農産種苗法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十月二日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百十五号
農産種苗法
第一條 この法律において、種苗とは、農作物の繁殖の用に供される種子、果実、茎、根、母本、苗、苗木、穗木又はだい木で農林大臣の指定するものをいう。
この法律において、種苗業者とは、種苗の販賣を業とするものをいう。
第二條  種苗業者は、その営業所ごとに、左の事項を当該営業所の所在地の市町村長に届け出なければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 当該営業所
三 当該営業所において取り扱う種苗の種類
四 前号の種苗の取引に関する帳簿の保管場所
五 その他命令で定める事項
前項の事項中に変更を生じたときも、また同項と同樣とする。
前二項の規定による届出は、あらたに営業を開始した場合にあつてはその開始後二週間以内に、あらたに営業所を設けた場合にあつてはその設置後二週間以内に、第一項の事項中に変更を生じた場合にあつてはその変更を生じた後二週間以内にこれをしなければならない。
第一項及び第二項の規定による届出があつたときは、市町村長は、農林大臣にこれを報告しなければならない。
第三條 種苗は、その包裝に左の事項を表示したもの又は左の事項を表示する証票を添附したものでなければ、これを販賣してはならない。但し、掲示その他容易に了知出來る方法を以てその種苗につき、第一号乃至第六号の事項を表示する場合及び種苗業者以外の者が販賣する場合は、この限りでない。
一 表示をした種苗業者の氏名又は名称及び営業所
二 種苗の種類(接木した苗木にあつては、だい木の種類を含む。)及び品種(第七條の規定による登録のあつた種苗については、その名称)
三 種苗の生産地
四 種苗たる種子及び果実については、採種の年月(外國産のものにあつては、有効期限)
五 種苗たる種子及び果実については、発芽率
六 農林大臣の指定する病害虫の有無
七 数量
前項第三号の事項の表示は、國内産のものにあつては当該生産地の属する市町村名を以て、外國産のものにあつては当該生産地の属する國名を以てこれをしなければならない。
第四條 農林大臣は、当該官吏に、種苗業者から檢査のために必要な数量の種苗を集取させることができる。但し、時價によつてその対價を支拂わなければならない。
前項の場合において種苗業者の要求があつたときは、当該官吏は、その身分を示す証票を示さなければならない。
第五條 農林大臣は、種苗の檢査の結果必要があると認めるときは、種苗業者に対し、その業務に関し必要な報告を命じ、又は帳簿その他の書類の提出を命ずることができる。
第六條 農林大臣は、第三條の規定に違反した種苗業者に対し、同條の規定による表示の変更を命じ、又はその違反行爲に係る種苗の販賣を禁止することができる。
第七條 優秀な新品種又は新系統の種苗を育成した者及びその相続人は、農林大臣に出願してその種苗の名称の登録を受けることができる。
数人が共同して優秀な新品種又は新系統の種苗を育成したときは、前項の規定による登録は、その育成をした者及びその相続人のうち、これらの者が協議によつて定めた一人の者に限り、これを受けることができる。
被傭者、法人の業務を執行する役員又は國若しくは公共團体の公務員がその勤務に関し優秀な新品種又は新系統の種苗を育成した場合において、その育成がその性質上その使用者、法人又は國若しくは公共團体の業務の範囲に属し、且つ、その育成をするに至つた行爲が被傭者、法人の業務を執行する役員又は國若しくは公共團体の公務員の任務に属するものであるときは、その使用者、法人若しくは國若しくは公共團体又はこれらの者の一般承継人は、その育成をした者又はその相続人の同意を得て前項の規定による登録を受けることができる。この場合には、その育成をした者は、同項の規定による登録を受けることができない。
同一の品種又は系統の種苗については、最先の出願者に限り、第一項の規定による登録を受けることができる。
第一項の規定による登録を受けることができる種苗の種類は、農林大臣がこれを定める。
第八條 前條の規定による登録を受ける種苗の名称は、同一の品種又は系統の種苗につき一名称とし、他の品種又は系統の種品に関し使用されている名称又は種苗若しくはこれに類似の商品に係る登録商標若しくは失効の日から一年を経過しない商標と同一又は類似のものであつてはならない。
