朕陸軍補充令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年十月二十五日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 男爵 石本新六
勅令第二百七十號
陸軍補充令
第一章 總則
第一條 陸軍將校、同相當官、准士官、下士、憲兵上等兵、看護卒及樂手補ノ補充ニ關シテハ別ニ定ムルモノノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令中特ニ明文アル場合ヲ除クノ外兵科部及役種ハ補充ニ因リ之ヲ變更スルコトナシ
第二章 現役士官ノ補充
第一款 各兵科士官
第三條 步、騎、砲、工、輜重兵科現役士官ハ士官候補生ニシテ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
憲兵科現役士官ハ他兵科ノ士官ヨリ轉科セシム
第四條 士官候補生ハ陸軍中央幼年學校本科卒業者ノ外左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニシテ召募試驗ニ及第シタル者ヨリ之ヲ採用ス但シ第一號ノ學校ヲ卒業シタル者ニシテ學業成績優秀ナル者ニハ學科試驗ヲ省略スルコトヲ得
一 中學校又ハ之ト同等以上ノ學校ニシテ陸軍大臣ノ指定シタルモノヲ卒業シタル者但シ准士官下士兵卒及陸軍諸生徒ヲ除ク
二 一年志願兵中品行方正志操確實ナル者ニシテ聯隊長ノ保證ヲ得タル者
三 陸軍現役下士中中學校卒業以上ノ學力ヲ有シ品行方正志操確實ナル者ニシテ聯隊長又ハ所屬長官ノ保證ヲ得タル者
第五條 士官候補生ニ採用スヘキ人員ハ陸軍大臣每年之ヲ定ム
第六條 士官候補生召募ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七條 士官候補生ニ採用スヘキ者ハ敎育總監之ヲ定メ順序ヲ附シタル採用名簿ヲ調製シ各隊配賦名簿ヲ添ヘテ之ヲ陸軍大臣ニ移送ス
第八條 士官候補生ハ陸軍大臣前條ノ名簿ニ基キ之ヲ命シ各隊ニ配賦シ槪ネ一年間該隊ニ於テ下士兵卒ノ勤務雜役ヲ除ク及之ニ必要ナル軍事學ヲ習得セシム但シ陸軍中央幼年學校出身者ノ在隊期間ハ槪ネ六月トス
下士又ハ一年志願兵ヨリ士官候補生ニ採用シタル者ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辭令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第九條 士官候補生ニシテ陸軍中央幼年學校出身ノ者ハ入隊ノ後直ニ之ニ上等兵ノ階級ヲ與ヘ槪ネ二月ノ後伍長ノ階級ニ、槪ネ三月ノ後軍曹ノ階級ニ進メ其ノ他ノ者ハ入隊ノ後直ニ之ニ一等卒ノ階級ヲ與ヘ槪ネ六月ノ後上等兵ノ階級ニ、槪ネ八月ノ後伍長ノ階級ニ、槪ネ九月ノ後軍曹ノ階級ニ進ム
第十條 士官候補生第八條ノ勤務ヲ習得シタルトキハ敎育總監ハ之ヲ陸軍士官學校ニ入校セシム
第十一條 士官候補生陸軍士官學校ノ卒業試驗ニ及第シ歸隊シタルトキハ曹長ノ階級ニ進メ之ニ見習士官ヲ命シ槪ネ六月間該隊ニ於テ士官ノ勤務ヲ習得セシム
第十二條 見習士官ヲ將校ト爲スノ可否ハ所屬隊ノ將校ヲ以テ組織スル將校銓衡會議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ會議ニ於テ可決シタル者ハ當該兵科ノ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第十三條 士官候補生ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ士官候補生ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 學力乏シクシテ士官候補生タルニ適セサル者
三 將校タルノ才能ニ乏シキ者
四 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病若ハ傷痍ノ爲陸軍士官學校ニ分遣シ得サル者
五 陸軍士官學校條例ニ依リ退校歸隊ヲ命セラレタル者
六 將校銓衡會議ニ於テ否決シタル者
七 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
八 前各號ニ揭クル者ノ外士官候補生タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ下士又ハ一年志願兵出身ノ士官候補生ヲ免シタルトキハ第一號ニ該當スル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部蹄鐵工長又ハ計手タリシ者ハ前兵科ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト爲シ第二號乃至第六號及第八號ニ該當スル者竝第七號ニ該當シ豫備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部及階級ノ下士ニ任シ又ハ兵卒ト爲ス
第十四條 士官候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若ハ疾病、傷痍ノ爲陸軍士官學校ニ分遣シ得サル者又ハ陸軍士官學校分遣中卒業ノ目途ナク、疾病傷痍ニ依リ修學ニ堪ヘス若ハ卒業試驗ニ落第シ歸隊シタル者ニシテ仍望アル者ハ一囘限リ次ノ入校期迄所屬隊ニ止マラシムルコトヲ得
第二款 經理部士官
第十五條 經理部現役士官ハ主計候補生ニシテ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第十六條 主計候補生ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニシテ召募試驗ニ及第シタル者ヨリ之ヲ採用ス但シ第一號ノ學校ヲ卒業シタル者ニシテ學業成績優秀ナル者ニハ學科試驗ヲ省略スルコトヲ得
一 中學校又ハ之ト同等以上ノ學校ニシテ陸軍大臣ノ指定シタルモノヲ卒業シタル者但シ准士官下士兵卒及陸軍諸生徒ヲ除ク
二 一年志願兵中品行方正志操確實ナル者ニシテ聯隊長ノ保證ヲ得タル者
三 陸軍現役下士中中學校卒業以上ノ學力ヲ有シ品行方正志操確實ナル者ニシテ聯隊長又ハ所屬長官ノ保證ヲ得タル者
第十七條 主計候補生ニ採用スヘキ人員ハ陸軍大臣每年之ヲ定ム
第十八條 主計候補生召募ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九條 主計候補生ハ陸軍大臣之ヲ命シ師團司令部所在地ノ步兵聯隊ニ配賦シ槪ネ九月間該隊ニ於テ士官候補生ト共ニ同一ノ勤務及軍事學ヲ習得セシム
下士又ハ一年志願兵ヨリ主計候補生ニ採用シタル者ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辭令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第二十條 主計候補生ハ入隊ノ後直ニ之ニ一等卒ノ階級ヲ與ヘ槪ネ六月ノ後上等兵ノ階級ニ、槪ネ八月ノ後三等計手ノ階級ニ進メ陸軍經理學校ニ分遣ノ際二等計手ノ階級ニ進ム
第二十一條 主計候補生第十九條ノ勤務ヲ習得シタルトキハ之ヲ陸軍經理學校ニ入校セシム
第二十二條 主計候補生陸軍經理學校ノ卒業試驗ニ及第シ歸隊シタルトキハ一等計手ノ階級ニ進メ之ニ見習主計ヲ命シ槪ネ六月間所屬隊及當該師團經理部ニ於テ經理部士官ノ勤務ヲ習得セシム
第二十三條 見習主計ヲ經理部士官ト爲スノ可否ハ師團經理部所在地ニ於ケル當該經理部所管一等主計以上ヲ以テ組織スル經理部士官銓衡會議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ會議ニ於テ可決シタル者ハ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第二十四條 主計候補生ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ主計候補生ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 學力乏シクシテ主計候補生タルニ適セサル者
三 經理部士官タルノ才能ニ乏シキ者
