(陸軍補充令中改正ノ件)
法令番号: 勅令第二百四十四號
公布年月日: 大正9年8月9日
法令の形式: 勅令
朕陸軍補充令中改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年八月七日
內閣總理大臣 原敬
陸軍大臣 田中義一
勅令第二百四十四號
陸軍補充令中左ノ通改正ス
第三條 步、騎、砲、工、輜重兵科現役士官ハ士官候補生、現役特務曹長又ハ現役砲、工兵上等工長ニシテ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
憲兵科現役士官ハ他兵科ノ現役士官ニシテ憲兵練習所ヲ卒業シタル者又ハ憲兵科現役特務曹長ニシテ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第四條 士官候補生ハ陸軍士官學校豫科ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第五條 士官候補生ニ充ツヘキ者ハ敎育總監之ヲ定メ順序ヲ附シタル名簿ヲ調製シ各隊配賦名簿ヲ添ヘテ陸軍大臣ニ之ヲ移ス
第六條 陸軍大臣ハ前條ノ名簿ニ基キ士官候補生ヲ命シ各隊ニ之ヲ配賦シ槪ネ六月間該隊ニ於テ下士兵卒ノ勤務雜役ヲ除ク及之ニ必要ナル軍事學ヲ習得セシム
第七條 士官候補生ハ入隊ノ後直ニ上等兵ノ階級ヲ與ヘ槪ネ二月ノ後伍長ノ階級ニ、槪ネ四月ノ後軍曹ノ階級ニ進ム
第八條 士官候補生第六條ノ勤務ヲ習得シタルトキハ敎育總監ハ陸軍士官學校本科ニ之ヲ入學セシム
第九條 士官候補生陸軍士官學校本科ヲ卒業シ歸隊シタルトキハ曹長ノ階級ニ進メ見習士官ヲ命シ槪ネ二月間該隊ニ於テ士官ノ勤務ヲ習得セシム
第十條 見習士官ヲ將校ト爲スノ可否ハ所屬隊ノ將校ヲ以テ組織スル將校銓衡會議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ會議ニ於テ可決シタル者ハ當該兵科ノ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第十一條 士官候補生ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ士官候補生ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 學力乏シクシテ士官候補生タルニ適セサル者
三 將校タルノ才能ニ乏シキ者
四 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病若ハ傷痍ニ依リ一般ノ入學時期ヨリ一月後ニ非サレハ陸軍士官學校本科ニ分遣シ得サル者
五 陸軍士官學校令ニ依リ退校歸隊ヲ命セラレタル者
六 將校銓衡會議ニ於テ否決シタル者
七 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
八 前各號ニ揭クル者ノ外士官候補生タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ下士又ハ一年志願兵出身ノ士官候補生ヲ免シタルトキハ第一號ニ該當スル者ハ陸軍士官學校豫科入學前ニ於ケル兵科部蹄鐵工長又ハ計手タリシ者ハ前兵科ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト爲シ第二號乃至第六號及第八號ニ該當スル者竝第七號ニ該當シ豫備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ陸軍士官學校豫科入學前ニ於ケル兵科部及階級ノ下士ニ任シ又ハ兵卒ト爲ス
第十二條 士官候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若ハ疾病傷痍ニ依リ一般ノ入學時期ヨリ一月後ニ非サレハ陸軍士官學校本科ニ分遣シ得サル者ノ中又ハ陸軍士官學校本科分遣中學術ノ成績不良ニシテ卒業ノ目途ナク若ハ疾病傷痍ニ依リ修業ニ堪ヘス歸隊シタル者ノ中尙望アル者ハ前條ノ規定ニ拘ラス一囘ヲ限リ更ニ指定スル入學時期迄所屬隊ニ止ラシムルコトヲ得
