朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル關稅定率法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年三月三十日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
大藏大臣 法學博士 阪谷芳郞
法律第十九號
關稅定率法
第一條 外國ヨリ輸入スル物品ニハ別表ニ依リ輸入稅ヲ課ス
第二條 從價稅ニ代フルニ從量稅ヲ以テスルヲ便宜トスル物品ニ付テハ六箇月以上ノ平均價格ニ依リ換算シ勅令ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ從量稅率ハ物品ヲ細別シ又ハ風袋込ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
第三條 協定稅率ノ適用ヲ受ケサル地域ノ生產品ニ對シ必要アルトキハ勅令ヲ以テ地域及物品ヲ指定シ協定稅率ヲ下ラサル範圍內ニ於テ稅率ヲ定ムルコトヲ得
第四條 本邦ノ船舶又ハ生產品ニ對シ他國ノ船舶又ハ生產品ヨリモ不利益ナル取扱ヲ爲ス國ノ生產品ニ對シテハ勅令ヲ以テ物品ヲ指定シ有稅品ニハ本法ニ定メタル稅率ト同額以下ノ附加稅ヲ課シ無稅品ニハ從價五割以下ノ輸入稅ヲ賦課スルコトヲ得
第五條 外國ニ於テ輸出奬勵金ヲ受クル物品ニハ勅令ヲ以テ奬勵金ト同額ノ附加稅ヲ課スルコトヲ得
第六條 從價稅品ノ課稅價格ハ生產地若ハ仕入地ニ於ケル原價ニ荷造費、運送費、保險料其ノ他輸入港ニ到著スル迄ノ諸費ヲ加ヘタルモノトス但シ原價及諸費ニ疑アルトキハ物品ノ輸入港ニ於ケル價格ヨリ輸入稅ヲ控除シタルモノヲ以テ課稅價格トス
第七條 左ノ物品ニハ輸入稅ヲ免ス
一 御料品
二 本邦ニ來遊スル外國ノ元首、其ノ一族又ハ其ノ從者ニ屬スル物品
三 陸海軍ノ輸入ニ係ル兵器、彈藥及爆發物
四 軍艦
五 本邦ニ派遣セラレタル外國ノ大使又ハ公使ニ屬スル自用品
六 本邦在住者ニ贈與スル勳章、賞牌及記章
七 記錄文書其ノ他ノ書類
八 官立公立ノ學校、博物館、物品陳列所其ノ他ノ營造物ニ陳列スル標本又ハ參考品トシテ輸入スル物品
九 慈善又ハ救恤ノ爲ニ寄贈スル物品
十 政府ノ輸入ニ係ル政府ノ專賣品
十一 商品ノ見本但シ見本用ニノミ適スルモノニ限ル
十二 旅客ノ用具及旅客ノ職業上必要ナル器具但シ旅客ノ身分ニ相當スルモノニシテ稅關カ適當ト認メタルモノニ限ル
十三 在外軍隊及軍艦ヨリ送還セル物品
十四 個人ニ屬スル引越荷物但シ旣ニ使用セラレタルモノニ限ル
十五 輸出シタル物品ニシテ五箇年以內ニ輸入セラレ輸出ノ時ノ性質及形狀ヲ變セサルモノ但シ酒精、酒類、砂糖及第八條第九條ニ依リ輸入稅ノ免除又ハ拂戾ヲ受ケタル物品ヲ除ク
十六 命令ヲ以テ指定シタル輸出貨物ノ容器ニシテ再輸入スルモノ
十七 本邦ヨリ出漁セル船舶ヲ以テ捕獲採取シタル魚介類、海獸、海藻其ノ他ノ水產物及其ノ製品ニシテ工程ノ簡單ナルモノ但シ當該船舶又ハ之ニ附屬セル船舶ヲ以テ輸入シタルモノニ限ル
十八 外國航行ノ艦船ニ船用ノ爲開港內ニ於テ引渡ス物品
十九 難破シタル本邦船舶ノ解體材及艤裝品
二十 本邦ヨリ出港シタル船舶ニ搭載シタル輸出貨物ニシテ該船舶難破シタル爲積戾リタルモノ
