保安林整備臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年五月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第八十四号
保安林整備臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、緊急に保安林を整備するため、保安林整備計画を定め、これに基く森林計画の変更、保安林として指定された森林の国による買入等の措置を講じ、もつて国土の保全に資することを目的とする。
(保安林整備計画)
第二条 農林大臣は、地勢その他の条件を勘案して主として流域別に定める区域ごとに、中央森林審議会の意見を聞いて、保安林整備計画を定めなければならない。
2 前項の保安林整備計画には、左に掲げる事項を定めるものとする。
一 保安林の指定及び解除に関する事項
二 保安林の区域内における森林施業に関する事項
三 保安施設事業に関する事項
四 第四条に掲げる森林等の買入に関する事項
五 その他必要な事項
(森林計画の変更)
第三条 農林大臣は、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第十条第一項に規定する場合の外、前条第一項の保安林整備計画を実施するため必要がある場合には、同法第四条第一項の規定により定められた森林基本計画の一部を変更することができる。
2 前項の規定による変更は、森林法第十条第一項の規定によりしたものとみなす。
(買入)
第四条 国は、第二条第一項の保安林整備計画に基き、毎年度予算の範囲内において、森林及び原野その他の土地(以下「森林等」という。)で左の各号の一に該当し、国土保全上必要なものを買い入れるものとする。
一 森林法第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するため保安林として指定されている森林
二 保安施設地区の区域内の森林等
三 前二号の規定により買い入れる森林等に隣接し、これとあわせて経営することを相当とする森林等
(交換)
第五条 前条に掲げる森林等で、その所在する地方の住民の薪炭原木の採取、放牧又は採草の用に供されているものを取得するため、同条の規定による買入に代えて、当該森林等と国有林野法(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二条第二号の国有林野とを交換する場合には、国は、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二十七条第一項但書の規定にかかわらず、価額の差額がその高価なものの価額の二分の一をこえないときは、交換をすることができる。
(強制買取)
第六条 森林法第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するため保安林として指定されている森林で、国土の保全上特に重要なものの森林所有者(同法第二条第二項に規定する森林所有者又は森林の土地の所有者をいう。以下同じ。)が、その森林につきされた同法第三十八条の規定による命令に従わない場合において、政令の定めるところにより催告をしてもなおこれに従わず、且つ、第四条の規定による国の買入の申込に応じないときは、農林大臣は、当該森林所有者から、当該森林、当該森林の土地又はその土地の上の権利及び立木竹を買い取ることができる。
2 農林大臣は、前項の規定による買取をするには、中央森林審議会の議を経て左に掲げる事項を記載した買収令書を作成し、これを当該森林所有者に交付しなければならない。
一 森林所有者の氏名又は名称及び住所
二 森林又は土地を買い取る場合には、その所在、地番及び面積、権利及び立木竹を買い取る場合には、その存する土地の所在、地番及び面積並びにその権利の種類及び内容
三 買取の期日
四 対価の額
五 対価の支払の方法
六 その他必要な事項
3 国が、前項の買収令書に記載された買取の期日までに対価を支払い、又は政令の定めるところにより供託したときは、その買取の期日に、その買取の目的となつた森林、土地若しくは立木竹の所有権又は権利は、国に移転する。
4 第一項の規定により買い取られる森林、土地、権利又は立木竹の対価の額に不服がある者は、買収令書の交付を受けた日から六月以内に、訴をもつてその増額を請求することができる。
(評価)
第七条 前三条の規定による買入、交換又は買取をする場合における森林、土地、権利及び立木竹の価額は、時価によるものとし、政令の定めるところにより評価基準に基いて算定しなければならない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、公布の日から起算して十年を経過した日にその効力を失う。
3 租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)の一部を次のように改正する。
第九条第五項中「国有林野整備臨時措置法第一条第一項の規定による国有林野と民有林野との交換」の下に「又は国有林野と保安林整備臨時措置法第四条に掲げる森林等に該当する民有林野との交換」を加える。
第十四条第二項中「清算金を取得するとき」の下に「又は基準日において個人の有する立木及び立木の存する土地で保安林整備臨時措置法第四条に掲げる森林等に該当するものについて国有林野との交換があつた場合において、当該交換に因り清算金を取得するとき」を加え、同条第三項中「又は土地の上に存する権利」を「、土地の上に存する権利又は立木」に、同条第五項中「買収された場合」を「買収され、又は保安林整備臨時措置法の規定に基き買い入れられ若しくは買い取られた場合」に、「買収の対価」を「買収、買入若しくは買取の対価」に、買収された資産」を「買収され、買い入れられ又は買い取られた資産」に改める。
第十五条第一項中「取得する場合」の下に「又は保安林整備臨時措置法の規定に基き買い入れられ若しくは買い取られその対価を取得した場合」を、「当該収用の日」の下に「又は当該買入若しくは買取の日」を加え、同条第二項第一号中「補償金の額」の下に「又は当該土地等の買入若しくは買取に因り取得する対価の額」を加え、同条第三項及び第四項中「又は土地の上に存する権利」を「、土地の上に存する権利又は立木」に改める。
第十六条第一項中「又は特別都市計画法」を「、特別都市計画法」に、「交換があつた場合において、当該土地又は土地の上に存する権利に換えて土地又は土地の上に存する権利を取得するとき(補償金又は清算金とともに土地又は土地の上に存する権利を取得するときを含む。)は、所得税法第九条又は資産再評価法第九条の規定の適用については、当該収用、換地処分又は交換に係る従前の土地又は土地の上に存する権利のうち当該補償金の額又は清算金の額に対応する部分を除き、当該土地又は土地の上に存する権利については」を「交換があつた場合又は個人の有する立木及び立木の存する土地で保安林整備臨時措置法第四条に掲げる森林等に該当するものについて国有林野との交換があつた場合において、当該土地、土地の上に存する権利又は立木に換えて土地、土地の上に存する権利又は立木を取得するとき(補償金又は清算金とともに土地、土地の上に存する権利又は立木を取得するときを含む。)は、所得税法第九条又は資産再評価法第九条の規定の適用については、当該収用、換地処分又は交換に係る従前の土地、土地の上に存する権利又は立木のうち当該補償金の額又は清算金の額に対応する部分を除き、当該土地、土地の上に存する権利又は立木については」に、同条第二項中「又は土地の上に存する権利」を「、土地の上に存する権利又は立木」に改める。
農林大臣 保利茂
内閣総理大臣 吉田茂