第一條 本令ハ終戰後ノ事態ニ對處シ物價ノ安定ヲ確保シ以テ社會經濟秩序ヲ維持シ國民生活ノ安定ヲ圖ルヲ目的トス
第二條 本令ニ於テ價格等トハ價格、運送賃、保管料、保險料、賃貸料、加工賃、修繕料其ノ他給付ノ對價タル財產的給付ヲ謂フ
第三條 價格等ニ付第四條乃至第七條ニ規定スル統制額アルトキハ價格等ハ其ノ統制額ヲ超エテ之ヲ契約シ、支拂ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ但シ第七條第一項ニ規定スル統制額ニ係ル場合ヲ除クノ外命令ノ定ムル所ニ依リ價格等ノ支拂者又ハ受領者ニ於テ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
價格等ニ對スル給付ノ爲サルル地區ニ於ケル統制額ト他ノ地區ニ於ケル當該價格等ノ統制額トガ異ル場合ニ於テハ當該給付ニ付テハ主務大臣別段ノ定ヲ爲シタル場合ヲ除クノ外當該給付ノ爲サルル地區ニ於ケル統制額ヲ以テ前項ノ場合ニ於ケル統制額トス
第四條 主務大臣ハ第七條ニ規定スル場合ヲ除クノ外命令ノ定ムル所ニ依リ價格等ニ付其ノ統制額ヲ指定スルコトヲ得
第五條 第七條ニ規定スル場合ヲ除クノ外商工農業者等ノ組合其ノ他之ニ準ズルモノ(以下統制團體ト稱ス)ガ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ構成員(構成員ガ統制團體ナル場合ハ其ノ構成員ヲ含ム以下同ジ)ノ給付ニ對スル價格等ノ額ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ之ヲ當該給付ニ對スル價格等ノ統制額トス同條ニ規定スル場合ヲ除クノ外事業ノ統制ノ爲ニスル經營ヲ目的トスル會社、組合其ノ他之ニ準ズルモノ(以下統制機關ト稱ス)ガ命令ノ定ムル所ニ依リ當該統制機關ノ給付ニ對スル價格等ノ額ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル場合亦同ジ
主務大臣必要アリト認ムルトキハ價格等ノ額ヲ變更シテ前項ノ認可ヲ爲スコトヲ得
主務大臣必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ地區ヲ定メ第一項ノ統制額ヲ以テ認可ニ係ル統制團體ノ構成員以外ノ者又ハ統制機關以外ノ者ガ其ノ地區內ニ於テ爲ス同種ノ給付ニ對スル價格等ノ統制額ト爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル處分アリタル場合ニ於テ第一項ノ規定ニ依ル額ノ變更アリタルトキハ前項ノ統制額ハ當該變更額ニ變更セラレタルモノトス
第六條 第四條ノ規定ニ依リ指定セラレタル額アル價格等ニ付前條ノ規定ニ依ル認可ノ爲サレタル場合又ハ同條ノ規定ニ依リ認可セラレタル額アル價格等ニ付第四條ノ規定ニ依ル指定ノ爲サレタル場合ニ於テハ後ニ爲サレタル認可又ハ指定ニ係ル額ヲ以テ當該價格等ノ統制額トス但シ後ニ爲ス指定ニ於テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
第七條 價格等ニ付他ノ法令ニ定ムル額又ハ他ノ法令ニ基ク行政官廳ノ決定、命令、許可、認可其ノ他ノ處分アリタル額アルトキハ之ヲ當該價格等ノ統制額トス
前項ニ規定スル額ガ特定ノ者ノ爲ス給付ニ對スル價格等ニ限リ適用アルモノナル場合ニ於テハ同項ニ規定スル額ハ主務大臣ニ於テ別段ノ定ヲ爲ス場合ヲ除クノ外當該特定ノ者以外ノ者ノ爲ス同種ノ給付ニ對スル價格等ニ付テモ亦其ノ統制額トス
第八條 第四條ノ指定、第五條第一項ノ認可竝ニ同條第三項及前條第一項ノ處分ハ此等處分實施ノ際現ニ存スル契約ニシテ其ノ際左ノ各號ノ一ニ該當スルモノニ對シテハ影響ヲ及ボスコトナシ
一 注文生產品ノ價格ニ付生產者ガ生產ニ著手シタルモノ
二 其ノ他ノ價格ニ付買主其ノ他ノ支拂者ガ目的物ノ引渡ヲ受ケタルモノ
三 運送賃、加工賃、修繕料其ノ他ノ財產的給付(價格、保管料、保險料及賃貸料ヲ除ク以下同ジ)ニ對スル給付ヲ爲ス者ガ目的物ノ引渡ヲ受ケタルモノ
四 運送賃、加工賃、修繕料其ノ他ノ財產的給付ニ對スル給付ヲ爲ス者ガ當該財產的給付ニ對スル給付ニ著手シタルモノ
五 保管料、保險料又ハ賃貸料ニ付支拂者ガ履行遲滯ニ在ルモノ
第九條 何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ第三條ノ規定ニ依ル禁止ヲ免ルル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第十條 第三條ノ規定ハ契約ノ當事者ニシテ營利ヲ目的トシテ當該契約ヲ爲スニ非ザルモノニハ之ヲ適用セズ但シ當該契約ヲ爲スコトガ自己ノ業務ニ屬スル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條 何人ト雖モ暴利ト爲ルベキ價格等ヲ得ベキ契約ヲ爲シ又ハ暴利ト爲ルベキ價格等ヲ受領スルコトヲ得ズ
何人ト雖モ不當ニ高價ナル價格等ヲ得ベキ契約ヲ爲シ又ハ不當ニ高價ナル價格等ヲ受領スルコトヲ得ズ
第十二條 何人ト雖モ正當ノ事由アル場合ヲ除クノ外業務上價格等ヲ得ベキ契約ヲ爲スニ當リ他ノ物ヲ併セ買受クベキ旨又ハ對價ノ外金錢以外ノ物ヲ提供スベキ旨ノ負擔其ノ他ノ負擔ヲ附スルコトヲ得ズ
第十三條 何人ト雖モ正當ノ事由アル場合ヲ除クノ外業務上價格等ニ對スル給付ニ關シ對價トシテ金錢以外ノモノヲ受クルノ契約ヲ爲シ又ハ之ヲ受領スルコトヲ得ズ
第十四條 何人ト雖モ業務上不當ノ利益ヲ得ルノ目的ヲ以テ物ノ買占又ハ賣惜ヲ爲スコトヲ得ズ