四 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病若ハ傷痍ノ爲陸軍經理學校ニ分遣シ得サル者
五 陸軍經理學校條例ニ依リ退校歸隊ヲ命セラレタル者
六 經理部士官銓衡會議ニ於テ否決シタル者
七 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
八 前各號ニ揭クル者ノ外主計候補生タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ下士又ハ一年志願兵出身ノ主計候補生ヲ免シタルトキハ第一號ニ該當スル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部蹄鐵工長又ハ計手タリシ者ハ前兵科ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト爲シ第二號乃至第六號及第八號ニ該當スル者竝第七號ニ該當シ豫備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部及階級ノ下士ニ任シ又ハ兵卒ト爲ス
第二十五條 主計候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病、傷痍ノ爲陸軍經理學校ニ分遣シ得サル者ニシテ仍望アル者ハ一囘限リ次ノ入校期迄所屬隊ニ止マラシムルコトヲ得
第三款 衞生部士官
第二十六條 衞生部現役士官ハ見習醫官又ハ見習藥劑官ニシテ二等軍醫、二等藥劑官、三等軍醫又ハ三等藥劑官ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第二十七條 見習醫官又ハ見習藥劑官ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヨリ之ヲ採用ス
一 帝國大學醫科大學學生ニシテ陸軍衞生部依託學生ト爲リ同大學ヲ卒業シタル者
二 官立公立又ハ醫師法第一條若ハ藥品營業竝藥品取扱規則第四十六條ノ規定ニ依リ文部大臣ノ指定シタル私立ノ醫學專門學校又ハ藥學專門學校ノ生徒ニシテ陸軍衞生部依託生徒ト爲リ同學校ヲ卒業シタル者
三 軍醫生又ハ藥劑生タル一年志願兵
四 前各號ニ該當セサル者ニシテ帝國大學醫科大學若ハ第二號ノ學校ヲ卒業シタル者又ハ外國ノ醫學校若ハ藥學校ヲ卒業シ醫師免許證若ハ藥劑師免狀ヲ有スル者但シ准士官下士兵卒ヲ除ク
第二十八條 見習醫官又ハ見習藥劑官ハ陸軍大臣之ヲ命シ師團司令部所在地ノ步兵聯隊ニ配賦シ槪ネ六月間所屬隊及衞戍病院ニ於テ衞生部士官ノ勤務ヲ習得セシム
見習醫官又ハ見習藥劑官ノ身分ハ一等看護長ノ階級トス
一年志願兵出身ノ見習醫官又ハ見習藥劑官ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辭令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第二十九條 見習醫官又ハ見習藥劑官ヲ衞生部士官ト爲スノ可否ハ師團軍醫部所在地ニ於ケル當該軍醫部所管一等軍醫以上及一等藥劑官以上ヲ以テ組織スル衞生部士官銓衡會議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ會議ニ於テ可決シタル者ハ帝國大學醫科大學ヲ卒業シタル者及外國ノ醫學校又ハ藥學校ヲ卒業シ之ト同等以上ノ學力ヲ有スル者ニ在リテハ二等軍醫又ハ二等藥劑官ニ、其ノ他ノ者ニ在リテハ三等軍醫又ハ三等藥劑官ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第三十條 見習醫官又ハ見習藥劑官ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ見習醫官又ハ見習藥劑官ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 學力乏シクシテ見習醫官又ハ見習藥劑官タルニ適セサル者
三 衞生部士官タルノ才能ニ乏シキ者
四 衞生部士官銓衡會議ニ於テ否決シタル者
五 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
六 前各號ニ揭クル者ノ外見習醫官又ハ見習藥劑官タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ一年志願兵出身ノ見習醫官又ハ見習藥劑官ヲ免シタルトキハ第一號ニ該當スル者ハ一等看護卒ト爲シ第二號乃至第四號及第六號ニ該當スル者竝第五號ニ該當シ豫備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ一等看護長ニ任ス
第四款 獸醫部士官
第三十一條 獸醫部現役士官ハ見習獸醫官ニシテ二等獸醫又ハ三等獸醫ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第三十二條 見習獸醫官ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヨリ之ヲ採用ス
一 帝國大學農科大學獸醫學科學生ニシテ陸軍獸醫部依託學生ト爲リ同學科ヲ卒業シタル者
二 帝國大學農科大學獸醫學實科生徒又ハ官立實業專門學校獸醫學科生徒ニシテ陸軍獸醫部依託生徒ト爲リ同學科ヲ卒業シタル者
三 獸醫生タル一年志願兵
四 前各號ニ該當セサル者ニシテ第一號若ハ第二號ノ學科ヲ卒業シタル者又ハ外國ノ獸醫學校ヲ卒業シ獸醫免狀ヲ有スル者但シ准士官下士兵卒ヲ除ク
第三十三條 見習獸醫官ハ陸軍大臣之ヲ命シ師團司令部所在地ノ騎、砲、輜重兵隊ニ配賦シ槪ネ六月間該隊ニ於テ獸醫部士官ノ勤務ヲ習得セシム
見習獸醫官ノ身分ハ一等蹄鐵工長ノ階級トス
一年志願兵出身ノ見習獸醫官ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辭令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第三十四條 見習獸醫官ヲ獸醫部士官ト爲スノ可否ハ師團獸醫部所在地ニ於ケル當該獸醫部所管一等獸醫以上ヲ以テ組織スル獸醫部士官銓衡會議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ會議ニ於テ可決シタル者ハ帝國大學農科大學獸醫學科ヲ卒業シタル者及外國ノ獸醫學校ヲ卒業シ之ト同等以上ノ學力ヲ有スル者ニ在リテハ二等獸醫ニ、其ノ他ノ者ニ在リテハ三等獸醫ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第三十五條 見習獸醫官ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ見習獸醫官ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 學力乏シクシテ見習獸醫官タルニ適セサル者
三 獸醫部士官タルノ才能ニ乏シキ者
四 獸醫部士官銓衡會議ニ於テ否決シタル者
五 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
六 前各號ニ揭クル者ノ外見習獸醫官タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ一年志願兵出身ノ見習獸醫官ヲ免シタルトキハ第一號ニ該當スル者ハ原兵科ノ一等卒ト爲シ第二號乃至第四號及第六號ニ該當スル者竝第五號ニ該當シ豫備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ一等蹄鐵工長ニ任ス
第三章 豫備役將校同相當官ノ補充
第三十六條 豫備役將校同相當官ハ一年志願兵終末試驗ニ及第シ豫備役ニ入リタル者ニシテ少尉同相當官ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第三十七條 一年志願兵終末試驗ニ及第シ豫備役ニ入リタル者ヲ豫備役士官ニ任スルニハ之ヲ第一次及第二次勤務演習ニ召集スルコトヲ要ス其ノ期間ハ每囘少クトモ三月トス
第三十八條 第一次勤務演習ニ召集シタル者ニ付テハ其ノ終ニ於テ試驗ヲ行ヒ其ノ成績ト平素勤務ノ成績トヲ參酌シ及第者ハ召集解除ノ際曹長同相當官ニ任ス
