第一條 此ノ稅法ニ於テ酒類ト稱スルハ淸酒、濁酒、白酒、味淋、燒酎、酒精ノ六種トス
第二條 酒類ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所每ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ其ノ製造ヲ廢止セムトスルトキハ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
第三條 其ノ年十月一日ヨリ翌年九月三十日マテヲ以テ一酒造年度トス
第四條 酒類ヲ製造スル者ニハ其ノ造石數ニ應シ左ノ割合ニ從ヒ造石稅ヲ課ス
但當分ノ內北海道ニ於テハ渡島國一圓後志國ノ內八郡磯谷郡歌棄郡壽都郡太櫓郡瀨棚郡久遠郡奥尻郡島牧郡膽振國ノ內一郡山越郡ヲ除ク外各種一石ニ付金一圓ヲ減ス
第五條 新ニ淸酒製造ノ免許ヲ受クル者ハ造石高百石以上ニ非サレハ許可セス
第七條 政府ハ酒類ヲ製造スル者脫稅又ハ逋稅ヲ謀ルノ所爲アリト認ムルトキハ前條ノ納期ニ拘ラス造石稅ノ全部又ハ一部ヲ徵收スルコトヲ得
酒類ノ造石數ヲ査定スルハ容器ノ容量ニ依ル但シ淸酒ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ査定石數百分二以內ノ滓引減量ヲ控除スルコトヲ得
犯則其ノ他ノ事故ニ依リ前各項ニ依リ難キ場合ニ於テハ現在ノ酒類又ハ證憑物件ニ就キ之ヲ査定ス
第九條 粕漉シタル酒類ハ粕漉ニ依リ增加シタル分ノミニ就キ其ノ造石數ヲ査定ス
第十條 酒類ヲ製造スル者ノ製造ニ係ル醪ハ左ノ場合ニ於テハ濁酒ヲ製成シタルモノトシテ其ノ造石數ヲ査定ス
第十一條 酒類ヲ製造スル者旣ニ査定ヲ受ケタル酒類ノ造石數ニ對シテハ特ニ法律ヲ以テ定ムル場合ノ外其ノ造石稅ヲ免ルヽコトヲ得ス
第十二條 左ノ酒類ニ係ル未納ノ造石稅ハ之ヲ免除スルコトヲ得但シ製造場外ニ移出シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十三條 酒類ヲ製造スル者ハ納稅保證トシテ造石稅半額ニ相當スル保證物ヲ供スヘシ保證物ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條 酒類ヲ製造スル者稅金ヲ納メサルトキハ政府ハ納稅保證ニ供シタル保證物及保存ノ義務ヲ有スル酒類ヲ公賣シテ造石稅金ヲ徵收スヘシ但シ仍滯納アルトキ滯納處分ノ執行ヲ妨ケス
第十六條 納稅保證人ハ酒類ヲ製造スル者造石稅ヲ完納スル能ハサルトキハ納稅者トシテ其ノ義務ヲ負擔スルモノトス
第十七條 酒類ヲ製造スル者納稅保證トシテ保存ノ義務ヲ有スル酒類ハ之ヲ他人ニ讓渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第十八條 酒類ヲ製造スル者ハ造石數査定前ニ於テ其ノ酒類ヲ他人ニ讓渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第十九條 收稅官吏ハ命令ノ規程ニ依リ酒類ノ製造出入ニ關スル一切ノ帳簿書類及酒類製造上必要ナル建築物、材料、器械其ノ他ノ物件ヲ檢査シ又ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十條 酒類ヲ製造セサル者酒母又ハ醪ヲ製造セムトスルトキハ政府ノ免許ヲ受ケ酒類ヲ製造スル者ト等シク其ノ檢査監督ヲ受クヘシ
第二十一條 酒類ヲ製造セサル者其ノ製造ニ係ル醪ヲ飮料ニ供シ又ハ飮料トシテ讓渡シタルトキハ濁酒ヲ製造スル者トシ其ノ製造ニ係ル總石數ノ造石稅ヲ課ス
第二十二條 免許ヲ受ケスシテ酒類、酒類製造用ノ爲酒母若ハ醪ヲ製造シ又ハ他人ヨリ讓受ケタル酒母若ハ醪ヲ以テ酒類ヲ製造シタル者ハ五十圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス
免許ヲ受ケスシテ醪、濁酒、白酒、燒酎、製造用ノ爲酒母一斗以下ヲ製造シ又ハ他人ヨリ讓受ケタル酒母ヲ以テ醪、濁酒、白酒、燒酎ノ一種又ハ數種ヲ通シテ三石以下ヲ製造シタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス但シ本項前段ノ場合ニ於テ酒母ノ量數不明ナルモ其ノ製造シタル醪若ハ酒類ノ量數一種若ハ數種ヲ通シテ三石以下ナルトキハ仍本項ニ依ル
第二十三條 酒類ヲ製造セサル者免許ヲ受ケスシテ酒母又ハ醪ヲ製造シタルトキハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十四條 酒類ヲ製造スル者詐僞其ノ他不正ノ所爲ヲ以テ造石數ノ査定ヲ免カレ又ハ免カレムトシタルトキハ其ノ石數ノ造石稅三倍ニ相當スル罰金若ハ科料ニ處ス
第二十五條 酒類ヲ製造スル者故意ニ事故ヲ作爲シ又ハ詐術ヲ構ヘ造石稅ノ免除ヲ得又ハ得ムトシタルトキハ其ノ石數ノ造石稅三倍ニ相當スル罰金若ハ科料ニ處ス
第二十六條 納稅保證トシテ保存ノ義務ヲ有スル酒類ヲ他人ニ讓渡シタル者滯納處分ヲ受クルモ仍稅金ヲ完納スルコト能ハサルトキハ其ノ不足造石稅ノ三倍ニ相當スル罰金若ハ科料ニ處ス
第二十七條 酒類製造用ト否トヲ問ハス其ノ製造シタル酒母又ハ醪ノ檢査ヲ受ケサル者ハ十圓以上三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十八條 酒類ヲ製造スル者第十七條又ハ第十八條ノ禁令ヲ犯シタルトキハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九條 酒類ヲ製造スル者酒類ノ製造出入ニ關シ帳簿ノ記載又ハ事實ノ申吿ヲ詐リタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處シ帳簿ノ記載ヲ怠リタル者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
第三十條 酒類ヲ製造スル者收稅官吏ノ職務執行ヲ拒ミ又ハ之ヲ忌避シ又ハ之ニ支障ヲ加ヘタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第三十一條 此ノ稅法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減輕、再犯加重、數罪俱發ノ例ヲ用井ス但シ刑法第七十五條第一項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三十二條 酒類ヲ製造スル者ノ代理人、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ此ノ稅法ヲ犯シタルトキハ製造主ハ自己ノ指揮ニ出サルノ故ヲ以テ此ノ稅法ノ處罰ヲ免ルコトヲ得ス
第三十三條 第二十九條乃至第三十二條ハ酒類ヲ製造セサル者ニシテ酒母又ハ醪ヲ製造スル者ニモ適用ス
第三十四條 酒類ヲ製造シタル者ハ其ノ製造ヲ廢止スルモ造石稅完納前ニアリテハ總テ此ノ稅法ノ規程ニ從フモノトス
第三十五條 府縣及市町村ハ此ノ稅法ニ依リ造石稅ヲ課スル酒類ニ對シ特令アルモノヲ除キ府縣稅若ハ地方稅及市町村稅町村費ヲ課スルコトヲ得ス