商標法
法令番号: 法律第二十五號
公布年月日: 明治42年4月5日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル商標法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年四月二日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
法律第二十五號
商標法
第一條 自己ノ生產、製造、加工、選擇、證明、取扱又ハ販賣ノ營業ニ係ル商品ナルコトヲ表彰スル爲商標ヲ專用セムトスル者ハ本法ニ依リ商標ノ登錄ヲ受クルコトヲ得
登錄ヲ受クルコトヲ得ヘキ商標ハ文字、圖形、記號又ハ其ノ結合ニシテ特別顯著ナルモノナルコトヲ要ス
商標ハ之ニ施スヘキ色ヲ限定シテ登錄ヲ受クルコトヲ得
第二條 左ニ揭クル商標ニ付テハ之ヲ登錄セス
一 菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ
二 國旗、軍旗、勳章、褒章、記章若ハ外國ノ國旗ト同一又ハ類似ノモノ
三 秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
四 同一商品ニ慣用スル標章ト同一又ハ類似ノモノ
五 世人ノ周知スル他人ノ標章ト同一又ハ類似ニシテ同一商品ニ使用スルモノ
六 白地ニ赤十字ノ記章又ハ赤十字若ハ「ジェネヴァ」十字ノ稱號若ハ文字ト同一又ハ類似ノモノ
七 政府、道、府縣若ハ政府ノ認可ヲ得タルモノノ開設スル博覽會、共進會又ハ外國ニ於ケル官設ノ博覽會若ハ官許ノ萬國博覽會ノ賞牌、賞狀若ハ褒狀ト同一又ハ類似ノ圖形ヲ有スルモノ但シ其ノ賞牌、賞狀又ハ褒狀ヲ受領シタル者カ其ノ商標ノ一部トシテ之ヲ使用セムトスルトキハ此ノ限ニ在ラス
八 他人ノ肖像、氏名、商號又ハ法人若ハ組合ノ名稱ヲ有スルモノ但シ其ノ承諾ヲ得タルモノハ此ノ限ニ在ラス
九 登錄失效後一年ヲ經過セサル他人ノ商標ト同一又ハ類似ノモノ但シ其ノ登錄失效前一年以上使用セサリシ商標ト同一又ハ類似ノモノハ此ノ限ニ在ラス
第三條 同一商品ニ使用スヘキ同一又ハ類似ノ商標ニ付各別ニ登錄ヲ受クルノ權利ヲ有スル者二人以上アルトキハ最先ニ出願ヲ爲シタルモノニ限リ登錄ス其ノ同日ノ出願ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ之ヲ登錄セス
明治三十二年七月一日前ヨリ同一商品ニ付同一若ハ類似ノ商標ヲ善意ニ使用シタル者其ノ商標ニ付登錄ヲ出願シタル場合ニ於テハ前條第五號及前項ノ規定ニ拘ラス其ノ商標ヲ登錄スルコトヲ得
同一商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ互ニ相類似スルモノハ聯合商標トシテ出願シタル場合ニ限リ之ヲ登錄ス
第四條 商標ノ登錄出願ヨリ生シタル權利ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移轉スルコトヲ得
前項ノ權利ノ承繼ハ出願人ノ名義變更ヲ屆出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ屆出ニ係ルトキハ關係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第五條 商標權ハ登錄ニ依リ發生ス
商標權者ハ登錄出願ノ際指定シタル商品ニ付其ノ商標ヲ專用スルノ權利ヲ有ス
第六條 商標權ノ效力ハ普通ニ使用セラルル方法ヲ以テ自己ノ氏名、商號、法人若ハ組合ノ名稱ヲ表示シ又ハ其ノ商品ノ普通名稱、產地、品位、品質、效能、用途、製法、時期、數量、形狀若ハ價格ヲ表示スルモノニ及ハス但シ商標登錄後惡意ヲ以テ同一ノ氏名、商號、法人若ハ組合ノ名稱ヲ使用シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七條 商標權ノ存續期間ハ二十年トス
前項ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタルモノハ其ノ本國ニ於ケル商標權ト共ニ消滅ス但シ其ノ存續期間ハ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第八條 商標權ハ其ノ營業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移轉スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ商標權ハ其ノ商標ヲ使用スル商品ニ依リ分割シテ之ヲ移轉スルコトヲ得