前項試驗ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第三十九條 第二次勤務演習ニハ前條ノ規定ニ依リ曹長同相當官ニ任シタル者ニ就キ師團長所要ノ人員ヲ選拔シテ之ヲ召集ス
第四十條 第二次勤務演習ニ召集シタル者ハ其ノ演習期間之ニ豫備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ヲ命ス其ノ取扱及敎育ハ現役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ニ準ス
第四十一條 第二次勤務演習ニ召集シタル者ヲ少尉同相當官ト爲スノ銓衡及其ノ任官ノ資格ニ關シテハ第十二條、第二十三條、第二十九條又ハ第三十四條ノ例ニ依ル
第四十二條 第一次又ハ第二次勤務演習ニ召集中ノ者ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ召集ヲ解除ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 豫備役士官タルノ才能ニ乏シキ者
三 疾病又ハ傷痍ニ依リ一時服役ニ堪ヘサル者
四 前各號ニ揭クル者ノ外豫備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ第一號ニ該當スル者ノ召集ヲ解除シタルトキハ之ヲ原兵科ノ一等卒又ハ一等看護卒ト爲ス
第四十三條 前條第三號ニ該當スル者ハ其ノ志願ニ依リ更ニ之ヲ次ノ第一次又ハ第二次勤務演習ニ召集スルコトヲ得
第四章 現役下士ノ補充
第四十四條 憲兵科現役下士ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 憲兵上等兵ニシテ二年以上憲兵ノ職務ニ服シ品行方正志操確實ナル者
二 步、騎、砲、工、輜重兵科ノ隊附下士砲兵諸工長ヲ除ク中六年以上現役ニ服シ品行方正志操確實ニシテ憲兵ニ轉科ヲ志願シ補充檢査ニ合格シ且一年以上現役期限ヲ有スル者
三 豫備役後備役憲兵上等兵ニシテ下士適任證書ヲ有シ現役滿期後二年以內ニ現役下士ヲ志願スル者
四 豫備役後備役憲兵軍曹伍長中品行方正志操確實ニシテ現役滿期後二年以內ニ現役ヲ志願スル者
五 豫備役後備役步、騎、砲、工、輜重兵軍曹伍長中六年以上現役ニ服シ品行方正志操確實ニシテ現役滿期後二年以內ニ現役憲兵下士ヲ志願シ補充檢査ニ合格シタル者
第四十五條 步、騎、砲、工、輜重兵科現役下士砲兵諸工長ヲ除クハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 各兵科兵卒輸卒ヲ除ク中下士ヲ志願シタル者ニシテ二年以上在營シ下士タルニ適スル者
二 各兵科下士適任證書ヲ有スル上等兵ニシテ歸休ヲ命セラレ又ハ現役期限滿ツル迄在營シテ豫備役ニ入リ退營後二年以內ニ現役下士ヲ志願スル者
三 豫備役後備役軍曹伍長ニシテ現役滿期後二年以內ニ現役ヲ志願スル者
第四十六條 現役砲兵諸工長ハ砲兵工長候補者ニシテ陸軍砲兵工科學校ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第四十七條 現役計手ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 一年以上在營シタル步、騎、砲、工、輜重兵上等兵ニシテ計手ヲ志願シ之ニ必要ナル學術ヲ習得シタル者
二 計手適任證書ヲ有スル上等兵ニシテ歸休ヲ命セラレ又ハ現役期限滿ツル迄在營シテ豫備役ニ入リ退營後二年以內ニ現役計手ヲ志願スル者
三 豫備役後備役ノ二等計手又ハ三等計手ニシテ現役滿期後二年以內ニ現役ヲ志願スル者
第四十八條 現役縫、靴工長ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 縫、靴工卒中縫、靴工長ヲ志願シタル者ニシテ二年以上在營シ縫、靴工長ニ必要ナル學術ヲ習得シタル者
二 縫、靴工長適任證書ヲ有スル上等縫、靴工卒ニシテ歸休ヲ命セラレ又ハ現役期限滿ツル迄在營シテ豫備役ニ入リ退營後二年以內ニ現役縫、靴工長ヲ志願スル者
三 豫備役後備役縫、靴工長ニシテ現役滿期後二年以內ニ現役ヲ志願スル者
第四十九條 現役看護長ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 看護卒中看護長ヲ志願シタル者ニシテ二年以上在營シ看護長タルニ適スル者
二 下士適任證書ヲ有スル上等看護卒ニシテ歸休ヲ命セラレ退營後二年以內ニ現役看護長ヲ志願スル者
三 豫備役後備役ノ二等看護長又ハ三等看護長ニシテ現役滿期後二年以內ニ現役ヲ志願スル者
第五十條 現役蹄鐵工長ハ蹄鐵工長候補者ニシテ陸軍獸醫學校ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第五十一條 蹄鐵工長候補者ハ一年以上在營シタル現役蹄鐵工卒ニシテ再服役ヲ志願シ蹄鐵工長タルニ適スル者ヨリ採用シ陸軍獸醫學校ニ分遣ス
第五十二條 蹄鐵工長候補者ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ蹄鐵工長候補者ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 學術ノ習得不良ニシテ卒業ノ目途ナキ者
三 疾病又ハ傷痍ニ依リ卒業ノ目途ナキ者
四 卒業試驗ニ落第シタル者
第五十三條 現役樂手ハ樂手補ニシテ樂手ヲ志願シ一年以上在營シ下士タルノ技能ヲ有スル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第五章 豫備役後備役下士ノ補充
第五十四條 各兵科部豫備役後備役下士ハ各兵科部下士適任證書ヲ有スル兵卒ヲ以テ之ヲ補充ス
前項ノ場合ニ於テ下士適任證書ノ種類ニ依リ兵科部ノ變更ヲ要スル者ハ之ヲ當該兵科部ニ轉セシム
第五十五條 前條ノ補充ハ戰時又ハ事變ノ際ニ限リ之ヲ爲ス但シ平時ノ勤務演習ニ於テ技能ヲ査閱シ適當ト認メタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五十六條 豫備役後備役各兵科上等兵及上等看護卒ハ下士適任證書ヲ有スル者ニ在リテハ二月以上、其ノ他ノ者ニ在リテハ一年以上平時部隊ニ勤務シ其ノ成績優秀ナル者ニ限リ之ヲ以テ下士ヲ補充スルコトヲ得
第六章 現役憲兵上等兵、看護卒及樂手補ノ補充
第五十七條 現役憲兵上等兵ハ步、騎、砲、工、輜重兵科兵卒輸卒ヲ除ク中一年以上在營シ年齡二十年以上ノ品行方正志操確實ナル者ニシテ憲兵ヲ志願シ三月以上憲兵上等兵ノ勤務ニ必要ナル學術ヲ習得シ補充檢査ニ合格シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第五十八條 現役看護卒ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 隊附上等看護卒ニ在リテハ槪ネ四月間在營シタル步、騎、砲、工、輜重兵科ノ初年兵ニシテ槪ネ八月間看護學ヲ習得シタル者但シ對馬警備隊ニ於テハ其ノ各期間ヲ半減ス
二 病院附二等看護卒ニ在リテハ其ノ所在地ノ步兵聯隊步兵聯隊ナキ地ニ於テハ他ノ軍隊ノ初年兵ニシテ槪ネ四月間在營シタル者
第五十九條 現役樂手補ハ陸軍戶山學校軍樂生徒ノ卒業シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第七章 特別補充
第六十條 戰時又ハ事變ノ際ニハ前各章ニ依ルノ外本章ニ依リ必要ニ應シ士官以下ヲ補充スルコトヲ得
第六十一條 士官ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 現役豫備役後備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官
二 現役豫備役後備役ノ特務曹長又ハ上等計手ニシテ曹長同相當官ニ任セラレタル日ヨリ二年以上實務ニ服シタル者
三 豫備役後備役上等看護長ニシテ衞生部士官勤務適任證書ヲ有スル者
