平和祈念事業特別基金等に関する法律
法令番号: 法律第六十六号
公布年月日: 昭和63年5月24日
法令の形式: 法律
平和祈念事業特別基金等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十三年五月二十四日
内閣総理大臣 竹下登
法律第六十六号
平和祈念事業特別基金等に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
平和祈念事業特別基金
第一節
総則(第三条―第九条)
第二節
設立(第十条―第十四条)
第三節
管理(第十五条―第二十六条)
第四節
業務(第二十七条・第二十八条)
第五節
財務及び会計(第二十九条―第三十八条)
第六節
監督(第三十九条・第四十条)
第七節
雑則(第四十一条・第四十二条)
第三章
戦後強制抑留者に対する慰労品の贈呈等
第一節
慰労品の贈呈(第四十三条)
第二節
慰労金の支給(第四十四条―第五十五条)
第三節
雑則(第五十六条)
第四章
罰則(第五十七条―第五十九条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、旧軍人軍属であつて年金たる恩給又は旧軍人軍属としての在職に関連する年金たる給付を受ける権利を有しない者、戦後強制抑留者、今次の大戦の終戦に伴い本邦以外の地域から引き揚げた者等(以下「関係者」という。)の戦争犠牲による労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰 藉の念を示す事業を行う平和祈念事業特別基金の制度を確立し、及び戦後強制抑留者に対する慰労品の贈呈等を行うことに関し必要な事項を規定するものとする。
(定義)
第二条 この法律において「戦後強制抑留者」とは、昭和二十年八月九日以来の戦争の結果、同年九月二日以後ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者で本邦に帰還したものをいう。
第二章 平和祈念事業特別基金
第一節 総則
(目的)
第三条 平和祈念事業特別基金(以下「基金」という。)は、今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰 藉の念を示す事業を行うことを目的とする。
(法人格)
第四条 基金は、法人とする。
(数)
第五条 基金は、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第六条 基金の資本金は、十億円とし、政府がその全額を出資する。
2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、基金に追加して出資することができる。
3 基金は、前項の規定による政府の出資があつたときは、その出資額により資本金を増加するものとする。
(名称)
第七条 基金は、その名称中に平和祈念事業特別基金という文字を用いなければならない。
2 基金でない者は、その名称中に平和祈念事業特別基金という文字を用いてはならない。
(登記)
第八条 基金は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、基金について準用する。
第二節 設立
(発起人)
第十条 基金を設立するには、学識経験を有する者五人以上が発起人となることを必要とする。
(設立の認可等)
第十一条 発起人は、定款及び事業計画書を内閣総理大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
2 前項の事業計画書に記載すべき事項は、総理府令で定める。
第十二条 内閣総理大臣は、設立の認可をしようとするときは、前条第一項の規定による認可の申請が次の各号に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画書の内容が法令の規定に適合するものであること。
二 定款又は事業計画書に虚偽の記載がないこと。
三 今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するにふさわしい事業を適切に行うことが確実であると認められること。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により認可をしたときは、遅滞なく、発起人が推薦した者のうちから、基金の理事長又は監事となるべき者を指名する。
3 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、基金の成立の時において、それぞれ第十八条第一項の規定により理事長又は監事に任命されたものとする。
(事務の引継ぎ)
第十三条 前条第二項の規定により理事長となるべき者が指名されたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府に対し、第六条第一項の規定による出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第十四条 理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあつたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 基金は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三節 管理
(定款記載事項)
第十五条 基金の定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 役員に関する事項
五 運営委員会に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 財務及び会計に関する事項
八 定款の変更に関する事項
九 公告の方法
2 基金の定款の変更は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(役員)
第十六条 基金に、役員として、理事長一人、理事一人及び監事一人を置く。
2 基金に、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事一人を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第十七条 理事長は、基金を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して基金の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、基金の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は内閣総理大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十八条 理事長及び監事は、内閣総理大臣が任命する。
