朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル商標法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月二十九日
內閣總理大臣 原敬
農商務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第九十九號
商標法
第一條 自己ノ生產、製造、加工、選擇、證明、取扱又ハ販賣ノ營業ニ係ル商品ナルコトヲ表彰スル爲商標ヲ專用セムトスル者ハ商標ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
登錄ヲ受クルコトヲ得ヘキ商標ハ文字、圖形若ハ記號又ハ其ノ結合ニシテ特別顯著ナルモノナルコトヲ要ス
商標ハ之ニ施スヘキ色ヲ限定シテ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條 左ニ揭クル商標ニ付テハ之ヲ登錄セス
一 菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ
二 國旗、軍旗、勳章、褒章、記章又ハ外國ノ國旗ト同一又ハ類似ノモノ
三 白地ニ赤十字ノ記章又ハ赤十字若ハ「ジェネヴァ」十字ノ稱號若ハ文字ト同一又ハ類似ノモノ
四 秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ虞アルモノ
五 他人ノ肖像、氏名名稱又ハ商號ヲ有スルモノ但シ其ノ他人ノ承諾ヲ得タルモノハ此ノ限ニ在ラス
六 同一又ハ類似ノ商品ニ慣用スル標章ト同一又ハ類似ノモノ
七 政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覽會又ハ外國ニ於ケル官設若ハ官許ノ博覽會ノ賞牌、賞狀又ハ褒狀ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ但シ其ノ賞牌、賞狀又ハ褒狀ヲ受領シタル者カ其ノ商標ノ一部トシテ其ノ圖形ヲ使用セムトスルトキハ此ノ限ニ在ラス
八 取引者又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識セラルル他人ノ標章ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ
九 他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ
十 登錄失效ノ日ヨリ一年ヲ經過セサル他人ノ商標ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ但シ其ノ他人ノ商標カ登錄失效前一年以上使用セサリシモノナル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
十一 商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アルモノ
商標ノ要部ト認メラルルノ虞アル部分カ分離シテハ前條第二項ニ規定スル特別顯著ノ要件ヲ具備セサル爲又ハ前項第六號ニ該當スル爲登錄ヲ受クルコトヲ得サルモノナル場合ト雖出願人カ其ノ部分自體ニ付權利ヲ要求セサル旨ヲ申出テタルトキハ其ノ商標ヲ登錄ス
第三條 同一商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ相類似スルモノ又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ同一ノモノ若ハ相類似スルモノハ聯合ノ商標トシテ出願シタル場合ニ限リ之ヲ登錄ス
第四條 同一又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ同一又ハ類似ノ商標ニ付各別ノ登錄出願カ競合スルトキハ最先ノ出願者ニ限リ登錄ス但シ同日ノ各別ノ出願者アルトキハ出願者ノ協議ニ依リ登錄シ協議調ハサルトキハ共ニ登錄セス
政府ノ開設シ、道府縣若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覽會又ハ工業所有權保護同盟條約國ノ版圖內ニ開設スル官設若ハ官許ノ萬國博覽會ニ出品シタル商品ニ使用シタル商標ニ付其ノ開會ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ商標ノ使用者カ其ノ商標ノ登錄ヲ出願シタルトキハ其ノ開會ノ日ニ於テ出願シタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ命令ヲ以テ前項ニ規定スル出品ニ付豫メ屆出ツヘキコトヲ規定シタル場合ニ於テ其ノ屆出ヲ怠リタル者ニ付之ヲ適用セス
第二項ニ揭クル萬國博覽會ヲ除クノ外外國ノ版圖內ニ開設スル官設又ハ官許ノ博覽會ニ出品スル商品ニ使用スル商標ニ付保護ヲ與フルノ必要アルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 商標登錄出願者ハ命令ノ定ムル類別內ニ於テ其ノ商標ヲ使用スヘキ商品ヲ指定スヘシ
第六條 商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移轉スルコトヲ得
商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ノ承繼ハ承繼人カ出願人名義ノ變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ屆出ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第七條 商標權ハ登錄ニ依リ發生ス
商標權者ハ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ付其ノ商標ヲ專用スルノ權利ヲ有ス
