第一條 本法ハ軌道條例ニ規定スルモノヲ除クノ外道府縣其ノ他ノ公共團體又ハ私人カ公衆ノ用ニ供スル爲敷設スル地方鐵道ニ之ヲ適用ス
地方鐵道業者カ運送營業ノ爲支線ヲ敷設スルトキハ公衆ノ用ニ供セサル場合ト雖本法ヲ適用ス
道府縣其ノ他ノ公共團體又ハ私人カ專用ニ供スル爲敷設スル鐵道ニシテ政府ノ鐵道又ハ地方鐵道ニ接續スルモノニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 地方鐵道ハ人力又ハ馬力其ノ他之ニ類スルモノヲ以テ動力ト爲スコトヲ得ス
第三條 地方鐵道ノ軌間ハ三呎六吋トス特別ノ場合ニ在リテハ四呎八吋半又ハ二呎六吋ト爲スコトヲ得
第四條 地方鐵道ハ之ヲ道路ニ敷設スルコトヲ得ス但シ已ムコトヲ得サル場合ニ於テ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第五條 地方鐵道會社ノ株金ノ第一囘拂込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得但シ兼業トシテ地方鐵道ヲ敷設スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第六條 地方鐵道會社ハ株金全額拂込前ト雖監督官廳ノ認可ヲ受ケ線路ノ延長又ハ改良ノ費用ニ充ツル爲其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得但シ軌道會社ニ非サル會社カ兼業トシテ地方鐵道ヲ敷設スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七條 地方鐵道會社ハ監督官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ社債ヲ募集スルコトヲ得ス
社債ハ總株金四分ノ一以上ノ拂込アリタル後ニ非サレハ之ヲ募集スルコトヲ得ス
社債ノ額ハ鐵道抵當法ニ依ル債務ノ額ト併セテ總株金拂込額ヲ超ユルコトヲ得ス但シ舊債償還ノ爲ニスル場合ニ於テハ舊債務ノ額ハ之ヲ算入セス
第八條 鐵道及其ノ附屬物件ハ鐵道抵當法ニ依ルニ非サレハ之ヲ擔保ト爲スコトヲ得ス
鐵道ノ附屬物件ハ命令ノ定ムル所ニ依リ監督官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ貸渡又ハ讓渡スルコトヲ得ス
第九條 地方鐵道會社ハ監督官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ他ノ事業ヲ營ムコトヲ得ス
第十條 地方鐵道會社ハ監督官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ合併ヲ爲スコトヲ得ス
合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立シタル會社ハ合併ニ因リテ消滅シタル會社ノ免許ニ屬スル權利義務ヲ承繼ス
第十一條 免許、許可又ハ認可ニハ條件ヲ附スルコトヲ得
第十二條 地方鐵道業ヲ營マムトスル者ハ左ノ書類及圖面ヲ提出シ主務大臣ノ免許ヲ受クヘシ
第十三條 免許ヲ受ケタル者ハ左ノ書類及圖面ヲ監督官廳ニ提出シ工事施行ノ認可ヲ受クヘシ
四 免許ヲ受ケタル者カ會社ノ發起人ナルトキハ定款及會社ノ設立登記謄本
第十四條 地方鐵道業者ハ天災事變其ノ他已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ限リ第十二條第二項又ハ前條第二項ノ規定ニ依リテ附セラレタル期限ノ伸長ヲ申請スルコトヲ得
第十六條 道路、橋梁、河川、運河及溝渠等ニ關スル工事ノ施設ハ所管行政廳ノ許可ヲ受クヘシ