前項補充ノ時期及區分ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十二條 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ左ニ揭クル者ヲ以テ豫備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ト爲スコトヲ得
一 下士ニシテ各兵科部士官勤務適任證書ヲ有スル者
二 軍醫生、藥劑生又ハ獸醫生タル一年志願兵
三 前各號ニ該當セサル現役豫備役下士又ハ現役豫備役補充兵役兵卒ニシテ醫師免許證、醫術開業免狀、藥劑師免狀又ハ獸醫免狀ヲ有スル者
四 前各號ニ揭クル者ノ外醫師免許證、醫術開業免狀、藥劑師免狀又ハ獸醫免狀ヲ有スル者
前項第四號ニ該當スル者ノ採用ノ方法及時期ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十三條 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ左ニ揭クル者ヲ以テ後備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ト爲スコトヲ得
一 下士ニシテ各兵科部士官勤務適任證書ヲ有スル者
二 前號ニ該當セサル下士兵卒ニシテ醫師免許證、醫術開業免狀、藥劑師免狀又ハ獸醫免狀ヲ有スル者
第六十四條 前二條ノ規定ニ依リ豫備役後備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ト爲リタル者ノ身分取扱ハ現役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ニ準ス
第六十五條 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ左ニ揭クル者ヲ以テ下士ヲ補充スルコトヲ得
一 一年志願兵ニシテ四月以上在營シタル者
二 現役豫備役後備役補充兵役ノ上等兵又ハ上等看護卒
三 蹄鐵工長候補者ニシテ槪ネ六月以上陸軍獸醫學校ニ於テ修業シタル者
四 現役豫備役後備役上等兵タル蹄鐵工卒ニシテ蹄鐵工長タルノ技能ヲ有スル者
第六十六條 憲兵科豫備役後備役士官准士官下士上等兵ハ士官准士官下士ニ在リテハ同官等ノ他兵科士官准士官下士、上等兵ニ在リテハ他兵科兵卒輸卒ヲ除クニシテ憲兵ノ勤務ニ必要ナル學術ヲ習得シタル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第六十七條 豫備役後備役憲兵伍長ハ憲兵上等兵ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第六十八條 豫備役後備役憲兵上等兵ハ憲兵上等兵タルニ適スル兵卒輸卒ヲ除クヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第六十九條 砲兵伍長ハ火工下士候補學生ニシテ槪ネ八月以上陸軍砲兵工科學校ニ於テ修業シタル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第七十條 砲兵諸工長ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 砲兵工長候補者ニシテ槪ネ一年四月以上陸軍砲兵工科學校ニ於テ修業シタル者
二 鞍、銃、木、鍛工卒ニシテ陸軍砲兵工科學校ニ分遣セラレ槪ネ六月間砲兵諸工長ニ必要ナル學術ヲ習得シタル者
前項第二號ノ分遣ノ方法及時期ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十一條 計手ハ步、騎、砲、工、輜重兵科現役豫備役後備役補充兵役上等兵ニシテ計手ヲ志願シ隊附主計ニ附屬シテ計手ノ勤務ヲ習得シタル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第七十二條 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ槪ネ二月間在營シタル兵卒ニシテ槪ネ四月間看護學ヲ修メタル者ヲ以テ上等看護卒ヲ補充スルコトヲ得
第七十三條 病院附二等看護卒ハ槪ネ一月間在營シタル兵卒ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第七十四條 第六十一條ノ規定ニ依ル任官ハ戰地ニ在リテハ陸軍武官進級令又ハ陸軍豫備後備武官進級令ニ依リ進級補除ノ權ヲ委任セラレタル首將之ヲ專行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十一條第二項ノ規定ヲ適用セス
第七十五條 第六十二條又ハ第六十三條ノ規定ニ依リ豫備役後備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ト爲リタル者ハ復員ノ際之ヲ免シ其ノ現ニ曹長同相當官ノ官等ヲ有セサル者ハ第六十二條第四號ニ該當スル者ヲ除クノ外之ヲ曹長相當官ニ任ス
第八章 雜則
第七十六條 陸軍士官勤務適任證書ハ士官ノ勤務ニ必要ナル才能ヲ有スル者、陸軍下士適任證書ハ下士タルノ才能ヲ有スル者ニ之ヲ付與ス其ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十七條 將校銓衡會議及各部士官銓衡會議ニ關スル規定ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十八條 銓衡會議ニ於テ可決シタル者ハ任官ニ至ル迄部隊ニ在リテ士官ノ勤務ニ服セシム
第七十九條 士官候補生、主計候補生、見習醫官、見習藥劑官及見習獸醫官ハ情願ヲ以テ之ヲ免スルコトナシ
第八十條 憲兵科下士上等兵ノ補充檢査ニ關スル規定ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第八十一條 各兵科下士ノ任官ハ憲兵科下士ニ在リテハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ憲兵司令官、他兵科下士砲兵諸工長ヲ除クニ在リテハ師團長ノ認可ヲ受ケ聯隊長、砲兵諸工長ニ在リテハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ東京砲兵工廠提理之ヲ行フ
各部下士ノ任官ハ計手衞生部下士又ハ獸醫部下士ニ在リテハ師團長ノ認可ヲ受ケ師團經理部長師團軍醫部長又ハ師團獸醫部長、縫靴工長ニ在リテハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ被服本廠長之ヲ行ヒ軍樂部下士ニ在リテハ師團ニ於テハ師團長之ヲ行ヒ陸軍戶山學校ニ於テハ敎育總監ノ認可ヲ受ケ陸軍戶山學校長之ヲ行フ
戰時又ハ事變ノ際ニハ下士ノ任官ハ前二項ノ規定ニ拘ラス師團長又ハ之ト同等以上ノ權アル長官ノ認可ヲ受ケ聯隊長、師團經理部長、師團軍醫部長、師團獸醫部長又ハ之ト同等以上ノ權アル部隊長之ヲ行フコトヲ得第五十五條但書ノ場合亦同シ
戰時又ハ事變ノ際ニハ師團長又ハ之ト同等以上ノ權アル長官ハ時宜ニ依リ聯隊長又ハ之ト同等以上ノ權アル隊長ヲシテ下士ノ任官ヲ專行セシムルコトヲ得
第八十二條 本令中師團長ニ關スル規定ハ朝鮮駐箚軍司令官臺灣總督關東都督ニ、憲兵司令官ニ關スル規定ハ朝鮮駐箚憲兵隊司令官ニ、師團經理部長ニ關スル規定ハ朝鮮駐箚軍經理部長臺灣總督府陸軍經理部長關東都督府陸軍經理部長ニ、師團軍醫部長ニ關スル規定ハ朝鮮駐箚軍軍醫部長臺灣總督府陸軍軍醫部長關東都督府陸軍軍醫部長ニ、師團獸醫部長ニ關スル規定ハ臺灣總督府陸軍獸醫部長ニ、聯隊長ニ關スル規定ハ獨立隊長ニ之ヲ適用ス
附 則
第八十三條 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第八十四條 陸軍補充條例、明治三十年勅令第九十四號、明治三十七年勅令第百十號、同年勅令第百三十四號及同年勅令第二百一號ハ之ヲ廢止ス
第八十五條 縫、靴工又ハ縫、靴工長ノ勤務ニ服スル現役兵卒ニシテ縫、靴工長ヲ志願シ適任ト認ムル者ハ當分ノ內陸軍被服廠ニ於テ必要ナル學術ヲ習得セシメ之ヲ三等縫、靴工長ニ任スルコトヲ得
第八十六條 縫、靴工長適任證書ヲ有スル豫備役後備役上等兵ニシテ縫、靴工長ノ勤務ニ服シタル者ハ戰時又ハ事變ノ際ニ限リ當分ノ內之ヲ三等縫、靴工長ニ任スルコトヲ得
