朕酒造稅法施行規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年八月十七日
大藏大臣 子爵 渡邊國武
勅令第二百八十七號
酒造稅法施行規則
第一條 酒類ヲ製造セムトスル者ハ其ノ酒類製造場及製造スヘキ酒類ヲ定メ其ノ居所氏名ヲ記シ地方長官ニ申請シ其ノ免許ヲ受クヘシ但シ商事會社ヲ組織シテ酒類ヲ製造セムトスル者ハ合名會社合資會社ニ在テハ其ノ契約書謄本ヲ添ヘ社員ヨリ、株式會社ニ在テハ發起認可書ノ謄本及假定款謄本ヲ添ヘ發起人ヨリ申請スヘシ
酒類ノ製造場ヲ移轉セムトスルトキ又ハ製造スヘキ酒類ヲ變更セムトスルトキハ地方長官ニ申請シ其ノ免許ヲ受クヘシ
第二條 酒類ノ製造場ハ敷地ノ連續スルト否トヲ問ハス總テ一製造場ト認ムヘキモノヲ謂フ
第三條 酒類製造ノ免許ヲ受ケタル者ハ其ノ製造場每ニ地所建物ノ詳細ナル圖面竝ニ酒造用容器、器具、器械ノ目錄ヲ調製シ事業著手前ニ地方長官ニ提出スヘシ
前項ノ容器、器具、器械ヲ修理シ又ハ前項ノ圖面目錄ニ異動ヲ生シタルトキハ其ノ都度申吿スヘシ酒類製造主ノ居所氏名ニ異動ヲ生シタルトキ亦同シ
第四條 酒類製造主ヨリ前條第一項ノ目錄ヲ提出シ又ハ同第二項ノ申吿ヲ爲シタルトキハ地方長官ハ其ノ容器、器具、器械ノ檢定ヲ爲スヘシ其ノ檢定後ニアラサレハ酒類製造主ハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第五條 酒類製造主ハ每酒造年度ニ於テ製造スヘキ每酒類ノ見込造石數、製造著手ノ時期、製造方法及其ノ仕込數ヲ記載シ其ノ酒造年度開始前ニ地方長官ニ申吿スヘシ
前項ニ依リ申吿シタル事項ヲ變更セムトスルトキハ其ノ都度申吿スヘシ但シ製造方法ノ變更ニ係ルモノハ承認ヲ受クヘシ
第六條 酒類製造主ノ相續人ニ於テ其ノ製造事業ヲ繼續セムトスルトキハ其ノ旨地方長官ニ申出製造繼續ノ免許ヲ受クヘシ
相續ノ場合ヲ除ク外酒類製造ノ事業ヲ引繼カムトスル者ハ總テ第一條ニ依リ酒類製造ノ免許ヲ受クヘシ此ノ場合ニ於テハ前製造主ハ酒造稅法第二條ニ依リ其ノ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
第七條 酒類ノ造石稅ハ其ノ製造場所在ノ地方ニ於テ之ヲ徵收ス
第八條 酒類ノ造石數ハ容器ノ容量ニ依リ一容器每ニ其ノ現在スル酒類ノ總量ニ就キ之ヲ査定スヘシ
第九條 淸酒ノ造石數ヲ査定スルトキハ其ノ石數ヨリ百分ノ二ヲ滓引減量トシテ控除スヘシ但シ犯則ニ係ル淸酒ハ滓引減量ヲ控除スルノ限ニ在ラス
第十條 酒類製造主自己ノ製造シタル酒類若ハ製造場外ヨリ移入シタル醪又ハ酒類ヲ以テ酒類ヲ製造シタルトキハ其ノ製成酒類ノ總石數ニ就キ造石數ヲ査定スヘシ
第十一條 酒造原料用ノ爲メ酒類ヲ製造スルトキハ其ノ成功ノ時之ヲ檢査スヘシ酒造用原料品トシテ酒類ヲ製造場內ニ移入シタルトキ亦同シ
收稅官吏ハ監督上必要ト認ムルトキハ前項酒類ニ封緘ヲ附スルコトヲ得
