飼料の品質改善に関する法律
法令番号: 法律第35号
公布年月日: 昭和28年4月11日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

飼料需給安定法により量的確保と価格安定の見通しはついたが、品質改善については未だ措置が講じられていない。肥料や種子、農薬等の農業資材については既に法整備がなされ、農業の発展に寄与している一方、戦時中以来の飼料不足により不正・不適当な飼料が流通し、消費者や善良な業者に損害を与えてきた。畜産振興と有畜農業経営の確立が課題となる中、飼料の品質向上は緊急不可欠であり、量的確保・価格安定と並行して質的対策を樹立するため、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第15回国会 衆議院 農林委員会 第27号

審議経過

第15回国会

衆議院
(昭和28年3月5日)
参議院
(昭和28年3月6日)
(昭和28年3月9日)
(昭和28年3月10日)
衆議院
(昭和28年3月12日)
(昭和28年3月12日)
参議院
(昭和28年3月12日)
(昭和28年3月13日)
(昭和28年3月13日)
衆議院
(昭和28年3月14日)
飼料の品質改善に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年四月十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三十五号
飼料の品質改善に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、飼料の登録、検査等を行うことによつてその品質を保全し、もつて飼料の公正な取引を確保するとともに家畜家きんの飼養管理の合理化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「飼料」とは、ふすま、油かす、魚粉等(これらを混入したものを含む。)家畜家きんの栄養に供されるものとして農林大臣の指定するものをいう。
2 この法律において「成分量」とは、飼料が含有しているたん白、脂肪その他の成分を百分比で表わしたものをいい、「保証成分量」とは、製造業者又は輸入業者が、その製造(配合及び加工を含む。以下同じ。)又は輸入に係る飼料につき、それが含有しているものとして保証する成分量の最小量又は最大量をいう。
3 この法律において「製造業者」とは、飼料の製造を業とする者をいい、「輸入業者」とは、飼料の輸入を業とする者をいい、「販売業者」とは、飼料の販売を業とする者をいう。
(製造業者及び輸入業者の届出義務)
第三条 製造業者又は輸入業者は、その事業を開始する二週間前までに、農林大臣に、左に掲げる事項を届け出なければならない。但し、省令で定める製造業者は、この限りでない。
一 氏名及び住所(法人にあつてはその名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地。以下同じ。)
二 製造業者にあつては製造する事業場の名称及び所在地
三 販売業務を行う事業場及び保管する施設の所在地
四 製造又は輸入に係る飼料の種類及び名称
五 その他省令で定める事項
2 前項に掲げる者は、同項の届出事項に変更を生じたときは、その日から一箇月以内に、農林大臣に、その旨を届け出なければならない。その事業を廃止したときも、また同様とする。
(飼料の登録の申請)
第四条 前条第一項の規定により届出をした者は、省令で定めるところにより、その製造又は輸入に係る飼料について、その名称ごとに農林大臣に登録の申請をすることができる。
2 前項の申請を行う場合において、同一の名称で成分量の異なる二以上の飼料の登録の申請をすることができない。
3 登録の申請をする者は、一件につき二千円をこえない範囲内において、省令で定める額の手数料を納付しなければならない。
(登録拒否等)
第五条 左に掲げる場合には、登録を行わない。
一 異物の混入その他品質が著しく劣ることが認められるとき。
二 第三項の規定による農林大臣の指示に従わないとき。
2 農林大臣は、第二十二条の規定により登録を取り消された者について、取消の日から三年間登録を拒否することができる。
3 農林大臣は、申請書の記載事項が当該申請に係る飼料の品質と異なるときは、その記載事項を訂正すべきことを指示することができる。
(登録)
第六条 第四条第一項の規定により登録の申請を受けた場合において、農林大臣は、当該飼料につき、前条第一項各号の規定に違反していないと認めるときは、これを登録し、且つ、当該申請者に対し、左に掲げる事項を記載した登録証を交付しなければならない。
一 登録番号及び登録年月日
二 登録の有効期限
三 氏名及び住所
四 飼料の名称
五 飼料の用途
六 保証成分量
七 製造業者にあつては製造する事業場の所在地
(登録の有効期間)
第七条 登録の有効期間は、三年とし、申請により更新することができる。
2 登録の有効期間の更新を受けようとする者は、省令で定めるところにより、農林大臣に申請しなければならない。
3 登録の有効期間の更新を受けようとする者は、一千円をこえない範囲内において省令で定める額の手数料を納付しなければならない。
(登録の失効)
第八条 左の各号の一に該当するときは、登録は、その効力を失う。
一 登録を受けた者が当該飼料の製造又は輸入の事業を廃止した旨を届け出たとき。