第八十七條 豫備役後備役兵卒ニシテ陸軍獸醫學校ヲ卒業シタル者ハ戰時又ハ事變ノ際ニ限リ當分ノ內之ヲ三等蹄鐵工長ニ任スルコトヲ得
第八十八條 本令施行ノ際一年志願兵終末試驗及第證書ヲ有スル者ニ關シテハ仍從前ノ規定ニ依ル
朕陸軍補充令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年十月二十五日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 男爵 石本新六
勅令第二百七十号
陸軍補充令
第一章 総則
第一条 陸軍将校、同相当官、准士官、下士、憲兵上等兵、看護卒及楽手補ノ補充ニ関シテハ別ニ定ムルモノノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令中特ニ明文アル場合ヲ除クノ外兵科部及役種ハ補充ニ因リ之ヲ変更スルコトナシ
第二章 現役士官ノ補充
第一款 各兵科士官
第三条 歩、騎、砲、工、輜重兵科現役士官ハ士官候補生ニシテ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
憲兵科現役士官ハ他兵科ノ士官ヨリ転科セシム
第四条 士官候補生ハ陸軍中央幼年学校本科卒業者ノ外左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニシテ召募試験ニ及第シタル者ヨリ之ヲ採用ス但シ第一号ノ学校ヲ卒業シタル者ニシテ学業成績優秀ナル者ニハ学科試験ヲ省略スルコトヲ得
一 中学校又ハ之ト同等以上ノ学校ニシテ陸軍大臣ノ指定シタルモノヲ卒業シタル者但シ准士官下士兵卒及陸軍諸生徒ヲ除ク
二 一年志願兵中品行方正志操確実ナル者ニシテ連隊長ノ保証ヲ得タル者
三 陸軍現役下士中中学校卒業以上ノ学力ヲ有シ品行方正志操確実ナル者ニシテ連隊長又ハ所属長官ノ保証ヲ得タル者
第五条 士官候補生ニ採用スヘキ人員ハ陸軍大臣毎年之ヲ定ム
第六条 士官候補生召募ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七条 士官候補生ニ採用スヘキ者ハ教育総監之ヲ定メ順序ヲ附シタル採用名簿ヲ調製シ各隊配賦名簿ヲ添ヘテ之ヲ陸軍大臣ニ移送ス
第八条 士官候補生ハ陸軍大臣前条ノ名簿ニ基キ之ヲ命シ各隊ニ配賦シ概ネ一年間該隊ニ於テ下士兵卒ノ勤務雑役ヲ除ク及之ニ必要ナル軍事学ヲ習得セシム但シ陸軍中央幼年学校出身者ノ在隊期間ハ概ネ六月トス
下士又ハ一年志願兵ヨリ士官候補生ニ採用シタル者ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辞令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第九条 士官候補生ニシテ陸軍中央幼年学校出身ノ者ハ入隊ノ後直ニ之ニ上等兵ノ階級ヲ与ヘ概ネ二月ノ後伍長ノ階級ニ、概ネ三月ノ後軍曹ノ階級ニ進メ其ノ他ノ者ハ入隊ノ後直ニ之ニ一等卒ノ階級ヲ与ヘ概ネ六月ノ後上等兵ノ階級ニ、概ネ八月ノ後伍長ノ階級ニ、概ネ九月ノ後軍曹ノ階級ニ進ム
第十条 士官候補生第八条ノ勤務ヲ習得シタルトキハ教育総監ハ之ヲ陸軍士官学校ニ入校セシム
第十一条 士官候補生陸軍士官学校ノ卒業試験ニ及第シ帰隊シタルトキハ曹長ノ階級ニ進メ之ニ見習士官ヲ命シ概ネ六月間該隊ニ於テ士官ノ勤務ヲ習得セシム
第十二条 見習士官ヲ将校ト為スノ可否ハ所属隊ノ将校ヲ以テ組織スル将校銓衡会議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ会議ニ於テ可決シタル者ハ当該兵科ノ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第十三条 士官候補生ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ士官候補生ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 学力乏シクシテ士官候補生タルニ適セサル者
三 将校タルノ才能ニ乏シキ者
四 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病若ハ傷痍ノ為陸軍士官学校ニ分遣シ得サル者
五 陸軍士官学校条例ニ依リ退校帰隊ヲ命セラレタル者
六 将校銓衡会議ニ於テ否決シタル者
七 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
八 前各号ニ掲クル者ノ外士官候補生タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ下士又ハ一年志願兵出身ノ士官候補生ヲ免シタルトキハ第一号ニ該当スル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部蹄鉄工長又ハ計手タリシ者ハ前兵科ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト為シ第二号乃至第六号及第八号ニ該当スル者並第七号ニ該当シ予備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部及階級ノ下士ニ任シ又ハ兵卒ト為ス
第十四条 士官候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若ハ疾病、傷痍ノ為陸軍士官学校ニ分遣シ得サル者又ハ陸軍士官学校分遣中卒業ノ目途ナク、疾病傷痍ニ依リ修学ニ堪ヘス若ハ卒業試験ニ落第シ帰隊シタル者ニシテ仍望アル者ハ一回限リ次ノ入校期迄所属隊ニ止マラシムルコトヲ得
第二款 経理部士官
第十五条 経理部現役士官ハ主計候補生ニシテ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第十六条 主計候補生ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニシテ召募試験ニ及第シタル者ヨリ之ヲ採用ス但シ第一号ノ学校ヲ卒業シタル者ニシテ学業成績優秀ナル者ニハ学科試験ヲ省略スルコトヲ得
一 中学校又ハ之ト同等以上ノ学校ニシテ陸軍大臣ノ指定シタルモノヲ卒業シタル者但シ准士官下士兵卒及陸軍諸生徒ヲ除ク
二 一年志願兵中品行方正志操確実ナル者ニシテ連隊長ノ保証ヲ得タル者
三 陸軍現役下士中中学校卒業以上ノ学力ヲ有シ品行方正志操確実ナル者ニシテ連隊長又ハ所属長官ノ保証ヲ得タル者
第十七条 主計候補生ニ採用スヘキ人員ハ陸軍大臣毎年之ヲ定ム
第十八条 主計候補生召募ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九条 主計候補生ハ陸軍大臣之ヲ命シ師団司令部所在地ノ歩兵連隊ニ配賦シ概ネ九月間該隊ニ於テ士官候補生ト共ニ同一ノ勤務及軍事学ヲ習得セシム
下士又ハ一年志願兵ヨリ主計候補生ニ採用シタル者ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辞令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第二十条 主計候補生ハ入隊ノ後直ニ之ニ一等卒ノ階級ヲ与ヘ概ネ六月ノ後上等兵ノ階級ニ、概ネ八月ノ後三等計手ノ階級ニ進メ陸軍経理学校ニ分遣ノ際二等計手ノ階級ニ進ム
第二十一条 主計候補生第十九条ノ勤務ヲ習得シタルトキハ之ヲ陸軍経理学校ニ入校セシム
第二十二条 主計候補生陸軍経理学校ノ卒業試験ニ及第シ帰隊シタルトキハ一等計手ノ階級ニ進メ之ニ見習主計ヲ命シ概ネ六月間所属隊及当該師団経理部ニ於テ経理部士官ノ勤務ヲ習得セシム
第二十三条 見習主計ヲ経理部士官ト為スノ可否ハ師団経理部所在地ニ於ケル当該経理部所管一等主計以上ヲ以テ組織スル経理部士官銓衡会議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ会議ニ於テ可決シタル者ハ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第二十四条 主計候補生ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ主計候補生ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 学力乏シクシテ主計候補生タルニ適セサル者