第九條 農林大臣は、第七條の規定による登録の出願を受けたときは、種苗審査委員会の審査に付する。
前項の場合において種苗審査委員会が当該出願に係る種苗が優秀な新品種又は新系統のものであると決定したときは、農林大臣は、当該種苗の名称を種苗名称登録簿に登録し、出願者に種苗名称登録証を交付し、且つ、その旨を公示しなければならない。
第七條の規定による登録の有効期間は、前項の登録の日から三年以上十年以下において種苗審査委員会の定める期間とする。
第十條  第七條の規定による登録を受けた者及びその一般承継人以外の者は、当該登録に係る種苗の名称を使用して、業として当該種苗を販賣してはならない。但し、左の場合は、この限りでない。
一 種苗業者が当該登録を受けた者又はその一般承継人の許諾を得て当該登録に係る種苗を販賣する場合
二 当該登録に係る種苗と同一の品種又は系統のものを当該登録を受けた者よりも先に育成した者が当該種苗を販賣する場合
三 当該登録に係る種苗と同一の品種又は系統のものを育成する方法についての特許権を有する者又はその特許につき実施権を有する者が当該特許に係る方法により生産した種苗を販賣する場合
第七條の規定による登録を受けた者又はその一般承継人は、前項の規定に違反して当該登録に係る名称を使用している者に対し、その使用を止めるべきことを請求することができる。但し、損害賠償を請求することを妨げない。
第十一條 左の場合には、農林大臣は、当該登録に係る種苗の販賣の停止を命じ、又は種苗審査委員会の審査を経て当該登録を取り消すことができる。
一 第七條の規定による登録を受けた者が同條の規定による登録を受けることのできない者であつたとき。
二 第七條の規定による登録に係る種苗についての第九條第二項の決定に過誤があつたとき。
三 第七條の規定による登録に係る種苗についての第九條第一項の審査がこの法律に基いて発する命令に違反してされたとき。
四 第七條の規定による登録に係る種苗の素質が第九條第一項の審査があつた当時におけると異つたとき。
五 第七條の規定による登録を受けた者又はその一般継承人が当該登録に係る名称を不正に使用して種苗を販賣したとき。
六 第七條の規定による登録を受けた者又はその一般承継人が正当な理由がないのに三年以上当該登録に係る名称を使用して当該種苗を販賣しないとき。
第十二條 種苗審査委員会は、十五人乃至二十人の委員を以てこれを組織する。
委員は、農林大臣の申出により、学識経驗のある者の中から、内閣総理大臣がこれを命ずる。
この法律に規定するものの外、種苗審査委員会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
第十三條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第三條の規定に違反した者
二 第三條の規定により表示すべき事項について虚僞の表示をした種苗を販賣した者
三 第六條の規定による処分に違反して種苗を販賣した者
四 詐僞の行爲を以て第七條の規定による登録を受けた者
五 第十條第一項の規定に違反した者
六 第十一條の規定による命令に違反した者
第十四條 左の各号の一に該当する者は、これを一万円以下の罰金に処する。
一 第二條の規定による届出を怠り、又は虚僞の届出をした者
二 正当な理由がないのに第四條第一項の集取を拒み、妨げ、又は忌避した者
三 第五條の規定による報告若しくは書類の提出を怠り、又は虚僞の報告をし、若しくは虚僞の書類を提出した者
第十五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関して第十三條又は前條第一号若しくは第三号の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。
附 則
この法律施行の期日は、政令でこれを定める。
この法律施行の際現に種苗業者たる者が第二條第一項の規定によりする届出は、この法律施行の日から二週間以内にこれをしなければならない。
商標法の一部を次のように改正する。
第二條第一項に次の一号を加える。
十二 農産種苗法第七條ニ依リ登録セラレタル名称ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ
農林大臣 平野力三
商工大臣 水谷長三郎
内閣総理大臣 片山哲
農産種苗法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十月二日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百十五号
農産種苗法
第一条 この法律において、種苗とは、農作物の繁殖の用に供される種子、果実、茎、根、母本、苗、苗木、穂木又はだい木で農林大臣の指定するものをいう。
この法律において、種苗業者とは、種苗の販売を業とするものをいう。
第二条  種苗業者は、その営業所ごとに、左の事項を当該営業所の所在地の市町村長に届け出なければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 当該営業所
三 当該営業所において取り扱う種苗の種類
四 前号の種苗の取引に関する帳簿の保管場所
五 その他命令で定める事項
前項の事項中に変更を生じたときも、また同項と同様とする。
前二項の規定による届出は、あらたに営業を開始した場合にあつてはその開始後二週間以内に、あらたに営業所を設けた場合にあつてはその設置後二週間以内に、第一項の事項中に変更を生じた場合にあつてはその変更を生じた後二週間以内にこれをしなければならない。
第一項及び第二項の規定による届出があつたときは、市町村長は、農林大臣にこれを報告しなければならない。
第三条 種苗は、その包装に左の事項を表示したもの又は左の事項を表示する証票を添附したものでなければ、これを販売してはならない。但し、掲示その他容易に了知出来る方法を以てその種苗につき、第一号乃至第六号の事項を表示する場合及び種苗業者以外の者が販売する場合は、この限りでない。
一 表示をした種苗業者の氏名又は名称及び営業所
二 種苗の種類(接木した苗木にあつては、だい木の種類を含む。)及び品種(第七条の規定による登録のあつた種苗については、その名称)
三 種苗の生産地
四 種苗たる種子及び果実については、採種の年月(外国産のものにあつては、有効期限)
五 種苗たる種子及び果実については、発芽率
六 農林大臣の指定する病害虫の有無
七 数量
前項第三号の事項の表示は、国内産のものにあつては当該生産地の属する市町村名を以て、外国産のものにあつては当該生産地の属する国名を以てこれをしなければならない。
第四条 農林大臣は、当該官吏に、種苗業者から検査のために必要な数量の種苗を集取させることができる。但し、時価によつてその対価を支払わなければならない。
前項の場合において種苗業者の要求があつたときは、当該官吏は、その身分を示す証票を示さなければならない。
第五条 農林大臣は、種苗の検査の結果必要があると認めるときは、種苗業者に対し、その業務に関し必要な報告を命じ、又は帳簿その他の書類の提出を命ずることができる。
第六条 農林大臣は、第三条の規定に違反した種苗業者に対し、同条の規定による表示の変更を命じ、又はその違反行為に係る種苗の販売を禁止することができる。
第七条 優秀な新品種又は新系統の種苗を育成した者及びその相続人は、農林大臣に出願してその種苗の名称の登録を受けることができる。
数人が共同して優秀な新品種又は新系統の種苗を育成したときは、前項の規定による登録は、その育成をした者及びその相続人のうち、これらの者が協議によつて定めた一人の者に限り、これを受けることができる。
被傭者、法人の業務を執行する役員又は国若しくは公共団体の公務員がその勤務に関し優秀な新品種又は新系統の種苗を育成した場合において、その育成がその性質上その使用者、法人又は国若しくは公共団体の業務の範囲に属し、且つ、その育成をするに至つた行為が被傭者、法人の業務を執行する役員又は国若しくは公共団体の公務員の任務に属するものであるときは、その使用者、法人若しくは国若しくは公共団体又はこれらの者の一般承継人は、その育成をした者又はその相続人の同意を得て前項の規定による登録を受けることができる。この場合には、その育成をした者は、同項の規定による登録を受けることができない。
同一の品種又は系統の種苗については、最先の出願者に限り、第一項の規定による登録を受けることができる。
第一項の規定による登録を受けることができる種苗の種類は、農林大臣がこれを定める。
第八条 前条の規定による登録を受ける種苗の名称は、同一の品種又は系統の種苗につき一名称とし、他の品種又は系統の種品に関し使用されている名称又は種苗若しくはこれに類似の商品に係る登録商標若しくは失効の日から一年を経過しない商標と同一又は類似のものであつてはならない。
