(目的)
第一条 この法律は、大都市地域において一の都府県の区域を超える広範な地域に及ぶ著しい住宅地需要が存していることにかんがみ、優良な宅地開発を促進するための緊急の措置を講ずることにより、良質な住宅地の円滑な供給を図り、もつて大都市地域における住民の生活の安定と当該地域の秩序ある発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「大都市地域」とは、次に掲げるものとする。
一 都の区域(特別区の存する区域に限る。)及び市町村でその区域の全部又は一部が次に掲げる区域内にあるものの区域
イ 首都園整備法(昭和三十一年法律第八十三号)第二条第三項に規定する既成市街地又は同条第四項に規定する近郊整備地帯
ロ 近畿圏整備法(昭和三十八年法律第百二十九号)第二条第三項に規定する既成都市区域又は同条第四項に規定する近郊整備区域
ハ 中部圏開発整備法(昭和四十一年法律第百二号)第二条第三項に規定する都市整備区域
二 前号の区域と自然的及び社会的に密接な関係がある区域として政令で定める区域
2 この法律において「宅地開発事業」とは、宅地の造成、造成された宅地の処分及び宅地の造成と併せて整備されるべき公共施設の整備に関する事業で住宅地の供給を主たる目的として行われるもの並びにこれに附帯する事業をいう。
3 この法律において「宅地開発事業者」とは、宅地開発事業を実施する者をいう。
4 この法律において「事業区域」とは、宅地開発事業を実施する土地の区域をいう。
5 この法律において「公共施設」とは、道路、公園、下水道その他政令で定める公共の用に供する施設をいう。
6 この法律において「宅地」とは、建築物、工作物又はその他の施設の敷地で公共施設の用に供するもの以外のものをいう。
7 この法律において「住宅地」とは、住宅の用に供する宅地をいう。
8 この法律において「公益的施設」とは、教育施設、購買施設、集会施設、教養文化施設その他の施設で居住者の共同の福祉又は利便のため必要なものをいう。
(宅地開発事業計画の認定等)
第三条 宅地開発事業者は、大都市地域において政令で定める面積以上の事業区域を有する宅地開発事業(当該事業区域が都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域内にあるものに限る。)を実施しようとするときは、当該宅地開発事業ごとに宅地開発事業に関する計画(以下「宅地開発事業計画」という。)を作成し、これを建設大臣に提出し、当該宅地開発事業計画が優良である旨の認定を受けることができる。
2 宅地開発事業計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
四 住宅、公共施設、公益的施設又は業務施設の用に供する土地の配置、規模その他の良好な居住環境を形成するために必要な事項
五 造成される宅地(以下「造成宅地」という。)の処分に関する事項
3 宅地開発事業計画には、建設省令で定める図書を添付しなければならない。
4 第一項の認定(以下「計画の認定」という。)の申請は、都府県知事を経由してするものとする。
(認定の基準)
第四条 建設大臣は、計画の認定の申請があつた場合において、当該申請に係る宅地開発事業計画が次の各号に適合すると認めるときは、計画の認定をするものとする。
一 宅地開発事業計画に係る宅地開発事業が、大都市地域において、一の都府県の区域を超える広範な地域に及ぶ住宅地需要に応じ緊急に実施すべき事業として適切なものであること。
二 事業区域が、自然的及び社会的条件から宅地開発事業を実施する区域として適切な区域であること。
三 事業区域のうち住宅の用に供する土地の区域の面積が政令で定める面積以上であること。
四 住宅の用に供する造成宅地の規模が政令で定める面積以上であること。
五 宅地の造成及び公共施設の整備に関する計画内容が良好な居住環境の確保のために適切なものであること。
六 政令で定める面積以上の事業区域を有する宅地開発事業については、当該事業区域における住宅市街地の早期の形成に必要な購買施設を含む一団の公益的施設の用に供する宅地が適切に確保されていること。
七 周辺の状況その他の事情から居住者の雇用機会の増大及び事業区域の昼間人口の増加に寄与する業務施設を当該事業区域内に併せて立地させる必要がある宅地開発事業として政令で定める宅地開発事業については、当該業務施設の用に供する宅地が良好な居住環境と調和しつつ適切に確保されていること。
八 宅地開発事業の実施時期に関する計画内容が当該宅地開発事業を確実に遂行するため適切なものであること。
九 造成宅地の処分に関する計画内容が合理的なものであること。
十 申請者が宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第三条第一項に規定する宅地建物取引業の免許を受けている者で宅地開発事業者としての実績その他により当該宅地開発事業を誠実に遂行すると認められるもの又は住宅・都市整備公団その他の政令で定める者であること。
2 前項各号に規定する基準を適用するについての必要な細目は、建設省令で定める。
3 第一項の規定にかかわらず、申請者が第十五条第一項又は第二項の規定により計画の認定を取り消され、その取消しの日から三年を経過しない者である場合には、建設大臣は、計画の認定をしてはならない。
(関係都府県等の意見の聴取)
第五条 建設大臣は、計画の認定をしようとするときは、あらかじめ、関係都府県(事業区域の全部又は一部が地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市(以下「指定都市」という。)の区域内である場合には、当該指定都市を含む。以下同じ。)の意見を聴かなければならない。
2 前項の場合において、都府県が意見を述べようとするときは、あらかじめ、関係市町村(指定都市を除く。以下同じ。)の意見を聴かなければならない。