三 経理部士官タルノ才能ニ乏シキ者
四 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病若ハ傷痍ノ為陸軍経理学校ニ分遣シ得サル者
五 陸軍経理学校条例ニ依リ退校帰隊ヲ命セラレタル者
六 経理部士官銓衡会議ニ於テ否決シタル者
七 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
八 前各号ニ掲クル者ノ外主計候補生タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ下士又ハ一年志願兵出身ノ主計候補生ヲ免シタルトキハ第一号ニ該当スル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部蹄鉄工長又ハ計手タリシ者ハ前兵科ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト為シ第二号乃至第六号及第八号ニ該当スル者並第七号ニ該当シ予備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ入隊前ニ於ケル兵科部及階級ノ下士ニ任シ又ハ兵卒ト為ス
第二十五条 主計候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病、傷痍ノ為陸軍経理学校ニ分遣シ得サル者ニシテ仍望アル者ハ一回限リ次ノ入校期迄所属隊ニ止マラシムルコトヲ得
第三款 衛生部士官
第二十六条 衛生部現役士官ハ見習医官又ハ見習薬剤官ニシテ二等軍医、二等薬剤官、三等軍医又ハ三等薬剤官ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第二十七条 見習医官又ハ見習薬剤官ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ヨリ之ヲ採用ス
一 帝国大学医科大学学生ニシテ陸軍衛生部依託学生ト為リ同大学ヲ卒業シタル者
二 官立公立又ハ医師法第一条若ハ薬品営業並薬品取扱規則第四十六条ノ規定ニ依リ文部大臣ノ指定シタル私立ノ医学専門学校又ハ薬学専門学校ノ生徒ニシテ陸軍衛生部依託生徒ト為リ同学校ヲ卒業シタル者
三 軍医生又ハ薬剤生タル一年志願兵
四 前各号ニ該当セサル者ニシテ帝国大学医科大学若ハ第二号ノ学校ヲ卒業シタル者又ハ外国ノ医学校若ハ薬学校ヲ卒業シ医師免許証若ハ薬剤師免状ヲ有スル者但シ准士官下士兵卒ヲ除ク
第二十八条 見習医官又ハ見習薬剤官ハ陸軍大臣之ヲ命シ師団司令部所在地ノ歩兵連隊ニ配賦シ概ネ六月間所属隊及衛戍病院ニ於テ衛生部士官ノ勤務ヲ習得セシム
見習医官又ハ見習薬剤官ノ身分ハ一等看護長ノ階級トス
一年志願兵出身ノ見習医官又ハ見習薬剤官ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辞令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第二十九条 見習医官又ハ見習薬剤官ヲ衛生部士官ト為スノ可否ハ師団軍医部所在地ニ於ケル当該軍医部所管一等軍医以上及一等薬剤官以上ヲ以テ組織スル衛生部士官銓衡会議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ会議ニ於テ可決シタル者ハ帝国大学医科大学ヲ卒業シタル者及外国ノ医学校又ハ薬学校ヲ卒業シ之ト同等以上ノ学力ヲ有スル者ニ在リテハ二等軍医又ハ二等薬剤官ニ、其ノ他ノ者ニ在リテハ三等軍医又ハ三等薬剤官ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第三十条 見習医官又ハ見習薬剤官ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ見習医官又ハ見習薬剤官ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 学力乏シクシテ見習医官又ハ見習薬剤官タルニ適セサル者
三 衛生部士官タルノ才能ニ乏シキ者
四 衛生部士官銓衡会議ニ於テ否決シタル者
五 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
六 前各号ニ掲クル者ノ外見習医官又ハ見習薬剤官タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ一年志願兵出身ノ見習医官又ハ見習薬剤官ヲ免シタルトキハ第一号ニ該当スル者ハ一等看護卒ト為シ第二号乃至第四号及第六号ニ該当スル者並第五号ニ該当シ予備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ一等看護長ニ任ス
第四款 獣医部士官
第三十一条 獣医部現役士官ハ見習獣医官ニシテ二等獣医又ハ三等獣医ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第三十二条 見習獣医官ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ヨリ之ヲ採用ス
一 帝国大学農科大学獣医学科学生ニシテ陸軍獣医部依託学生ト為リ同学科ヲ卒業シタル者
二 帝国大学農科大学獣医学実科生徒又ハ官立実業専門学校獣医学科生徒ニシテ陸軍獣医部依託生徒ト為リ同学科ヲ卒業シタル者
三 獣医生タル一年志願兵
四 前各号ニ該当セサル者ニシテ第一号若ハ第二号ノ学科ヲ卒業シタル者又ハ外国ノ獣医学校ヲ卒業シ獣医免状ヲ有スル者但シ准士官下士兵卒ヲ除ク
第三十三条 見習獣医官ハ陸軍大臣之ヲ命シ師団司令部所在地ノ騎、砲、輜重兵隊ニ配賦シ概ネ六月間該隊ニ於テ獣医部士官ノ勤務ヲ習得セシム
見習獣医官ノ身分ハ一等蹄鉄工長ノ階級トス
一年志願兵出身ノ見習獣医官ハ入隊ノ日ヲ以テ別ニ辞令ヲ用井ス其ノ官又ハ服役ヲ免ス
第三十四条 見習獣医官ヲ獣医部士官ト為スノ可否ハ師団獣医部所在地ニ於ケル当該獣医部所管一等獣医以上ヲ以テ組織スル獣医部士官銓衡会議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ会議ニ於テ可決シタル者ハ帝国大学農科大学獣医学科ヲ卒業シタル者及外国ノ獣医学校ヲ卒業シ之ト同等以上ノ学力ヲ有スル者ニ在リテハ二等獣医ニ、其ノ他ノ者ニ在リテハ三等獣医ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第三十五条 見習獣医官ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ見習獣医官ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 学力乏シクシテ見習獣医官タルニ適セサル者
三 獣医部士官タルノ才能ニ乏シキ者
四 獣医部士官銓衡会議ニ於テ否決シタル者
五 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
六 前各号ニ掲クル者ノ外見習獣医官タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ一年志願兵出身ノ見習獣医官ヲ免シタルトキハ第一号ニ該当スル者ハ原兵科ノ一等卒ト為シ第二号乃至第四号及第六号ニ該当スル者並第五号ニ該当シ予備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ一等蹄鉄工長ニ任ス
第三章 予備役将校同相当官ノ補充
第三十六条 予備役将校同相当官ハ一年志願兵終末試験ニ及第シ予備役ニ入リタル者ニシテ少尉同相当官ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第三十七条 一年志願兵終末試験ニ及第シ予備役ニ入リタル者ヲ予備役士官ニ任スルニハ之ヲ第一次及第二次勤務演習ニ召集スルコトヲ要ス其ノ期間ハ毎回少クトモ三月トス
第三十八条 第一次勤務演習ニ召集シタル者ニ付テハ其ノ終ニ於テ試験ヲ行ヒ其ノ成績ト平素勤務ノ成績トヲ参酌シ及第者ハ召集解除ノ際曹長同相当官ニ任ス