第十三條 憲兵科士官候補者タルヘキ他兵科ノ士官竝各兵科小尉候補者タルヘキ特務曹長及上等工長ノ人員ハ陸軍大臣每年之ヲ定ム
第十四條 憲兵科士官候補者ハ他兵科ノ士官ニシテ身體强健勤務精勵將來發達ノ見込アリト認ムル者ニシテ憲兵科士官ヲ志願シ聯隊長ニ於テ選拔シタル者ノ中ヨリ陸軍大臣之ヲ定ム
陸軍大臣ハ憲兵科士官候補者ヲ憲兵練習所ニ入學セシム
第十四條ノ二 各兵科少尉候補者ハ實役停年二年以上ノ現役ノ特務曹長又ハ砲、工兵上等工長中身體强健人格成績共ニ優秀且家庭良好ナル者ニシテ聯隊長官衙學校ニ在リテハ其ノ長以下同シノ選拔シタル者ノ中ヨリ試驗ノ上陸軍大臣之ヲ定ム
前項ノ試驗ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十四條ノ三 陸軍大臣ハ各兵科憲兵科ヲ除ク少尉候補者ヲ陸軍士官學校砲、工兵上等工長ニ在リテハ陸軍工科學校ニ入校セシム
陸軍士官學校又ハ陸軍工科學校ヲ卒業シタル少尉候補者ハ槪ネ二月間所屬部隊陸軍工科學校ヲ卒業シタル者ニシテ陸軍技術本部又ハ砲兵工廠所屬以外ノ者ニ在リテハ陸軍技術本部ニ於テ士官ノ勤務ヲ習得セシム
前項ノ規定ニ依リ士官ノ勤務ヲ習得セシメタル者ヲ將校ト爲スノ銓衡及其ノ任官ノ資格ニ關シテハ第十條ノ例ニ依ル但シ陸軍工科學校ヲ卒業シタル少尉候補者ノ銓衡會議ハ陸軍技術本部ニ於テ勤務ヲ習得スル者ニ付テハ陸軍技術本部ノ將校、砲兵工廠ニ於テ勤務ヲ習得スル者ニ付テハ砲兵工廠ノ將校ヲ以テ之ヲ組織ス
第十四條ノ四 陸軍大臣ハ憲兵科少尉候補者ヲ憲兵練習所ニ入學セシム
憲兵練習所ヲ卒業シタル憲兵科少尉候補者ハ憲兵少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第十四條ノ六 前條ノ見習士官ハ大學令ニ依ル大學ノ工學部又ハ理學部ニ於テ工學又ハ理學ヲ修メ學士ト稱スルコトヲ得ル者ヨリ之ヲ採用ス
第十四條ノ七中「六月」ヲ「二月」ニ、「一年志願兵服役中ノ者」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第十四條ノ九中「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第十五條 經理部現役士官ハ各兵科憲兵科ヲ除クノ現役士官ニシテ陸軍經理學校ヲ卒業シタル者又ハ各兵科憲兵科ヲ除ク若ハ經理部ノ准士官下士ニシテ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第十六條 經理部士官候補者タルヘキ各兵科憲兵科ヲ除ク士官竝三等主計候補者タルヘキ各兵科憲兵科ヲ除ク及經理部ノ准士官下士ノ人員ハ陸軍大臣每年之ヲ定ム
第十七條 經理部士官候補者ハ身體强健勤務精勵將來發達ノ見込アリト認ムル各兵科憲兵科ヲ除ク大中尉ニシテ經理部士官ヲ志願シ聯隊長ニ於テ選拔シタル者ノ中ヨリ試驗ノ上陸軍大臣之ヲ定ム
前項ノ試驗ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十八條 三等主計候補者ハ身體强健人格成績共ニ優秀且家庭良好ナル各兵科憲兵科ヲ除ク准士官、曹長及經理部准士官、下士一等計手、一等縫、靴工長ニ限ルニシテ經理部士官ヲ志願シ聯隊長又ハ所管經理部長ニ於テ選拔シタル者ノ中ヨリ試驗ノ上陸軍大臣之ヲ定ム
前項ノ試驗ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九條 陸軍大臣ハ經理部士官候補者及三等主計候補者ヲ陸軍經理學校ニ入校セシム
陸軍經理學校ヲ卒業シタル三等主計候補者ハ所屬部隊ニ於テ經理部士官ノ勤務ヲ習得セシム
第二十條 陸軍經理學校ヲ卒業シタル三等主計候補者ヲ經理部士官ト爲スノ可否ハ當該經理部ノ所在地ニ於ケル當該經理部所管一等主計以上ノ者ヲ以テ組織スル經理部士官銓衡會議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ會議ニ於テ可決シタル者ハ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第二十一條 削除
