朕海軍准士官下士任用進級條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年九月五日
海軍大臣 侯爵 西鄕從道
勅令第三百一號
海軍准士官下士任用進級條例
第一條 海軍准士官ハ海軍一等下士ヨリ任用ス
第二條 海軍下士ハ三等ヲ初任トシ左ノ區別ニ從ヒ任用ス
一 三等兵曹ハ一等水兵ヨリ任用ス
二 三等信號兵曹ハ一等信號兵ヨリ任用ス
三 三等船匠手ハ一等木工ヨリ任用ス
四 三等軍樂手ハ一等軍樂生ヨリ任用ス
五 三等機關兵曹ハ一等機關兵ヨリ任用ス
六 三等鍛冶手ハ一等鍛冶ヨリ任用ス
七 三等看護手ハ一等看護ヨリ任用ス
八 三等廚宰ハ一等主廚ヨリ任用ス
三等筆記ノ任用ハ明治二十九年勅令第百四十六號及第二百四十四號ニ依ル
第三條 年齡二十年未滿ノ者ハ海軍下士ニ任用スルコトヲ得ス
第四條 海軍准士官下士ノ任用進級ハ總テ拔擢ヲ以テシ級ヲ逐ヒ歷進セシム但シ缺員ナキトキハ任用進級ヲ行ハス
第五條 海軍准士官下士ハ任用進級試驗ニ合格シタル者ニアラサレハ任用進級セシムルコトヲ得ス但シ特殊ノ技能ヲ有スル者ニ限リ其ノ試驗ヲ用ヒスシテ任用進級セシムルコトヲ得
戰時若クハ事變ニ際シテハ前項ノ試驗ヲ行ハスシテ任用進級セシムルコトヲ得
任用進級試驗ニ關スル規程ハ海軍大臣之ヲ定ム
第六條 任用進級試驗ハ第七條ニ揭クル實役停年最下期限ヲ超エタル者ニアラサレハ受クルコトヲ得ス
第七條 實役停年最下期限ヲ定ムルコト左ノ如シ
一 一等卒ヨリ三等下士ニ任スルハ海上勤務一箇年若クハ陸上勤務一箇年四箇月
二 三等下士ヨリ其ノ上級ノ官ニ進ムハ海上勤務一箇年若クハ陸上勤務一箇年四箇月
三 二等下士ヨリ其ノ上級ノ官ニ進ムハ海上勤務一箇年半若クハ陸上勤務二箇年
四 一等下士ヨリ准士官ニ任スルハ海上勤務二箇年若クハ陸上勤務二箇年八箇月
第八條 實役停年ハ海上勤務若クハ陸上勤務ヲ以テ算ス
海上勤務ヲ陸上勤務ニ改算スルニハ海上勤務日數ニ其ノ三分ノ一ヲ加ヘ陸上勤務ヲ海上勤務ニ改算スルニハ陸上勤務日數ヨリ其ノ四分ノ一ヲ減ス
第九條 海上勤務トハ艦船ニ乘組ミ服務スルヲ謂フ其ノ艦船ノ種類ハ海軍大臣之ヲ定ム
第十條 海上勤務ノ者ニシテ公務ニ原因セサル傷痍疾病ニ依リ陸上若クハ病院船ニ在ル間ノ日數ハ海上勤務ニ算入スルコトヲ得ス
第十一條 逃亡、收禁、處刑及自己ノ願ニ依リ歸省中ノ日數竝ニ正當ノ理由ナクシテ敵ノ捕虜トナリタル間ノ日數ハ實役停年ニ算入スルコトヲ得ス
第十二條 戰時ニ在テハ實役停年最下期限ヲ其ノ半ニ減スルコトヲ得
第十三條 將校及其ノ相當官ハ各其ノ職權ニ依リ部下ヲ拔擢スルノ權ヲ有ス但シ直屬長官アル者ハ其ノ監督ノ下ニ在テ之ヲ行フ
第十四條 下士ノ任用進級ハ海兵團在籍ノ區別ニ從ヒ所管鎭守府司令長官之ヲ行ヒ其ノ艦隊ニ屬スル者ハ艦隊司令長官之ヲ行フ