商標權カ其ノ登錄商標ノ使用ノ態樣ニ依リ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル意匠權ト牴觸スル場合ニ於テハ商標權者ハ意匠權者ノ實施許諾アルニ非サレハ其ノ態樣ニ於テ登錄商標ヲ使用スルコトヲ得ス
第八條 商標權ノ效力ハ普通ニ使用セラルル方法ヲ以テ自己ノ氏名名稱若ハ商號又ハ其ノ商品ノ普通名稱、產地、品位、品質、效能、用途、製法、時期、數量、形狀若ハ價格ヲ表示スルモノニ及ハス但シ商標登錄後惡意ヲ以テ氏名名稱又ハ商號ヲ使用シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
商標權ノ效力ハ第二條第二項ノ規定ニ依リ權利ヲ要求セサル旨ヲ申出テタル部分自體ニ及ハス
第九條 他人ノ登錄商標ノ登錄出願前ヨリ同一又ハ類似ノ商品ニ付取引者又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識セラレタル同一又ハ類似ノ標章ヲ善意ニ使用スル者ハ其ノ他人ノ商標ノ登錄ニ拘ラス其ノ使用ヲ繼續スルコトヲ得營業又ハ業務ト共ニ其ノ標章ノ使用ヲ承繼シタル者亦同シ
前項ノ場合ニ於テ商標權者ハ標章使用者ニ對シ商品ノ混同ヲ防クニ適當ナル表示ヲ附スヘキコトヲ請求スルコトヲ得
第十條 商標權ノ存續期間ハ登錄ノ日ヨリ二十年ヲ以テ終了ス
第十一條 前條ノ存續期間ハ更新登錄ノ出願ニ依リ之ヲ更新スルコトヲ得但シ其ノ更新登錄ノ出願ニ係ル商標カ第二條第一項第一號乃至第四號第六號第七號又ハ第十一號ニ該當スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第十二條 商標權ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移轉スルコトヲ得
商標權ハ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ依リ之ヲ分割シテ移轉スルコトヲ得
聯合ノ商標ノ商標權ハ分離シテ之ヲ移轉スルコトヲ得ス
商標權カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得ス
第十三條 商標權ハ商標權者カ其ノ營業ヲ廢止シタル場合ニ於テハ消滅ス
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタル商標ノ商標權ハ其ノ本國ニ於ケル商標權消滅シタル場合ニ於テハ消滅ス
第十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ審判ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消スヘシ
一 商標權者正當ノ理由ナクシテ帝國內ニ於テ登錄ノ日ヨリ一年間其ノ商標ヲ使用セサリシトキ又ハ引續キ三年間其ノ商標ノ使用ヲ中止シタルトキ但シ第五條ノ規定ニ依リ指定シタル商品中其ノ一ニ使用シ又ハ聯合ノ商標中其ノ一ヲ使用シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 商標權ノ移轉アリタル場合ニ於テ其ノ相續ニ依ルモノヲ除クノ外移轉アリタル日ヨリ一年以內ニ商標權移轉ノ登錄ヲ申請セサルトキ
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタル商標ニ付テハ前項第一號ノ規定ヲ適用セス
第十五條 商標權者故意ニ其ノ登錄商標ニ商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アル附記又ハ變更ヲ爲シテ之ヲ使用シタルトキハ審判ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消スヘシ
前項ノ規定ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消サレタル者ハ取消ノ審決確定シ又ハ判決アリタル日ヨリ五年間同一又ハ類似ノ商品ニ付同一又ハ類似ノ商標ノ登錄ヲ受クルコトヲ得ス
第十六條 商標ノ登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
一 登錄カ第一條乃至第四條又ハ前條第二項ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
二 登錄カ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
三 登錄カ商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ノ承繼人ニ非サル者ノ爲ニ爲サレタルトキ
四 登錄カ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十三條ニ規定スル條約又ハ之ニ準スヘキモノニ違反シテ爲サレタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一號乃至前號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五 登錄カ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條ノ規定ニ違反スルニ至リタルトキ又ハ特許法第三十三條ニ規定スル條約若ハ之ニ準スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一號乃至第三號ニ揭クルモノニ準スヘキモノナルトキ
商標權存續期間更新ノ登錄カ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
一 登錄カ第十一條但書ノ規定ニ違反シテ爲サレタルトキ
二 登錄カ商標權者ニ非サル者ノ爲ニ爲サレタルトキ