第二十二條 削除
第二十三條 削除
第二十四條 削除
第二十五條 削除
第二十七條第四號ヲ左ノ如ク改ム
四 前各號ニ揭クル者ノ外醫師法第一條第一項第一號乃至第三號ニ該當スル者又ハ藥品營業竝藥品取扱規則第四十六條第一項ノ規定ニ依リ藥劑師免狀ノ下付ヲ願出ツルコトヲ得ル者若ハ同條第二項ノ規定ニ依リ藥劑師免狀ヲ授與セラレタル者
第二十八條中「六月」ヲ「二月」ニ、「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第二十九條中「學力ヲ有スル者」ノ下ニ「竝豫科三年本科三年以上ノ醫學專門學校ヲ卒業シタル者」ヲ加フ
第三十條中「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第三十二條第四號中「獸醫學校ヲ卒業シ」ノ下ニ「若ハ陸軍獸醫部准士官下士ニシテ」ヲ加ヘ但書ヲ削ル
第三十三條中「六月」ヲ「二月」ニ、「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第三十五條中「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第三十八條 前條ノ勤務演習ニ應召シタル者ハ入隊ノ後直ニ曹長同相當官ノ階級ニ進メ豫備役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ヲ命ス其ノ取扱ハ現役見習士官ニ準ス
第四十一條中「第十二條、第二十三條」ヲ「第十條、第二十條」ニ改ム
第四十四條及第四十五條中「砲兵諸工長ヲ除ク」ヲ「砲、工兵諸工長ヲ除ク」ニ改ム
第四十六條 現役砲、工兵諸工長ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 陸軍工科學校生徒ノ課程ヲ終ヘタル者
二 砲、工兵工長適任證書ヲ有スル各兵科上等兵ニシテ歸休ヲ命セラレ又ハ現役期限滿ツル迄在營シテ豫備役ニ入リ退營後二年以內ニ現役砲、工兵工長ヲ志願スル者
三 豫備役後備役ノ砲、工兵工長ニシテ現役滿期後二年以內ニ現役ヲ志願スル者
第六十條ノ二 憲兵科士官ハ他兵科ノ士官ヨリ直ニ之ニ轉科セシムルコトヲ得
第六十一條 士官ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 現役豫備役後備役ノ見習士官、見習醫官、見習藥劑官、見習獸醫官又ハ豫備役後備役ノ見習主計
二 現役豫備役後備役ノ特務曹長、砲、工兵上等工長又ハ上等計手ニシテ曹長同相當官ニ任セラレタル日ヨリ二年以上實務ニ服シタル者
三 豫備役後備役上等看護長ニシテ衞生部士官勤務適任證書ヲ有スル者
四 豫備役後備役上等蹄鐵工長ニシテ獸醫部士官勤務適任證書ヲ有スル者
前項補充ノ時期及區分ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十一條ノ二 現役豫備役後備役准士官衞生部、獸醫部ノ者ヲ除クニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ士官ニ之ヲ任スルコトヲ得
一 敵前ニ在リテ殊勳ヲ奏シ首將全軍ニ之ヲ布告シタル者
二 殊勳ヲ奏シタル者又ハ勳功顯著ナル者ニシテ傷痍又ハ疾病ノ爲危篤ニ陷リタル者
第六十二條第一項第一號及第六十三條第一號ヲ左ノ如ク改ム
一 下士ニシテ各兵科部士官勤務適任證書ヲ有スル者
第六十四條中「現役ノ見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官」ヲ「現役見習士官」ニ改ム
第六十九條 削除
第七十條 砲、工兵工長ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 陸軍工科學校生徒ニシテ槪ネ一年以上同校ノ課程ヲ修メタル者