第十二條 酒造用原料品トシタル酒類ヲ他人ニ讓渡シ、質入シ、消費スルトキ若ハ公賣セラルヽトキ又ハ製造場外ニ移出スルトキハ其ノ造石數ヲ査定スヘシ但シ他ヨリ讓受シタルモノニ係ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十三條 酒類製造主酒類ヲ粕漉セムトスルトキハ著手前ニ其ノ數量時期等ヲ地方長官ニ申吿スヘシ
第十四條 酒類製造主酒類ノ粕漉ヲ爲シタルトキ其ノ原酒類ノ石數ヲ確證スル能ハサル場合ニ於テハ其ノ總石數ニ就キ造石數ヲ査定スヘシ
第十五條 酒滓、酒粕、蒸溜粕ヲ使用シテ製造スル酒類ハ割水其ノ他如何ナル名稱ヲ附スルモ總テ其ノ造石數ヲ査定スヘシ
第十六條 酒類製造主其ノ製造用ニ供スル醪ヲ他人ニ讓渡シ若ハ飮料ニ供シ又ハ酒類製造用ノ外ニ供セムトスルトキハ其ノ旨直ニ地方長官ニ申吿スヘシ
第十七條 酒母、醪又ハ原料用酒類ノ廢棄亡失若ハ腐敗シタルトキハ酒類製造主ハ其ノ旨直ニ地方長官ニ申吿スヘシ
第十八條 酒造稅法第十二條ニ依リ未納造石稅ノ免除ヲ請ハムトスル者ハ其ノ事實ノ生シタルトキ直ニ地方長官ニ申請スヘシ
第十九條 前條ノ申請ヲ受ケタルトキハ地方長官ハ其ノ事實ヲ調査シ其ノ廢棄若ハ亡失ヲ認ムルトキ又ハ腐敗ノ爲メ使用ノ途ナキヲ認ムルトキハ未納稅金ノ免除處分ヲ爲スヘシ
腐敗酒ヲ以テ蒸溜酒ノ製造用ニ供セムトスルモノハ未納稅金ノ免除處分ヲ爲シ其ノ酒類ハ燒酎又ハ酒精ノ原料品ノ取扱ヲ爲スヘシ
第二十條 地方長官酒類ノ造石數ヲ査定シタルトキハ其ノ際酒類製造主ヲシテ酒造稅法第十三條ニ依リ保證物ヲ提供セシムヘシ但シ酒類製造主ハ見込造石數ニ依リ豫メ保證物ノ提供ヲ申請スルコトヲ得
酒類製造主保證物ノ免除ヲ請ハムトスルトキハ酒造稅法第十四條ノ一方法又ハ數方法ヲ選ミ之ヲ申請スヘシ
第二十一條 保證物ノ種類ハ左ニ揭クルモノニ限ル
一 金錢
二 利付國債證券地方債證券
三 政府ノ保護又ハ監視ヲ受クル株式會社ノ株券又ハ債券
四 土地
五 酒類製造場內ノ建物但シ火災保險ニ付シタルモノニ限ル
第二十二條 保證物ノ保證價格ヲ定ムルハ有價證券ハ市場ニ於ケル前月ノ平均價格、土地ハ土地臺帳ニ登記シタル地價、建物ハ被保險額ニ依ル
第二十三條 酒類製造主保證物ヲ提供スルトキハ金錢有價證券ハ之ヲ供託シ供託受領證ヲ地方長官ニ提出シ土地建物ハ書入ノ登記ヲ爲スヘシ第三者ニ於テ酒類製造主ノ爲メ保證物ヲ提供スルトキ亦同シ
第二十四條 保證物トシテ提供シタル證券債券ノ償却ヲ受クルニ至リタルトキ若ハ建物ノ壞倒亡失シタルトキ又ハ保險契約ノ消滅シタルトキハ酒類製造主ハ地方長官ノ指定期限內ニ更ニ保證物ヲ提供スヘシ但シ建物ニ對スル保險金ヲ受領シタルトキハ其ノ保險金ヲ保證物トシテ供託スヘシ
第二十五條 酒造稅法第十三條ノ保證物ヲ提供セサルトキハ收稅官吏ハ製造酒類ニ封緘ヲ附シ之ヲ讓渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場外ニ移出スルヲ停止スルコトヲ得