商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ハ商標權消滅後ト雖前二項ノ規定ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第十七條 特許局ニ商標原簿ヲ備ヘ商標權ノ設定、移轉、變更、消滅其ノ他法令ニ定ムル事項ヲ登錄ス
登錄ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條 登錄スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキハ之ヲ商標原簿ニ登錄ス
第十九條 特許局ハ商標公報ヲ發行シ本法ニ規定スル事項其ノ他登錄商標ニ關スル必要ナル事項ヲ之ニ記載スヘシ
第二十條 商標ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ三十圓ヲ納付スヘシ
商標權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ五十圓ヲ納付スヘシ
第二十一條 商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ審査セシム
第二十二條 審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ規定スルモノノ外左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一 第十四條、第十五條又ハ第三十一條ノ規定ニ依ル商標ノ登錄ノ取消
二 第十六條ノ規定ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ノ無效
三 商標權ノ範圍ノ確認
前項第一號ノ取消ノ審判又ハ第二號ノ無效ノ審判ハ利害關係人及審査官ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但シ審査官ハ第二條第一項第五號第八號乃至第十號、第三條若ハ第四條ノ規定ニ違反シ又ハ第十六條第一項第三號若ハ第二項第二號ニ該當ストノ理由ニ依ル無效ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第三號ノ確認ノ審判ハ利害關係人ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條 前條第一項第二號ノ無效ノ審判ハ登錄ノ日ヨリ五年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス但シ第二條第一項第一號乃至第四號第六號第七號第十一號、第十一條但書、第十五條第二項又ハ第二十四條ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二條又ハ第三十三條ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十四條 特許法第十三條、第十六條乃至第三十條、第三十二條、第三十三條、第四十五條、第五十八條第一項第三項、第六十八條、第七十一條、第七十二條、第七十三條第一項第二項第四項、第七十四條乃至第七十七條、第八十條乃至第八十三條、第八十六條乃至第百五條、第百七條、第百九條乃至第百十五條、第百十七條乃至第百二十四條及第百二十八條ノ規定ハ商標ニ關シ之ヲ準用ス但シ第七十三條第一項第二項第四項及第七十四條乃至第七十七條ノ規定ハ商標權存續期間更新ノ登錄出願ニ付之ヲ準用セス
第二十五條 登錄無效ノ審決確定シ又ハ判決アリタル後ニシテ再審請求ノ登錄前ヨリ同一又ハ類似ノ商品ニ付取引者又ハ需要者ノ間ニ廣ク認識セラレタル同一又ハ類似ノ登錄商標ヲ善意ニ使用スル者ハ其ノ登錄商標カ再審ニ依リ登錄ヲ囘復シタル商標ニ牴觸スル爲第二條第一項第九號ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依リ其ノ登錄ヲ無效トセラレタル場合ニ於テモ其ノ商標ノ使用ヲ繼續スルコトヲ得營業ト共ニ其ノ商標ノ使用ヲ承繼シタル者亦同シ
第九條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十六條 營利ヲ目的トセサル業務ニ係ル商品ノ標章ヲ專用セムトスル者ハ標章ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
前項ノ標章ハ之ヲ商標ト看做シ本法中商標ニ關スル規定ヲ之ニ適用ス
第二十七條 同業者及密接ノ關係ヲ有スル營業者ノ設立シタル法人ニシテ團體員ノ營業上ノ共同ノ利益ヲ增進スルヲ目的トスルモノハ其ノ團體員ヲシテ其ノ營業ニ係ル商品ニ標章ヲ專用セシムル爲其ノ標章ニ付團體標章ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
團體標章ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外之ヲ商標ト看做シ本法中商標ニ關スル規定ヲ之ニ適用ス
第二十八條 前條ノ規定ニ依リ團體標章ノ登錄ヲ受ケムトスル法人ハ其ノ定款ニ於テ其ノ團體標章ノ使用ニ關スル事項ヲ定メ特許局長官ノ認可ヲ受クヘシ其ノ事項ヲ變更スル場合亦同シ
第二十九條 團體標章權ノ侵害ニ因ル損害賠償請求權ハ團體員ニ生シタル損害ヲモ包含ス
第三十條 第二十七條ノ法人ノ合併又ハ分割ノ場合ニ於テ一ノ法人カ他ノ法人ニ團體標章ノ登錄出願ヨリ生シタル權利又ハ團體標章權ヲ移轉セムトスルトキハ特許局長官ノ認可ヲ受クヘシ此ノ場合ニ於テハ第二十八條ノ規定ヲ準用ス
第三十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ審判ニ依リ團體標章ノ登錄ヲ取消スヘシ
一 法人カ團體員ヲシテ第二十八條又ハ前條ノ規定ニ依リ特許局長官ノ認可ヲ受ケタル定款ノ規定ニ違反シテ團體標章ヲ使用セシメ又ハ其ノ使用ヲ放任シタルトキ
二 法人カ團體員ニ非サル者ヲシテ團體標章ヲ使用セシメ又ハ團體員ニ非サル者ノ使用ヲ放任シタルトキ
