(運送に関する要求)
第八條 左に掲げる者(以下「運送業者」という。)は、この節に定めるところにより、郵政大臣の要求があるときは、郵便物の運送をし、又は郵便物の運送に関し必要な行為をしなければならない。
二 地方鉄道法(大正八年法律第五十二号)による地方鉄道業者
三 軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道経営者
四 一般交通の用に供するため航路を定め定期に船舶を運行して運送業を営む者
七 前各号に掲げるものを除いて、一般交通の用に供するため航路又は路線を定め定期に舟車馬を運行して運送業を営む者
2 郵政大臣がこの節の規定に従つてする要求は、運送業者との間に第三條若しくは第四條の契約が成立しないとき又は第三條若しくは第四條の契約により郵便物の運送を行う運送業者が契約で定めた事項を履行しないときにおいて当該運送業者に対しする場合に限り、且つ、郵便物の適正且つ円滑な運送を行うため必要な最少限度のもので、この節に別段の定がある場合を除くの外、当該運送業者に特別の義務を課さないものでなければならない。
3 郵政大臣がこの節の規定に従つてする要求により運送業者に業務を行わせる期間は、一年をこえるものであつてはならない。
4 郵政大臣は、運送業者に対しこの節の規定に従つて郵便物の運送に関する要求をしようとするときは、あらかじめ運輸大臣に協議しなければならない。
5 郵政大臣は、運送業者に対しこの節の規定に従つて郵便物の運送に関する要求をする場合には、緊急やむを得ない場合を除くの外、三十日を下らない範囲でその実施に必要な準備期間を置かなければならない。
(郵便車等の供給)
第九條 鉄道により運送事業を営む運送業者(以下「鉄道運送業者」という。)は、郵政大臣の要求があるときは、定期の列車に、郵便物の運送に必要な設備を有する車両(以下「郵便車」という。)を連結して郵便物を運送しなければならない。
2 鉄道運送業者は、郵便物が多量のため又は災害等のため定期の列車によつては郵便物の運送をすることができない場合において、郵政大臣の要求があるときは、臨時に定期の列車以外の列車に郵便車又はこれに代る車両を連結して郵便物の運送をしなければならない。
3 前二項の場合において、郵政大臣は、鉄道運送業者が連結する郵便車又はこれに代る車両の容積が当該列車ごとに、列車定数の総容積の五分の一をこえるような要求をすることができない。
4 鉄道運送業者は、第一項又は第二項の規定により連結する郵便車又はこれに代る車両の台枠が木造のものであるときは、緊急やむを得ない場合を除くの外、これを木造以外の台枠を有する車両間に連結してはならない。
5 鉄道運送業者が第一項又は第二項の規定により連結する郵便車又はこれに代る車両は、客車と同一程度の強度を有し、且つ、郵便車にあつては郵政大臣の指定する様式のものでなければならない。
6 鉄道運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、郵便車に郵便物の取扱のため必要な設備をし、且つ、その取扱に支障のないようにこれを維持しなければならない。
(郵便物の夜間受渡)
第十條 鉄道運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、夜間に発着する列車に連結する郵便車に積卸をする郵便物を郵便物の取扱に従事する者(以下「郵便取扱員」という。)で郵便局に所属するものから受領して郵便車に乘務する郵便取扱員に引き渡し、又は郵便車に乘務する郵便取扱員から受領して郵便局に所属する郵便取扱員に引き渡さなければならない。
(土地建物等の供給)
第十一條 鉄道運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、その運送する郵便物の積卸、保管その他の取扱のため必要な鉄道用地、停車場構内の建物、機器又は通信設備を郵政省の使用に供し、これに必要な電力を供給しなければならない。
(自動車の郵便物積載場所等の供給)
第十二條 路線を定める一般自動車運送事業を営む運送業者(以下「自動車運送業者」という。)は、郵政大臣の要求があるときは、定期に運行する旅客自動車又は貨物自動車の一定部分を郵便物を積載する場所に充てて、郵便物を運送しなければならない。
2 前項の場合において、郵政大臣は、郵便物を積載する場所の床面積がその自動車ごとに、旅客自動車にあつては定員の五分の一に相当する床面積、貨物自動車にあつては貨物を積載する床面積の三分の一をこえるような要求をすることができない。
3 自動車運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、第一項の郵便物を積載する場所に郵便物の取扱のため必要な設備をし、且つ、その取扱に支障のないようにこれを維持しなければならない。
(船舶の郵便物積載場所等の供給)
第十三條 一般交通の用に供するため航路を定め定期に船舶を運行して運送事業を営む運送業者(以下「船舶運送業者」という。)は、郵政大臣の要求があるときは、船舶の一定部分を郵便物を積載する場所に充てて、郵便物を運送しなければならない。
2 前項の場合において、総トン数五十トン未満の船舶については、郵政大臣は、郵便物を積載する船舶の一定部分の容積がその船舶ごとに、旅客定員に相当する容積の五分の一又は貨物積載容積の五分の一をこえるような要求をすることができない。
3 船舶運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、第一項の郵便物を積載する場所に郵便物の取扱のため必要な設備をし、且つ、その取扱に支障のないようにこれを維持しなければならない。
(その他の運送の要求)
第十四條 第九條第一項及び第二項、第十二條第一項並びに前條第一項に掲げる場合の外、運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、その要求する運送の種類、区間若しくは回数、運送機関の発着時刻又は郵便物授受の方法により、郵便物を運送しなければならない。
2 前項の要求は、当該運送業者の運送の施設、路線若しくは回数、運送機関の発着時刻その他運送の方法を変更するものであつてはならず、且つ、その運送に使用する当該車両又は船舶の容積又は床面積が第九條第三項、第十二條第二項又は前條第二項に定める限度をこえるものであつてはならない。
(補償金)
第十五條 運送業者がこの節に規定するところに従い、郵政大臣の要求に基き、郵便物を運送し、又は施設若しくは役務を提供したときは、郵政大臣は、当該運送業者に対し、相当の補償金を支拂わなければならない。
2 前項の補償金の額は、郵政大臣が運輸大臣に協議して定める。この場合において、郵便物の運送に対する補償金の額については、第五條第二項の規定により定める基準に基いて、土地建物等を使用に供した場合の補償金の額については当該施設を賃借するとすれば通常支拂うべき賃借料を基準として、その他の場合の補償金の額については通常生ずべき損失の額を下らない額においてこれを定めなければならない。
3 郵政大臣は、前項の補償金の額を定めたときは、遅滯なく、その旨を当該運送業者に通知しなければならない。
4 第二項の補償金の額に不服のある者は、訴をもつて増額を請求することができる。但し、前項の通知を受けた日から一箇月を経過したときは、この限りでない。