揮発油販売業法をここに公布する。
御名御璽
昭和五十一年十一月二十五日
内閣総理大臣 三木武夫
法律第八十八号
揮発油販売業法
(目的)
第一条 この法律は、揮発油販売業について登録その他の規制を行うことにより、揮発油販売業の健全な発達及び揮発油の品質の確保を図り、もつて揮発油の安定的な供給の確保と消費者の利益の保護に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「給油所」とは、通商産業省令で定める給油設備により自動車に揮発油を給油するための施設であつて揮発油の販売の用に供されるものをいう。
2 この法律において「揮発油販売業」とは、前項の施設を用いて揮発油を販売する事業をいう。
(登録)
第三条 揮発油販売業を行おうとする者は、通商産業大臣の登録を受けなければならない。
(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、通商産業省令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書を通商産業大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 給油所の所在地及び第二条第一項の給油設備の規模
三 法人にあつては、その業務を行う役員の氏名
2 前項の申請書には、給油所ごとの事業の開始の日その他の通商産業省令で定める事項を記載した事業計画書及び通商産業省令で定める書類を添付しなければならない。
(登録及びその通知)
第五条 通商産業大臣は、第三条の登録の申請があつたときは、次条第一項又は第五項の規定により登録を拒否する場合を除き、前条第一項各号に掲げる事項並びに登録の年月日及び登録番号を揮発油販売業者登録簿に登録しなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の規定により登録をしたときは、遅滞なく、その旨を申請者に通知しなければならない。
(登録の拒否等)
第六条 通商産業大臣は、第四条第一項の申請書を提出した者が次の各号の一に該当するとき、又は当該申請書若しくは同条第二項の事業計画書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一 この法律の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
二 第十一条第一項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
三 第三条の登録を受けた者(以下「揮発油販売業者」という。)であつて法人であるものが第十一条第一項の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあつた日前三十日以内にその揮発油販売業者の業務を行う役員であつた者でその処分のあつた日から二年を経過しないもの
四 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前三号の一に該当する者があるもの
五 揮発油販売業を適確に遂行するに足りる能力を有しない者
2 通商産業大臣は、第三条の登録の申請に係る給油所の所在地が指定地区(その区域について通商産業省令で定めるところにより算定した一給油所当たりの揮発油の販売量が全国の一給油所当たりの揮発油の販売量を基礎とし地域の特性に応じて通商産業省令で定める数量を著しく下回つている市町村又は特別区の区域のうち、その地区内における揮発油販売業者の間の競争が過度に行われているためこれらの揮発油販売業者の相当部分の経営が著しく不安定となつている地区として、通商産業大臣が石油審議会の意見を聴き期間を定めて指定するものをいう。以下同じ。)に属する場合において、当該申請に係る給油所における事業の開始により、その指定地区内に給油所を設置している揮発油販売業者の相当部分について当該給油所における事業の継続が困難となると認めるときは、その申請を受理した日から一月以内に限り、申請者に対し、当該事態を回避するため必要な最少限度の範囲内において、その事業の開始の日を繰り下げ、又は設備の規模を縮小すべきことを指示することができる。
3 前項の規定による指示を受けた者は、その指示に不服があるときは、その指示を受けた日から二週間以内に、通商産業大臣に書面をもつて異議を申し出ることができる。
4 通商産業大臣は、前項の規定による異議の申出を受けたときは、その申出を受けた日から一月以内に、これについての決定をし、その申出をした者に、その決定の内容を通知しなければならない。
5 通商産業大臣は、第二項の規定による指示を受けた者が、その指示を受けた日(第三項の規定による異議の申出をした場合においては、前項の規定による通知を受けた日)から一月以内に、その指示に従つて申請書又は事業計画書の記載事項の変更をしないときは、その登録を拒否することができる。ただし、その指示につき第三項の規定による異議の申出があつた場合において、前項の決定において当該異議の申出が正当であると認められたときは、この限りでない。
6 通商産業大臣は、第一項又は前項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を申請者に通知しなければならない。
(承継)
第七条 揮発油販売業者について相続又は合併があつたときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、その揮発油販売業者の地位を承継する。ただし、当該相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人が前条第一項第一号から第四号までの一に該当するときは、この限りでない。