聯合商標ノ商標權ハ分離シテ移轉スルコトヲ得ス
第九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ特許局長ハ職權ヲ以テ又ハ利害關係人ノ請求ニ依リ商標ノ登錄ヲ取消スコトヲ得
一 商標權者其ノ登錄商標ニ世人ヲ欺瞞スヘキ附記又ハ變更ヲ爲シテ之ヲ使用シタルトキ
二 商標權者正當ノ事故ナクシテ帝國內ニ於テ登錄後其ノ商標ヲ使用セスシテ一年ヲ經過シ又ハ其ノ使用ヲ中止シテ三年ヲ經過シタルトキ但シ聯合商標ニ付テハ其ノ一ヲ使用シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
三 商標權ノ移轉アリタル場合ニ於テ其ノ相續ニ依ルモノヲ除クノ外一年以內ニ商標權移轉ノ登錄ヲ請求セサルトキ
外國ノ登錄商標トシテ登錄ヲ受ケタルモノニ付テハ前項第二號ノ規定ヲ適用セス
第一項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十條 商標權者其ノ營業ヲ廢止シタルトキハ商標權ハ消滅スルモノトス
第十一條 商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄カ第一條乃至第三條、第四條第二項又ハ第二十二條ノ規定ニ反シタルトキハ審判ニ依リ之ヲ無效ト爲スヘシ
第十二條 登錄スヘシトノ査定又ハ審決アリタルトキハ之ヲ商標原簿ニ登錄シ商標登錄證ヲ下付ス
第十三條 特許局ハ商標公報ヲ發行シ登錄商標及之ニ關スル必要ナル事項ヲ記載スヘシ
第十四條 商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ヲ受クル者ハ其ノ登錄ヲ受クル際每件商標料金二十圓ヲ、聯合商標ニ在リテハ每件金十圓ヲ納付スヘシ
第十五條 商標ノ登錄ヲ出願スル者ハ各商標ニ付命令ノ定ムル類別內ニ於テ其ノ商標ヲ使用スヘキ商品ヲ指定スヘシ
第十六條 商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ査定セシム
第十七條 登錄スヘカラストノ査定ニ不服アル者ハ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ不服理由書ヲ差出シ更ニ審査ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ前審査ニ干與セサル審査官ヲシテ更ニ之ヲ査定セシム
第十八條 審判ハ左ニ揭クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一 第十一條ノ規定ニ依ル登錄ノ無效
二 商標權ノ範圍ノ確認
審判ノ請求ハ審査官又ハ利害關係人ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但シ審査官ハ前項第二號ノ審判及第二條第八號若ハ第九號、第三條又ハ第四條第二項ノ規定ニ反ストノ理由ニ依ル前項第一號ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
登錄商標カ第二條第八號若ハ第九號、第三條又ハ第四條第二項ノ規定ニ反シタル場合ニ於テ商標公報ニ揭載シタル日ヨリ三年ヲ經過シタルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第十九條 審判ノ審決又ハ再審査ノ査定ニ不服アル者ハ審決又ハ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ抗吿審判ヲ請求スルコトヲ得
第二十條 營利ヲ目的トセサル業務ニ係ル商品ニ使用スル標章ヲ專用セムトスルトキハ本法ニ依リ登錄ヲ受クルコトヲ得
前項ノ標章ニ付テハ商標ニ關スル規定ヲ準用ス
第二十一條 特許法第八條、第十二條乃至第十五條、第十六條第一項、第十七條乃至第二十五條、第三十三條、第四十九條第二項、第五十條、第五十三條、第六十條、第六十六條乃至第六十八條、第七十條乃至第七十九條、第八十二條、第八十三條第一項第二項、第八十四條、第八十五條及第八十七條乃至第九十一條ノ規定ハ商標ニ關シ之ヲ準用ス