2 理事は、内閣総理大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第十九条 役員の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第二十条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第二十一条 内閣総理大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 内閣総理大臣又は理事長は、それぞれの任命に係る役員が次の各号のいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第二十二条 役員(非常勤の理事を除く。)は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第二十三条 基金と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が基金を代表する。
(運営委員会)
第二十四条 基金に、その運営に関する重要事項を審議する機関として、運営委員会を置く。
2 運営委員会は、委員十人以内で組織する。
3 委員は、基金の業務に関し学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
4 第十九条並びに第二十一条第二項及び第三項の規定は、委員について準用する。
(職員の任命)
第二十五条 基金の職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第二十六条 基金の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四節 業務
(業務)
第二十七条 基金は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 関係者の労苦に関する資料を収集し、保管し、及び展示すること。
二 関係者の労苦に関する調査研究を行うこと。
三 関係者の労苦に関し、出版物その他の記録を作成し、及び頒布し、並びに講演会その他の催しを実施し、及び援助し、並びにこれに参加すること。
四 前三号の業務に附帯する業務を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、第三条の目的を達成するために必要な業務を行うこと。
2 基金は、前項に掲げる業務のほか、第四十三条第二項に規定する慰労の事務及び第五十五条第一項に規定する審査等の事務を行う。
3 基金は、第一項第五号に掲げる業務を行おうとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(業務方法書)
第二十八条 基金は、業務の開始前に、業務方法書を作成し、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、総理府令で定める。
第五節 財務及び会計
(事業年度)
第二十九条 基金の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第三十条 基金は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表等)
第三十一条 基金は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(次項及び第三項において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に内閣総理大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 基金は、前項の規定により財務諸表を内閣総理大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
3 基金は、第一項の規定による内閣総理大臣の承認を受けた財務諸表及び前項の事業報告書を事務所に備えて置かなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十二条 基金は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 基金は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十三条 基金は、資金の借入れ(借換えを含む。)をしようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(運用資金)
第三十四条 基金は、第二十七条第一項に掲げる業務の運営に必要な経費の財源をその運用によつて得るために運用資金を設け、第六条第一項及び第二項の規定により出資された金額をもつてこれに充てるものとする。
(運用資金及び余裕金の運用)
第三十五条 基金は、次の方法によるほか、前条の運用資金(以下「運用資金」という。)及び業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他内閣総理大臣の指定する有価証券の取得
二 銀行その他内閣総理大臣の指定する金融機関への預金
三 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託で元本補てんの契約があるもの
(財産の処分の制限)
第三十六条 基金は、総理府令で定める重要な財産を貸し付け、譲り渡し、交換し、又は担保に供しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十七条 基金は、役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(総理府令への委任)
第三十八条 この法律に規定するもののほか、基金の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第六節 監督
(監督)
第三十九条 基金は、内閣総理大臣が監督する。
2 内閣総理大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十条 内閣総理大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、基金の事務所その他の施設に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七節 雑則
(解散)
第四十一条 基金の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第四十二条 内閣総理大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十七条第三項、第二十八条第一項、第三十条、第三十三条又は第三十六条の規定による認可をしようとするとき。
二 第三十六条又は第三十八条の規定により総理府令を定めようとするとき。
三 第三十一条第一項又は第三十七条の規定による承認をしようとするとき。
四 第三十五条第一号又は第二号の規定による指定をしようとするとき。
第三章 戦後強制抑留者に対する慰労品の贈呈等