二十一 國、府縣ノ輸入スル種馬、種牛及種豚、產馬組合ノ輸入スル種馬又ハ產牛組合ノ輸入スル種牛
第八條 左ノ物品ニシテ輸入ノ日ヨリ一箇年以內ニ再ヒ輸出スルモノニハ輸入稅ヲ免ス但シ輸入ノ際稅金ニ相當スル擔保ヲ提供スルコトヲ要ス
一 加工ノ爲輸入スル物品ニシテ勅令ヲ以テ指定シタルモノ
二 修繕ノ爲輸入スル物品
三 學術硏究旅行者使用ノ爲輸入スル物品
四 試驗品トシテ輸入スルモノ
五 演劇其ノ他興行用ノ爲輸入スル物品
第九條 輸入原料品ヲ用井命令ヲ以テ指定シタル物品ヲ製造シ之ヲ外國ヘ輸出シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ノ全部又ハ一部ノ拂戾ヲ爲スコトヲ得
輸入原料品ヲ用井命令ヲ以テ指定シタル肥料ヲ製造シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ノ全部又ハ一部ノ拂戾ヲ爲スコトヲ得
詐僞又ハ不正ノ所爲ヲ以テ前二項ノ拂戾金ヲ得又ハ得ムトシタル者ハ關稅法第七十五條ノ例ニ依リ處分ス
第十條 左ニ揭クル物品ハ輸入ヲ禁ス
一 阿片及阿片吸煙具(政府ノ輸入スルモノヲ除ク)
二 僞造、變造又ハ模造シタル貨幣、銀行券及帝國政府發行ノ證券
三 公安又ハ風俗ヲ害スヘキ書籍、圖畫、彫刻物其ノ他ノ物品
四 特許、實用新案、意匠、商標及著作權ヲ侵害スル物品
五 法令ニ依リ輸入ヲ禁止セラレタル物品
附 則
第十一條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 非常特別稅法第二條及第三條中輸入稅ニ關スル規定竝明治三十三年法律第八十五號ハ之ヲ廢止ス
(別表)
【表】
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル関税定率法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年三月三十日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
大蔵大臣 法学博士 阪谷芳郎
法律第十九号
関税定率法
第一条 外国ヨリ輸入スル物品ニハ別表ニ依リ輸入税ヲ課ス
第二条 従価税ニ代フルニ従量税ヲ以テスルヲ便宜トスル物品ニ付テハ六箇月以上ノ平均価格ニ依リ換算シ勅令ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ従量税率ハ物品ヲ細別シ又ハ風袋込ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
第三条 協定税率ノ適用ヲ受ケサル地域ノ生産品ニ対シ必要アルトキハ勅令ヲ以テ地域及物品ヲ指定シ協定税率ヲ下ラサル範囲内ニ於テ税率ヲ定ムルコトヲ得
第四条 本邦ノ船舶又ハ生産品ニ対シ他国ノ船舶又ハ生産品ヨリモ不利益ナル取扱ヲ為ス国ノ生産品ニ対シテハ勅令ヲ以テ物品ヲ指定シ有税品ニハ本法ニ定メタル税率ト同額以下ノ附加税ヲ課シ無税品ニハ従価五割以下ノ輸入税ヲ賦課スルコトヲ得
第五条 外国ニ於テ輸出奨励金ヲ受クル物品ニハ勅令ヲ以テ奨励金ト同額ノ附加税ヲ課スルコトヲ得
第六条 従価税品ノ課税価格ハ生産地若ハ仕入地ニ於ケル原価ニ荷造費、運送費、保険料其ノ他輸入港ニ到著スル迄ノ諸費ヲ加ヘタルモノトス但シ原価及諸費ニ疑アルトキハ物品ノ輸入港ニ於ケル価格ヨリ輸入税ヲ控除シタルモノヲ以テ課税価格トス