二 兵器器材等ニ關スル技術ヲ習得シタル陸軍工卒ニシテ陸軍工科學校ニ分遣セラレ槪ネ六月間砲、工兵諸工長ニ必要ナル學術ヲ習得シタル者
前項第二號ノ分遣ノ方法及時期ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十一條中「上等兵」ヲ「兵卒」ニ改ム
第七十四條 第六十一條又ハ第六十一條ノ二ノ規定ニ依ル任官ハ戰地ニ在リテハ陸軍武官進級令ニ依リ進級セシムルノ權ヲ委任セラレタル首將之ヲ專行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十一條第二項ノ規定ヲ適用セス
第七十九條中「主計候補生、」ヲ削ル
第八十一條中「砲兵諸工長」ヲ「砲、工兵諸工長」ニ、「東京砲兵工廠提理」ヲ「陸軍技術本部長第四十六條第二號ニ該當スル砲、工兵工長ニ在リテハ師團長」ニ改ム
附 則
本令ハ大正九年八月十日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ在隊スル現役見習士官ノ取扱及任官ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
士官候補生ハ大正九年及大正十年ニ限リ仍從前ノ例ニ依リ召募試驗ニ及第シタル者ヨリ之ヲ採用スルコトヲ得
大正九年、大正十年又ハ大正十一年陸軍士官學校本科ニ入學スル士官候補生ノ入學前ニ於ケル取扱ハ仍從前ノ例ニ依ル但シ其ノ入學ノ時期ハ當該入學年ノ十月トス
本令施行ノ際現ニ准尉タル者ハ當該兵科ノ少尉ニ特ニ之ヲ任用スルコトヲ得別ニ辭令書ヲ交付セラレサルトキハ之ニ任セラレタルモノトス
本令施行ノ際現ニ主計候補生タル者ノ取扱及經理部士官ニ之ヲ補充スルニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
當分ノ內砲兵火工長ハ第四十六條ノ規定ニ依ルノ外陸軍工科學校ニ於テ火工術ヲ習得シタル砲兵科下士ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
當分ノ內工兵諸工長ハ第四十六條ノ規定ニ依ルノ外二年以上技術ニ關スル部隊ニ在職シ當該技術ニ堪能ナル工兵科下士ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
朕陸軍補充令中改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年八月七日
内閣総理大臣 原敬
陸軍大臣 田中義一
勅令第二百四十四号
陸軍補充令中左ノ通改正ス
第三条 歩、騎、砲、工、輜重兵科現役士官ハ士官候補生、現役特務曹長又ハ現役砲、工兵上等工長ニシテ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
憲兵科現役士官ハ他兵科ノ現役士官ニシテ憲兵練習所ヲ卒業シタル者又ハ憲兵科現役特務曹長ニシテ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第四条 士官候補生ハ陸軍士官学校予科ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第五条 士官候補生ニ充ツヘキ者ハ教育総監之ヲ定メ順序ヲ附シタル名簿ヲ調製シ各隊配賦名簿ヲ添ヘテ陸軍大臣ニ之ヲ移ス
第六条 陸軍大臣ハ前条ノ名簿ニ基キ士官候補生ヲ命シ各隊ニ之ヲ配賦シ概ネ六月間該隊ニ於テ下士兵卒ノ勤務雑役ヲ除ク及之ニ必要ナル軍事学ヲ習得セシム
第七条 士官候補生ハ入隊ノ後直ニ上等兵ノ階級ヲ与ヘ概ネ二月ノ後伍長ノ階級ニ、概ネ四月ノ後軍曹ノ階級ニ進ム
第八条 士官候補生第六条ノ勤務ヲ習得シタルトキハ教育総監ハ陸軍士官学校本科ニ之ヲ入学セシム
第九条 士官候補生陸軍士官学校本科ヲ卒業シ帰隊シタルトキハ曹長ノ階級ニ進メ見習士官ヲ命シ概ネ二月間該隊ニ於テ士官ノ勤務ヲ習得セシム