2 前項の規定により揮発油販売業者の地位を承継した者は、通商産業省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(変更登録等)
第八条 揮発油販売業者は、第四条第一項第二号又は第三号に掲げる事項について変更をしようとするときは、通商産業大臣の変更登録を受けなければならない。
2 第四条第二項、第五条及び第六条の規定は、前項の変更登録に準用する。
3 揮発油販売業者は、第四条第一項第一号に掲げる事項に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。その届出があつた場合には、通商産業大臣は、遅滞なく、当該登録を変更するものとする。
(廃止の届出)
第九条 揮発油販売業者は、揮発油販売業を廃止したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(登録の失効)
第十条 揮発油販売業者がその揮発油販売業を廃止したときは、その者に係る第三条の登録は、その効力を失う。
(登録の取消し等)
第十一条 通商産業大臣は、揮発油販売業者が次の各号の一に該当するときは、その登録を取り消すことができる。
一 第六条第一項第一号、第三号又は第四号の規定に該当することとなつたとき。
二 第八条第一項の変更登録を受けなかつたとき。
三 次項の規定による命令に違反したとき。
四 不正の手段により第三条の登録又は第八条第一項の変更登録を受けたとき。
2 通商産業大臣は、揮発油販売業者が次の各号の一に該当するときは、六月以内の期間を定めてその事業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
一 第八条第一項の変更登録を受けず、又は同条第三項の規定による届出をしなかつたとき。
二 第十三条、第十四条第一項又は第十六条の規定に違反したとき。
3 通商産業大臣は、前二項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を当該処分に係る者に通知しなければならない。
(登録の消除)
第十二条 通商産業大臣は、揮発油販売業者の登録がその効力を失つたときは、その登録を消除しなければならない。
(粗悪な揮発油の販売の禁止)
第十三条 揮発油販売業者は、揮発油の規格として通商産業省令で定めるものに適合しない物を、燃料用揮発油として販売してはならない。
(品質管理者)
第十四条 揮発油販売業者は、給油所ごとに、通商産業省令で定める資格を有する者のうちから品質管理者を選任し、次条第一項に規定する品質管理者の職務を行わせなければならない。
2 揮発油販売業者は、前項の規定により品質管理者を選任したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
第十五条 品質管理者は、揮発油の品質の確保に関し次条の規定による揮発油の分析その他の通商産業省令で定める職務を行う。
2 品質管理者は、誠実にその職務を行わなければならない。
3 揮発油販売業に従事する者は、品質管理者がその職務に関しこの法律又はこの法律に基づく命令の実施を確保するためにする指示に従わなければならない。
(揮発油の分析)
第十六条 揮発油販売業者は、通商産業省令で定めるところにより、品質管理者に、通商産業省令で定める技術上の基準に適合する分析設備を使用して揮発油の分析をさせなければならない。
(表示)
第十七条 揮発油販売業者は、給油所の見やすい場所に、通商産業省令で定めるところにより、氏名又は名称、登録番号、品質管理者の氏名その他の通商産業省令で定める事項を表示しなければならない。
(帳簿の記載)
第十八条 揮発油販売業者は、通商産業省令で定めるところにより、帳簿を備え、第十六条の分析の結果その他の通商産業省令で定める揮発油の分析に関する事項を記載し、これを保存しなければならない。
(勧告)
第十九条 通商産業大臣は、揮発油販売業者が揮発油の標準的な販売価格と著しく異なる価格で揮発油を販売していることにより、揮発油の消費者の利益が害され又は指定地区内に給油所を設置している揮発油販売業者の相当部分について当該給油所における事業の継続が困難となると認められる場合において、揮発油の消費者の利益の保護のため必要があり又は揮発油の安定的な供給の確保のため特に必要があると認めるときは、石油審議会の意見を聴いて、当該揮発油販売業者に対し、これらの事態を改善するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。揮発油販売業者に対する揮発油の販売を業とする者(揮発油の販売数量が通商産業省令で定める数量以上である者に限る。以下「特定揮発油卸売業者」という。)の当該揮発油販売業者に対する揮発油の販売価格に起因してこれらの事態が生じていると認められ、かつ、当該揮発油販売業者に対する勧告のみによつてはこれらの事態を改善することが困難であると認められる場合において特に必要があると認めるときは、当該特定揮発油卸売業者に対しても、同様とする。
2 通商産業大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、揮発油販売業者又は特定揮発油卸売業者が正当な理由なくその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