前項ノ規定ニ依リ團體標章ノ登錄ヲ取消サレタル法人ハ取消アリタル日ヨリ五年間同一又ハ類似ノ商品ニ付同一又ハ類似ノ團體標章ノ登錄ヲ受クルコトヲ得ス此ノ場合ニ於テハ第十六條及第二十二條ノ規定ヲ準用ス
第三十二條 團體標章ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ百圓ヲ納付スヘシ
團體標章權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル時登錄料トシテ每件一時ニ百五十圓ヲ納付スヘシ
第三十三條 前六條ノ規定ハ公法人カ其ノ地域內ニ於ケル營業者ヲシテ其ノ營業ニ係ル商品ニ專用セシムル爲團體標章ノ登錄ヲ受ケムトスル場合ニ之ヲ準用ス
第三十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 他人ノ登錄商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ同一若ハ類似ノ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付シ、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ所持スル者
二 他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一若ハ類似ノ商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ交付シ若ハ販賣シ又ハ其ノ交付、販賣ノ目的ヲ以テ所持スル者
三 他人ノ登錄商標ヲ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルノ目的又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ僞造又ハ模造シタル者
四 他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ使用シタル同一又ハ類似ノ商品ヲ交付、販賣ノ目的ヲ以テ輸入又ハ移入シタル者
五 他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルノ目的又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ輸入又ハ移入シタル者
六 他人ノ登錄商標ヲ僞造若ハ模造スルノ目的又ハ僞造若ハ模造セシムルノ目的ヲ以テ其ノ用具ヲ製作、交付、販賣又ハ所持スル者
七 同一又ハ類似ノ商品ニ關シ他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノモノヲ營業ニ用井ル廣告、看板、引札、物價表ノ類又ハ取引書類ニ使用シタル者
第三十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 詐僞ノ行爲ヲ以テ商標若ハ商標權存續期間更新ノ登錄ヲ受ケ又ハ審決若ハ判決ヲ受ケタル者
二 登錄ヲ受ケサル商標ニシテ商標登錄標記ヲ附シ若ハ商標登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタルモノヲ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付シ、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ所持スル者
三 登錄ヲ受ケサル商標ニシテ商標登錄標記ヲ附シ若ハ商標登錄標記ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタルモノヲ營業ニ用井ル廣告、看板、引札、物價表ノ類又ハ取引書類ニ使用シタル者
第三十六條 法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事特許局又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第三十七條 特許局ヨリ證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第三十八條 辨理士ニ非スシテ特許局ニ對シ商標ニ關シ爲スヘキ事項ノ代理業ヲ營ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
第三十九條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條 舊法ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄、處分及手續ハ本附則ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ニ依リ爲シタルモノト看做ス
舊法ニ依リ商標ニ關シ爲シタル出願、請求其ノ他ノ手續ニ付亦前項ニ同シ
第四十一條 本法施行ノ際現ニ繫屬スル商標若ハ商標權存續期間更新ノ登錄出願又ハ商標登錄ノ取消ニ關スル事項ノ處理ニ付テハ仍舊法ニ依ル
本法施行前送達ヲ受ケタル審決ニ對スル不服申立ノ期間ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第四十二條 舊法ニ依ル商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ニ關シテハ本法施行後ニ登錄カ爲サレタル場合ト雖舊法第十一條ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同條ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同條ニ揭クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ登錄カ同條ノ規定ニ該當スル場合ニ限リ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ此ノ場合ニ於テ舊法附則第二項ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有シ同項ノ規定ノ適用ノ範圍內ニ於テ同項ニ揭クル舊法ノ規定ハ仍其ノ效力ヲ有ス