第一節 慰労品の贈呈
(慰労品の贈呈)
第四十三条 内閣総理大臣は、戦後強制抑留者又はその遺族に総理府令で定める品を贈ることによりこれらの者を慰労するものとする。
2 内閣総理大臣は、前章の規定により基金が設立されたときは、基金に、前項の慰労の事務を行わせるものとする。
第二節 慰労金の支給
(慰労金の支給)
第四十四条 戦後強制抑留者又は昭和六十三年七月三十一日以前に死亡した戦後強制抑留者(以下「死亡者」という。)の遺族で、同年八月一日において日本の国籍を有するものには、前条第一項の慰労品を贈るほか、慰労金を支給する。ただし、同日において次の各号に掲げる給付を受ける権利を有する者若しくは同日前においてその権利を有した者又はこれらの者の遺族(その権利を有する者又はその権利を有した者が死亡者の遺族であるときは、当該死亡者の他の遺族を含む。)については、この限りでない。
一 恩給法(大正十二年法律第四十八号)その他の恩給に関する法令の規定による年金たる恩給(恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号)附則第二十二条第一項ただし書の規定による傷病賜金を含む。)で、当該年金たる恩給の給与事由が第二条に規定する地域において強制抑留されていた期間(以下この項において「抑留期間」という。)内に負傷し、若しくは疾病にかかつたことにより生じたもの又は抑留期間が当該年金たる恩給の基礎在職年に算入されているもの
二 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)の規定による障害年金、障害一時金、遺族年金又は遺族給与金で、当該給付の支給事由が抑留期間内に発した負傷又は疾病により生じたもの
三 退職年金に関する恩給法以外の法令の規定により抑留期間に係る在職年を算入した期間に基づく退職年金又は遺族年金(昭和六十三年七月三十一日において退職したとしたならば抑留期間に係る在職年を算入した期間に基づき支給されることとなる退職年金を含む。)
2 慰労金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、内閣総理大臣が行う。
3 前項の請求は、総理府令で定めるところにより、昭和六十八年三月三十一日(死亡者の死亡の事実が判明した日が昭和六十四年四月二日以後であるときは、その死亡の事実が判明した日から起算して四年を経過する日)までに行わなければならない。
4 前項の期間内に慰労金の支給を請求しなかつた者には、慰労金は、支給しない。
(慰労金の支給を受けるべき遺族の範囲)
第四十五条 慰労金の支給を受けるべき遺族の範囲は、死亡者の死亡の当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とする。ただし、配偶者については、死亡者の死亡の日以後昭和六十三年七月三十一日以前に、死亡者の二親等内の血族(以下この項において「近親者」という。)以外の者の配偶者となつた者及び近親者以外の者の養子となり、かつ、同年八月一日において当該養子である者を除き、子、孫又は兄弟姉妹については、死亡者の死亡の日以後同年七月三十一日以前に離縁によつて死亡者との当該親族関係が終了した者及び同年八月一日において近親者以外の者の養子となつている者を除く。
2 死亡者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、その子は、死亡者の死亡の当時における子とみなす。
3 前項の子で、昭和六十三年八月二日以後に出生し、かつ、出生によつて日本の国籍を取得したものは、同月一日において日本の国籍を有していたものとみなす。
(慰労金の支給を受けるべき遺族の順位等)
第四十六条 慰労金の支給を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序による。ただし、父母及び祖父母については、死亡者の死亡の日においてその死亡者によつて生計を維持し、又はその者と生計を共にしていたものを先にし、同順位の父母については、養父母を先にし実父母を後にし、同順位の祖父母については、養父母の父母を先にし実父母の父母を後にし、父母の養父母を先にし実父母を後にする。
2 前項の規定により慰労金の支給を受けるべき順位にある遺族が、昭和六十三年八月一日(死亡者の死亡の事実が判明した日が同月二日以後であるときは、その死亡の事実が判明した日)以後引き続き一年以上生死不明である場合において、他に同順位者がないときは、次順位者の請求により、その次順位者(その次順位者と同順位の他の遺族があるときは、そのすべての同順位者)を慰労金の支給を受けるべき順位の遺族とみなすことができる。
3 慰労金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人のした慰労金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした慰労金の支給を受ける権利の認定は、全員に対してしたものとみなす。
(慰労金の額及び記名国債の交付)
第四十七条 慰労金の額は、十万円(遺族に支給する慰労金にあつては、死亡者一人につき十万円)とし、二年以内に償還すべき記名国債をもつて交付する。
2 前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。
3 前項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除き、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 この法律に定めるもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
(慰労金に係る権利の承継)
第四十八条 慰労金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に慰労金の支給の請求をしていなかつたときは、その者の相続人は、自己の名で、当該慰労金の支給を請求することができる。
2 第四十六条第三項の規定は、次の場合について準用する。
一 前項の規定による請求に基づいて慰労金の支給を受けるべき同順位の相続人が二人以上ある場合
二 前条第一項に規定する国債の記名者が死亡し、同順位の相続人が二人以上ある場合において、当該国債の記名者の死亡前に支払うべきであつた当該国債の償還金の請求若しくはその支払をし、又は当該国債の記名変更の請求若しくはその記名変更をするとき。
(異議申立期間)
第四十九条 慰労金に関する処分についての異議申立てに関する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条の期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して一年以内とする。
2 前項の異議申立てについては、行政不服審査法第四十八条の規定にかかわらず、同法第十四条第三項の規定は、準用しない。
(譲渡又は担保の禁止)
第五十条 慰労金の支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。