第九条 農林大臣は、第七条の規定による登録の出願を受けたときは、種苗審査委員会の審査に付する。
前項の場合において種苗審査委員会が当該出願に係る種苗が優秀な新品種又は新系統のものであると決定したときは、農林大臣は、当該種苗の名称を種苗名称登録簿に登録し、出願者に種苗名称登録証を交付し、且つ、その旨を公示しなければならない。
第七条の規定による登録の有効期間は、前項の登録の日から三年以上十年以下において種苗審査委員会の定める期間とする。
第十条  第七条の規定による登録を受けた者及びその一般承継人以外の者は、当該登録に係る種苗の名称を使用して、業として当該種苗を販売してはならない。但し、左の場合は、この限りでない。
一 種苗業者が当該登録を受けた者又はその一般承継人の許諾を得て当該登録に係る種苗を販売する場合
二 当該登録に係る種苗と同一の品種又は系統のものを当該登録を受けた者よりも先に育成した者が当該種苗を販売する場合
三 当該登録に係る種苗と同一の品種又は系統のものを育成する方法についての特許権を有する者又はその特許につき実施権を有する者が当該特許に係る方法により生産した種苗を販売する場合
第七条の規定による登録を受けた者又はその一般承継人は、前項の規定に違反して当該登録に係る名称を使用している者に対し、その使用を止めるべきことを請求することができる。但し、損害賠償を請求することを妨げない。
第十一条 左の場合には、農林大臣は、当該登録に係る種苗の販売の停止を命じ、又は種苗審査委員会の審査を経て当該登録を取り消すことができる。
一 第七条の規定による登録を受けた者が同条の規定による登録を受けることのできない者であつたとき。
二 第七条の規定による登録に係る種苗についての第九条第二項の決定に過誤があつたとき。
三 第七条の規定による登録に係る種苗についての第九条第一項の審査がこの法律に基いて発する命令に違反してされたとき。
四 第七条の規定による登録に係る種苗の素質が第九条第一項の審査があつた当時におけると異つたとき。
五 第七条の規定による登録を受けた者又はその一般継承人が当該登録に係る名称を不正に使用して種苗を販売したとき。
六 第七条の規定による登録を受けた者又はその一般承継人が正当な理由がないのに三年以上当該登録に係る名称を使用して当該種苗を販売しないとき。
第十二条 種苗審査委員会は、十五人乃至二十人の委員を以てこれを組織する。
委員は、農林大臣の申出により、学識経験のある者の中から、内閣総理大臣がこれを命ずる。
この法律に規定するものの外、種苗審査委員会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
第十三条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定に違反した者
二 第三条の規定により表示すべき事項について虚偽の表示をした種苗を販売した者
三 第六条の規定による処分に違反して種苗を販売した者
四 詐偽の行為を以て第七条の規定による登録を受けた者
五 第十条第一項の規定に違反した者
六 第十一条の規定による命令に違反した者
第十四条 左の各号の一に該当する者は、これを一万円以下の罰金に処する。
一 第二条の規定による届出を怠り、又は虚偽の届出をした者
二 正当な理由がないのに第四条第一項の集取を拒み、妨げ、又は忌避した者
三 第五条の規定による報告若しくは書類の提出を怠り、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の書類を提出した者
第十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して第十三条又は前条第一号若しくは第三号の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
この法律施行の期日は、政令でこれを定める。
この法律施行の際現に種苗業者たる者が第二条第一項の規定によりする届出は、この法律施行の日から二週間以内にこれをしなければならない。
商標法の一部を次のように改正する。
第二条第一項に次の一号を加える。
十二 農産種苗法第七条ニ依リ登録セラレタル名称ト同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ商品ニ使用スルモノ
農林大臣 平野力三
商工大臣 水谷長三郎
内閣総理大臣 片山哲