第四十三條 登錄カ舊法第一條又ハ第二條第五號ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル前條ノ無效ノ審判ハ本法施行前爲サレタル商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ニ關シテハ本法施行ノ日ヨリ五年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
登錄カ舊法第二條第八號第九號、第三條又ハ第四條第二項ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル前條ノ無效ノ審判ハ商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄カ商標公報ニ揭載セラレタル日ヨリ三年ヲ經過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第四十四條 本法施行前舊法第二十三條ノ罪ヲ犯シタル者ハ本法施行後ト雖告訴アルニ非サレハ其ノ罪ヲ論セス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル商標法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月二十九日
内閣総理大臣 原敬
農商務大臣 男爵 山本達雄
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第九十九号
商標法
第一条 自己ノ生産、製造、加工、選択、証明、取扱又ハ販売ノ営業ニ係ル商品ナルコトヲ表彰スル為商標ヲ専用セムトスル者ハ商標ノ登録ヲ受クルコトヲ得
登録ヲ受クルコトヲ得ヘキ商標ハ文字、図形若ハ記号又ハ其ノ結合ニシテ特別顕著ナルモノナルコトヲ要ス
商標ハ之ニ施スヘキ色ヲ限定シテ登録ヲ受クルコトヲ得
第二条 左ニ掲クル商標ニ付テハ之ヲ登録セス
一 菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ図形ヲ有スルモノ
二 国旗、軍旗、勲章、褒章、記章又ハ外国ノ国旗ト同一又ハ類似ノモノ
三 白地ニ赤十字ノ記章又ハ赤十字若ハ「ジェネヴァ」十字ノ称号若ハ文字ト同一又ハ類似ノモノ
四 秩序又ハ風俗ヲ紊ルノ虞アルモノ
五 他人ノ肖像、氏名名称又ハ商号ヲ有スルモノ但シ其ノ他人ノ承諾ヲ得タルモノハ此ノ限ニ在ラス
六 同一又ハ類似ノ商品ニ慣用スル標章ト同一又ハ類似ノモノ
七 政府ノ開設シ、道府県若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覧会又ハ外国ニ於ケル官設若ハ官許ノ博覧会ノ賞牌、賞状又ハ褒状ト同一又ハ類似ノ図形ヲ有スルモノ但シ其ノ賞牌、賞状又ハ褒状ヲ受領シタル者カ其ノ商標ノ一部トシテ其ノ図形ヲ使用セムトスルトキハ此ノ限ニ在ラス
八 取引者又ハ需要者ノ間ニ広ク認識セラルル他人ノ標章ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ
九 他人ノ登録商標ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ
十 登録失効ノ日ヨリ一年ヲ経過セサル他人ノ商標ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ但シ其ノ他人ノ商標カ登録失効前一年以上使用セサリシモノナル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
十一 商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アルモノ
商標ノ要部ト認メラルルノ虞アル部分カ分離シテハ前条第二項ニ規定スル特別顕著ノ要件ヲ具備セサル為又ハ前項第六号ニ該当スル為登録ヲ受クルコトヲ得サルモノナル場合ト雖出願人カ其ノ部分自体ニ付権利ヲ要求セサル旨ヲ申出テタルトキハ其ノ商標ヲ登録ス
第三条 同一商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ相類似スルモノ又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ同一ノモノ若ハ相類似スルモノハ連合ノ商標トシテ出願シタル場合ニ限リ之ヲ登録ス
第四条 同一又ハ類似ノ商品ニ使用スヘキ同一又ハ類似ノ商標ニ付各別ノ登録出願カ競合スルトキハ最先ノ出願者ニ限リ登録ス但シ同日ノ各別ノ出願者アルトキハ出願者ノ協議ニ依リ登録シ協議調ハサルトキハ共ニ登録セス
政府ノ開設シ、道府県若ハ之ニ準スヘキモノノ開設シ若ハ政府ノ認可ヲ得テ開設スル博覧会又ハ工業所有権保護同盟条約国ノ版図内ニ開設スル官設若ハ官許ノ万国博覧会ニ出品シタル商品ニ使用シタル商標ニ付其ノ開会ノ日ヨリ六月以内ニ其ノ商標ノ使用者カ其ノ商標ノ登録ヲ出願シタルトキハ其ノ開会ノ日ニ於テ出願シタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ命令ヲ以テ前項ニ規定スル出品ニ付予メ届出ツヘキコトヲ規定シタル場合ニ於テ其ノ届出ヲ怠リタル者ニ付之ヲ適用セス
第二項ニ掲クル万国博覧会ヲ除クノ外外国ノ版図内ニ開設スル官設又ハ官許ノ博覧会ニ出品スル商品ニ使用スル商標ニ付保護ヲ与フルノ必要アルトキハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 商標登録出願者ハ命令ノ定ムル類別内ニ於テ其ノ商標ヲ使用スヘキ商品ヲ指定スヘシ
第六条 商標ノ登録出願ヨリ生シタル権利ハ其ノ営業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移転スルコトヲ得
商標ノ登録出願ヨリ生シタル権利カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ譲渡スルコトヲ得ス
商標ノ登録出願ヨリ生シタル権利ノ承継ハ承継人カ出願人名義ノ変更ヲ届出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ届出ニ係ルトキハ関係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第七条 商標権ハ登録ニ依リ発生ス
商標権者ハ第五条ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ付其ノ商標ヲ専用スルノ権利ヲ有ス
商標権カ其ノ登録商標ノ使用ノ態様ニ依リ其ノ出願ノ日前ノ出願ニ係ル意匠権ト牴触スル場合ニ於テハ商標権者ハ意匠権者ノ実施許諾アルニ非サレハ其ノ態様ニ於テ登録商標ヲ使用スルコトヲ得ス
第八条 商標権ノ効力ハ普通ニ使用セラルル方法ヲ以テ自己ノ氏名名称若ハ商号又ハ其ノ商品ノ普通名称、産地、品位、品質、効能、用途、製法、時期、数量、形状若ハ価格ヲ表示スルモノニ及ハス但シ商標登録後悪意ヲ以テ氏名名称又ハ商号ヲ使用シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
商標権ノ効力ハ第二条第二項ノ規定ニ依リ権利ヲ要求セサル旨ヲ申出テタル部分自体ニ及ハス
第九条 他人ノ登録商標ノ登録出願前ヨリ同一又ハ類似ノ商品ニ付取引者又ハ需要者ノ間ニ広ク認識セラレタル同一又ハ類似ノ標章ヲ善意ニ使用スル者ハ其ノ他人ノ商標ノ登録ニ拘ラス其ノ使用ヲ継続スルコトヲ得営業又ハ業務ト共ニ其ノ標章ノ使用ヲ承継シタル者亦同シ
前項ノ場合ニ於テ商標権者ハ標章使用者ニ対シ商品ノ混同ヲ防クニ適当ナル表示ヲ附スヘキコトヲ請求スルコトヲ得
第十条 商標権ノ存続期間ハ登録ノ日ヨリ二十年ヲ以テ終了ス
第十一条 前条ノ存続期間ハ更新登録ノ出願ニ依リ之ヲ更新スルコトヲ得但シ其ノ更新登録ノ出願ニ係ル商標カ第二条第一項第一号乃至第四号第六号第七号又ハ第十一号ニ該当スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第十二条 商標権ハ其ノ営業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移転スルコトヲ得
商標権ハ第五条ノ規定ニ依リ指定シタル商品ニ依リ之ヲ分割シテ移転スルコトヲ得
連合ノ商標ノ商標権ハ分離シテ之ヲ移転スルコトヲ得ス
商標権カ共有ニ係ル場合ニ於テハ各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ其ノ持分ヲ譲渡スルコトヲ得ス
第十三条 商標権ハ商標権者カ其ノ営業ヲ廃止シタル場合ニ於テハ消滅ス
外国ノ登録商標トシテ登録ヲ受ケタル商標ノ商標権ハ其ノ本国ニ於ケル商標権消滅シタル場合ニ於テハ消滅ス
第十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ審判ニ依リ商標ノ登録ヲ取消スヘシ
一 商標権者正当ノ理由ナクシテ帝国内ニ於テ登録ノ日ヨリ一年間其ノ商標ヲ使用セサリシトキ又ハ引続キ三年間其ノ商標ノ使用ヲ中止シタルトキ但シ第五条ノ規定ニ依リ指定シタル商品中其ノ一ニ使用シ又ハ連合ノ商標中其ノ一ヲ使用シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
二 商標権ノ移転アリタル場合ニ於テ其ノ相続ニ依ルモノヲ除クノ外移転アリタル日ヨリ一年以内ニ商標権移転ノ登録ヲ申請セサルトキ
外国ノ登録商標トシテ登録ヲ受ケタル商標ニ付テハ前項第一号ノ規定ヲ適用セス
第十五条 商標権者故意ニ其ノ登録商標ニ商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アル附記又ハ変更ヲ為シテ之ヲ使用シタルトキハ審判ニ依リ商標ノ登録ヲ取消スヘシ
前項ノ規定ニ依リ商標ノ登録ヲ取消サレタル者ハ取消ノ審決確定シ又ハ判決アリタル日ヨリ五年間同一又ハ類似ノ商品ニ付同一又ハ類似ノ商標ノ登録ヲ受クルコトヲ得ス
第十六条 商標ノ登録カ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無効ト為スヘシ
一 登録カ第一条乃至第四条又ハ前条第二項ノ規定ニ違反シテ為サレタルトキ
二 登録カ第二十四条ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二条ノ規定ニ違反シテ為サレタルトキ
三 登録カ商標ノ登録出願ヨリ生シタル権利ノ承継人ニ非サル者ノ為ニ為サレタルトキ
四 登録カ第二十四条ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十三条ニ規定スル条約又ハ之ニ準スヘキモノニ違反シテ為サレタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一号乃至前号ニ掲クルモノニ準スヘキモノナルトキ
五 登録カ第二十四条ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二条ノ規定ニ違反スルニ至リタルトキ又ハ特許法第三十三条ニ規定スル条約若ハ之ニ準スヘキモノニ違反スルニ至リタル場合ニ於テ其ノ違反カ第一号乃至第三号ニ掲クルモノニ準スヘキモノナルトキ
商標権存続期間更新ノ登録カ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ審判ニ依リ之ヲ無効ト為スヘシ
一 登録カ第十一条但書ノ規定ニ違反シテ為サレタルトキ
二 登録カ商標権者ニ非サル者ノ為ニ為サレタルトキ
商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録ハ商標権消滅後ト雖前二項ノ規定ニ依リ之ヲ無効ト為スヘシ