第二十二條 外國人ニシテ帝國內ニ住所又ハ營業所ヲ有セサル者ハ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ノ外商標權又ハ之ニ關スル權利ヲ享有スルコトヲ得ス
商標ニ關シ條約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定ニ從フ
第二十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 他人ノ登錄商標若ハ之ヲ付シタル容器、包裝等ヲ同一商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
二 他人ノ登錄商標若ハ之ヲ付シタル容器、包裝等ヲ同一商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ交付、販賣シ又ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
三 同一商品ニ使用シ又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ他人ノ登錄商標ヲ僞造又ハ模造シタル者
四 同一商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ僞造若ハ模造ノ商標ヲ交付、販賣シ又ハ之ヲ同一商品ニ使用シタル者
五 僞造若ハ模造ノ商標ヲ使用シタル同一商品ヲ交付、販賣シ又ハ交付若ハ販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
六 他人ノ登錄商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ使用シタル商品ヲ交付若ハ販賣ノ目的ヲ以テ輸入シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付、販賣シ若ハ交付、販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
七 他人ノ登錄商標ヲ僞造又ハ模造スル爲其ノ用具ヲ製作、交付、販賣若ハ所持スル者
八 同一商品ニ關シ他人ノ登錄商標ト同一又ハ類似ノモノヲ營業ニ用井ル廣吿、看板、引札、物價表又ハ其ノ他ノ取引書類ニ使用シタル者
前項ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 詐僞ノ所爲ヲ以テ商標ノ登錄ヲ受ケタル者
二 登錄ヲ受ケサル商標ニ登錄標記ヲ付シ若ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シ之ヲ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付若ハ販賣シ又ハ交付若ハ販賣ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
三 登錄ヲ受ケスシテ登錄標記又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ爲シタル商標ヲ廣吿、看板、引札等ニ使用シタル者
第二十五條 第二十三條ノ犯罪ニ因リ沒收スルコトヲ得ヘキ物ニ付判決言渡前被害者ヨリ請求アリタルトキハ之ヲ相當ノ代價ニ見積リ被害者ニ交付スル言渡ヲ爲スヘシ
損害ノ額カ交付ヲ受ケタル物ノ見積代價ニ超過スルトキハ被害者ハ其ノ差額ニ限リ賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 法律ニ依リ宣誓シタル證人若ハ鑑定人又ハ通事ニシテ特許局又ハ其ノ囑託ヲ受ケタル裁判所若ハ官廳ニ對シ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第二十七條 證人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正當ノ理由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ其ノ義務ヲ盡ササルトキハ四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十八條 特許辨理士ニ非スシテ商標ニ關スル代理業ヲ營ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