第二十六條 納稅保證人ハ地方長官ニ於テ納稅保證ニ堪フル資力アリト認ムル者ニ限ル
第二十七條 地方長官ハ納稅保證人ノ資力納稅保證ニ堪ヘサルニ至リタリト認ムルトキハ之ヲ變換セシムルコトヲ得
第二十八條 收稅官吏ハ納稅保證トシテ保存ノ義務ヲ有スル酒類ニ封緘ヲ附スルコトヲ得
第二十九條 地方長官ハ納稅保證トシテ保存ノ義務ヲ有スル酒類納稅保證ニ適セサルニ至リタリト認ムルトキハ之ヲ變換セシムルコトヲ得
第三十條 酒類製造主ハ地方長官ニ申出保證物、納稅保證人又ハ保存ノ義務ヲ有スル酒類ノ變換ヲ求ムルコトヲ得
第三十一條 酒類製造主稅金ヲ納メサルトキハ納稅保證人ニ通知シ其ノ稅金ヲ納メシメ又ハ滯納處分ノ手續ニ依リ其ノ保證物又ハ保存ノ義務ヲ有スル酒類ヲ公賣スヘシ
納稅保證人稅金ヲ完納セサルトキ又ハ保證物若ハ保存ノ義務ヲ有スル酒類ヲ公賣シ尙ホ稅金ニ不足アルトキハ酒類製造主ニ對シ滯納處分ヲ行フヘシ
前項滯納處分ノ後尙ホ稅金ニ不足アルトキハ保證人ニ對シ滯納處分ヲ行フヘシ
第三十二條 同一製造場內ニ於テ淸酒竝ニ濁酒ヲ製造セムトスル者ハ其ノ釀造藏置ニ供スル場所ヲ酒類別ニ特定シ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三十三條 地方長官容器、器具、器械ノ檢定ヲ爲シタルトキハ之ニ其ノ番號容量其ノ他必要ナル事項ヲ標記又ハ烙記スルコトヲ得
第三十四條 收稅官吏ハ隨時酒類製造場ニ就キ酒類、酒造用原料品、器具、器械、容器、帳簿又ハ書類ヲ檢査スヘシ
第三十五條 收稅官吏ハ榨器械、蒸溜器械ノ使用停止中之ニ封緘ヲ附スヘシ但シ修理其ノ他必要ノ事故アルトキハ之ヲ解除スルコトヲ得
收稅官吏ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ原料用酒類ニ封緘ヲ附スルコトヲ得
第三十六條 自己ノ所有ト否トヲ問ハス容器、器具、器械及酒造用原料品ハ收稅官吏ノ承認ヲ受クルニアラサレハ酒類製造中ハ之ヲ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第三十七條 酒造用原料品中酒母又ハ醪ノ檢査ハ熟成ノ時ニ於テ之ヲ行フ但シ其ノ熟成シタル酒母又ハ醪ヲ製造場內ニ移入シタルトキハ其ノ移入ノ時ニ於テスヘシ
酒母、醪以外ノ原料品ハ其ノ使用前便宜之ヲ檢査スヘシ其ノ檢査後ニアラサレハ酒類製造主ハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第三十八條 酒類製造主ハ製造方法ノ異ナル每ニ竝ニ一仕込每ニ酒母及醪ニ記號ヲ附シテ之ヲ區分シ收稅官吏ノ承認ヲ受クルニアラサレハ彼此混淆スルコトヲ得ス
第三十九條 酒類製造主左ニ揭クル事項ヲ行ハムトスルトキハ收稅官吏ノ承認ヲ受クヘシ
一 熟成シタル酒母ヲ醪ニ仕込ムコト