前項試験ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第三十九条 第二次勤務演習ニハ前条ノ規定ニ依リ曹長同相当官ニ任シタル者ニ就キ師団長所要ノ人員ヲ選抜シテ之ヲ召集ス
第四十条 第二次勤務演習ニ召集シタル者ハ其ノ演習期間之ニ予備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ヲ命ス其ノ取扱及教育ハ現役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ニ準ス
第四十一条 第二次勤務演習ニ召集シタル者ヲ少尉同相当官ト為スノ銓衡及其ノ任官ノ資格ニ関シテハ第十二条、第二十三条、第二十九条又ハ第三十四条ノ例ニ依ル
第四十二条 第一次又ハ第二次勤務演習ニ召集中ノ者ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ召集ヲ解除ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 予備役士官タルノ才能ニ乏シキ者
三 疾病又ハ傷痍ニ依リ一時服役ニ堪ヘサル者
四 前各号ニ掲クル者ノ外予備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ第一号ニ該当スル者ノ召集ヲ解除シタルトキハ之ヲ原兵科ノ一等卒又ハ一等看護卒ト為ス
第四十三条 前条第三号ニ該当スル者ハ其ノ志願ニ依リ更ニ之ヲ次ノ第一次又ハ第二次勤務演習ニ召集スルコトヲ得
第四章 現役下士ノ補充
第四十四条 憲兵科現役下士ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 憲兵上等兵ニシテ二年以上憲兵ノ職務ニ服シ品行方正志操確実ナル者
二 歩、騎、砲、工、輜重兵科ノ隊附下士砲兵諸工長ヲ除ク中六年以上現役ニ服シ品行方正志操確実ニシテ憲兵ニ転科ヲ志願シ補充検査ニ合格シ且一年以上現役期限ヲ有スル者
三 予備役後備役憲兵上等兵ニシテ下士適任証書ヲ有シ現役満期後二年以内ニ現役下士ヲ志願スル者
四 予備役後備役憲兵軍曹伍長中品行方正志操確実ニシテ現役満期後二年以内ニ現役ヲ志願スル者
五 予備役後備役歩、騎、砲、工、輜重兵軍曹伍長中六年以上現役ニ服シ品行方正志操確実ニシテ現役満期後二年以内ニ現役憲兵下士ヲ志願シ補充検査ニ合格シタル者
第四十五条 歩、騎、砲、工、輜重兵科現役下士砲兵諸工長ヲ除クハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 各兵科兵卒輸卒ヲ除ク中下士ヲ志願シタル者ニシテ二年以上在営シ下士タルニ適スル者
二 各兵科下士適任証書ヲ有スル上等兵ニシテ帰休ヲ命セラレ又ハ現役期限満ツル迄在営シテ予備役ニ入リ退営後二年以内ニ現役下士ヲ志願スル者
三 予備役後備役軍曹伍長ニシテ現役満期後二年以内ニ現役ヲ志願スル者
第四十六条 現役砲兵諸工長ハ砲兵工長候補者ニシテ陸軍砲兵工科学校ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第四十七条 現役計手ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 一年以上在営シタル歩、騎、砲、工、輜重兵上等兵ニシテ計手ヲ志願シ之ニ必要ナル学術ヲ習得シタル者
二 計手適任証書ヲ有スル上等兵ニシテ帰休ヲ命セラレ又ハ現役期限満ツル迄在営シテ予備役ニ入リ退営後二年以内ニ現役計手ヲ志願スル者
三 予備役後備役ノ二等計手又ハ三等計手ニシテ現役満期後二年以内ニ現役ヲ志願スル者
第四十八条 現役縫、靴工長ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 縫、靴工卒中縫、靴工長ヲ志願シタル者ニシテ二年以上在営シ縫、靴工長ニ必要ナル学術ヲ習得シタル者
二 縫、靴工長適任証書ヲ有スル上等縫、靴工卒ニシテ帰休ヲ命セラレ又ハ現役期限満ツル迄在営シテ予備役ニ入リ退営後二年以内ニ現役縫、靴工長ヲ志願スル者
三 予備役後備役縫、靴工長ニシテ現役満期後二年以内ニ現役ヲ志願スル者
第四十九条 現役看護長ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 看護卒中看護長ヲ志願シタル者ニシテ二年以上在営シ看護長タルニ適スル者
二 下士適任証書ヲ有スル上等看護卒ニシテ帰休ヲ命セラレ退営後二年以内ニ現役看護長ヲ志願スル者
三 予備役後備役ノ二等看護長又ハ三等看護長ニシテ現役満期後二年以内ニ現役ヲ志願スル者
第五十条 現役蹄鉄工長ハ蹄鉄工長候補者ニシテ陸軍獣医学校ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第五十一条 蹄鉄工長候補者ハ一年以上在営シタル現役蹄鉄工卒ニシテ再服役ヲ志願シ蹄鉄工長タルニ適スル者ヨリ採用シ陸軍獣医学校ニ分遣ス
第五十二条 蹄鉄工長候補者ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ蹄鉄工長候補者ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 学術ノ習得不良ニシテ卒業ノ目途ナキ者
三 疾病又ハ傷痍ニ依リ卒業ノ目途ナキ者
四 卒業試験ニ落第シタル者
第五十三条 現役楽手ハ楽手補ニシテ楽手ヲ志願シ一年以上在営シ下士タルノ技能ヲ有スル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第五章 予備役後備役下士ノ補充
第五十四条 各兵科部予備役後備役下士ハ各兵科部下士適任証書ヲ有スル兵卒ヲ以テ之ヲ補充ス
前項ノ場合ニ於テ下士適任証書ノ種類ニ依リ兵科部ノ変更ヲ要スル者ハ之ヲ当該兵科部ニ転セシム
第五十五条 前条ノ補充ハ戦時又ハ事変ノ際ニ限リ之ヲ為ス但シ平時ノ勤務演習ニ於テ技能ヲ査閲シ適当ト認メタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五十六条 予備役後備役各兵科上等兵及上等看護卒ハ下士適任証書ヲ有スル者ニ在リテハ二月以上、其ノ他ノ者ニ在リテハ一年以上平時部隊ニ勤務シ其ノ成績優秀ナル者ニ限リ之ヲ以テ下士ヲ補充スルコトヲ得
第六章 現役憲兵上等兵、看護卒及楽手補ノ補充
第五十七条 現役憲兵上等兵ハ歩、騎、砲、工、輜重兵科兵卒輸卒ヲ除ク中一年以上在営シ年齢二十年以上ノ品行方正志操確実ナル者ニシテ憲兵ヲ志願シ三月以上憲兵上等兵ノ勤務ニ必要ナル学術ヲ習得シ補充検査ニ合格シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第五十八条 現役看護卒ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 隊附上等看護卒ニ在リテハ概ネ四月間在営シタル歩、騎、砲、工、輜重兵科ノ初年兵ニシテ概ネ八月間看護学ヲ習得シタル者但シ対馬警備隊ニ於テハ其ノ各期間ヲ半減ス
二 病院附二等看護卒ニ在リテハ其ノ所在地ノ歩兵連隊歩兵連隊ナキ地ニ於テハ他ノ軍隊ノ初年兵ニシテ概ネ四月間在営シタル者
第五十九条 現役楽手補ハ陸軍戸山学校軍楽生徒ノ卒業シタル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第七章 特別補充
第六十条 戦時又ハ事変ノ際ニハ前各章ニ依ルノ外本章ニ依リ必要ニ応シ士官以下ヲ補充スルコトヲ得
第六十一条 士官ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 現役予備役後備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官
二 現役予備役後備役ノ特務曹長又ハ上等計手ニシテ曹長同相当官ニ任セラレタル日ヨリ二年以上実務ニ服シタル者
三 予備役後備役上等看護長ニシテ衛生部士官勤務適任証書ヲ有スル者