(報告徴収及び立入検査)
第二十条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、揮発油販売業者又は特定揮発油卸売業者に対し、その業務に関し報告させることができる。
2 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、揮発油販売業者の事務所、給油所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は試験のため必要な最少限度の分量に限り揮発油を収去させることができる。
3 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(聴聞)
第二十一条 通商産業大臣は、第十一条第一項又は第二項の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、相当な期間をおいて予告した上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、当該処分に係る者及び利害関係人に対し、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(不服申立ての手続における聴聞)
第二十二条 この法律の規定による処分についての審査請求又は異議申立てに対する裁決又は決定(却下の裁決又は決定を除く。)は、前条の例により公開による聴聞をした後にしなければならない。
(権限の委任)
第二十三条 この法律の規定により通商産業大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、通商産業局長に行わせることができる。
(罰則)
第二十四条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定に違反して揮発油販売業を行つた者
二 第十一条第二項の規定による命令に違反した者
第二十五条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項の規定に違反して第四条第一項第二号又は第三号に掲げる事項を変更した者
二 第十八条の規定に違反して同条に規定する事項を記載せず、虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかつた者
三 第二十条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
四 第二十条第二項の規定による検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
第二十七条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の過料に処する。
一 第七条第二項、第八条第三項、第九条又は第十四条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十七条の規定に違反した者
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現に揮発油販売業を行つている者は、この法律の施行の日から六十日間は、第三条の登録を受けないでその事業を行うことができる。その者がその期間内に同条の登録の申請をした場合において、登録又は登録の拒否の処分があるまでの間も、同様とする。
2 前項に規定する期間内における第六条第二項(第八条第二項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第六条第二項中「揮発油販売業者」とあるのは、「揮発油販売業者(附則第二条第一項の規定によりその事業を行うことができることとされた者を含む。)」とする。
(石油業法の一部改正)
第三条 石油業法(昭和三十七年法律第百二十八号)の一部を次のように改正する。
第十三条中「通商産業省令で定める規模以下のもの」を「通商産業省令で定めるところにより算定したその事業の規模(揮発油販売業法(昭和五十一年法律第八十八号)第二条第二項の揮発油販売業を行う者については、揮発油販売業以外の石油製品の販売の事業の規模)が通商産業省令で定める規模以下であるもの」に改める。
2 この法律の施行前にした前項の規定による改正前の石油業法に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(登録免許税法の一部改正)
第四条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
別表第一中第三十三号の次に次のように加える。
三十三の二 揮発油販売業者の登録
揮発油販売業法(昭和五十一年法律第八十八号)第三条(登録)の揮発油販売業者の登録
登録件数
一件につき 一万円
(通商産業省設置法の一部改正)
第五条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中第三十九号の四を第三十九号の五とし、第三十九号の三の次に次の一号を加える。
三十九の四 揮発油販売業者を登録すること。
第三十六条の三中「第三十九号の四」を「第三十九号の五」に改める。
第三十六条の七中第六号を第七号とし、第五号を第六号とし、第四号を第五号とし、第三号の次に次の一号を加える。
四 揮発油販売業法(昭和五十一年法律第八十八号)の施行に関すること。
大蔵大臣 大平正芳
通商産業大臣 河本敏夫
内閣総理大臣 三木武夫