二 熟成シタル醪ヲ酒母ニ代用シ添掛ヲ爲スコト
三 酒母、醪又ハ原料用酒類ノ容器ヲ變換スルコト
四 仕込濟ノ醪ニ水ヲ混和スルコト
五 原料用酒類ノ用途ヲ變更スルコト
六 藏出前ニ於ケル自己製造ノ酒類ニ買入酒類ヲ混和シ又ハ割水ヲ爲スコト
第四十條 酒類製造場外ヨリ酒類製造場內ニ酒母、醪又ハ酒類ヲ移入シタルトキハ其ノ旨直ニ地方長官ニ申吿スヘシ
第四十一條 二仕込以上ノ醪ヲ合併シテ淸酒ヲ榨揚ケムトスルトキハ收稅官吏ノ承認ヲ受クヘシ但シ七仕込以上ノ醪ハ之ヲ合併スルコトヲ得ス
第四十二條 酒粕ハ其ノ榨揚ケタル酒類ノ造石數査定ノ時之ヲ檢査スヘシ
酒類製造主ハ前項檢査後ニアラサレハ酒粕ヲ製造場外ニ移出シ又ハ使用シ若ハ他ノ酒粕ト混合スルコトヲ得ス
第四十三條 酒類製造主ハ酒造用原料品及酒粕ノ受拂、酒母及醪ノ仕込、燒酎又ハ酒精ノ造リ込、酒類ノ藏出、受拂、增減ニ關シ詳細明瞭ニ其ノ事實ヲ帳簿ニ記載スヘシ但シ他ノ法律命令又ハ商業上ノ慣例ニ依リ設備スル帳簿ニシテ本文ノ事項ヲ明ニスルモノアルトキハ此ノ限ニ在ラス
附 則
第四十四條 酒造稅法施行前ニ於テ明治十三年布吿第四十號ニ依リ酒造營業ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ尙ホ引續キ酒造稅法第二條ノ免許ヲ受ケムトスル者ハ明治二十九年九月三十日迄ニ第三條ノ圖面、目錄ヲ添ヘ其ノ旨地方長官ニ申請スヘシ
第四十五條 酒造稅法第三十六條ニ該當スル者ハ明治十三年以前ヨリ引續キ酒類ヲ製造スルコトノ事實ヲ具シ地方長官ニ免許ヲ申請スヘシ
朕酒造税法施行規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年八月十七日
大蔵大臣 子爵 渡辺国武
勅令第二百八十七号
酒造税法施行規則
第一条 酒類ヲ製造セムトスル者ハ其ノ酒類製造場及製造スヘキ酒類ヲ定メ其ノ居所氏名ヲ記シ地方長官ニ申請シ其ノ免許ヲ受クヘシ但シ商事会社ヲ組織シテ酒類ヲ製造セムトスル者ハ合名会社合資会社ニ在テハ其ノ契約書謄本ヲ添ヘ社員ヨリ、株式会社ニ在テハ発起認可書ノ謄本及仮定款謄本ヲ添ヘ発起人ヨリ申請スヘシ
酒類ノ製造場ヲ移転セムトスルトキ又ハ製造スヘキ酒類ヲ変更セムトスルトキハ地方長官ニ申請シ其ノ免許ヲ受クヘシ
第二条 酒類ノ製造場ハ敷地ノ連続スルト否トヲ問ハス総テ一製造場ト認ムヘキモノヲ謂フ
第三条 酒類製造ノ免許ヲ受ケタル者ハ其ノ製造場毎ニ地所建物ノ詳細ナル図面並ニ酒造用容器、器具、器械ノ目録ヲ調製シ事業著手前ニ地方長官ニ提出スヘシ
前項ノ容器、器具、器械ヲ修理シ又ハ前項ノ図面目録ニ異動ヲ生シタルトキハ其ノ都度申告スヘシ酒類製造主ノ居所氏名ニ異動ヲ生シタルトキ亦同シ