第十七条 特許局ニ商標原簿ヲ備ヘ商標権ノ設定、移転、変更、消滅其ノ他法令ニ定ムル事項ヲ登録ス
登録ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八条 登録スヘシトノ査定若ハ審決確定シ又ハ判決アリタルトキハ之ヲ商標原簿ニ登録ス
第十九条 特許局ハ商標公報ヲ発行シ本法ニ規定スル事項其ノ他登録商標ニ関スル必要ナル事項ヲ之ニ記載スヘシ
第二十条 商標ノ登録ヲ受クル者ハ其ノ登録ヲ受クル時登録料トシテ毎件一時ニ三十円ヲ納付スヘシ
商標権存続期間更新ノ登録ヲ受クル者ハ其ノ登録ヲ受クル時登録料トシテ毎件一時ニ五十円ヲ納付スヘシ
第二十一条 商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ審査セシム
第二十二条 審判ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル勅令ニ規定スルモノノ外左ニ掲クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一 第十四条、第十五条又ハ第三十一条ノ規定ニ依ル商標ノ登録ノ取消
二 第十六条ノ規定ニ依ル商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録ノ無効
三 商標権ノ範囲ノ確認
前項第一号ノ取消ノ審判又ハ第二号ノ無効ノ審判ハ利害関係人及審査官ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得但シ審査官ハ第二条第一項第五号第八号乃至第十号、第三条若ハ第四条ノ規定ニ違反シ又ハ第十六条第一項第三号若ハ第二項第二号ニ該当ストノ理由ニ依ル無効ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第一項第三号ノ確認ノ審判ハ利害関係人ニ限リ之ヲ請求スルコトヲ得
第二十三条 前条第一項第二号ノ無効ノ審判ハ登録ノ日ヨリ五年ヲ経過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス但シ第二条第一項第一号乃至第四号第六号第七号第十一号、第十一条但書、第十五条第二項又ハ第二十四条ノ規定ニ依リ準用スル特許法第三十二条又ハ第三十三条ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十四条 特許法第十三条、第十六条乃至第三十条、第三十二条、第三十三条、第四十五条、第五十八条第一項第三項、第六十八条、第七十一条、第七十二条、第七十三条第一項第二項第四項、第七十四条乃至第七十七条、第八十条乃至第八十三条、第八十六条乃至第百五条、第百七条、第百九条乃至第百十五条、第百十七条乃至第百二十四条及第百二十八条ノ規定ハ商標ニ関シ之ヲ準用ス但シ第七十三条第一項第二項第四項及第七十四条乃至第七十七条ノ規定ハ商標権存続期間更新ノ登録出願ニ付之ヲ準用セス
第二十五条 登録無効ノ審決確定シ又ハ判決アリタル後ニシテ再審請求ノ登録前ヨリ同一又ハ類似ノ商品ニ付取引者又ハ需要者ノ間ニ広ク認識セラレタル同一又ハ類似ノ登録商標ヲ善意ニ使用スル者ハ其ノ登録商標カ再審ニ依リ登録ヲ回復シタル商標ニ牴触スル為第二条第一項第九号ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依リ其ノ登録ヲ無効トセラレタル場合ニ於テモ其ノ商標ノ使用ヲ継続スルコトヲ得営業ト共ニ其ノ商標ノ使用ヲ承継シタル者亦同シ
第九条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十六条 営利ヲ目的トセサル業務ニ係ル商品ノ標章ヲ専用セムトスル者ハ標章ノ登録ヲ受クルコトヲ得
前項ノ標章ハ之ヲ商標ト看做シ本法中商標ニ関スル規定ヲ之ニ適用ス
第二十七条 同業者及密接ノ関係ヲ有スル営業者ノ設立シタル法人ニシテ団体員ノ営業上ノ共同ノ利益ヲ増進スルヲ目的トスルモノハ其ノ団体員ヲシテ其ノ営業ニ係ル商品ニ標章ヲ専用セシムル為其ノ標章ニ付団体標章ノ登録ヲ受クルコトヲ得
団体標章ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外之ヲ商標ト看做シ本法中商標ニ関スル規定ヲ之ニ適用ス
第二十八条 前条ノ規定ニ依リ団体標章ノ登録ヲ受ケムトスル法人ハ其ノ定款ニ於テ其ノ団体標章ノ使用ニ関スル事項ヲ定メ特許局長官ノ認可ヲ受クヘシ其ノ事項ヲ変更スル場合亦同シ
第二十九条 団体標章権ノ侵害ニ因ル損害賠償請求権ハ団体員ニ生シタル損害ヲモ包含ス
第三十条 第二十七条ノ法人ノ合併又ハ分割ノ場合ニ於テ一ノ法人カ他ノ法人ニ団体標章ノ登録出願ヨリ生シタル権利又ハ団体標章権ヲ移転セムトスルトキハ特許局長官ノ認可ヲ受クヘシ此ノ場合ニ於テハ第二十八条ノ規定ヲ準用ス
第三十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ審判ニ依リ団体標章ノ登録ヲ取消スヘシ
一 法人カ団体員ヲシテ第二十八条又ハ前条ノ規定ニ依リ特許局長官ノ認可ヲ受ケタル定款ノ規定ニ違反シテ団体標章ヲ使用セシメ又ハ其ノ使用ヲ放任シタルトキ
二 法人カ団体員ニ非サル者ヲシテ団体標章ヲ使用セシメ又ハ団体員ニ非サル者ノ使用ヲ放任シタルトキ
前項ノ規定ニ依リ団体標章ノ登録ヲ取消サレタル法人ハ取消アリタル日ヨリ五年間同一又ハ類似ノ商品ニ付同一又ハ類似ノ団体標章ノ登録ヲ受クルコトヲ得ス此ノ場合ニ於テハ第十六条及第二十二条ノ規定ヲ準用ス
第三十二条 団体標章ノ登録ヲ受クル者ハ其ノ登録ヲ受クル時登録料トシテ毎件一時ニ百円ヲ納付スヘシ
団体標章権存続期間更新ノ登録ヲ受クル者ハ其ノ登録ヲ受クル時登録料トシテ毎件一時ニ百五十円ヲ納付スヘシ
第三十三条 前六条ノ規定ハ公法人カ其ノ地域内ニ於ケル営業者ヲシテ其ノ営業ニ係ル商品ニ専用セシムル為団体標章ノ登録ヲ受ケムトスル場合ニ之ヲ準用ス