二 登録を受けた法人が解散した場合においてその清算が結了したとき。
三 第二十二条の規定により登録を取り消されたとき。
(登録に関する公告)
第九条 農林大臣は、登録をしたとき、登録の有効期間を更新したとき又は前条の規定により登録が失効したときは、左に掲げる事項を附してその旨を公告しなければならない。
一 登録番号及び登録年月日
二 飼料の名称
三 保証成分量
四 氏名及び住所
(登録を受けた者の届出義務等)
第十条 登録を受けた者は、左の各号の事項に変更を生じたときは、その日から二週間以内に、変更があつた事項及び変更の年月日を農林大臣に届け出、登録証の書替交付を申請しなければならない。
一 氏名及び住所
二 製造業者にあつては製造する事業場の所在地
2 相続又は法人の合併若しくは分割により登録を受けた者の地位を承継した者は、その日から二週間以内に、その旨を農林大臣に届け出、登録証の書替交付を申請しなければならない。
3 登録を受けた者が当該飼料の製造又は輸入の事業を廃止したときは、その日から二週間以内に、その旨を農林大臣に届け出なければならない。
4 登録を受けた法人が解散し、又は清算を結了したときは、その清算人は、遅滞なく、その旨を農林大臣に届け出なければならない。
5 登録の有効期間が満了したとき、又は第八条の規定により登録がその効力を失つたときは、当該登録を受けた者(第八条第二号の場合は清算人)は、遅滞なく、登録証を附して効力を失つた事由及びその年月日を農林大臣に届け出なければならない。
(保証票)
第十一条 第六条の規定により登録を受けた飼料(以下「登録飼料」という。)の製造業者又は輸入業者は、当該登録に係る名称を用いて飼料を譲り渡そうとするときは、その容器又は包装の外部に、左に掲げる事項を記載した保証票を附さなければならない。
一 保証票という文字
二 飼料の名称
三 飼料の用途
四 保証成分量
五 製造業者又は輸入業者の氏名及び住所
六 製造し又は輸入した年月
七 製造業者にあつては製造した事業場の名称及び所在地
八 正味重量
九 登録番号
2 前項各号の事項のうち登録証の記載事項に該当する事項については、これと異なる記載をしてはならない。但し、第十三条第一項但書の許可を受けた場合は、この限りでない。
(使用上の注意等の表示命令)
第十二条 農林大臣は、必要があると認めるときは、登録飼料の製造業者又は輸入業者に対し、当該飼料の使用上の注意又は原料の使用割合その他必要な事項を示して当該飼料の容器若しくは包装の外部又は保証票に記載すべき旨を命ずることができる。
2 農林大臣は、前項の命令をしたときは、登録証にその旨を記載する。
(保証成分量と異なる飼料の譲渡の制限)
第十三条 登録飼料の製造業者又は輸入業者は、当該登録に係る名称を用いて、当該登録に係る保証成分量と異なる成分量の飼料を譲り渡してはならない。但し、農林大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
2 登録飼料の製造業者又は輸入業者は、前項但書の規定により許可を受けて当該飼料を譲り渡す場合において、その容器若しくは包装又は保証票に農林大臣の指示する事項を記載しなければならない。
(保証票の偽造等の禁止)
第十四条 何人も、保証票を偽造し、変造し、若しくは不正に使用し、又は偽造し、若しくは変造した保証票を自己の販売する飼料若しくは包装に附してはならない。
2 何人も、登録飼料以外の飼料の容器又は包装、広告文等に、当該飼料が登録を受けた旨又は登録を受けたものであると誤認させる虞のある記載をしてはならない。
(異物混入の禁止)
第十五条 製造業者、輸入業者又は販売業者は、その取り扱う飼料にその品質が低下するような異物を混入してはならない。
(虚偽の宣伝等の禁止)
第十六条 製造業者、輸入業者又は販売業者は、その製造し、輸入し、又は販売する飼料の成分量又はその効果に関して虚偽の宣伝をしてはならない。
2 製造業者、輸入業者又は販売業者は、その製造し、輸入し、又は販売する飼料について、その成分又は効果に関して誤解を生ずる虞のある名称を用いてはならない。
(容器等の不正使用の禁止)
第十七条 何人も、他の製造業者、輸入業者若しくは販売業者の氏名、商標若しくは商号又は他の飼料の名称若しくは成分を表示した容器又は包装を不正に使用してはならない。
(販売業者の公示の義務)
第十八条 販売業者は、登録飼料の容器又は包装を開き、又は変更して当該飼料を販売するときは、当該飼料の容器又は包装に附されている保証票の写を、店頭その他見易い場所に呈示しなければならない。
(帳簿の備付)
第十九条 登録飼料の製造業者又は輸入業者は、当該飼料を製造し又は輸入したときは、遅滞なく、その名称及び数量を帳簿に記載しなければならない。
2 登録飼料の製造業者又は輸入業者は、当該飼料を譲り渡したときは、その都度その名称、数量、年月日及び相手方の氏名又は名称を帳簿に記載しなければならない。
3 前二項の帳簿は、二年間保存しなければならない。
(報告の徴取)
第二十条 農林大臣は、製造業者、輸入業者若しくは販売業者又は飼料の運送業者若しくは倉庫業者から、その業務に関し必要な報告を徴することができる。
(立入検査等)
第二十一条 農林大臣は、飼料の取締上必要があると認めるときは、その職員に、製造業者、輸入業者若しくは販売業者又は飼料の運送業者、運送取扱業者若しくは倉庫業者の事業場、倉庫、船車その他飼料の製造、輸入、販売、輸送若しくは保管の業務に関係がある場所に立ち入り、飼料、その原料、材料若しくは業務に関する帳簿書類を検査させ、関係者に質問させ、又は飼料若しくはその原料を分析検査のため必要な最小量に限り、無償で収去させることができる。