第十条 見習士官ヲ将校ト為スノ可否ハ所属隊ノ将校ヲ以テ組織スル将校銓衡会議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ会議ニ於テ可決シタル者ハ当該兵科ノ少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第十一条 士官候補生ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ士官候補生ヲ免ス
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ目途ナキ者
二 学力乏シクシテ士官候補生タルニ適セサル者
三 将校タルノ才能ニ乏シキ者
四 諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス又ハ疾病若ハ傷痍ニ依リ一般ノ入学時期ヨリ一月後ニ非サレハ陸軍士官学校本科ニ分遣シ得サル者
五 陸軍士官学校令ニ依リ退校帰隊ヲ命セラレタル者
六 将校銓衡会議ニ於テ否決シタル者
七 疾病又ハ傷痍ニ依リ現役ノ服役ニ堪ヘサル者
八 前各号ニ掲クル者ノ外士官候補生タルヲ得ヘカラスト認メタル者
前項ノ規定ニ依リ下士又ハ一年志願兵出身ノ士官候補生ヲ免シタルトキハ第一号ニ該当スル者ハ陸軍士官学校予科入学前ニ於ケル兵科部蹄鉄工長又ハ計手タリシ者ハ前兵科ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト為シ第二号乃至第六号及第八号ニ該当スル者並第七号ニ該当シ予備役後備役ノ服役ニ堪フル者ハ陸軍士官学校予科入学前ニ於ケル兵科部及階級ノ下士ニ任シ又ハ兵卒ト為ス
第十二条 士官候補生諸勤務ノ習得充分ノ結果ヲ得ス若ハ疾病傷痍ニ依リ一般ノ入学時期ヨリ一月後ニ非サレハ陸軍士官学校本科ニ分遣シ得サル者ノ中又ハ陸軍士官学校本科分遣中学術ノ成績不良ニシテ卒業ノ目途ナク若ハ疾病傷痍ニ依リ修業ニ堪ヘス帰隊シタル者ノ中尚望アル者ハ前条ノ規定ニ拘ラス一回ヲ限リ更ニ指定スル入学時期迄所属隊ニ止ラシムルコトヲ得
第十三条 憲兵科士官候補者タルヘキ他兵科ノ士官並各兵科小尉候補者タルヘキ特務曹長及上等工長ノ人員ハ陸軍大臣毎年之ヲ定ム
第十四条 憲兵科士官候補者ハ他兵科ノ士官ニシテ身体強健勤務精励将来発達ノ見込アリト認ムル者ニシテ憲兵科士官ヲ志願シ連隊長ニ於テ選抜シタル者ノ中ヨリ陸軍大臣之ヲ定ム
陸軍大臣ハ憲兵科士官候補者ヲ憲兵練習所ニ入学セシム
第十四条ノ二 各兵科少尉候補者ハ実役停年二年以上ノ現役ノ特務曹長又ハ砲、工兵上等工長中身体強健人格成績共ニ優秀且家庭良好ナル者ニシテ連隊長官衙学校ニ在リテハ其ノ長以下同シノ選抜シタル者ノ中ヨリ試験ノ上陸軍大臣之ヲ定ム
前項ノ試験ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十四条ノ三 陸軍大臣ハ各兵科憲兵科ヲ除ク少尉候補者ヲ陸軍士官学校砲、工兵上等工長ニ在リテハ陸軍工科学校ニ入校セシム
陸軍士官学校又ハ陸軍工科学校ヲ卒業シタル少尉候補者ハ概ネ二月間所属部隊陸軍工科学校ヲ卒業シタル者ニシテ陸軍技術本部又ハ砲兵工廠所属以外ノ者ニ在リテハ陸軍技術本部ニ於テ士官ノ勤務ヲ習得セシム
前項ノ規定ニ依リ士官ノ勤務ヲ習得セシメタル者ヲ将校ト為スノ銓衡及其ノ任官ノ資格ニ関シテハ第十条ノ例ニ依ル但シ陸軍工科学校ヲ卒業シタル少尉候補者ノ銓衡会議ハ陸軍技術本部ニ於テ勤務ヲ習得スル者ニ付テハ陸軍技術本部ノ将校、砲兵工廠ニ於テ勤務ヲ習得スル者ニ付テハ砲兵工廠ノ将校ヲ以テ之ヲ組織ス
第十四条ノ四 陸軍大臣ハ憲兵科少尉候補者ヲ憲兵練習所ニ入学セシム
憲兵練習所ヲ卒業シタル憲兵科少尉候補者ハ憲兵少尉ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第十四条ノ六 前条ノ見習士官ハ大学令ニ依ル大学ノ工学部又ハ理学部ニ於テ工学又ハ理学ヲ修メ学士ト称スルコトヲ得ル者ヨリ之ヲ採用ス
