二条第一項並びに第六十三条第一項中「第二十四条各号」とあるのは、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第九条第一項各号」とする。
(再入国の許可の有効期間の特例等)
第十条 特別永住者に関しては、入管法第二十六条第三項中「一年」とあるのは「四年」と、同条第四項中「二年」とあるのは「五年」とする。
2 法務大臣は、特別永住者に対する入管法第二十六条の規定の適用に当たっては、特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律の趣旨を尊重するものとする。
(省令への委任)
第十一条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、法務省令で定める。