第七条 左ノ物品ニハ輸入税ヲ免ス
一 御料品
二 本邦ニ来遊スル外国ノ元首、其ノ一族又ハ其ノ従者ニ属スル物品
三 陸海軍ノ輸入ニ係ル兵器、弾薬及爆発物
四 軍艦
五 本邦ニ派遣セラレタル外国ノ大使又ハ公使ニ属スル自用品
六 本邦在住者ニ贈与スル勲章、賞牌及記章
七 記録文書其ノ他ノ書類
八 官立公立ノ学校、博物館、物品陳列所其ノ他ノ営造物ニ陳列スル標本又ハ参考品トシテ輸入スル物品
九 慈善又ハ救恤ノ為ニ寄贈スル物品
十 政府ノ輸入ニ係ル政府ノ専売品
十一 商品ノ見本但シ見本用ニノミ適スルモノニ限ル
十二 旅客ノ用具及旅客ノ職業上必要ナル器具但シ旅客ノ身分ニ相当スルモノニシテ税関カ適当ト認メタルモノニ限ル
十三 在外軍隊及軍艦ヨリ送還セル物品
十四 個人ニ属スル引越荷物但シ既ニ使用セラレタルモノニ限ル
十五 輸出シタル物品ニシテ五箇年以内ニ輸入セラレ輸出ノ時ノ性質及形状ヲ変セサルモノ但シ酒精、酒類、砂糖及第八条第九条ニ依リ輸入税ノ免除又ハ払戻ヲ受ケタル物品ヲ除ク
十六 命令ヲ以テ指定シタル輸出貨物ノ容器ニシテ再輸入スルモノ
十七 本邦ヨリ出漁セル船舶ヲ以テ捕獲採取シタル魚介類、海獣、海藻其ノ他ノ水産物及其ノ製品ニシテ工程ノ簡単ナルモノ但シ当該船舶又ハ之ニ附属セル船舶ヲ以テ輸入シタルモノニ限ル
十八 外国航行ノ艦船ニ船用ノ為開港内ニ於テ引渡ス物品
十九 難破シタル本邦船舶ノ解体材及艤装品
二十 本邦ヨリ出港シタル船舶ニ搭載シタル輸出貨物ニシテ該船舶難破シタル為積戻リタルモノ
二十一 国、府県ノ輸入スル種馬、種牛及種豚、産馬組合ノ輸入スル種馬又ハ産牛組合ノ輸入スル種牛
第八条 左ノ物品ニシテ輸入ノ日ヨリ一箇年以内ニ再ヒ輸出スルモノニハ輸入税ヲ免ス但シ輸入ノ際税金ニ相当スル担保ヲ提供スルコトヲ要ス
一 加工ノ為輸入スル物品ニシテ勅令ヲ以テ指定シタルモノ
二 修繕ノ為輸入スル物品
三 学術研究旅行者使用ノ為輸入スル物品
四 試験品トシテ輸入スルモノ
五 演劇其ノ他興行用ノ為輸入スル物品
第九条 輸入原料品ヲ用井命令ヲ以テ指定シタル物品ヲ製造シ之ヲ外国ヘ輸出シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸入税ノ全部又ハ一部ノ払戻ヲ為スコトヲ得
輸入原料品ヲ用井命令ヲ以テ指定シタル肥料ヲ製造シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸入税ノ全部又ハ一部ノ払戻ヲ為スコトヲ得
詐偽又ハ不正ノ所為ヲ以テ前二項ノ払戻金ヲ得又ハ得ムトシタル者ハ関税法第七十五条ノ例ニ依リ処分ス
第十条 左ニ掲クル物品ハ輸入ヲ禁ス
一 阿片及阿片吸煙具(政府ノ輸入スルモノヲ除ク)
二 偽造、変造又ハ模造シタル貨幣、銀行券及帝国政府発行ノ証券
三 公安又ハ風俗ヲ害スヘキ書籍、図画、彫刻物其ノ他ノ物品
四 特許、実用新案、意匠、商標及著作権ヲ侵害スル物品
五 法令ニ依リ輸入ヲ禁止セラレタル物品
附 則
第十一条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 非常特別税法第二条及第三条中輸入税ニ関スル規定並明治三十三年法律第八十五号ハ之ヲ廃止ス
(別表)
【表】