一等下士ヨリ准士官ニ任スルハ海軍大臣之ヲ行フ
任用進級取扱ニ關スル規程ハ海軍大臣之ヲ定ム
第十五條 前諸條ハ現役者ニノミ適用ス
第十六條 戰時若クハ事變ニ際シ現役海軍准士官下士ニ缺員ヲ生シタル場合ニ於テ現役海軍下士若クハ一等卒ヨリ任用進級セシメ其ノ補充ヲナス能ハサルトキハ前諸條ニ準據シ召集中ノ豫備役後備役海軍下士及一等卒ヲ任用進級セシムルコトヲ得
本條ノ場合ニ於テハ召集中ノ勤務日數ヲ現役中ノ勤務日數ニ通算ス
第十七條 戰時若クハ事變ニ際シ勳績アル者又ハ多年現役ニ服シ任用進級資格ヲ備ヘ且拔群ノ勤勞アル者ニシテ現役ヲ退キタルトキハ其ノ際特ニ任用進級セシムルコトヲ得但シ恩給ヲ受クル資格ニ在テハ前官等若クハ前職ニ依ル
第十八條 豫備役後備役海軍下士若クハ一等卒ニシテ戰時若クハ事變ニ際シ召集中勳績アリタル者召集ヲ解キタルトキハ其ノ際特ニ任用進級セシムルコトヲ得但シ恩給ヲ受クル資格ニ在テハ新官等ニ依ルコトヲ得ス
第十九條 左ノ場合ニ在テハ第十四條ニ依ルノ外他ノ定規ニ關セス任用進級セシムルコトヲ得
一 敵前ニ在テ殊勳ヲ奏セシトキ
二 戰時ニ在テ人員多ク缺乏シ敍任ノ定規ヲ履ム能ハサルトキ
附 則
第二十條 明治二十三年勅令第百五十二號海軍下士任用進級條例及明治二十七年勅令第百九十九號海軍豫備後備武官進級任用條例ハ本令施行ノ日ヨリ廢止ス
朕海軍准士官下士任用進級条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年九月五日
海軍大臣 侯爵 西郷従道
勅令第三百一号
海軍准士官下士任用進級条例
第一条 海軍准士官ハ海軍一等下士ヨリ任用ス
第二条 海軍下士ハ三等ヲ初任トシ左ノ区別ニ従ヒ任用ス
一 三等兵曹ハ一等水兵ヨリ任用ス
二 三等信号兵曹ハ一等信号兵ヨリ任用ス
三 三等船匠手ハ一等木工ヨリ任用ス
四 三等軍楽手ハ一等軍楽生ヨリ任用ス
五 三等機関兵曹ハ一等機関兵ヨリ任用ス
六 三等鍛冶手ハ一等鍛冶ヨリ任用ス
七 三等看護手ハ一等看護ヨリ任用ス
八 三等厨宰ハ一等主厨ヨリ任用ス
三等筆記ノ任用ハ明治二十九年勅令第百四十六号及第二百四十四号ニ依ル
第三条 年齢二十年未満ノ者ハ海軍下士ニ任用スルコトヲ得ス
第四条 海軍准士官下士ノ任用進級ハ総テ抜擢ヲ以テシ級ヲ逐ヒ歴進セシム但シ欠員ナキトキハ任用進級ヲ行ハス
第五条 海軍准士官下士ハ任用進級試験ニ合格シタル者ニアラサレハ任用進級セシムルコトヲ得ス但シ特殊ノ技能ヲ有スル者ニ限リ其ノ試験ヲ用ヒスシテ任用進級セシムルコトヲ得
戦時若クハ事変ニ際シテハ前項ノ試験ヲ行ハスシテ任用進級セシムルコトヲ得
任用進級試験ニ関スル規程ハ海軍大臣之ヲ定ム
第六条 任用進級試験ハ第七条ニ掲クル実役停年最下期限ヲ超エタル者ニアラサレハ受クルコトヲ得ス