第十七條 政府又ハ政府ノ許可ヲ受ケタル者ニ於テ地方鐵道ニ接續シ若ハ之ヲ橫斷シテ鐵道若ハ軌道ヲ敷設シ又ハ地方鐵道ニ接近シ若ハ之ヲ橫斷シテ道路、橋梁、河川、運河及溝渠等ヲ造設スルトキハ地方鐵道業者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ公益上必要アリト認ムルトキハ主務大臣ハ地方鐵道業者ニ設備ノ共用又ハ變更ヲ命スルコトヲ得
設備ノ共用又ハ變更ニ要スル費用ノ負擔ニ付協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第十八條 地方鐵道業者ハ監督官廳ノ許可ヲ受ケタル場合ニ限リ免許ニ屬スル權利義務ヲ他人ニ讓渡スルコトヲ得
第十九條 左ノ場合ニ於テハ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
一 工事施行ノ認可ヲ申請スヘキ期限迄ニ認可ヲ申請セサルトキ
三 工事施行ノ認可ニ附シタル工事著手ノ期限迄ニ工事ニ著手セサルトキ
免許ヲ受ケタル者死亡シタルトキハ相續人ハ免許ニ屬スル權利義務ヲ承繼スルコトヲ得
第二十條 地方鐵道業者ハ監督官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ運輸ヲ開始スルコトヲ得ス
第二十一條 地方鐵道業者ハ旅客及荷物ノ運賃其ノ他運輸ニ關スル料金ヲ定メ監督官廳ノ認可ヲ受クヘシ
監督官廳ハ公益上必要アリト認ムルトキハ運賃及料金ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第二十二條 地方鐵道業者ハ旅客列車及混合列車ノ發著時刻及度數ヲ定メ監督官廳ノ認可ヲ受クヘシ
監督官廳ハ公益上必要アリト認ムルトキハ列車ノ發著時刻及度數ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第二十三條 監督官廳ハ監查員ヲ派遣シテ鐵道ノ工事、運輸保線ノ狀態、會計及財產ノ實況ヲ監查セシムルコトヲ得
鐵道ノ工事、運輸保線ノ狀態及會計ノ整理ニ付法令若ハ法令ニ基キテ爲ス命令ニ違ヒ又ハ不適當ナリト認ムルモノアルトキハ監督官廳ハ其ノ改築又ハ改善ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ其ノ工事、運輸又ハ設備使用ノ停止ヲ命スルコトヲ得
監查員ハ地方鐵道業者又ハ其ノ役員若ハ使用人ニ說明ヲ求メ金櫃、帳簿、書類及圖面ヲ檢閱スルコトヲ得
第二十四條 地方鐵道業者ハ地方鐵道ノ監督事務ニ關シ往復スル吏員ニシテ監督官廳ノ發行スル證票ヲ携帶スル者ヲ無賃ニテ乘車セシムヘシ
第二十五條 主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ地方鐵道業者ニ他ノ鐵道又ハ軌道トノ連絡運輸又ハ直通運輸ヲ命スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ設備ノ共用又ハ變更、運輸ノ手續、運賃ノ割合及費用ノ負擔ニ付協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十六條 地方鐵道業者ハ監督官廳ノ許可ヲ受クルニ非サレハ鐵道ノ貸借又ハ營業若ハ運轉ノ管理ノ委託若ハ受託ヲ爲スコトヲ得ス
營業又ハ運轉ノ管理ノ委託ヲ受ケタル地方鐵道業者ハ其ノ管理ニ付監督官廳ニ對シ委託ヲ爲シタル者ト共ニ其ノ責ニ任ス
第二十七條 地方鐵道業者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ運輸營業ノ全部又ハ一部ヲ休止シ又ハ廢止スルコトヲ得ス
地方鐵道會社ノ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第二十八條 主務大臣ハ地方鐵道ノ會計及運賃ノ割引ニ關シ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第二十九條 地方鐵道業者ハ法令ノ定ムル所ニ依リ平時及戰時ニ於テ鐵道ヲ軍用ニ供スル義務ヲ負フ