第十五條 主務大臣ハ價格等ニ關スル給付ヲ爲スヲ業トスル者ニ對シ價格等ノ額ノ表示ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十六條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ價格等ニ對スル給付ヲ爲スヲ業トスル者ニ對シ價格等ノ額ヲ屆出ヅベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十七條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ物品ノ規格、品質、販賣方法、販賣場所等ニ關シ制限又ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第十八條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ價格等ノ原價ニ關シ計算ヲ爲サシムルコトヲ得
第十九條 主務大臣ハ價格等ニ付統制額ノ改訂アリタル場合ニ於テ其ノ價格等ニ對スル給付ヲ爲スヲ業トスル者ヨリ統制額ノ改訂ニ因ル差益ノ全部又ハ一部ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ國庫ニ納付セシムルコトヲ得
第二十條 主務大臣ハ價格等ニ對スル給付ヲ爲スヲ業トスル者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ者ノ爲ス給付ニ對スル價格等ニ付特別ノ割增額ヲ附スベキコトヲ命ズルコトヲ得
主務大臣ハ前項ノ者ヨリ其ノ割增額ニ相當スル金額ノ全部又ハ一部ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ國庫ニ納付セシムルコトヲ得
第二十一條 主務大臣ハ前二條ニ規定スル者ニ對シ第十九條ノ差益又ハ前條ノ割增額ニ相當スル收入ノ經理ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十二條 第十九條又ハ第二十條ノ規定ニ依リ納付スル金額ハ所得稅法ニ依ル所得、法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算ニ付之ヲ當該差益又ハ割增額ニ相當スル收入ノ生ジタル年又ハ事業年度ノ必要經費又ハ損金ニ算入ス
第二十三條 第十九條又ハ第二十條ノ規定ニ依ル納付金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次グモノトス
第二十四條 物價ニ關スル重要事項ハ物價安定委員會ノ議ヲ經ベシ
第二十五條 物價秩序ノ保持ニ當ラシムル爲物價監視委員ヲ置ク
第二十六條 物價監視委員ハ其ノ職務執行上必要ナル事項ニ關シ質問ヲ爲シ又ハ報吿ヲ徵スルコトヲ得
第二十七條 物價監視委員其ノ職務ヲ行フニ因リ本令違反ノ犯罪アリト思料スルトキハ吿發ヲ爲スベシ
第二十八條 物價監視委員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
第二十九條 前四條ニ揭グルモノヲ除クノ外物價監視委員ニ關スル事項ハ別ニ之ヲ定ム
第三十條 行政官廳必要アリト認ムルトキハ物價ニ關シ報吿ヲ徵シ、帳簿ノ作成ヲ命ジ又ハ命令ノ定ムル所ニ依リ當該官吏ヲシテ必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢查セシムルコトヲ得
第三十一條 主務大臣ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官(東京都ニ在リテハ警視總監ヲ含ム)又ハ當該主務大臣ノ所轄スル官衙ノ長ニ委任スルコトヲ得
第三十二條 本令ノ施行ニ關スル主務大臣ハ大藏大臣トス
第三十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ十年以下ノ懲役又ハ十萬圓以下ノ罰金ニ處ス但シ違反ニ係ル價格等ノ金額ト統制額ニ依ル價格等ノ金額トノ差額又ハ之ニ相當スル金額ノ三倍ガ十萬圓ヲ超ユルトキハ罰金ハ當額差額又ハ金額ノ三倍以下トス
第三十四條 第十一條第一項又ハ第十二條乃至第十四條ノ規定ニ違反シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十五條 前二條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第三十六條 第十一條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十七條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十五條又ハ第十六條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
二 第十七條ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ違反シタル者
四 第三十條ノ規定ニ違反シ報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ帳簿ノ作成ヲ爲サズ若ハ帳簿ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者
五 第三十條ノ規定ニ依ル檢查ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第三十八條 當該官吏、物價安定委員會ノ委員其ノ他ノ職員若ハ物價監視委員又ハ此等ノ職ニ在リタル者本令ニ依ル職務執行ニ關シ知得シタル祕密ヲ漏泄シ又ハ竊用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條 第二十六條ノ規定ニ違反シ物價監視委員ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十三條、第三十四條、第三十六條、第三十七條第一號乃至第四號又ハ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス