第十六條(裁判員・予備員) 裁判員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各七人とし、その予備員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各四人とする。
衆議院議員たる裁判員及びその予備員については、第五條第二項及び第三項の規定を準用する。
参議院における裁判員及びその予備員の選挙は、第一回國会の会期中にこれを行う。
参議院議員たる裁判員又はその予備員が欠けたときは、参議院においてその補欠選挙を行う。
裁判員及びその予備員の任期は、衆議院議員又は参議院議員としての任期による。
裁判員及びその予備員は、その者の属する議院の許可を得て辞職することができる。但し、國会の閉会中は、その者の属する議院の議長の許可を得て辞職することができる。
予備員は、その者の属する議院の議員たる裁判員に事故のある場合又はその裁判員が欠けた場合に、その裁判員の職務を行う。
予備員が前項の規定により職務を行う順序は、その選挙の際、その者の属する議院の議決によりこれを定める。
裁判員及びその職務を行う予備員は、國会の閉会中その職務を行う場合においては、両議院の議長の協議して定めるところにより、相当額の手当を受ける。
第十七條(裁判長の職務) 彈劾裁判所の裁判長は、口頭弁論を指揮し、法廷における秩序を維持し、裁判の評議を整理する外、彈劾裁判所の事務を統理し、彈劾裁判所を代表する。
裁判長に事故のあるときは、予め彈劾裁判所の定める順序により、他の裁判員が、臨時に裁判長の職務を行う。
第十八條(書記長・書記) 彈劾裁判所に書記長及び書記を置く。
書記長は、裁判長の監督を受けて、庶務を掌理し、書記を指揮監督する。
書記長及び書記は、前二項の外、裁判員の命を受けて、事件に関する事務に從事する。
書記長及び書記は、裁判長が両議院の議長の同意を得てこれを任免する。
第十九條(職権の独立) 裁判員は、独立してその職権を行う。
第二十條(合議制) 彈劾裁判所は、衆議院議員たる裁判員及び参議院議員たる裁判員がそれぞれ五人以上出席しなければ、審理及び裁判をすることができない。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき彈劾裁判所が特定の定をした場合は、この限りでない。
第二十一條(訴追状の送達) 彈劾裁判所は、罷免の訴追があつたときは、直ちに訴追状の謄本を罷免の訴追を受けた裁判官に送達しなければならない。
第二十二條(弁護人の選任) 罷免の訴追を受けた裁判官は、何時でも弁護人を選任することができる。
弁護人については、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。
第二十三條(口頭弁論) 罷免の裁判は、口頭弁論に基いてこれをしなければならない。
罷免の訴追を受けた裁判官が口頭弁論の期日に出頭しないときは、更に期日を定めなければならない。その裁判官が正当な理由がなくその期日に出頭しないときは、前項の規定にかかわらず、その陳述を聽かないで審理及び裁判をすることができる。
第二十四條(訴追委員の立会) 訴追委員会の委員長又はその指定する訴追委員は、法廷における審理及び裁判の宣告に立ち合う。
第二十五條(開廷の場所) 法廷は、彈劾裁判所でこれを開く。
彈劾裁判所は、必要と認めるときは、前項の規定にかかわらず、他の場所で法廷を開くことができる。
第二十六條(審判の公開) 彈劾裁判所の対審及び裁判の宣告は、公開の法廷でこれを行う。
第二十七條(法廷の秩序維持) 裁判長は、法廷における彈劾裁判所の職務の執行を妨げ、又は不当な行状をする者に対し、退廷を命じその他法廷における秩序を維持するのに必要な事項を命じ、又は処置を執ることができる。
第二十八條(訊問) 彈劾裁判所は、罷免の訴追を受けた裁判官を召喚し、これを訊問することができる。
前項の場合には、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。但し、勾引することはできない。
第二十九條(証拠) 彈劾裁判所は、申立により又は職権で、必要な証拠を取り調べ、又は地方裁判所にその取調を嘱託することができる。
証拠については、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。但し、彈劾裁判所及び彈劾裁判所の裁判長は、勾引、押收若しくは搜索その他人の身体、物若しくは場所について、強制の処分をし、若しくはすることを命じ、又は過料の決定をすることはできない。
彈劾裁判所は、前項の外、必要な証拠を取り調べるため左の各号に掲げる処分をすることができる。
一 証拠物の所持者に対し、当該証拠物の提出を命ずること。
二 事実発見のため必要のある場所の檢査を行うこと。
三 官公署に対して報告又は資料の提出を求めること。
第三十條(刑事訴訟に関する法令の準用) 裁判員、書記長及び書記の除斥、忌避及び回避、法廷における審理、調書の作成並びに手続の費用については、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。
第三十一條(裁判の評議) 裁判の評議は、これを公行しない。
裁判は、審理に関與した裁判員の過半数の意見による。但し、罷免の裁判をするには、審理に関與した裁判員の三分の二以上の多数の意見による。
第三十二條(一事不再理) 彈劾裁判所は、既に裁判を経た事由については、罷免の裁判をすることができない。
第三十三條(裁判の理由) 裁判には、理由を附さなければならない。
罷免の裁判に附する理由には、罷免の事由及びこれを認めた証拠を示さなければならない。
第三十四條(裁判書) 裁判をするときは、裁判書を作らなければならない。
裁判書には、裁判をした裁判員がこれに署名押印しなければならない。裁判長が署名押印できないときは、他の裁判員が、裁判長以外の裁判員が署名押印できないときは、裁判長が、その理由を附記して署名押印しなければならない。
第三十五條(裁判書の送達) 彈劾裁判所は、終局裁判をしたときは、直ちに裁判書の謄本を罷免の訴追を受けた裁判官及び最高裁判所に送達しなければならない。
第三十六條(裁判の公示) 彈劾裁判所の終局裁判は、官報に掲載してこれを公示しなければならない。
第三十七條(罷免の裁判の効果) 裁判官は、罷免の裁判の宣告により罷免される。
第三十八條(資格回復の裁判) 彈劾裁判所は左の場合においては、罷免の裁判を受けた者の請求により、資格回復の裁判をすることができる。
一 罷免の裁判の宣告の日から五年を経過し相当とする事由があるとき。
二 罷免の事由がないことの明確な証拠をあらたに発見し、その他資格回復の裁判をすることを相当とする事由があるとき。
資格回復の裁判は、罷免の裁判を受けた者がその裁判を受けたため他の法律の定めるところにより失つた資格を回復する。
第三十九條(裁判官の職務の停止) 彈劾裁判所は、相当と認めるときは、何時でも、罷免の訴追を受けた裁判官の職務を停止することができる。
第四十條(刑事訴訟との関係) 彈劾裁判所は、同一の事由について刑事訴訟が係属する間は、手続を中止することができる。
第四十一條(免官の留保) 罷免の訴追を受けた裁判官は、本人が免官を願い出た場合でも、彈劾裁判所の終局裁判があるまでは、その免官を行う権限を有するものにおいてこれを免ずることができない。
第四十二條(規則の制定) 彈劾裁判所は、この法律に特別の定のある場合を除いて、審理及び裁判の手続について規則を定めることができる。