(目的)
第一條 この法律は、日本経済の自立とその健全な発展及び国際收支の改善に寄與する外国資本に限りその投下を認め、外国資本の投下に伴つて生ずる送金を確保し、且つ、これらの外国資本を保護する適切な措置を講じ、もつてわが国に対する外国資本の投下のための健全な基礎を作ることを目的とする。
(外国資本の投下の原則)
第二條 わが国に対する外国資本の投下は、できる限り自由に認められるべきものとし、この法律に基く届出又は認可の制度は、その必要の減少に伴い逐次緩和又は廃止されるものとする。
(定義)
第三條 この法律又はこの法律に基く命令の適用を齊一にするため、左に掲げる用語は、左の定義に従うものとする。
一 「外国投資家」とは、左に掲げるものをいう。
イ 外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第六條第一項の非居住者(法人を除く。)
ロ 外国法に基いて設立された法人その他の団体又は外国に本店若しくは主たる事務所を有する法人その他の団体。但し、外資委員会の指定するものを除く。
ハ イ又はロに掲げるものが直接又は間接に株式又は持分の全部を所有している法人その他の団体
ニ イ又はロに掲げるものが実質的に支配している法人その他の団体
ホ イからニまでに掲げるものの外、外国人の財産取得に関する政令(昭和二十四年政令第五十一号)第二條第一項に掲げるもの
二 「本邦」、「外国」、「本邦通貨」、「外国通貨」、「居住者」、「対外支拂手段」及び「財産」とは、外国為替及び外国貿易管理法第六條第一項の本邦、外国、本邦通貨、外国通貨、居住者、対外支拂手段及び財産をいう。
三 「技術援助契約」とは、工業所有権その他の技術に関する権利の讓渡、これらに関する使用権の設定、工場経営に関する技術の指導その他外資委員会の指定するもの(以下「技術援助」という。)に関する契約で、その対価の支拂の期間が一年をこえるもの又は当該契約の更新の結果当該期間が通じて一年をこえるに至るものをいう。
2 前項第一号ハ又はニの法人その他の団体に該当するかどうか明白でない場合は、外資委員会の定めるところによる。
(対外の貸借及び收支に関する勘定)
第四條 大蔵大臣は、政令で定めるところにより、対外の貸借及び收支に関する勘定を作成し、これを明確にしておかなければならない。
2 大蔵大臣は、前項に規定する勘定を定期的に内閣に報告しなければならない。
3 大蔵大臣は、政令で定めるところにより、関係行政機関その他の者に対し、第一項に規定する勘定の作成に関し必要な資料の提出を求めることができる。
(負債超過又は支拂困難のおそれのある場合の措置)
第五條 大蔵大臣は、前條に規定する勘定に基いて、対外負債が対外資産を著しく超過し、新たな外国資本の投下に伴つて必要な外国へ向けた支拂(対外支拂手段による支拂を含む。以下同じ。)が困難となるおそれがあると認めるときは、内閣に対してその旨を報告しなければならない。
2 外資委員会又は主務大臣は、前項の報告があつた場合においては、内閣が当該報告に基いてその方針を決定するまでは、外国投資家に対して新たな負債を負い又は当該負債に基いて外国へ向けて新たな支拂をする行為に対して、許可、認可、承認その他の処分をしてはならない。
3 外資委員会又は主務大臣は、内閣が第一項の報告に基いてその方針を決定した場合においては、外国投資家に対して新たな負債を負い又は当該負債に基いて外国へ向けて新たな支拂をする行為に対して許可、認可、承認その他の処分をするときは、当該方針に従つてこれらの処分をしなければならない。
4 前二項の規定は、外資委員会又は主務大臣が法令に基いて既に行つた許可、認可、承認その他の処分によつて外国投資家が取得した権利を侵害するものと解してはならない。
(外国為替予算に関する措置)
第六條 閣僚審議会は、第四條に規定する勘定を参しやくして、この法律に規定する契約により外国投資家に対して負担する負債に基いて外国へ向けた支拂をすることのできる額を外国為替予算に計上しなければならない。
(援助希望技術の公表)
第七條 外資委員会は、外資委員会規則で定めるところにより、外国投資家からの技術援助を希望する技術の種類を公表しなければならない。
2 外資委員会は、前項の規定により公表した技術の種類を随時変更することができる。
(認可、許可又は勧告の基準)
第八條 外資委員会又は大蔵大臣がこの法律に規定する契約について認可又は許可をする場合の基準は、左の通りとし、その認可又は許可に当つては、国際收支の改善に有効に寄與するものを優先させなければならない。
二 直接又は間接に重要産業又は公益事業の発達に寄與すること。
三 重要産業又は公益事業に関する従来の技術援助契約の更新又は継続に必要であること。
2 外資委員会又は大蔵大臣は、左の各号の一に該当する場合においては、この法律に規定する契約について認可又は許可をしてはならない。
一 契約の條項が公正でない場合又は法令に違反する場合
二 契約の締結又は更新が、詐欺、強迫又は不当な圧迫によると認められる場合
三 日本経済の復興に惡影響を及ぼすものと認められる場合
四 社債、貸付金債権、株式又は持分の取得の対価として本邦通貨を用いる場合に、当該本邦通貨が、当該取得のために対外支拂手段を合法的に交換して得たもの、本邦における正当な事業活動により取得したものその他適法に取得したものでない場合
3 前二項の規定は、この法律の規定に基いて外資委員会が許可、認可又は承認をすべき旨の勧告をする場合に準用する。
(送金條項の表示)
第九條 外国投資家が技術援助の対価又は社債若しくは貸付金債権の利子若しくは元本の償還金を外国へ向けた支拂によつて受領しようとするときは、技術援助契約又は社債の引受若しくは貸付に関する契約の中において、その旨が明らかにされなければならない。
2 外国投資家が配当金又は社債の利子若しくは元本の償還金を外国へ向けた支拂によつて受領しようとするときは、当該配当金、利子又は元本の償還金を生ずる株式、持分又は社債の取得について外資委員会の認可を申請する書面の中において、その旨が明らかにされなければならない。