2 前項の規定による立入検査、質問及び収去の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
3 第一項の場合には、その職員は、省令で定めるところにより、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求のあつたときは、これを呈示しなければならない。
4 農林大臣は、第一項の規定により飼料又はその原料を収去させたときは、当該飼料又はその原料の分析検査の概要を新聞その他の方法により公表する。
(違反の場合の行政処分)
第二十二条 農林大臣は、登録飼料の製造業者又は輸入業者が、この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反したときは、これらの者に対し、当該飼料の譲渡若しくは引渡を制限し、若しくは禁止し、又はその登録を取り消すことができる。
(聴聞)
第二十三条 農林大臣は、前条の規定により登録の取消をしようとするときは、当該登録を受けている者に対し、あらかじめ、期日、場所及び取消の原因たる事由を通知して公開による聴聞を行い、その者又はその代理人が証拠を呈示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(不服の申立)
第二十四条 左に掲げる者は、第一号の者にあつては当該期間満了後二週間以内、第二号の者にあつては当該指示を受けた日から二週間以内、第三号の者にあつては当該処分の日から二週間以内に、それぞれその旨を記載した書面をもつて、農林大臣に不服の申立をすることができる。
一 登録の申請をした後五十日を経過してもその登録を受けられなかつた場合において、これに対して不服がある者
二 第五条第三項の規定による指示に対して不服がある者
三 第二十二条の規定による飼料の譲渡若しくは引渡の制限又は禁止の処分に対して不服がある者
2 農林大臣は、前項の規定による不服の申立を受けたときは、その者に対し、あらかじめ期日及び場所を通知して公開による聴聞を行い、その者又はその代理人が証拠を呈示し、意見を述べる機会を与えた後当該申立に対する決定をしなければならない。
(都道府県の行う取締)
第二十五条 都道府県は、販売業者であつて製造業者又は輸入業者以外のものにつき、第十五条から第十八条までの事項を取り締る必要があると認めるときは、条例で定めるところにより、必要な措置をとることができる。
2 前項の条例を定める場合には、あらかじめ農林大臣の承認を受けなければならない。
(委任事項)
第二十六条 この法律実施のための手続その他その執行について必要な事項は、省令で定める。
(罰則)
第二十七条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第十三条、第十四条第二項又は第十五条の規定に違反した者
二 第十四条第一項の規定に違反して保証票を不正に使用した者
第二十八条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第六条の登録を受けるに当つて不正行為をした者
二 第十六条又は第十七条の規定に違反した者
第二十九条 第二十二条の規定による飼料の譲渡若しくは引渡の制限又は禁止の処分に違反した者は、三万円以下の罰金に処する。
第三十条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定による届出をしない者又は虚偽の届出をした者
二 第十二条第一項の規定による命令に違反した者
三 第二十条の規定による命令に対し報告をしない者又は虚偽の報告をした者
四 第二十一条第一項の規定による飼料、その原料若しくはその材料又は業務に関する帳簿書類の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して、前四条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に対し、相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第三十二条 第十一条の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。
第三十三条 第十条、第十八条又は第十九条の規定に違反した者は、二千円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して九月をこえない期間内において、政令で定める。
(現に製造業者又は輸入業者である者の届出)
2 この法律施行の際現に飼料の製造業者又は輸入業者である者が、その現に営んでいる製造又は輸入の事業について第三条第一項の規定によりなすべき届出の期間については、同条同項の規定にかかわらず、本法施行の日から三十日以内とする。
(農林省設置法の改正)
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第三十八号の二の次に次の一号を加える。
三十八の三 飼料の登録及び検査を行うこと。
第十一条第一項第五号の次に次の一号を加える。
五の二 飼料の登録及び検査に関すること。
農林大臣 田子一民
内閣総理大臣 吉田茂