(認定の通知)
第六条 建設大臣は、計画の認定をしたときは、速やかに、その旨を関係都府県に通知しなければならない。
2 前項の通知を受けた都府県は、速やかに、当該通知に係る事項を関係市町村に通知しなければならない。
(宅地開発事業計画の変更)
第七条 計画の認定を受けた宅地開発事業者(以下「認定事業者」という。)は、当該計画の認定を受けた宅地開発事業計画(以下「認定計画」という。)を変更しようとするときは、建設大臣の認定を受けなければならない。ただし、変更に係る事項が政令で定める軽微なものであるときは、この限りでない。
2 第三条第四項及び前三条の規定は、前項の変更の認定の申請があつた場合について準用する。
(宅地の造成等の開始の届出)
第八条 認定事業者は、宅地の造成又は公共施設の整備に関する工事を開始しようとするときは、あらかじめ、その開始の時期その他の建設省令で定める事項を建設大臣に届け出なければならない。
(宅地の造成等の確認)
第九条 認定事業者は、建設省令で定めるところにより宅地の造成及び公共施設の整備に関する工事を完了したときは、当該宅地の造成及び公共施設の整備が認定計画(第七条第一項の変更の認定があつたときは、その変更後のものをいう。以下同じ。)に適合する旨の建設大臣の確認を受けなければならない。
(良質な住宅地の保全)
第十条 認定事業者は、造成宅地の処分をしようとする場合において、当該造成宅地が建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六十九条の条例で定める区域内にあり、かつ、当該造成宅地について当該認定事業者以外に同条に規定する土地の所有者等が存しないときは、あらかじめ、同法第七十六条の三第一項の規定による建築協定を定めなければならない。ただし、当該造成宅地について次の各号の一に該当する事由があるときは、この限りでない。
一 建築基準法第六十九条の規定による建築協定が締結されていること。
二 都市計画法第十二条の四第一項第一号に規定する地区計画(同条第四項に規定する地区整備計画が定められているものに限る。)が定められていること。
(造成宅地の処分の届出)
第十一条 認定事業者は、造成宅地の処分をしようとするときは、あらかじめ、処分の時期その他の建設省令で定める事項を建設大臣に届け出なければならない。
(実施状況の報告)
第十二条 認定事業者は、毎事業年度経過後三月以内に、宅地開発事業の実施状況について建設大臣及び関係地方公共団体に報告しなければならない。
2 建設大臣又は関係地方公共団体は、認定事業者に対して、宅地開発事業の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、その実施状況について必要な報告を求めることができる。
(地位の承継)
第十三条 認定事業者の一般承継人又は認定事業者から事業区域内の土地の所有権その他当該宅地開発事業を実施する権原を取得した者は、建設大臣の承認を受けて、当該認定事業者が有していた計画の認定に基づく地位を承継する。
(改善命令)
第十四条 建設大臣は、認定事業者による宅地開発事業の実施が認定計画に適合しないおそれがあると認めるときは、当該認定事業者に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(認定の取消し)
第十五条 建設大臣は、次に掲げる場合には、計画の認定を取り消さなければならない。
二 認定事業者が第四条第一項第十号に該当しないものとなつたとき。
2 建設大臣は、次に掲げる場合には、計画の認定を取り消すことができる。
一 認定事業者が認定計画に従つて宅地開発事業を実施しないとき。
二 認定事業者が第八条又は第十一条の規定による届出をしなかつたとき。
三 認定事業者が第九条の規定による確認を受けず、又は第十条の規定による建築協定を定めないで造成宅地を処分したとき。
四 認定事業者が建設大臣に対し第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
五 認定事業者が前条の規定による建設大臣の処分に違反したとき。
3 第六条の規定は、建設大臣が、前二項の規定による取消しをした場合について準用する。
(税制上の措置)
第十六条 国は、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、認定計画に基づく宅地開発事業の促進を図るため必要な措置を講ずるものとする。
(公共施設の整備)
第十七条 国及び関係地方公共団体は、認定計画に基づく宅地開発事業の実施に関連して必要となる公共施設の整備の促進に努めるものとする。
(資金の確保等)
第十八条 国は、認定事業者が宅地開発事業を実施するために必要な資金の確保又はその融通のあつせんに努めるものとする。
(国等の援助)
第十九条 国及び関係地方公共団体は、認定事業者に対し、宅地開発事業の実施に関し必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めるものとする。
(開発許可等についての配慮)
第二十条 国の行政機関の長又は都府県知事は、認定計画に基づく宅地開発事業の事業区域内の土地を当該宅地開発事業の用に供するため、都市計画法その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該宅地開発事業の促進が図られるよう適切な配慮をするものとする。
(国の配慮)
第二十一条 国は、この法律に基づく施策を進めるに当たつては、関係地方公共団体と密接に連絡し、その立場を尊重するものとする。
(建設省令への委任)
第二十二条 この法律に定めるもののほか、計画の認定の申請、宅地の造成等の開始の届出、宅地の造成等の確認の申請、造成宅地の処分の届出等に関する手続その他この法律の実施のため必要な事項は、建設省令で定める。