第四条 酒類製造主ヨリ前条第一項ノ目録ヲ提出シ又ハ同第二項ノ申告ヲ為シタルトキハ地方長官ハ其ノ容器、器具、器械ノ検定ヲ為スヘシ其ノ検定後ニアラサレハ酒類製造主ハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第五条 酒類製造主ハ毎酒造年度ニ於テ製造スヘキ毎酒類ノ見込造石数、製造著手ノ時期、製造方法及其ノ仕込数ヲ記載シ其ノ酒造年度開始前ニ地方長官ニ申告スヘシ
前項ニ依リ申告シタル事項ヲ変更セムトスルトキハ其ノ都度申告スヘシ但シ製造方法ノ変更ニ係ルモノハ承認ヲ受クヘシ
第六条 酒類製造主ノ相続人ニ於テ其ノ製造事業ヲ継続セムトスルトキハ其ノ旨地方長官ニ申出製造継続ノ免許ヲ受クヘシ
相続ノ場合ヲ除ク外酒類製造ノ事業ヲ引継カムトスル者ハ総テ第一条ニ依リ酒類製造ノ免許ヲ受クヘシ此ノ場合ニ於テハ前製造主ハ酒造税法第二条ニ依リ其ノ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
第七条 酒類ノ造石税ハ其ノ製造場所在ノ地方ニ於テ之ヲ徴収ス
第八条 酒類ノ造石数ハ容器ノ容量ニ依リ一容器毎ニ其ノ現在スル酒類ノ総量ニ就キ之ヲ査定スヘシ
第九条 清酒ノ造石数ヲ査定スルトキハ其ノ石数ヨリ百分ノ二ヲ滓引減量トシテ控除スヘシ但シ犯則ニ係ル清酒ハ滓引減量ヲ控除スルノ限ニ在ラス
第十条 酒類製造主自己ノ製造シタル酒類若ハ製造場外ヨリ移入シタル醪又ハ酒類ヲ以テ酒類ヲ製造シタルトキハ其ノ製成酒類ノ総石数ニ就キ造石数ヲ査定スヘシ
第十一条 酒造原料用ノ為メ酒類ヲ製造スルトキハ其ノ成功ノ時之ヲ検査スヘシ酒造用原料品トシテ酒類ヲ製造場内ニ移入シタルトキ亦同シ
収税官吏ハ監督上必要ト認ムルトキハ前項酒類ニ封緘ヲ附スルコトヲ得
第十二条 酒造用原料品トシタル酒類ヲ他人ニ譲渡シ、質入シ、消費スルトキ若ハ公売セラルヽトキ又ハ製造場外ニ移出スルトキハ其ノ造石数ヲ査定スヘシ但シ他ヨリ譲受シタルモノニ係ルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十三条 酒類製造主酒類ヲ粕漉セムトスルトキハ著手前ニ其ノ数量時期等ヲ地方長官ニ申告スヘシ
第十四条 酒類製造主酒類ノ粕漉ヲ為シタルトキ其ノ原酒類ノ石数ヲ確証スル能ハサル場合ニ於テハ其ノ総石数ニ就キ造石数ヲ査定スヘシ
第十五条 酒滓、酒粕、蒸溜粕ヲ使用シテ製造スル酒類ハ割水其ノ他如何ナル名称ヲ附スルモ総テ其ノ造石数ヲ査定スヘシ
第十六条 酒類製造主其ノ製造用ニ供スル醪ヲ他人ニ譲渡シ若ハ飲料ニ供シ又ハ酒類製造用ノ外ニ供セムトスルトキハ其ノ旨直ニ地方長官ニ申告スヘシ
第十七条 酒母、醪又ハ原料用酒類ノ廃棄亡失若ハ腐敗シタルトキハ酒類製造主ハ其ノ旨直ニ地方長官ニ申告スヘシ
第十八条 酒造税法第十二条ニ依リ未納造石税ノ免除ヲ請ハムトスル者ハ其ノ事実ノ生シタルトキ直ニ地方長官ニ申請スヘシ
第十九条 前条ノ申請ヲ受ケタルトキハ地方長官ハ其ノ事実ヲ調査シ其ノ廃棄若ハ亡失ヲ認ムルトキ又ハ腐敗ノ為メ使用ノ途ナキヲ認ムルトキハ未納税金ノ免除処分ヲ為スヘシ