第十四条ノ七中「六月」ヲ「二月」ニ、「一年志願兵服役中ノ者」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第十四条ノ九中「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第十五条 経理部現役士官ハ各兵科憲兵科ヲ除クノ現役士官ニシテ陸軍経理学校ヲ卒業シタル者又ハ各兵科憲兵科ヲ除ク若ハ経理部ノ准士官下士ニシテ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フル者ヲ以テ之ヲ補充ス
第十六条 経理部士官候補者タルヘキ各兵科憲兵科ヲ除ク士官並三等主計候補者タルヘキ各兵科憲兵科ヲ除ク及経理部ノ准士官下士ノ人員ハ陸軍大臣毎年之ヲ定ム
第十七条 経理部士官候補者ハ身体強健勤務精励将来発達ノ見込アリト認ムル各兵科憲兵科ヲ除ク大中尉ニシテ経理部士官ヲ志願シ連隊長ニ於テ選抜シタル者ノ中ヨリ試験ノ上陸軍大臣之ヲ定ム
前項ノ試験ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十八条 三等主計候補者ハ身体強健人格成績共ニ優秀且家庭良好ナル各兵科憲兵科ヲ除ク准士官、曹長及経理部准士官、下士一等計手、一等縫、靴工長ニ限ルニシテ経理部士官ヲ志願シ連隊長又ハ所管経理部長ニ於テ選抜シタル者ノ中ヨリ試験ノ上陸軍大臣之ヲ定ム
前項ノ試験ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九条 陸軍大臣ハ経理部士官候補者及三等主計候補者ヲ陸軍経理学校ニ入校セシム
陸軍経理学校ヲ卒業シタル三等主計候補者ハ所属部隊ニ於テ経理部士官ノ勤務ヲ習得セシム
第二十条 陸軍経理学校ヲ卒業シタル三等主計候補者ヲ経理部士官ト為スノ可否ハ当該経理部ノ所在地ニ於ケル当該経理部所管一等主計以上ノ者ヲ以テ組織スル経理部士官銓衡会議ニ於テ之ヲ決ス
前項ノ会議ニ於テ可決シタル者ハ三等主計ニ任セラルルノ資格ヲ具フルモノトス
第二十一条 削除
第二十二条 削除
第二十三条 削除
第二十四条 削除
第二十五条 削除
第二十七条第四号ヲ左ノ如ク改ム
四 前各号ニ掲クル者ノ外医師法第一条第一項第一号乃至第三号ニ該当スル者又ハ薬品営業並薬品取扱規則第四十六条第一項ノ規定ニ依リ薬剤師免状ノ下付ヲ願出ツルコトヲ得ル者若ハ同条第二項ノ規定ニ依リ薬剤師免状ヲ授与セラレタル者
第二十八条中「六月」ヲ「二月」ニ、「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第二十九条中「学力ヲ有スル者」ノ下ニ「並予科三年本科三年以上ノ医学専門学校ヲ卒業シタル者」ヲ加フ
第三十条中「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第三十二条第四号中「獣医学校ヲ卒業シ」ノ下ニ「若ハ陸軍獣医部准士官下士ニシテ」ヲ加ヘ但書ヲ削ル
第三十三条中「六月」ヲ「二月」ニ、「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第三十五条中「一年志願兵」ヲ「下士兵卒」ニ改ム
第三十八条 前条ノ勤務演習ニ応召シタル者ハ入隊ノ後直ニ曹長同相当官ノ階級ニ進メ予備役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ヲ命ス其ノ取扱ハ現役見習士官ニ準ス
第四十一条中「第十二条、第二十三条」ヲ「第十条、第二十条」ニ改ム
第四十四条及第四十五条中「砲兵諸工長ヲ除ク」ヲ「砲、工兵諸工長ヲ除ク」ニ改ム
第四十六条 現役砲、工兵諸工長ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ヲ以テ之ヲ補充ス
一 陸軍工科学校生徒ノ課程ヲ終ヘタル者
二 砲、工兵工長適任証書ヲ有スル各兵科上等兵ニシテ帰休ヲ命セラレ又ハ現役期限満ツル迄在営シテ予備役ニ入リ退営後二年以内ニ現役砲、工兵工長ヲ志願スル者
三 予備役後備役ノ砲、工兵工長ニシテ現役満期後二年以内ニ現役ヲ志願スル者
第六十条ノ二 憲兵科士官ハ他兵科ノ士官ヨリ直ニ之ニ転科セシムルコトヲ得