第三十條 政府カ公益上ノ必要ニ因リ地方鐵道ノ全部又ハ一部及其ノ附屬物件ヲ買收セムトスルトキハ地方鐵道業者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
地方鐵道ノ一部買收セラレタル爲殘存線路ノミニ付營業ヲ繼續スルコト能ハサルニ至リタルトキハ地方鐵道業者ハ該線路及其ノ附屬物件ノ買收ヲ申請スルコトヲ得
第三十一條 買收價額ハ最近ノ營業年度末ヨリ遡リ旣往三年間ニ於ケル建設費ニ對スル益金ノ平均割合ヲ買收ノ日ニ於ケル建設費ニ乘シタル額ヲ二十倍シタル金額トス
前項ノ益金トハ營業收入ヨリ營業費及賞與金ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合トハ三年間ニ於ケル每營業年度末ノ開業線建設費ノ合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノニ一年間ニ於ケル營業年度ノ數ヲ乘シタルモノヲ謂フ
第三十二條 買收ノ日ニ於テ運輸開始後前條第一項ニ規定スル三年ヲ經過シタル線路ヲ有セサル場合又ハ前條第一項ノ金額カ建設費ニ達セサル場合ニ於テハ其ノ建設費以內ニ於テ協定シタル金額ヲ以テ買收價格トス
第三十三條 地方鐵道業者カ鐵道若ハ其ノ附屬物件ノ補修ヲ爲サス又ハ法令若ハ法令ニ基キテ爲ス命令ニ依リ改築若ハ改造ヲ爲スヘキ場合ニ於テ之ヲ爲ササルトキハ補修ニ要スル金額ハ之ヲ營業費ニ加算シ改築又ハ改造ニ要スル金額ハ之ヲ買收價額ヨリ控除ス
第三十四條 買收ヲ受クヘキ地方鐵道業者カ兼業ヲ營ム場合ニ於テハ其ノ兼業ニ屬スル資產ヲ併セテ買收スルコトヲ得
第三十五條 買收代價ハ券面金額ニ依リ五分利付國債證券ヲ以テ之ヲ交付ス此ノ場合ニ於テ五十圓未滿ノ端數ハ之ヲ券面金額五十圓トス
第三十六條 政府ニ於テ地方鐵道ニ接近シ又ハ竝行シテ鐵道ヲ敷設シタル爲地方鐵道業者カ其ノ接近シ又ハ竝行スル區間ノ營業ヲ繼續スルコト能ハサルニ至リタルトキハ政府ハ其ノ營業廢止ニ因リテ生スル損失ヲ補償スルコトヲ得殘存線路ノミニ付營業ヲ繼續スルコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ
補償金額ハ第三十一條乃至第三十三條ノ規定ニ依リテ算出シタル價額ヨリ殘存物件ノ價額ヲ控除シタル金額以內ニ於テ政府之ヲ定ム
第三十七條 地方鐵道業者カ法令若ハ法令ニ基キテ爲ス命令又ハ免許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
二 政府ニ於テ又ハ他ノ地方鐵道業者ヲシテ地方鐵道業者ノ計算ニ於テ必要ナル施設若ハ營業ノ管理ヲ爲シ又ハ爲サシムルコト
前項ノ規定ニ依リテ解任セラレタル取締役其ノ他ノ役員ハ再任セラルルコトヲ得ス
第三十八條 免許ヲ受ケスシテ地方鐵道ヲ敷設シ又ハ認可ヲ受ケスシテ運輸ヲ開始シタル者ハ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條 左ノ場合ニ於テハ地方鐵道業者又ハ其ノ役員若ハ使用人ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一 前條ノ場合ヲ除クノ外本法ニ依リ許可又ハ認可ヲ受クヘキ事項ヲ許可又ハ認可ヲ受ケスシテ爲シタルトキ
二 法令ニ基キテ爲シタル命令又ハ免許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ基キテ爲シタル命令ニ違反シタルトキ
四 法令又ハ法令ニ基キテ爲ス命令ニ依リテ爲スヘキ屆出、報告其ノ他ノ書類、圖面ノ提出若ハ調製ヲ怠リ又ハ虛僞ノ屆出、報告若ハ記載ヲ爲シタルトキ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第四十條 前二條ノ規定ハ公共團體カ地方鐵道業ヲ營ム場合ニ之ヲ適用セス