舊法ニ依リ登錄ヲ受ケタル商標ニ付テハ其ノ存續期間內ハ本法第二條第六號乃至第八號ノ規定ヲ適用セス第九條ニ定ムル期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
特許法第九十九條、第百五條及第百六條ノ規定ハ商標ニ關シ之ヲ準用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル商標法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年四月二日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 大浦兼武
司法大臣 子爵 岡部長職
法律第二十五号
商標法
第一条 自己ノ生産、製造、加工、選択、証明、取扱又ハ販売ノ営業ニ係ル商品ナルコトヲ表彰スル為商標ヲ専用セムトスル者ハ本法ニ依リ商標ノ登録ヲ受クルコトヲ得
登録ヲ受クルコトヲ得ヘキ商標ハ文字、図形、記号又ハ其ノ結合ニシテ特別顕著ナルモノナルコトヲ要ス
商標ハ之ニ施スヘキ色ヲ限定シテ登録ヲ受クルコトヲ得
第二条 左ニ掲クル商標ニ付テハ之ヲ登録セス
一 菊花御紋章ト同一又ハ類似ノ図形ヲ有スルモノ
二 国旗、軍旗、勲章、褒章、記章若ハ外国ノ国旗ト同一又ハ類似ノモノ
三 秩序若ハ風俗ヲ紊リ又ハ世人ヲ欺瞞スルノ虞アルモノ
四 同一商品ニ慣用スル標章ト同一又ハ類似ノモノ
五 世人ノ周知スル他人ノ標章ト同一又ハ類似ニシテ同一商品ニ使用スルモノ
六 白地ニ赤十字ノ記章又ハ赤十字若ハ「ジェネヴァ」十字ノ称号若ハ文字ト同一又ハ類似ノモノ
七 政府、道、府県若ハ政府ノ認可ヲ得タルモノノ開設スル博覧会、共進会又ハ外国ニ於ケル官設ノ博覧会若ハ官許ノ万国博覧会ノ賞牌、賞状若ハ褒状ト同一又ハ類似ノ図形ヲ有スルモノ但シ其ノ賞牌、賞状又ハ褒状ヲ受領シタル者カ其ノ商標ノ一部トシテ之ヲ使用セムトスルトキハ此ノ限ニ在ラス
八 他人ノ肖像、氏名、商号又ハ法人若ハ組合ノ名称ヲ有スルモノ但シ其ノ承諾ヲ得タルモノハ此ノ限ニ在ラス
九 登録失効後一年ヲ経過セサル他人ノ商標ト同一又ハ類似ノモノ但シ其ノ登録失効前一年以上使用セサリシ商標ト同一又ハ類似ノモノハ此ノ限ニ在ラス
第三条 同一商品ニ使用スヘキ同一又ハ類似ノ商標ニ付各別ニ登録ヲ受クルノ権利ヲ有スル者二人以上アルトキハ最先ニ出願ヲ為シタルモノニ限リ登録ス其ノ同日ノ出願ニ係ルトキハ関係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ之ヲ登録セス
明治三十二年七月一日前ヨリ同一商品ニ付同一若ハ類似ノ商標ヲ善意ニ使用シタル者其ノ商標ニ付登録ヲ出願シタル場合ニ於テハ前条第五号及前項ノ規定ニ拘ラス其ノ商標ヲ登録スルコトヲ得
同一商品ニ使用スヘキ自己ノ商標ニシテ互ニ相類似スルモノハ連合商標トシテ出願シタル場合ニ限リ之ヲ登録ス
第四条 商標ノ登録出願ヨリ生シタル権利ハ其ノ営業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移転スルコトヲ得
前項ノ権利ノ承継ハ出願人ノ名義変更ヲ届出ツルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス但シ同日ノ届出ニ係ルトキハ関係者ノ協議ニ依リ協議調ハサルトキハ共ニ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第五条 商標権ハ登録ニ依リ発生ス
商標権者ハ登録出願ノ際指定シタル商品ニ付其ノ商標ヲ専用スルノ権利ヲ有ス
第六条 商標権ノ効力ハ普通ニ使用セラルル方法ヲ以テ自己ノ氏名、商号、法人若ハ組合ノ名称ヲ表示シ又ハ其ノ商品ノ普通名称、産地、品位、品質、効能、用途、製法、時期、数量、形状若ハ価格ヲ表示スルモノニ及ハス但シ商標登録後悪意ヲ以テ同一ノ氏名、商号、法人若ハ組合ノ名称ヲ使用シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七条 商標権ノ存続期間ハ二十年トス
前項ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得
