(目的)
第一条 この法律は、中小企業の実態を調査して、その実態に即した中小企業近代化計画を策定し、その円滑な実施を図るための措置を講ずること等により、中小企業の近代化を促進し、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、工業、鉱業、運送業、商業、サービス業その他の業種に属する事業を営む中小規模の事業者であつて政令で定めるものをいう。
(中小企業近代化基本計画)
第三条 主務大臣は、中小企業近代化審議会の意見をきいて、次の各号に該当する業種であつて政令で定めるもの(以下「指定業種」という。)に属する中小企業について、中小企業近代化基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
一 当該業種における事業活動の相当部分が中小企業者によつて行なわれていること。
二 当該業種に属する中小企業の生産性の向上を図ることが産業構造の高度化又は産業の国際競争力の強化を促進し、国民経済の健全な発展に資するため特に必要であると認められること。
2 基本計画には、第一号又は第二号の事項及び必要に応じ第三号から第八号までの事項について定めるものとする。
一 製造業にあつては、次に掲げる事項
イ 目標年度における製品の性能又は品質、生産費、適正な生産の規模又は方式その他の近代化の目標
ロ 目標年度における当該指定業種の製品の生産又は輸出の見通し
二 製造業以外の業種にあつては、前号の事項に準ずる事項
三 新たに設置すべき設備の種類、資金の額その他設備の近代化に関する事項
四 経営管理の合理化又は技術若しくは技能の向上に関する事項
五 事業の共同化、工場等の集団化その他中小企業構造の高度化に関する事項
八 第三号から前号までに掲げるもののほか、近代化の目標を達成するために必要な事項
3 前項第一号又は第二号の事項は、指定業種ごとに、内外の経済事情を勘案して定めるものとする。
4 主務大臣は、第一項の規定により基本計画を定めたときは、その要旨を公表するものとする。
(中小企業近代化実施計画)
第四条 主務大臣は、毎年、中小企業近代化審議会の意見をきいて、基本計画の実施を図るため必要な中小企業近代化実施計画(以下「実施計画」という。)を定めなければならない。
2 主務大臣は、前項の規定により実施計画を定めたときは、その要旨を公表するとともに、当該指定業種に属する事業を営む中小企業者又は当該中小企業者を構成員とする団体に対し、必要な指導を行なうものとする。
(計画の変更)
第五条 主務大臣は、経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、中小企業近代化審議会の意見をきいて、基本計画又は実施計画を変更しなければならない。
2 前条第二項の規定は、前項の規定により実施計画を変更した場合に準用する。
(資金の確保)
第六条 政府は、実施計画に定める指定業種に属する中小企業の近代化のための設備の設置に必要な資金の確保又はその融通のあつせんに努めるものとする。
(勧告)
第七条 主務大臣は、基本計画に定める中小企業の近代化の目標を達成するため、当該基本計画に定める第三条第二項第五号又は第六号の事項に関し、当該指定業種に属する事業を営む中小企業者が相互に協力して事業活動を行なうことが特に必要であると認めるときは、当該中小企業者又は当該中小企業者を構成員とする団体に対し、必要な勧告をすることができる。
2 主務大臣は、前項に規定する場合において、同項の勧告のみによつては当該勧告に係る事項の実施が著しく困難であり、かつ、その主たる理由が当該中小企業者の事業と競合し若しくは関連する事業を行なう者(以下「関連事業者」という。)又は当該関連事業者を構成員とする団体の事業活動にあると認めるときは、当該関連事業者又は当該関連事業者を構成員とする団体に対し、必要な勧告をすることができる。
3 主務大臣は、前二項の勧告をしようとするときは、中小企業近代化審議会の意見をきかなければならない。
(合併等の場合の課税の特例)
第八条 主務大臣は、政令で定めるところにより、指定業種に属する事業(以下「指定事業」という。)を営む中小企業者に対し、その者が指定事業を営む他の法人である中小企業者と合併し、又は指定事業を営む他の法人である中小企業者に対して出資し、若しくは指定事業を営む他の中小企業者とともに出資して指定事業を営む法人を設立することにより、当該指定事業を営む中小企業者の事業の生産性が著しく向上し、かつ、当該中小企業者が当該指定業種に係る基本計画に定める近代化の目標に達することとなると認められる旨の承認をすることができる。
2 主務大臣は、前項に規定する出資をする指定事業を営む中小企業者であつて法人であるものに対して同項の承認をする場合には、政令で定めるところにより、当該中小企業者に対し、当該出資に係る資産が当該出資を受ける法人又は当該出資に基づいて設立される法人の営む指定事業の用に供するため必要なものである旨の承認をあわせてすることができる。
3 第一項若しくは前項の承認を受けた中小企業者、第一項の承認に係る合併後存続する法人若しくは当該合併により設立した法人又は同項の承認に係る出資を受けた法人若しくは当該出資に基づいて設立された法人については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、法人税又は登録税を軽減する。
(減価償却の特例)
第九条 中小企業者(資本の額又は出資の総額が五千万円をこえる者及び常時使用する従業員の数が三百人をこえる者を除く。)であつて指定事業を営むものは、租税特別措置法で定めるところにより、その有する固定資産について特別償却をすることができる。
(転換の指導等)
第十条 主務大臣は、需給構造その他の経済的事情の変化に即応して事業の転換を行なおうとする中小企業者の申出があつた場合において、当該事業の転換が中小企業の近代化の促進に資するものであると認めるときは、当該中小企業者に対し、その事業の転換を円滑に行なうことができるようにするため必要な指導を行なうものとする。
2 政府は、必要があると認めるときは、前項に規定する事業の転換のために必要な資金の融通のあつせんに努めるとともに、当該転換に係る事業の従事者の就職を容易にするため必要な援助に努めるものとする。
(中小企業近代化審議会)
第十一条 通商産業省に、中小企業近代化審議会を置く。
第十二条 中小企業近代化審議会(以下「審議会」という。)は、この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、関係各大臣の諮問に応じ、中小企業の近代化に関する重要事項を調査審議する。
2 専門の事項を調査させるため、審議会に、専門委員を置くことができる。
第十四条 委員及び専門委員は、関係行政機関の職員及び中小企業に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。
2 学識経験のある者のうちから任命された委員の任期は、二年とする。
第十六条 第十一条から前条までに定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。
(報告の徴収)
第十七条 主務大臣は、基本計画若しくは実施計画を定め又は基本計画若しくは実施計画の円滑な実施を確保するため当該指定業種に属する中小企業の実態を明らかにする必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該指定業種に属する事業を営む中小企業者に対し、その業務又は経理の状況について報告を求めることができる。
2 主務大臣は、前項に規定する場合において、関連事業者の事業活動が当該中小企業者の経営に著しい影響を及ぼしていると認めるときは、政令で定めるところにより、当該関連事業者に対し、その業務の状況について報告を求めることができる。
3 主務大臣は、前二項の報告を求めようとするときは、報告を求めるべき事項について審議会の意見をきかなければならない。
(主務大臣)
第十八条 この法律における主務大臣は、当該指定業種に属する事業を所管する大臣とする。ただし、第七条第二項の勧告、第十条第一項の指導又は前条第二項の報告の徴収に関しては、当該勧告、指導又は報告の徴収の対象となる者の行なう事業を所管する大臣(その対象となる者が特別の法律によつて設立された組合又はその連合会であるときは、その対象となる者の行なう事業を所管する大臣及びその組合又は連合会を所管する大臣)とする。
(罰則)
第十九条 第十七条第一項又は第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して前項の刑を科する。