食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法
法令番号: 法律第59号
公布年月日: 平成10年5月8日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

腸管出血性大腸菌O157による食中毒の大量発生を受け、食品の安全性向上と品質管理の徹底が求められている。これに対応するため、HACCP手法を導入した食品製造過程の管理高度化が必要となっているが、設備投資等の課題があり、事業者が容易に取り組めない状況にある。そこで国として、食品製造過程の管理高度化に関する基本方針を定め、施設整備を促進するための金融・税制上の支援措置を講じるため、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第142回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号

審議経過

第142回国会

衆議院
(平成10年4月2日)
(平成10年4月8日)
(平成10年4月9日)
(平成10年4月10日)
参議院
(平成10年4月14日)
(平成10年4月16日)
(平成10年4月24日)
(平成10年4月30日)
食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
平成十年五月八日
内閣総理大臣 橋本龍太郎
法律第五十九号
食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
製造過程の管理の高度化(第三条―第十二条)
第三章
指定認定機関(第十三条―第二十四条)
第四章
罰則(第二十五条・第二十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、食品の製造過程において、食品に起因する衛生上の危害の発生の防止と適正な品質の確保を図るため、その管理の高度化を促進する措置を講じ、もって公衆衛生の向上及び増進に寄与するとともに、食品の製造又は加工の事業の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「食品」とは、飲食料品のうち薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。
2 この法律において「製造過程の管理の高度化」とは、食品の製造又は加工が次に掲げる製造又は加工の過程を経て行われることにより、衛生管理及び品質管理の確実性及び信頼性が向上することをいう。
一 製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法につき食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が総合的に講じられた製造又は加工の過程
二 製造又は加工の方法及びその品質管理の方法につき適正な品質を確保するための措置が総合的に講じられた製造又は加工の過程
第二章 製造過程の管理の高度化
(基本方針)
第三条 厚生大臣及び農林水産大臣は、製造過程の管理の高度化に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 製造過程の管理の高度化の基本的な方向
二 次条第一項の高度化基準の作成に関する基本的な事項
三 その他製造過程の管理の高度化に関する重要事項
3 厚生大臣及び農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(高度化基準の認定)
第四条 厚生大臣及び農林水産大臣が指定する法人は、その指定に係る食品の種類ごとに、製造過程の管理の高度化に関する基準(以下「高度化基準」という。)を作成し、これを厚生大臣及び農林水産大臣に提出して、当該高度化基準が基本方針に照らし適切なものである旨の認定を受けることができる。
2 高度化基準には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 製造過程の管理の高度化の目標
二 製造過程の管理の高度化を図るための施設の整備の基準
3 厚生大臣及び農林水産大臣は、第一項の認定をしたときは、遅滞なく、当該認定に係る高度化基準を公表しなければならない。
(高度化基準の変更等)
第五条 厚生大臣及び農林水産大臣は、基本方針の変更により前条第一項の認定に係る高度化基準(その変更につき第四項において準用する同条第一項の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定高度化基準」という。)が基本方針に照らし適切でなくなったと認めるときは、当該認定高度化基準に係る同条第一項の認定を受けた法人(以下「認定法人」という。)に対し、当該認定高度化基準を変更すべき旨を通知しなければならない。
2 認定法人は、前項の規定による通知を受けたときは、認定高度化基準を変更しなければならない。
3 認定法人は、前項の場合を除くほか、必要があるときは、認定高度化基準を変更することができる。
4 前条第一項及び第三項の規定は、前二項の規定による認定高度化基準の変更について準用する。
5 厚生大臣及び農林水産大臣は、認定法人が第一項の規定による通知を受けた後、認定高度化基準を変更しなかったときは、当該認定高度化基準に係る前条第一項の認定を取り消すことができる。この場合には、同条第三項の規定を準用する。
(試験研究計画の認定)
第六条 第四条第一項の法人は、製造過程の管理の高度化のために必要な試験研究を行おうとする場合であって、当該試験研究のための費用に充てるためその直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)に対し負担金の賦課をしようとするときは、厚生省令・農林水産省令で定めるところにより、試験研究に関する計画(以下「試験研究計画」という。)を作成し、これを厚生大臣及び農林水産大臣に提出して、当該試験研究計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 試験研究計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 試験研究の目標
二 試験研究の内容及び実施時期
三 構成員に対する負担金の賦課の基準
3 厚生大臣及び農林水産大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その試験研究計画が、高度化基準の作成のために必要な試験研究に関するものであること、試験研究を確実に遂行するため適切なものであることその他の政令で定める基準に該当するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
(試験研究計画の変更等)
第七条 前条第一項の認定を受けた法人(以下「試験研究法人」という。)は、当該認定に係る試験研究計画を変更しようとするときは、厚生大臣及び農林水産大臣の認定を受けなければならない。
2 厚生大臣及び農林水産大臣は、試験研究法人が前条第一項の認定に係る試験研究計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定試験研究計画」という。)に従って高度化基準の作成のための試験研究を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
3 前条第三項の規定は、第一項の認定について準用する。
(高度化計画の認定)
第八条 食品の製造又は加工の事業を行う者は、厚生省令・農林水産省令で定めるところにより、その製造し、又は加工しようとする食品の種類及び製造又は加工の施設ごとに、製造過程の管理の高度化に関する計画(以下「高度化計画」という。)を作成し、これを認定法人に提出して、当該高度化計画が認定高度化基準に適合するものである旨の認定を受けることができる。