外国ノ登録商標トシテ登録ヲ受ケタルモノハ其ノ本国ニ於ケル商標権ト共ニ消滅ス但シ其ノ存続期間ハ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第八条 商標権ハ其ノ営業ト共ニスル場合ニ限リ之ヲ移転スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ商標権ハ其ノ商標ヲ使用スル商品ニ依リ分割シテ之ヲ移転スルコトヲ得
連合商標ノ商標権ハ分離シテ移転スルコトヲ得ス
第九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ特許局長ハ職権ヲ以テ又ハ利害関係人ノ請求ニ依リ商標ノ登録ヲ取消スコトヲ得
一 商標権者其ノ登録商標ニ世人ヲ欺瞞スヘキ附記又ハ変更ヲ為シテ之ヲ使用シタルトキ
二 商標権者正当ノ事故ナクシテ帝国内ニ於テ登録後其ノ商標ヲ使用セスシテ一年ヲ経過シ又ハ其ノ使用ヲ中止シテ三年ヲ経過シタルトキ但シ連合商標ニ付テハ其ノ一ヲ使用シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
三 商標権ノ移転アリタル場合ニ於テ其ノ相続ニ依ルモノヲ除クノ外一年以内ニ商標権移転ノ登録ヲ請求セサルトキ
外国ノ登録商標トシテ登録ヲ受ケタルモノニ付テハ前項第二号ノ規定ヲ適用セス
第一項ノ処分ヲ受ケタル者其ノ処分ニ不服アルトキハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十条 商標権者其ノ営業ヲ廃止シタルトキハ商標権ハ消滅スルモノトス
第十一条 商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録カ第一条乃至第三条、第四条第二項又ハ第二十二条ノ規定ニ反シタルトキハ審判ニ依リ之ヲ無効ト為スヘシ
第十二条 登録スヘシトノ査定又ハ審決アリタルトキハ之ヲ商標原簿ニ登録シ商標登録証ヲ下付ス
第十三条 特許局ハ商標公報ヲ発行シ登録商標及之ニ関スル必要ナル事項ヲ記載スヘシ
第十四条 商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録ヲ受クル者ハ其ノ登録ヲ受クル際毎件商標料金二十円ヲ、連合商標ニ在リテハ毎件金十円ヲ納付スヘシ
第十五条 商標ノ登録ヲ出願スル者ハ各商標ニ付命令ノ定ムル類別内ニ於テ其ノ商標ヲ使用スヘキ商品ヲ指定スヘシ
第十六条 商標又ハ商標権存続期間更新ノ登録ノ出願アリタルトキハ審査官ヲシテ之ヲ査定セシム
第十七条 登録スヘカラストノ査定ニ不服アル者ハ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以内ニ不服理由書ヲ差出シ更ニ審査ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ前審査ニ干与セサル審査官ヲシテ更ニ之ヲ査定セシム
第十八条 審判ハ左ニ掲クル事項ニ付之ヲ請求スルコトヲ得
一 第十一条ノ規定ニ依ル登録ノ無効
二 商標権ノ範囲ノ確認
審判ノ請求ハ審査官又ハ利害関係人ニ限リ之ヲ為スコトヲ得但シ審査官ハ前項第二号ノ審判及第二条第八号若ハ第九号、第三条又ハ第四条第二項ノ規定ニ反ストノ理由ニ依ル前項第一号ノ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
登録商標カ第二条第八号若ハ第九号、第三条又ハ第四条第二項ノ規定ニ反シタル場合ニ於テ商標公報ニ掲載シタル日ヨリ三年ヲ経過シタルトキハ審判ヲ請求スルコトヲ得ス
第十九条 審判ノ審決又ハ再審査ノ査定ニ不服アル者ハ審決又ハ査定ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ六十日以内ニ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得
第二十条 営利ヲ目的トセサル業務ニ係ル商品ニ使用スル標章ヲ専用セムトスルトキハ本法ニ依リ登録ヲ受クルコトヲ得
前項ノ標章ニ付テハ商標ニ関スル規定ヲ準用ス
第二十一条 特許法第八条、第十二条乃至第十五条、第十六条第一項、第十七条乃至第二十五条、第三十三条、第四十九条第二項、第五十条、第五十三条、第六十条、第六十六条乃至第六十八条、第七十条乃至第七十九条、第八十二条、第八十三条第一項第二項、第八十四条、第八十五条及第八十七条乃至第九十一条ノ規定ハ商標ニ関シ之ヲ準用ス
第二十二条 外国人ニシテ帝国内ニ住所又ハ営業所ヲ有セサル者ハ条約又ハ之ニ準スヘキモノニ規定アル場合ノ外商標権又ハ之ニ関スル権利ヲ享有スルコトヲ得ス