腐敗酒ヲ以テ蒸溜酒ノ製造用ニ供セムトスルモノハ未納税金ノ免除処分ヲ為シ其ノ酒類ハ焼酎又ハ酒精ノ原料品ノ取扱ヲ為スヘシ
第二十条 地方長官酒類ノ造石数ヲ査定シタルトキハ其ノ際酒類製造主ヲシテ酒造税法第十三条ニ依リ保証物ヲ提供セシムヘシ但シ酒類製造主ハ見込造石数ニ依リ予メ保証物ノ提供ヲ申請スルコトヲ得
酒類製造主保証物ノ免除ヲ請ハムトスルトキハ酒造税法第十四条ノ一方法又ハ数方法ヲ選ミ之ヲ申請スヘシ
第二十一条 保証物ノ種類ハ左ニ掲クルモノニ限ル
一 金銭
二 利付国債証券地方債証券
三 政府ノ保護又ハ監視ヲ受クル株式会社ノ株券又ハ債券
四 土地
五 酒類製造場内ノ建物但シ火災保険ニ付シタルモノニ限ル
第二十二条 保証物ノ保証価格ヲ定ムルハ有価証券ハ市場ニ於ケル前月ノ平均価格、土地ハ土地台帳ニ登記シタル地価、建物ハ被保険額ニ依ル
第二十三条 酒類製造主保証物ヲ提供スルトキハ金銭有価証券ハ之ヲ供託シ供託受領証ヲ地方長官ニ提出シ土地建物ハ書入ノ登記ヲ為スヘシ第三者ニ於テ酒類製造主ノ為メ保証物ヲ提供スルトキ亦同シ
第二十四条 保証物トシテ提供シタル証券債券ノ償却ヲ受クルニ至リタルトキ若ハ建物ノ壊倒亡失シタルトキ又ハ保険契約ノ消滅シタルトキハ酒類製造主ハ地方長官ノ指定期限内ニ更ニ保証物ヲ提供スヘシ但シ建物ニ対スル保険金ヲ受領シタルトキハ其ノ保険金ヲ保証物トシテ供託スヘシ
第二十五条 酒造税法第十三条ノ保証物ヲ提供セサルトキハ収税官吏ハ製造酒類ニ封緘ヲ附シ之ヲ譲渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場外ニ移出スルヲ停止スルコトヲ得
第二十六条 納税保証人ハ地方長官ニ於テ納税保証ニ堪フル資力アリト認ムル者ニ限ル
第二十七条 地方長官ハ納税保証人ノ資力納税保証ニ堪ヘサルニ至リタリト認ムルトキハ之ヲ変換セシムルコトヲ得
第二十八条 収税官吏ハ納税保証トシテ保存ノ義務ヲ有スル酒類ニ封緘ヲ附スルコトヲ得
第二十九条 地方長官ハ納税保証トシテ保存ノ義務ヲ有スル酒類納税保証ニ適セサルニ至リタリト認ムルトキハ之ヲ変換セシムルコトヲ得
第三十条 酒類製造主ハ地方長官ニ申出保証物、納税保証人又ハ保存ノ義務ヲ有スル酒類ノ変換ヲ求ムルコトヲ得
第三十一条 酒類製造主税金ヲ納メサルトキハ納税保証人ニ通知シ其ノ税金ヲ納メシメ又ハ滞納処分ノ手続ニ依リ其ノ保証物又ハ保存ノ義務ヲ有スル酒類ヲ公売スヘシ
納税保証人税金ヲ完納セサルトキ又ハ保証物若ハ保存ノ義務ヲ有スル酒類ヲ公売シ尚ホ税金ニ不足アルトキハ酒類製造主ニ対シ滞納処分ヲ行フヘシ
前項滞納処分ノ後尚ホ税金ニ不足アルトキハ保証人ニ対シ滞納処分ヲ行フヘシ
第三十二条 同一製造場内ニ於テ清酒並ニ濁酒ヲ製造セムトスル者ハ其ノ醸造蔵置ニ供スル場所ヲ酒類別ニ特定シ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三十三条 地方長官容器、器具、器械ノ検定ヲ為シタルトキハ之ニ其ノ番号容量其ノ他必要ナル事項ヲ標記又ハ烙記スルコトヲ得