前項補充ノ時期及区分ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十二条 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ左ニ掲クル者ヲ以テ予備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ト為スコトヲ得
一 下士ニシテ各兵科部士官勤務適任証書ヲ有スル者
二 軍医生、薬剤生又ハ獣医生タル一年志願兵
三 前各号ニ該当セサル現役予備役下士又ハ現役予備役補充兵役兵卒ニシテ医師免許証、医術開業免状、薬剤師免状又ハ獣医免状ヲ有スル者
四 前各号ニ掲クル者ノ外医師免許証、医術開業免状、薬剤師免状又ハ獣医免状ヲ有スル者
前項第四号ニ該当スル者ノ採用ノ方法及時期ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十三条 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ左ニ掲クル者ヲ以テ後備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ト為スコトヲ得
一 下士ニシテ各兵科部士官勤務適任証書ヲ有スル者
二 前号ニ該当セサル下士兵卒ニシテ医師免許証、医術開業免状、薬剤師免状又ハ獣医免状ヲ有スル者
第六十四条 前二条ノ規定ニ依リ予備役後備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ト為リタル者ノ身分取扱ハ現役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ニ準ス
第六十五条 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ左ニ掲クル者ヲ以テ下士ヲ補充スルコトヲ得
一 一年志願兵ニシテ四月以上在営シタル者
二 現役予備役後備役補充兵役ノ上等兵又ハ上等看護卒
三 蹄鉄工長候補者ニシテ概ネ六月以上陸軍獣医学校ニ於テ修業シタル者
四 現役予備役後備役上等兵タル蹄鉄工卒ニシテ蹄鉄工長タルノ技能ヲ有スル者
第六十六条 憲兵科予備役後備役士官准士官下士上等兵ハ士官准士官下士ニ在リテハ同官等ノ他兵科士官准士官下士、上等兵ニ在リテハ他兵科兵卒輸卒ヲ除クニシテ憲兵ノ勤務ニ必要ナル学術ヲ習得シタル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第六十七条 予備役後備役憲兵伍長ハ憲兵上等兵ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第六十八条 予備役後備役憲兵上等兵ハ憲兵上等兵タルニ適スル兵卒輸卒ヲ除クヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第六十九条 砲兵伍長ハ火工下士候補学生ニシテ概ネ八月以上陸軍砲兵工科学校ニ於テ修業シタル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第七十条 砲兵諸工長ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 砲兵工長候補者ニシテ概ネ一年四月以上陸軍砲兵工科学校ニ於テ修業シタル者
二 鞍、銃、木、鍛工卒ニシテ陸軍砲兵工科学校ニ分遣セラレ概ネ六月間砲兵諸工長ニ必要ナル学術ヲ習得シタル者
前項第二号ノ分遣ノ方法及時期ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十一条 計手ハ歩、騎、砲、工、輜重兵科現役予備役後備役補充兵役上等兵ニシテ計手ヲ志願シ隊附主計ニ附属シテ計手ノ勤務ヲ習得シタル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第七十二条 動員ヲ行ヒタル部隊ニ於テハ概ネ二月間在営シタル兵卒ニシテ概ネ四月間看護学ヲ修メタル者ヲ以テ上等看護卒ヲ補充スルコトヲ得
第七十三条 病院附二等看護卒ハ概ネ一月間在営シタル兵卒ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
第七十四条 第六十一条ノ規定ニ依ル任官ハ戦地ニ在リテハ陸軍武官進級令又ハ陸軍予備後備武官進級令ニ依リ進級補除ノ権ヲ委任セラレタル首将之ヲ専行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十一条第二項ノ規定ヲ適用セス
第七十五条 第六十二条又ハ第六十三条ノ規定ニ依リ予備役後備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ト為リタル者ハ復員ノ際之ヲ免シ其ノ現ニ曹長同相当官ノ官等ヲ有セサル者ハ第六十二条第四号ニ該当スル者ヲ除クノ外之ヲ曹長相当官ニ任ス
第八章 雑則
第七十六条 陸軍士官勤務適任証書ハ士官ノ勤務ニ必要ナル才能ヲ有スル者、陸軍下士適任証書ハ下士タルノ才能ヲ有スル者ニ之ヲ付与ス其ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十七条 将校銓衡会議及各部士官銓衡会議ニ関スル規定ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十八条 銓衡会議ニ於テ可決シタル者ハ任官ニ至ル迄部隊ニ在リテ士官ノ勤務ニ服セシム
第七十九条 士官候補生、主計候補生、見習医官、見習薬剤官及見習獣医官ハ情願ヲ以テ之ヲ免スルコトナシ
第八十条 憲兵科下士上等兵ノ補充検査ニ関スル規定ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第八十一条 各兵科下士ノ任官ハ憲兵科下士ニ在リテハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ憲兵司令官、他兵科下士砲兵諸工長ヲ除クニ在リテハ師団長ノ認可ヲ受ケ連隊長、砲兵諸工長ニ在リテハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ東京砲兵工廠提理之ヲ行フ
各部下士ノ任官ハ計手衛生部下士又ハ獣医部下士ニ在リテハ師団長ノ認可ヲ受ケ師団経理部長師団軍医部長又ハ師団獣医部長、縫靴工長ニ在リテハ陸軍大臣ノ認可ヲ受ケ被服本廠長之ヲ行ヒ軍楽部下士ニ在リテハ師団ニ於テハ師団長之ヲ行ヒ陸軍戸山学校ニ於テハ教育総監ノ認可ヲ受ケ陸軍戸山学校長之ヲ行フ
戦時又ハ事変ノ際ニハ下士ノ任官ハ前二項ノ規定ニ拘ラス師団長又ハ之ト同等以上ノ権アル長官ノ認可ヲ受ケ連隊長、師団経理部長、師団軍医部長、師団獣医部長又ハ之ト同等以上ノ権アル部隊長之ヲ行フコトヲ得第五十五条但書ノ場合亦同シ
戦時又ハ事変ノ際ニハ師団長又ハ之ト同等以上ノ権アル長官ハ時宜ニ依リ連隊長又ハ之ト同等以上ノ権アル隊長ヲシテ下士ノ任官ヲ専行セシムルコトヲ得
第八十二条 本令中師団長ニ関スル規定ハ朝鮮駐箚軍司令官台湾総督関東都督ニ、憲兵司令官ニ関スル規定ハ朝鮮駐箚憲兵隊司令官ニ、師団経理部長ニ関スル規定ハ朝鮮駐箚軍経理部長台湾総督府陸軍経理部長関東都督府陸軍経理部長ニ、師団軍医部長ニ関スル規定ハ朝鮮駐箚軍軍医部長台湾総督府陸軍軍医部長関東都督府陸軍軍医部長ニ、師団獣医部長ニ関スル規定ハ台湾総督府陸軍獣医部長ニ、連隊長ニ関スル規定ハ独立隊長ニ之ヲ適用ス
附 則
第八十三条 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第八十四条 陸軍補充条例、明治三十年勅令第九十四号、明治三十七年勅令第百十号、同年勅令第百三十四号及同年勅令第二百一号ハ之ヲ廃止ス
第八十五条 縫、靴工又ハ縫、靴工長ノ勤務ニ服スル現役兵卒ニシテ縫、靴工長ヲ志願シ適任ト認ムル者ハ当分ノ内陸軍被服廠ニ於テ必要ナル学術ヲ習得セシメ之ヲ三等縫、靴工長ニ任スルコトヲ得
第八十六条 縫、靴工長適任証書ヲ有スル予備役後備役上等兵ニシテ縫、靴工長ノ勤務ニ服シタル者ハ戦時又ハ事変ノ際ニ限リ当分ノ内之ヲ三等縫、靴工長ニ任スルコトヲ得
第八十七条 予備役後備役兵卒ニシテ陸軍獣医学校ヲ卒業シタル者ハ戦時又ハ事変ノ際ニ限リ当分ノ内之ヲ三等蹄鉄工長ニ任スルコトヲ得
第八十八条 本令施行ノ際一年志願兵終末試験及第証書ヲ有スル者ニ関シテハ仍従前ノ規定ニ依ル