第三十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
一 他人ノ登録商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ同一若ハ類似ノ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付シ、販売シ若ハ交付、販売ノ目的ヲ以テ所持スル者
二 他人ノ登録商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一若ハ類似ノ商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ交付シ若ハ販売シ又ハ其ノ交付、販売ノ目的ヲ以テ所持スル者
三 他人ノ登録商標ヲ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルノ目的又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ偽造又ハ模造シタル者
四 他人ノ登録商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ使用シタル同一又ハ類似ノ商品ヲ交付、販売ノ目的ヲ以テ輸入又ハ移入シタル者
五 他人ノ登録商標ト同一又ハ類似ノ商標ヲ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルノ目的又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ輸入又ハ移入シタル者
六 他人ノ登録商標ヲ偽造若ハ模造スルノ目的又ハ偽造若ハ模造セシムルノ目的ヲ以テ其ノ用具ヲ製作、交付、販売又ハ所持スル者
七 同一又ハ類似ノ商品ニ関シ他人ノ登録商標ト同一又ハ類似ノモノヲ営業ニ用井ル広告、看板、引札、物価表ノ類又ハ取引書類ニ使用シタル者
第三十五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 詐偽ノ行為ヲ以テ商標若ハ商標権存続期間更新ノ登録ヲ受ケ又ハ審決若ハ判決ヲ受ケタル者
二 登録ヲ受ケサル商標ニシテ商標登録標記ヲ附シ若ハ商標登録標記ニ紛ハシキ表示ヲ為シタルモノヲ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付シ、販売シ若ハ交付、販売ノ目的ヲ以テ所持スル者
三 登録ヲ受ケサル商標ニシテ商標登録標記ヲ附シ若ハ商標登録標記ニ紛ハシキ表示ヲ為シタルモノヲ営業ニ用井ル広告、看板、引札、物価表ノ類又ハ取引書類ニ使用シタル者
第三十六条 法律ニ依リ宣誓シタル証人若ハ鑑定人又ハ通事特許局又ハ其ノ嘱託ヲ受ケタル裁判所若ハ官庁ニ対シ虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第三十七条 特許局ヨリ証人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正当ノ理由ナクシテ呼出ニ応セス又ハ其ノ義務ヲ尽ササルトキハ五十円以下ノ過料ニ処ス
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第三十八条 弁理士ニ非スシテ特許局ニ対シ商標ニ関シ為スヘキ事項ノ代理業ヲ営ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
第三十九条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十条 旧法ニ依ル商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録、処分及手続ハ本附則ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外本法ニ依リ為シタルモノト看做ス
旧法ニ依リ商標ニ関シ為シタル出願、請求其ノ他ノ手続ニ付亦前項ニ同シ
第四十一条 本法施行ノ際現ニ繋属スル商標若ハ商標権存続期間更新ノ登録出願又ハ商標登録ノ取消ニ関スル事項ノ処理ニ付テハ仍旧法ニ依ル
本法施行前送達ヲ受ケタル審決ニ対スル不服申立ノ期間ニ付テハ仍旧法ニ依ル
第四十二条 旧法ニ依ル商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録ニ関シテハ本法施行後ニ登録カ為サレタル場合ト雖旧法第十一条ノ規定ハ仍其ノ効力ヲ有シ同条ノ規定ノ適用ノ範囲内ニ於テ同条ニ掲クル旧法ノ規定ハ仍其ノ効力ヲ有シ登録カ同条ノ規定ニ該当スル場合ニ限リ審判ニ依リ之ヲ無効ト為スヘシ此ノ場合ニ於テ旧法附則第二項ノ規定ハ仍其ノ効力ヲ有シ同項ノ規定ノ適用ノ範囲内ニ於テ同項ニ掲クル旧法ノ規定ハ仍其ノ効力ヲ有ス
第四十三条 登録カ旧法第一条又ハ第二条第五号ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル前条ノ無効ノ審判ハ本法施行前為サレタル商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録ニ関シテハ本法施行ノ日ヨリ五年ヲ経過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
登録カ旧法第二条第八号第九号、第三条又ハ第四条第二項ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル前条ノ無効ノ審判ハ商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録カ商標公報ニ掲載セラレタル日ヨリ三年ヲ経過シタルトキハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第四十四条 本法施行前旧法第二十三条ノ罪ヲ犯シタル者ハ本法施行後ト雖告訴アルニ非サレハ其ノ罪ヲ論セス