商標ニ関シ条約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定アルトキハ其ノ規定ニ従フ
第二十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 他人ノ登録商標若ハ之ヲ付シタル容器、包装等ヲ同一商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付、販売シ若ハ交付、販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
二 他人ノ登録商標若ハ之ヲ付シタル容器、包装等ヲ同一商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ交付、販売シ又ハ交付、販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
三 同一商品ニ使用シ又ハ使用セシムルノ目的ヲ以テ他人ノ登録商標ヲ偽造又ハ模造シタル者
四 同一商品ニ使用セシムルノ目的ヲ以テ偽造若ハ模造ノ商標ヲ交付、販売シ又ハ之ヲ同一商品ニ使用シタル者
五 偽造若ハ模造ノ商標ヲ使用シタル同一商品ヲ交付、販売シ又ハ交付若ハ販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
六 他人ノ登録商標ト同一若ハ類似ノ商標ヲ使用シタル商品ヲ交付若ハ販売ノ目的ヲ以テ輸入シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付、販売シ若ハ交付、販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
七 他人ノ登録商標ヲ偽造又ハ模造スル為其ノ用具ヲ製作、交付、販売若ハ所持スル者
八 同一商品ニ関シ他人ノ登録商標ト同一又ハ類似ノモノヲ営業ニ用井ル広告、看板、引札、物価表又ハ其ノ他ノ取引書類ニ使用シタル者
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス
第二十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
一 詐偽ノ所為ヲ以テ商標ノ登録ヲ受ケタル者
二 登録ヲ受ケサル商標ニ登録標記ヲ付シ若ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ為シ之ヲ商品ニ使用シタル者又ハ其ノ商品ヲ交付若ハ販売シ又ハ交付若ハ販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持スル者
三 登録ヲ受ケスシテ登録標記又ハ之ニ紛ハシキ表示ヲ為シタル商標ヲ広告、看板、引札等ニ使用シタル者
第二十五条 第二十三条ノ犯罪ニ因リ没収スルコトヲ得ヘキ物ニ付判決言渡前被害者ヨリ請求アリタルトキハ之ヲ相当ノ代価ニ見積リ被害者ニ交付スル言渡ヲ為スヘシ
損害ノ額カ交付ヲ受ケタル物ノ見積代価ニ超過スルトキハ被害者ハ其ノ差額ニ限リ賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得
第二十六条 法律ニ依リ宣誓シタル証人若ハ鑑定人又ハ通事ニシテ特許局又ハ其ノ嘱託ヲ受ケタル裁判所若ハ官庁ニ対シ虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者事件ノ査定又ハ審決ニ至ラサル前自白シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第二十七条 証人、鑑定人又ハ通事トシテ呼出サレタル者正当ノ理由ナクシテ呼出ニ応セス又ハ其ノ義務ヲ尽ササルトキハ四十円以下ノ罰金ニ処ス
第二十八条 特許弁理士ニ非スシテ商標ニ関スル代理業ヲ営ミタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
旧法ニ依リ登録ヲ受ケタル商標ニ付テハ其ノ存続期間内ハ本法第二条第六号乃至第八号ノ規定ヲ適用セス第九条ニ定ムル期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
特許法第九十九条、第百五条及第百六条ノ規定ハ商標ニ関シ之ヲ準用ス