(慰労金の支給)
第四十四条 戦後強制抑留者又は昭和六十三年七月三十一日以前に死亡した戦後強制抑留者(以下「死亡者」という。)の遺族で、同年八月一日において日本の国籍を有するものには、前条第一項の慰労品を贈るほか、慰労金を支給する。ただし、同日において次の各号に掲げる給付を受ける権利を有する者若しくは同日前においてその権利を有した者又はこれらの者の遺族(その権利を有する者又はその権利を有した者が死亡者の遺族であるときは、当該死亡者の他の遺族を含む。)については、この限りでない。
一 恩給法(大正十二年法律第四十八号)その他の恩給に関する法令の規定による年金たる恩給(恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号)附則第二十二条第一項ただし書の規定による傷病賜金を含む。)で、当該年金たる恩給の給与事由が第二条に規定する地域において強制抑留されていた期間(以下この項において「抑留期間」という。)内に負傷し、若しくは疾病にかかつたことにより生じたもの又は抑留期間が当該年金たる恩給の基礎在職年に算入されているもの
二 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)の規定による障害年金、障害一時金、遺族年金又は遺族給与金で、当該給付の支給事由が抑留期間内に発した負傷又は疾病により生じたもの
三 退職年金に関する恩給法以外の法令の規定により抑留期間に係る在職年を算入した期間に基づく退職年金又は遺族年金(昭和六十三年七月三十一日において退職したとしたならば抑留期間に係る在職年を算入した期間に基づき支給されることとなる退職年金を含む。)
2 慰労金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、内閣総理大臣が行う。
3 前項の請求は、総理府令で定めるところにより、昭和六十八年三月三十一日(死亡者の死亡の事実が判明した日が昭和六十四年四月二日以後であるときは、その死亡の事実が判明した日から起算して四年を経過する日)までに行わなければならない。
4 前項の期間内に慰労金の支給を請求しなかつた者には、慰労金は、支給しない。
(慰労金の支給を受けるべき遺族の範囲)
第四十五条 慰労金の支給を受けるべき遺族の範囲は、死亡者の死亡の当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とする。ただし、配偶者については、死亡者の死亡の日以後昭和六十三年七月三十一日以前に、死亡者の二親等内の血族(以下この項において「近親者」という。)以外の者の配偶者となつた者及び近親者以外の者の養子となり、かつ、同年八月一日において当該養子である者を除き、子、孫又は兄弟姉妹については、死亡者の死亡の日以後同年七月三十一日以前に離縁によつて死亡者との当該親族関係が終了した者及び同年八月一日において近親者以外の者の養子となつている者を除く。
2 死亡者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、その子は、死亡者の死亡の当時における子とみなす。
3 前項の子で、昭和六十三年八月二日以後に出生し、かつ、出生によつて日本の国籍を取得したものは、同月一日において日本の国籍を有していたものとみなす。
(慰労金の支給を受けるべき遺族の順位等)
第四十六条 慰労金の支給を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序による。ただし、父母及び祖父母については、死亡者の死亡の日においてその死亡者によつて生計を維持し、又はその者と生計を共にしていたものを先にし、同順位の父母については、養父母を先にし実父母を後にし、同順位の祖父母については、養父母の父母を先にし実父母の父母を後にし、父母の養父母を先にし実父母を後にする。
2 前項の規定により慰労金の支給を受けるべき順位にある遺族が、昭和六十三年八月一日(死亡者の死亡の事実が判明した日が同月二日以後であるときは、その死亡の事実が判明した日)以後引き続き一年以上生死不明である場合において、他に同順位者がないときは、次順位者の請求により、その次順位者(その次順位者と同順位の他の遺族があるときは、そのすべての同順位者)を慰労金の支給を受けるべき順位の遺族とみなすことができる。
3 慰労金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人のした慰労金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした慰労金の支給を受ける権利の認定は、全員に対してしたものとみなす。
(慰労金の額及び記名国債の交付)
第四十七条 慰労金の額は、十万円(遺族に支給する慰労金にあつては、死亡者一人につき十万円)とし、二年以内に償還すべき記名国債をもつて交付する。
2 前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。
3 前項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除き、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 この法律に定めるもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
(慰労金に係る権利の承継)
第四十八条 慰労金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に慰労金の支給の請求をしていなかつたときは、その者の相続人は、自己の名で、当該慰労金の支給を請求することができる。
2 第四十六条第三項の規定は、次の場合について準用する。
一 前項の規定による請求に基づいて慰労金の支給を受けるべき同順位の相続人が二人以上ある場合
二 前条第一項に規定する国債の記名者が死亡し、同順位の相続人が二人以上ある場合において、当該国債の記名者の死亡前に支払うべきであつた当該国債の償還金の請求若しくはその支払をし、又は当該国債の記名変更の請求若しくはその記名変更をするとき。
(異議申立期間)
第四十九条 慰労金に関する処分についての異議申立てに関する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条の期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して一年以内とする。
2 前項の異議申立てについては、行政不服審査法第四十八条の規定にかかわらず、同法第十四条第三項の規定は、準用しない。
(譲渡又は担保の禁止)
第五十条 慰労金の支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。
(差押えの禁止)
第五十一条 慰労金の支給を受ける権利及び第四十七条第一項に規定する国債は、差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による場合は、この限りでない。
(非課税)
2 慰労金に関する書類及び第四十七条第一項に規定する国債の譲渡又は当該国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。
(国債の償還金の支払)
第五十三条 第四十七条第一項に規定する国債の償還金の支払に関する事務は、郵政大臣が取り扱うことができる。
2 前項の規定により郵政大臣が取り扱う事務について必要な事項は、郵政省令で定める。
(慰労金の返還)
第五十四条 不実の申請その他不正の手段により第四十七条第一項に規定する国債の交付を受け、その償還金を受領した者があるときは、内閣総理大臣は、その者に対して償還金の全部又は一部に相当する金額の返還を命ずることができる。
2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、内閣総理大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。
3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、内閣総理大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。
4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(審査等の事務の取扱い)
第五十五条 内閣総理大臣は、前章の規定により基金が設立されたときは、基金に、第四十四条第二項の認定に関する事務のうち、慰労金の支給の請求の受理及びその請求に係る事実についての審査に関する事務(次項において「審査等の事務」という。)を行わせるものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により審査等の事務を行わせるときは、基金が審査等の事務を開始する日及び審査等の事務を行う事務所の所在地を官報で公示しなければならない。