第三十四条 収税官吏ハ随時酒類製造場ニ就キ酒類、酒造用原料品、器具、器械、容器、帳簿又ハ書類ヲ検査スヘシ
第三十五条 収税官吏ハ榨器械、蒸溜器械ノ使用停止中之ニ封緘ヲ附スヘシ但シ修理其ノ他必要ノ事故アルトキハ之ヲ解除スルコトヲ得
収税官吏ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ原料用酒類ニ封緘ヲ附スルコトヲ得
第三十六条 自己ノ所有ト否トヲ問ハス容器、器具、器械及酒造用原料品ハ収税官吏ノ承認ヲ受クルニアラサレハ酒類製造中ハ之ヲ製造場外ニ移出スルコトヲ得ス
第三十七条 酒造用原料品中酒母又ハ醪ノ検査ハ熟成ノ時ニ於テ之ヲ行フ但シ其ノ熟成シタル酒母又ハ醪ヲ製造場内ニ移入シタルトキハ其ノ移入ノ時ニ於テスヘシ
酒母、醪以外ノ原料品ハ其ノ使用前便宜之ヲ検査スヘシ其ノ検査後ニアラサレハ酒類製造主ハ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第三十八条 酒類製造主ハ製造方法ノ異ナル毎ニ並ニ一仕込毎ニ酒母及醪ニ記号ヲ附シテ之ヲ区分シ収税官吏ノ承認ヲ受クルニアラサレハ彼此混淆スルコトヲ得ス
第三十九条 酒類製造主左ニ掲クル事項ヲ行ハムトスルトキハ収税官吏ノ承認ヲ受クヘシ
一 熟成シタル酒母ヲ醪ニ仕込ムコト
二 熟成シタル醪ヲ酒母ニ代用シ添掛ヲ為スコト
三 酒母、醪又ハ原料用酒類ノ容器ヲ変換スルコト
四 仕込済ノ醪ニ水ヲ混和スルコト
五 原料用酒類ノ用途ヲ変更スルコト
六 蔵出前ニ於ケル自己製造ノ酒類ニ買入酒類ヲ混和シ又ハ割水ヲ為スコト
第四十条 酒類製造場外ヨリ酒類製造場内ニ酒母、醪又ハ酒類ヲ移入シタルトキハ其ノ旨直ニ地方長官ニ申告スヘシ
第四十一条 二仕込以上ノ醪ヲ合併シテ清酒ヲ榨揚ケムトスルトキハ収税官吏ノ承認ヲ受クヘシ但シ七仕込以上ノ醪ハ之ヲ合併スルコトヲ得ス
第四十二条 酒粕ハ其ノ榨揚ケタル酒類ノ造石数査定ノ時之ヲ検査スヘシ
酒類製造主ハ前項検査後ニアラサレハ酒粕ヲ製造場外ニ移出シ又ハ使用シ若ハ他ノ酒粕ト混合スルコトヲ得ス
第四十三条 酒類製造主ハ酒造用原料品及酒粕ノ受払、酒母及醪ノ仕込、焼酎又ハ酒精ノ造リ込、酒類ノ蔵出、受払、増減ニ関シ詳細明瞭ニ其ノ事実ヲ帳簿ニ記載スヘシ但シ他ノ法律命令又ハ商業上ノ慣例ニ依リ設備スル帳簿ニシテ本文ノ事項ヲ明ニスルモノアルトキハ此ノ限ニ在ラス
附 則
第四十四条 酒造税法施行前ニ於テ明治十三年布告第四十号ニ依リ酒造営業ノ免許ヲ受ケタル者ニシテ尚ホ引続キ酒造税法第二条ノ免許ヲ受ケムトスル者ハ明治二十九年九月三十日迄ニ第三条ノ図面、目録ヲ添ヘ其ノ旨地方長官ニ申請スヘシ
第四十五条 酒造税法第三十六条ニ該当スル者ハ明治十三年以前ヨリ引続キ酒類ヲ製造スルコトノ事実ヲ具シ地方長官ニ免許ヲ申請スヘシ