第六十一条 士官ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 現役予備役後備役ノ見習士官、見習医官、見習薬剤官、見習獣医官又ハ予備役後備役ノ見習主計
二 現役予備役後備役ノ特務曹長、砲、工兵上等工長又ハ上等計手ニシテ曹長同相当官ニ任セラレタル日ヨリ二年以上実務ニ服シタル者
三 予備役後備役上等看護長ニシテ衛生部士官勤務適任証書ヲ有スル者
四 予備役後備役上等蹄鉄工長ニシテ獣医部士官勤務適任証書ヲ有スル者
前項補充ノ時期及区分ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六十一条ノ二 現役予備役後備役准士官衛生部、獣医部ノ者ヲ除クニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ士官ニ之ヲ任スルコトヲ得
一 敵前ニ在リテ殊勲ヲ奏シ首将全軍ニ之ヲ布告シタル者
二 殊勲ヲ奏シタル者又ハ勲功顕著ナル者ニシテ傷痍又ハ疾病ノ為危篤ニ陥リタル者
第六十二条第一項第一号及第六十三条第一号ヲ左ノ如ク改ム
一 下士ニシテ各兵科部士官勤務適任証書ヲ有スル者
第六十四条中「現役ノ見習士官、見習主計、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官」ヲ「現役見習士官」ニ改ム
第六十九条 削除
第七十条 砲、工兵工長ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
一 陸軍工科学校生徒ニシテ概ネ一年以上同校ノ課程ヲ修メタル者
二 兵器器材等ニ関スル技術ヲ習得シタル陸軍工卒ニシテ陸軍工科学校ニ分遣セラレ概ネ六月間砲、工兵諸工長ニ必要ナル学術ヲ習得シタル者
前項第二号ノ分遣ノ方法及時期ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第七十一条中「上等兵」ヲ「兵卒」ニ改ム
第七十四条 第六十一条又ハ第六十一条ノ二ノ規定ニ依ル任官ハ戦地ニ在リテハ陸軍武官進級令ニ依リ進級セシムルノ権ヲ委任セラレタル首将之ヲ専行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十一条第二項ノ規定ヲ適用セス
第七十九条中「主計候補生、」ヲ削ル
第八十一条中「砲兵諸工長」ヲ「砲、工兵諸工長」ニ、「東京砲兵工廠提理」ヲ「陸軍技術本部長第四十六条第二号ニ該当スル砲、工兵工長ニ在リテハ師団長」ニ改ム
附 則
本令ハ大正九年八月十日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ在隊スル現役見習士官ノ取扱及任官ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
士官候補生ハ大正九年及大正十年ニ限リ仍従前ノ例ニ依リ召募試験ニ及第シタル者ヨリ之ヲ採用スルコトヲ得
大正九年、大正十年又ハ大正十一年陸軍士官学校本科ニ入学スル士官候補生ノ入学前ニ於ケル取扱ハ仍従前ノ例ニ依ル但シ其ノ入学ノ時期ハ当該入学年ノ十月トス
本令施行ノ際現ニ准尉タル者ハ当該兵科ノ少尉ニ特ニ之ヲ任用スルコトヲ得別ニ辞令書ヲ交付セラレサルトキハ之ニ任セラレタルモノトス
本令施行ノ際現ニ主計候補生タル者ノ取扱及経理部士官ニ之ヲ補充スルニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
当分ノ内砲兵火工長ハ第四十六条ノ規定ニ依ルノ外陸軍工科学校ニ於テ火工術ヲ習得シタル砲兵科下士ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得
当分ノ内工兵諸工長ハ第四十六条ノ規定ニ依ルノ外二年以上技術ニ関スル部隊ニ在職シ当該技術ニ堪能ナル工兵科下士ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ得