朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル帝國鐵道會計法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年三月二十日
內閣總理大臣兼大藏大臣 侯爵 桂太郞
法律第六號
帝國鐵道會計法
第一條 帝國鐵道ノ事業ヲ經營スル爲從來ノ帝國鐵道資本及帝國鐵道用品資金竝將來投資スル金額ヲ以テ資本ト爲シ其ノ歲入ヲ以テ其ノ歲出ニ充テ特別會計ヲ設置ス
第二條 帝國鐵道ノ建設及改良ニ要スル經費ハ鐵道益金ヲ以テ之ニ充ツ但シ鐵道益金不足ノ場合ニ於テ政府ハ本會計ノ負擔ニ於テ公債ヲ發行シ又ハ他ノ特別會計其ノ他ヨリ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項公債及借入金ノ總額ハ帝國鐵道建設及改良費豫算總額以內トス
第三條 本會計ノ負擔ニ屬スル公債又ハ借入金ノ整理又ハ償還ノ爲政府ハ本會計ノ負擔ニ於テ公債ヲ發行シ又ハ他ノ特別會計其ノ他ヨリ借入金ヲ爲スコトヲ得
第四條 帝國鐵道ノ事業ヲ經營スルニ必要ナル經費ヲ支辨スル爲從來發行シタル公債又ハ其ノ整理若ハ償還ノ爲發行シ若ハ發行スル公債、前二條ニ依ル公債又ハ借入金竝鐵道國有法ニ依リ發行シタル公債又ハ政府ノ負擔ニ歸シタル債務ニシテ其ノ償還ヲ終ラサルモノハ本會計ノ負擔トシ每年度其ノ償還及利子仕拂ニ必要ナル金額ヲ國債整理基金特別會計ニ繰入ルヘシ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲ス場合ニ於ケル諸費ニ付テモ亦同シ
第五條 本會計ハ之ヲ資本勘定收益勘定及積立金勘定ニ區分ス
第六條 資本勘定ハ鐵道益金ヨリ繰入ルル金額公債募集金及借入金竝所屬財產ノ賣拂代金鐵道用品收入及工作收入其ノ他附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ鐵道ノ建設及改良費負債償還金鐵道用品費及工作費其ノ他附屬諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
第七條 收益勘定ハ鐵道營業上ノ諸收入資本所屬物件ノ貸付料及預金利子其ノ他附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ鐵道營業上ノ諸費用資本所屬物件ノ維持修理及補充費竝負債ニ對スル利子其ノ他附屬諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
鐵道及軌道ニ關スル監督上ノ諸費用ハ本會計ノ負擔トシ收益勘定ノ歲出トス
第八條 收益勘定ニ於テ歲入總額ノ歲出總額ニ超過スル金額ヲ益金トシ積立金勘定ニ繰入ルヘキ金額ヲ控除シタル殘額ヲ資本勘定ニ繰入ルヘシ
第九條 積立金勘定ハ鐵道益金ヨリ繰入ルル金額ヲ以テ其ノ歲入トシ他勘定ニ於ケル災害事變其ノ他豫期セサル歲入歲出ノ不足ニ對シ補塡スル金額ヲ以テ其ノ歲出トス
前項繰入金ハ每年度鐵道益金ノ一割以內トス
第十條 政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共ニ帝國議會ニ提出スヘシ
第十一條 資本勘定及積立金勘定ニ屬スル資金ニシテ年度內ニ使用セサルモノハ各勘定ニ於テ遞次翌年度ニ繰越スヘシ
資本勘定ニ屬スル每年度豫算殘額ハ事業ノ完成ニ至ル迄順次之ヲ翌年度ニ繰越使用スルコトヲ得
第十二條 本會計ニ於テ仕拂上現金ニ不足アルトキハ本會計ノ負擔ニ於テ一般會計他ノ特別會計其ノ他ヨリ一時借入金ヲ爲シ又ハ融通證券ヲ發行スルコトヲ得
本會計ノ各勘定ニ於テハ相互間資金ノ繰替ヲ爲スコトヲ得
一時借入金融通證券ニ依ル資金及繰替金ハ當該年度內ニ之ヲ返還スヘシ
第十三條 本會計ニ於テ仕拂上ノ餘裕金アルトキハ預金部ニ預入レ其ノ他有利且確實ナル方法ヲ以テ之ヲ運用スルコトヲ得
前項ノ運用ハ日本銀行ヲシテ之ヲ取扱ハシム
第十四條 本會計所屬出納官吏ノ保管スル現金ニシテ金庫ニ委託サレタルモノニ付テハ相當ノ利子ヲ徵シテ日本銀行又ハ其ノ代理店ニ預ケ入ルルコトヲ得
第十五條 本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 本法ニ依リ本會計ニ於テ借入金ヲ要スル場合ニ一般會計各特別會計ハ其ノ資金ニ餘裕アルトキハ之ニ對シ貸付ヲ爲スコトヲ得
附 則
第十七條 本法ハ明治四十二年度ヨリ之ヲ施行ス
帝國鐵道會計法及帝國鐵道用品資金會計法ハ之ヲ廢止ス但シ明治四十一年度分及韓國ニ於テ帝國ノ經營スル鐵道ノ會計ニ付テハ仍其ノ效力ヲ有ス
第十八條 鐵道敷設法北海道鐵道敷設法及事業公債條例ノ規定ニシテ本法ノ規定ニ牴觸スルモノハ之ヲ廢止ス
第十九條 本法施行前ニ於ケル帝國鐵道特別會計及帝國鐵道用品資金特別會計ニ屬スル收入及支出ノ未濟額ハ之ヲ本會計ニ繰越スヘシ
本法施行前ニ於テ帝國鐵道特別會計ニ對シ一般會計ヨリ繰入ルヘキ資金ニシテ之カ繰入ヲ終ラサルモノハ之ヲ本會計ニ繰入ルヘシ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル帝国鉄道会計法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年三月二十日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
法律第六号
帝国鉄道会計法
第一条 帝国鉄道ノ事業ヲ経営スル為従来ノ帝国鉄道資本及帝国鉄道用品資金並将来投資スル金額ヲ以テ資本ト為シ其ノ歳入ヲ以テ其ノ歳出ニ充テ特別会計ヲ設置ス
第二条 帝国鉄道ノ建設及改良ニ要スル経費ハ鉄道益金ヲ以テ之ニ充ツ但シ鉄道益金不足ノ場合ニ於テ政府ハ本会計ノ負担ニ於テ公債ヲ発行シ又ハ他ノ特別会計其ノ他ヨリ借入金ヲ為スコトヲ得
前項公債及借入金ノ総額ハ帝国鉄道建設及改良費予算総額以内トス
第三条 本会計ノ負担ニ属スル公債又ハ借入金ノ整理又ハ償還ノ為政府ハ本会計ノ負担ニ於テ公債ヲ発行シ又ハ他ノ特別会計其ノ他ヨリ借入金ヲ為スコトヲ得
第四条 帝国鉄道ノ事業ヲ経営スルニ必要ナル経費ヲ支弁スル為従来発行シタル公債又ハ其ノ整理若ハ償還ノ為発行シ若ハ発行スル公債、前二条ニ依ル公債又ハ借入金並鉄道国有法ニ依リ発行シタル公債又ハ政府ノ負担ニ帰シタル債務ニシテ其ノ償還ヲ終ラサルモノハ本会計ノ負担トシ毎年度其ノ償還及利子仕払ニ必要ナル金額ヲ国債整理基金特別会計ニ繰入ルヘシ公債ヲ発行シ又ハ借入金ヲ為ス場合ニ於ケル諸費ニ付テモ亦同シ
第五条 本会計ハ之ヲ資本勘定収益勘定及積立金勘定ニ区分ス
第六条 資本勘定ハ鉄道益金ヨリ繰入ルル金額公債募集金及借入金並所属財産ノ売払代金鉄道用品収入及工作収入其ノ他附属雑収入ヲ以テ其ノ歳入トシ鉄道ノ建設及改良費負債償還金鉄道用品費及工作費其ノ他附属諸費ヲ以テ其ノ歳出トス
第七条 収益勘定ハ鉄道営業上ノ諸収入資本所属物件ノ貸付料及預金利子其ノ他附属雑収入ヲ以テ其ノ歳入トシ鉄道営業上ノ諸費用資本所属物件ノ維持修理及補充費並負債ニ対スル利子其ノ他附属諸費ヲ以テ其ノ歳出トス
鉄道及軌道ニ関スル監督上ノ諸費用ハ本会計ノ負担トシ収益勘定ノ歳出トス
第八条 収益勘定ニ於テ歳入総額ノ歳出総額ニ超過スル金額ヲ益金トシ積立金勘定ニ繰入ルヘキ金額ヲ控除シタル残額ヲ資本勘定ニ繰入ルヘシ
第九条 積立金勘定ハ鉄道益金ヨリ繰入ルル金額ヲ以テ其ノ歳入トシ他勘定ニ於ケル災害事変其ノ他予期セサル歳入歳出ノ不足ニ対シ補填スル金額ヲ以テ其ノ歳出トス
前項繰入金ハ毎年度鉄道益金ノ一割以内トス
第十条 政府ハ毎年本会計ノ歳入歳出予算ヲ調製シ歳入歳出ノ総予算ト共ニ帝国議会ニ提出スヘシ
第十一条 資本勘定及積立金勘定ニ属スル資金ニシテ年度内ニ使用セサルモノハ各勘定ニ於テ逓次翌年度ニ繰越スヘシ
資本勘定ニ属スル毎年度予算残額ハ事業ノ完成ニ至ル迄順次之ヲ翌年度ニ繰越使用スルコトヲ得
第十二条 本会計ニ於テ仕払上現金ニ不足アルトキハ本会計ノ負担ニ於テ一般会計他ノ特別会計其ノ他ヨリ一時借入金ヲ為シ又ハ融通証券ヲ発行スルコトヲ得
本会計ノ各勘定ニ於テハ相互間資金ノ繰替ヲ為スコトヲ得
一時借入金融通証券ニ依ル資金及繰替金ハ当該年度内ニ之ヲ返還スヘシ
第十三条 本会計ニ於テ仕払上ノ余裕金アルトキハ預金部ニ預入レ其ノ他有利且確実ナル方法ヲ以テ之ヲ運用スルコトヲ得
前項ノ運用ハ日本銀行ヲシテ之ヲ取扱ハシム
第十四条 本会計所属出納官吏ノ保管スル現金ニシテ金庫ニ委託サレタルモノニ付テハ相当ノ利子ヲ徴シテ日本銀行又ハ其ノ代理店ニ預ケ入ルルコトヲ得
第十五条 本会計ノ収入支出ニ関スル規程ハ別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 本法ニ依リ本会計ニ於テ借入金ヲ要スル場合ニ一般会計各特別会計ハ其ノ資金ニ余裕アルトキハ之ニ対シ貸付ヲ為スコトヲ得
附 則
第十七条 本法ハ明治四十二年度ヨリ之ヲ施行ス
帝国鉄道会計法及帝国鉄道用品資金会計法ハ之ヲ廃止ス但シ明治四十一年度分及韓国ニ於テ帝国ノ経営スル鉄道ノ会計ニ付テハ仍其ノ効力ヲ有ス
第十八条 鉄道敷設法北海道鉄道敷設法及事業公債条例ノ規定ニシテ本法ノ規定ニ牴触スルモノハ之ヲ廃止ス
第十九条 本法施行前ニ於ケル帝国鉄道特別会計及帝国鉄道用品資金特別会計ニ属スル収入及支出ノ未済額ハ之ヲ本会計ニ繰越スヘシ
本法施行前ニ於テ帝国鉄道特別会計ニ対シ一般会計ヨリ繰入ルヘキ資金ニシテ之カ繰入ヲ終ラサルモノハ之ヲ本会計ニ繰入ルヘシ