(差押えの禁止)
第五十一条 慰労金の支給を受ける権利及び第四十七条第一項に規定する国債は、差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による場合は、この限りでない。
(非課税)
第五十二条 慰労金には、所得税を課さない。
2 慰労金に関する書類及び第四十七条第一項に規定する国債の譲渡又は当該国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。
(国債の償還金の支払)
第五十三条 第四十七条第一項に規定する国債の償還金の支払に関する事務は、郵政大臣が取り扱うことができる。
2 前項の規定により郵政大臣が取り扱う事務について必要な事項は、郵政省令で定める。
(慰労金の返還)
第五十四条 不実の申請その他不正の手段により第四十七条第一項に規定する国債の交付を受け、その償還金を受領した者があるときは、内閣総理大臣は、その者に対して償還金の全部又は一部に相当する金額の返還を命ずることができる。
2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、内閣総理大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。
3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、内閣総理大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。
4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(審査等の事務の取扱い)
第五十五条 内閣総理大臣は、前章の規定により基金が設立されたときは、基金に、第四十四条第二項の認定に関する事務のうち、慰労金の支給の請求の受理及びその請求に係る事実についての審査に関する事務(次項において「審査等の事務」という。)を行わせるものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により審査等の事務を行わせるときは、基金が審査等の事務を開始する日及び審査等の事務を行う事務所の所在地を官報で公示しなければならない。
第三節 雑則
(総理府令への委任)
第五十六条 この法律に特別の規定がある場合を除き、この章の規定の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、総理府令で定める。
第四章 罰則
(罰則)
第五十七条 第四十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした基金の役員又は職員は、二十万円以下の罰金に処する。
第五十八条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした基金の役員は、二十万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により内閣総理大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十七条第一項及び第二項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第三十五条の規定に違反して運用資金又は業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十九条第二項の規定による内閣総理大臣の命令に違反したとき。
第五十九条 第七条第二項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二十七条第二項、第三章及び次条の規定は、昭和六十三年八月一日から施行する。
(国債の発行の日)
第二条 第四十七条第二項に規定する国債の発行の日は、昭和六十三年九月一日とする。
(政府の出資)
第三条 政府は、第二十七条第一項に掲げる業務の運営に必要な経費の財源をその運用によつて得るため、昭和六十三年度から五年度を目途として、第六条第一項及び第二項の規定により出資される金額が二百億円となるまで、基金に出資するものとする。
(経過措置)
第四条 この法律の施行の際現に平和祈念事業特別基金という名称を使用している者については、第七条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第五条 基金の最初の事業年度は、第二十九条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、その後最初の三月三十一日に終わるものとする。
第六条 基金の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第三十条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「基金の成立後遅滞なく」とする。
(所得税法の一部改正)
第七条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表負債整理組合の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(法人税法の一部改正)
第八条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表阪神高速道路公団の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(印紙税法の一部改正)
第九条 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。
別表第二阪神高速道路公団の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(登録免許税法の一部改正)
第十条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
別表第二阪神高速道路公団の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(地方税法の一部改正)
第十一条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「及び自動車安全運転センター」を「、自動車安全運転センター及び平和祈念事業特別基金」に改める。
(総理府設置法の一部改正)
第十二条 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第四条中第六号を第六号の二とし、同号の前に次の一号を加える。
六 平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)の施行に関すること。
内閣総理大臣 竹下登
大蔵大臣 宮澤喜一
郵政大臣 中山正暉
自治大臣 梶山静六
平和祈念事業特別基金等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十三年五月二十四日
内閣総理大臣 竹下登
法律第六十六号
平和祈念事業特別基金等に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
平和祈念事業特別基金
第一節
総則(第三条―第九条)
第二節
設立(第十条―第十四条)
第三節
管理(第十五条―第二十六条)
第四節
業務(第二十七条・第二十八条)
第五節
財務及び会計(第二十九条―第三十八条)
第六節
監督(第三十九条・第四十条)
第七節
雑則(第四十一条・第四十二条)
第三章
戦後強制抑留者に対する慰労品の贈呈等
第一節
慰労品の贈呈(第四十三条)
第二節
慰労金の支給(第四十四条―第五十五条)
第三節
雑則(第五十六条)
第四章
罰則(第五十七条―第五十九条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、旧軍人軍属であつて年金たる恩給又は旧軍人軍属としての在職に関連する年金たる給付を受ける権利を有しない者、戦後強制抑留者、今次の大戦の終戦に伴い本邦以外の地域から引き揚げた者等(以下「関係者」という。)の戦争犠牲による労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰 藉の念を示す事業を行う平和祈念事業特別基金の制度を確立し、及び戦後強制抑留者に対する慰労品の贈呈等を行うことに関し必要な事項を規定するものとする。
(定義)
第二条 この法律において「戦後強制抑留者」とは、昭和二十年八月九日以来の戦争の結果、同年九月二日以後ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者で本邦に帰還したものをいう。
第二章 平和祈念事業特別基金
第一節 総則
(目的)
第三条 平和祈念事業特別基金(以下「基金」という。)は、今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰 藉の念を示す事業を行うことを目的とする。
(法人格)
第四条 基金は、法人とする。
(数)
第五条 基金は、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第六条 基金の資本金は、十億円とし、政府がその全額を出資する。
2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、基金に追加して出資することができる。
3 基金は、前項の規定による政府の出資があつたときは、その出資額により資本金を増加するものとする。
(名称)
第七条 基金は、その名称中に平和祈念事業特別基金という文字を用いなければならない。
2 基金でない者は、その名称中に平和祈念事業特別基金という文字を用いてはならない。
(登記)
第八条 基金は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、基金について準用する。
第二節 設立
(発起人)
第十条 基金を設立するには、学識経験を有する者五人以上が発起人となることを必要とする。
(設立の認可等)
第十一条 発起人は、定款及び事業計画書を内閣総理大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
2 前項の事業計画書に記載すべき事項は、総理府令で定める。
第十二条 内閣総理大臣は、設立の認可をしようとするときは、前条第一項の規定による認可の申請が次の各号に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画書の内容が法令の規定に適合するものであること。
二 定款又は事業計画書に虚偽の記載がないこと。
三 今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するにふさわしい事業を適切に行うことが確実であると認められること。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により認可をしたときは、遅滞なく、発起人が推薦した者のうちから、基金の理事長又は監事となるべき者を指名する。
3 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、基金の成立の時において、それぞれ第十八条第一項の規定により理事長又は監事に任命されたものとする。
(事務の引継ぎ)
第十三条 前条第二項の規定により理事長となるべき者が指名されたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府に対し、第六条第一項の規定による出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第十四条 理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあつたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 基金は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三節 管理
(定款記載事項)
第十五条 基金の定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 役員に関する事項
五 運営委員会に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 財務及び会計に関する事項
八 定款の変更に関する事項
九 公告の方法
2 基金の定款の変更は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(役員)
第十六条 基金に、役員として、理事長一人、理事一人及び監事一人を置く。
2 基金に、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事一人を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第十七条 理事長は、基金を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して基金の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、基金の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は内閣総理大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十八条 理事長及び監事は、内閣総理大臣が任命する。
2 理事は、内閣総理大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第十九条 役員の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第二十条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第二十一条 内閣総理大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 内閣総理大臣又は理事長は、それぞれの任命に係る役員が次の各号のいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第二十二条 役員(非常勤の理事を除く。)は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第二十三条 基金と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が基金を代表する。
(運営委員会)
第二十四条 基金に、その運営に関する重要事項を審議する機関として、運営委員会を置く。
2 運営委員会は、委員十人以内で組織する。
3 委員は、基金の業務に関し学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
4 第十九条並びに第二十一条第二項及び第三項の規定は、委員について準用する。
(職員の任命)
第二十五条 基金の職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第二十六条 基金の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四節 業務
(業務)
第二十七条 基金は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 関係者の労苦に関する資料を収集し、保管し、及び展示すること。
二 関係者の労苦に関する調査研究を行うこと。
三 関係者の労苦に関し、出版物その他の記録を作成し、及び頒布し、並びに講演会その他の催しを実施し、及び援助し、並びにこれに参加すること。
四 前三号の業務に附帯する業務を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、第三条の目的を達成するために必要な業務を行うこと。
2 基金は、前項に掲げる業務のほか、第四十三条第二項に規定する慰労の事務及び第五十五条第一項に規定する審査等の事務を行う。
3 基金は、第一項第五号に掲げる業務を行おうとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(業務方法書)
第二十八条 基金は、業務の開始前に、業務方法書を作成し、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、総理府令で定める。
第五節 財務及び会計
(事業年度)
第二十九条 基金の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第三十条 基金は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表等)
第三十一条 基金は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(次項及び第三項において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に内閣総理大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 基金は、前項の規定により財務諸表を内閣総理大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
3 基金は、第一項の規定による内閣総理大臣の承認を受けた財務諸表及び前項の事業報告書を事務所に備えて置かなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十二条 基金は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 基金は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十三条 基金は、資金の借入れ(借換えを含む。)をしようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(運用資金)
第三十四条 基金は、第二十七条第一項に掲げる業務の運営に必要な経費の財源をその運用によつて得るために運用資金を設け、第六条第一項及び第二項の規定により出資された金額をもつてこれに充てるものとする。
(運用資金及び余裕金の運用)
第三十五条 基金は、次の方法によるほか、前条の運用資金(以下「運用資金」という。)及び業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他内閣総理大臣の指定する有価証券の取得
二 銀行その他内閣総理大臣の指定する金融機関への預金
三 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託で元本補てんの契約があるもの
(財産の処分の制限)
第三十六条 基金は、総理府令で定める重要な財産を貸し付け、譲り渡し、交換し、又は担保に供しようとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十七条 基金は、役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、内閣総理大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(総理府令への委任)
第三十八条 この法律に規定するもののほか、基金の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第六節 監督
(監督)
第三十九条 基金は、内閣総理大臣が監督する。
2 内閣総理大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十条 内閣総理大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、基金に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、基金の事務所その他の施設に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七節 雑則
(解散)
第四十一条 基金の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第四十二条 内閣総理大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十七条第三項、第二十八条第一項、第三十条、第三十三条又は第三十六条の規定による認可をしようとするとき。
二 第三十六条又は第三十八条の規定により総理府令を定めようとするとき。
三 第三十一条第一項又は第三十七条の規定による承認をしようとするとき。
四 第三十五条第一号又は第二号の規定による指定をしようとするとき。
第三章 戦後強制抑留者に対する慰労品の贈呈等
第一節 慰労品の贈呈
(慰労品の贈呈)
第四十三条 内閣総理大臣は、戦後強制抑留者又はその遺族に総理府令で定める品を贈ることによりこれらの者を慰労するものとする。
2 内閣総理大臣は、前章の規定により基金が設立されたときは、基金に、前項の慰労の事務を行わせるものとする。
第二節 慰労金の支給
(慰労金の支給)
第四十四条 戦後強制抑留者又は昭和六十三年七月三十一日以前に死亡した戦後強制抑留者(以下「死亡者」という。)の遺族で、同年八月一日において日本の国籍を有するものには、前条第一項の慰労品を贈るほか、慰労金を支給する。ただし、同日において次の各号に掲げる給付を受ける権利を有する者若しくは同日前においてその権利を有した者又はこれらの者の遺族(その権利を有する者又はその権利を有した者が死亡者の遺族であるときは、当該死亡者の他の遺族を含む。)については、この限りでない。
一 恩給法(大正十二年法律第四十八号)その他の恩給に関する法令の規定による年金たる恩給(恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号)附則第二十二条第一項ただし書の規定による傷病賜金を含む。)で、当該年金たる恩給の給与事由が第二条に規定する地域において強制抑留されていた期間(以下この項において「抑留期間」という。)内に負傷し、若しくは疾病にかかつたことにより生じたもの又は抑留期間が当該年金たる恩給の基礎在職年に算入されているもの
二 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)の規定による障害年金、障害一時金、遺族年金又は遺族給与金で、当該給付の支給事由が抑留期間内に発した負傷又は疾病により生じたもの
三 退職年金に関する恩給法以外の法令の規定により抑留期間に係る在職年を算入した期間に基づく退職年金又は遺族年金(昭和六十三年七月三十一日において退職したとしたならば抑留期間に係る在職年を算入した期間に基づき支給されることとなる退職年金を含む。)
2 慰労金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、内閣総理大臣が行う。
3 前項の請求は、総理府令で定めるところにより、昭和六十八年三月三十一日(死亡者の死亡の事実が判明した日が昭和六十四年四月二日以後であるときは、その死亡の事実が判明した日から起算して四年を経過する日)までに行わなければならない。
4 前項の期間内に慰労金の支給を請求しなかつた者には、慰労金は、支給しない。
(慰労金の支給を受けるべき遺族の範囲)
第四十五条 慰労金の支給を受けるべき遺族の範囲は、死亡者の死亡の当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とする。ただし、配偶者については、死亡者の死亡の日以後昭和六十三年七月三十一日以前に、死亡者の二親等内の血族(以下この項において「近親者」という。)以外の者の配偶者となつた者及び近親者以外の者の養子となり、かつ、同年八月一日において当該養子である者を除き、子、孫又は兄弟姉妹については、死亡者の死亡の日以後同年七月三十一日以前に離縁によつて死亡者との当該親族関係が終了した者及び同年八月一日において近親者以外の者の養子となつている者を除く。
2 死亡者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、その子は、死亡者の死亡の当時における子とみなす。
3 前項の子で、昭和六十三年八月二日以後に出生し、かつ、出生によつて日本の国籍を取得したものは、同月一日において日本の国籍を有していたものとみなす。
(慰労金の支給を受けるべき遺族の順位等)
第四十六条 慰労金の支給を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序による。ただし、父母及び祖父母については、死亡者の死亡の日においてその死亡者によつて生計を維持し、又はその者と生計を共にしていたものを先にし、同順位の父母については、養父母を先にし実父母を後にし、同順位の祖父母については、養父母の父母を先にし実父母の父母を後にし、父母の養父母を先にし実父母を後にする。
2 前項の規定により慰労金の支給を受けるべき順位にある遺族が、昭和六十三年八月一日(死亡者の死亡の事実が判明した日が同月二日以後であるときは、その死亡の事実が判明した日)以後引き続き一年以上生死不明である場合において、他に同順位者がないときは、次順位者の請求により、その次順位者(その次順位者と同順位の他の遺族があるときは、そのすべての同順位者)を慰労金の支給を受けるべき順位の遺族とみなすことができる。
3 慰労金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人のした慰労金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした慰労金の支給を受ける権利の認定は、全員に対してしたものとみなす。
(慰労金の額及び記名国債の交付)
第四十七条 慰労金の額は、十万円(遺族に支給する慰労金にあつては、死亡者一人につき十万円)とし、二年以内に償還すべき記名国債をもつて交付する。
2 前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。
3 前項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除き、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 この法律に定めるもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。
(慰労金に係る権利の承継)
第四十八条 慰労金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に慰労金の支給の請求をしていなかつたときは、その者の相続人は、自己の名で、当該慰労金の支給を請求することができる。
2 第四十六条第三項の規定は、次の場合について準用する。
一 前項の規定による請求に基づいて慰労金の支給を受けるべき同順位の相続人が二人以上ある場合
二 前条第一項に規定する国債の記名者が死亡し、同順位の相続人が二人以上ある場合において、当該国債の記名者の死亡前に支払うべきであつた当該国債の償還金の請求若しくはその支払をし、又は当該国債の記名変更の請求若しくはその記名変更をするとき。
(異議申立期間)
第四十九条 慰労金に関する処分についての異議申立てに関する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条の期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して一年以内とする。
2 前項の異議申立てについては、行政不服審査法第四十八条の規定にかかわらず、同法第十四条第三項の規定は、準用しない。
(譲渡又は担保の禁止)