第七条 実役停年最下期限ヲ定ムルコト左ノ如シ
一 一等卒ヨリ三等下士ニ任スルハ海上勤務一箇年若クハ陸上勤務一箇年四箇月
二 三等下士ヨリ其ノ上級ノ官ニ進ムハ海上勤務一箇年若クハ陸上勤務一箇年四箇月
三 二等下士ヨリ其ノ上級ノ官ニ進ムハ海上勤務一箇年半若クハ陸上勤務二箇年
四 一等下士ヨリ准士官ニ任スルハ海上勤務二箇年若クハ陸上勤務二箇年八箇月
第八条 実役停年ハ海上勤務若クハ陸上勤務ヲ以テ算ス
海上勤務ヲ陸上勤務ニ改算スルニハ海上勤務日数ニ其ノ三分ノ一ヲ加ヘ陸上勤務ヲ海上勤務ニ改算スルニハ陸上勤務日数ヨリ其ノ四分ノ一ヲ減ス
第九条 海上勤務トハ艦船ニ乗組ミ服務スルヲ謂フ其ノ艦船ノ種類ハ海軍大臣之ヲ定ム
第十条 海上勤務ノ者ニシテ公務ニ原因セサル傷痍疾病ニ依リ陸上若クハ病院船ニ在ル間ノ日数ハ海上勤務ニ算入スルコトヲ得ス
第十一条 逃亡、収禁、処刑及自己ノ願ニ依リ帰省中ノ日数並ニ正当ノ理由ナクシテ敵ノ捕虜トナリタル間ノ日数ハ実役停年ニ算入スルコトヲ得ス
第十二条 戦時ニ在テハ実役停年最下期限ヲ其ノ半ニ減スルコトヲ得
第十三条 将校及其ノ相当官ハ各其ノ職権ニ依リ部下ヲ抜擢スルノ権ヲ有ス但シ直属長官アル者ハ其ノ監督ノ下ニ在テ之ヲ行フ
第十四条 下士ノ任用進級ハ海兵団在籍ノ区別ニ従ヒ所管鎮守府司令長官之ヲ行ヒ其ノ艦隊ニ属スル者ハ艦隊司令長官之ヲ行フ
一等下士ヨリ准士官ニ任スルハ海軍大臣之ヲ行フ
任用進級取扱ニ関スル規程ハ海軍大臣之ヲ定ム
第十五条 前諸条ハ現役者ニノミ適用ス
第十六条 戦時若クハ事変ニ際シ現役海軍准士官下士ニ欠員ヲ生シタル場合ニ於テ現役海軍下士若クハ一等卒ヨリ任用進級セシメ其ノ補充ヲナス能ハサルトキハ前諸条ニ準拠シ召集中ノ予備役後備役海軍下士及一等卒ヲ任用進級セシムルコトヲ得
本条ノ場合ニ於テハ召集中ノ勤務日数ヲ現役中ノ勤務日数ニ通算ス
第十七条 戦時若クハ事変ニ際シ勲績アル者又ハ多年現役ニ服シ任用進級資格ヲ備ヘ且抜群ノ勤労アル者ニシテ現役ヲ退キタルトキハ其ノ際特ニ任用進級セシムルコトヲ得但シ恩給ヲ受クル資格ニ在テハ前官等若クハ前職ニ依ル
第十八条 予備役後備役海軍下士若クハ一等卒ニシテ戦時若クハ事変ニ際シ召集中勲績アリタル者召集ヲ解キタルトキハ其ノ際特ニ任用進級セシムルコトヲ得但シ恩給ヲ受クル資格ニ在テハ新官等ニ依ルコトヲ得ス
第十九条 左ノ場合ニ在テハ第十四条ニ依ルノ外他ノ定規ニ関セス任用進級セシムルコトヲ得
一 敵前ニ在テ殊勲ヲ奏セシトキ
二 戦時ニ在テ人員多ク欠乏シ叙任ノ定規ヲ履ム能ハサルトキ
附 則
第二十条 明治二十三年勅令第百五十二号海軍下士任用進級条例及明治二十七年勅令第百九十九号海軍予備後備武官進級任用条例ハ本令施行ノ日ヨリ廃止ス