第五十条 慰労金の支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。
(差押えの禁止)
第五十一条 慰労金の支給を受ける権利及び第四十七条第一項に規定する国債は、差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による場合は、この限りでない。
(非課税)
第五十二条 慰労金には、所得税を課さない。
2 慰労金に関する書類及び第四十七条第一項に規定する国債の譲渡又は当該国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。
(国債の償還金の支払)
第五十三条 第四十七条第一項に規定する国債の償還金の支払に関する事務は、郵政大臣が取り扱うことができる。
2 前項の規定により郵政大臣が取り扱う事務について必要な事項は、郵政省令で定める。
(慰労金の返還)
第五十四条 不実の申請その他不正の手段により第四十七条第一項に規定する国債の交付を受け、その償還金を受領した者があるときは、内閣総理大臣は、その者に対して償還金の全部又は一部に相当する金額の返還を命ずることができる。
2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、内閣総理大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。
3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、内閣総理大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。
4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(審査等の事務の取扱い)
第五十五条 内閣総理大臣は、前章の規定により基金が設立されたときは、基金に、第四十四条第二項の認定に関する事務のうち、慰労金の支給の請求の受理及びその請求に係る事実についての審査に関する事務(次項において「審査等の事務」という。)を行わせるものとする。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により審査等の事務を行わせるときは、基金が審査等の事務を開始する日及び審査等の事務を行う事務所の所在地を官報で公示しなければならない。
第三節 雑則
(総理府令への委任)
第五十六条 この法律に特別の規定がある場合を除き、この章の規定の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、総理府令で定める。
第四章 罰則
(罰則)
第五十七条 第四十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした基金の役員又は職員は、二十万円以下の罰金に処する。
第五十八条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした基金の役員は、二十万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により内閣総理大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十七条第一項及び第二項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第三十五条の規定に違反して運用資金又は業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十九条第二項の規定による内閣総理大臣の命令に違反したとき。
第五十九条 第七条第二項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二十七条第二項、第三章及び次条の規定は、昭和六十三年八月一日から施行する。
(国債の発行の日)
第二条 第四十七条第二項に規定する国債の発行の日は、昭和六十三年九月一日とする。
(政府の出資)
第三条 政府は、第二十七条第一項に掲げる業務の運営に必要な経費の財源をその運用によつて得るため、昭和六十三年度から五年度を目途として、第六条第一項及び第二項の規定により出資される金額が二百億円となるまで、基金に出資するものとする。
(経過措置)
第四条 この法律の施行の際現に平和祈念事業特別基金という名称を使用している者については、第七条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第五条 基金の最初の事業年度は、第二十九条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、その後最初の三月三十一日に終わるものとする。
第六条 基金の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第三十条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「基金の成立後遅滞なく」とする。
(所得税法の一部改正)
第七条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表負債整理組合の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(法人税法の一部改正)
第八条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表阪神高速道路公団の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(印紙税法の一部改正)
第九条 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。
別表第二阪神高速道路公団の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(登録免許税法の一部改正)
第十条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
別表第二阪神高速道路公団の項の次に次のように加える。
平和祈念事業特別基金
平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)
(地方税法の一部改正)
第十一条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「及び自動車安全運転センター」を「、自動車安全運転センター及び平和祈念事業特別基金」に改める。
(総理府設置法の一部改正)
第十二条 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第四条中第六号を第六号の二とし、同号の前に次の一号を加える。
六 平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)の施行に関すること。
内閣総理大臣 竹下登
大蔵大臣 宮沢喜一
郵政大臣 中山正暉
自治大臣 梶山静六