2 高度化計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 製造過程の管理の高度化の目標
二 製造過程の管理の高度化を図るための施設の整備に関する事項
3 第一項の食品の製造又は加工の事業を行う者には、認定法人が第四条第一項の指定に係る種類の食品の製造又は加工の事業を行う場合における当該認定法人を含まないものとする。
(高度化計画の変更等)
第九条 前条第一項の認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)は、当該認定に係る高度化計画を変更しようとするときは、当該変更に係る高度化計画が認定高度化基準に適合するものである旨の認定法人の認定を受けなければならない。
2 認定法人は、認定事業者が前条第一項の認定に係る高度化計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定高度化計画」という。)に従って施設の整備を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
(農林漁業金融公庫からの資金の貸付け)
第十条 農林漁業金融公庫は、農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)第十八条第一項、第四項及び第五項、第十八条の二第一項、第十八条の三第一項、第十八条の四第一項並びに附則第二十三項に規定する業務のほか、認定事業者であってその行う事業が農林畜水産物の取引の安定に資すると認められるものに対し、認定高度化計画に従って製造過程の管理の高度化を行うのに必要な製造又は加工のための施設の改良、造成又は取得(その利用に必要な特別の費用の支出及び権利の取得を含む。)に必要な長期かつ低利の資金であって、他の金融機関が融通することを困難とするものの貸付けの業務を行うことができる。
2 前項に規定する資金の貸付けの利率、償還期限及び据置期間については、政令で定める範囲内で、農林漁業金融公庫が定める。
3 第一項の規定により農林漁業金融公庫が行う同項に規定する資金の貸付けについての農林漁業金融公庫法第二十九条第二項、第三十条第二項第一号及び第三十六条第三号の規定の適用については、同法第二十九条第二項及び第三十条第二項第一号中「融通法」とあるのは「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」と、同法第三十六条第三号中「附則第二十三項」とあるのは「附則第二十三項並びに食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法第十条第一項」とする。
(課税の特例)
第十一条 試験研究法人が、認定試験研究計画で定める賦課の基準に基づいて、その構成員に対し、当該認定試験研究計画で定める試験研究に必要な機械装置(工具、器具及び備品を含む。)を取得し、又は製作するための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、その構成員が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、当該負担金について特別償却を行うことができる。
2 試験研究法人が、認定試験研究計画で定める賦課の基準に基づいて、その構成員に対し、当該認定試験研究計画で定める試験研究のための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、その構成員が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法で定めるところにより、当該負担金について試験研究費の額が増加した場合等の課税の特例の適用があるものとする。
3 試験研究法人が、認定試験研究計画で定める賦課の基準に基づいてその構成員に対し賦課した負担金の全部又は一部をもって、当該認定試験研究計画で定める試験研究の用に直接供する固定資産を取得し、又は製作したときは、租税特別措置法で定めるところにより、所得の金額の計算について特別の措置を講ずる。
第十二条 認定事業者が認定高度化計画に従って新たに取得し、又は製作し、若しくは建設した機械及び装置並びに建物及びその附属設備については、租税特別措置法で定めるところにより、特別償却を行うことができる。
第三章 指定認定機関
(指定)
第十三条 第四条第一項の指定(以下この章において単に「指定」という。)は、厚生省令・農林水産省令で定めるところにより、食品の種類ごとに、高度化基準の作成及び高度化計画の認定を行おうとする者の申請により行う。
(欠格条項)
第十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、指定を受けることができない。
一 第二十二条の規定により指定を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
二 その業務を行う役員のうちに、この法律又はこの法律に基づく処分に違反し、刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者がある者
(指定の基準)
第十五条 厚生大臣及び農林水産大臣は、指定の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、その指定をしてはならない。
一 高度化基準の作成及び高度化計画の認定の業務を適確かつ円滑に実施するに足りる技術的能力及び経理的基礎を有すること。
二 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人又は事業協同組合その他の政令で定める法人であって、その役員又は構成員の構成が高度化基準の作成及び高度化計画の認定の業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
三 高度化基準の作成及び高度化計画の認定の業務以外の業務を行っている場合には、その業務を行うことによって高度化基準の作成及び高度化計画の認定の業務が不公正になるおそれがないものであること。
四 その指定をすることによって高度化基準の作成及び高度化計画の認定の業務の適確かつ円滑な実施を阻害することとならないこと。
(認定の義務)
第十六条 指定を受けた法人(以下「指定認定機関」という。)は、高度化計画の認定を行うべきことを求められたときは、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく、高度化計画の認定のための審査を行わなければならない。
(事務所の変更の届出)
第十七条 指定認定機関は、高度化基準の作成及び高度化計画の認定の業務を行う事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、厚生大臣及び農林水産大臣に届け出なければならない。
(認定業務規程)
第十八条 指定認定機関は、高度化計画の認定の業務に関する規程(以下「認定業務規程」という。)を定め、厚生大臣及び農林水産大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 認定業務規程で定めるべき事項は、厚生省令・農林水産省令で定める。
3 厚生大臣及び農林水産大臣は、第一項の認可をした認定業務規程が高度化計画の認定の公正な実施上不適当となったと認めるときは、その認定業務規程を変更すべきことを命ずることができる。
(業務の休廃止)
第十九条 指定認定機関は、高度化計画の認定の業務の全部又は一部を休止し、又は廃止したときは、遅滞なく、その旨を厚生大臣及び農林水産大臣に届け出なければならない。
(事業計画等)
第二十条 指定認定機関は、毎事業年度、厚生省令・農林水産省令で定めるところにより、事業計画及び収支予算を作成し、当該事業年度の開始前に(指定を受けた日の属する事業年度にあっては、その指定を受けた後遅滞なく)、厚生大臣及び農林水産大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 指定認定機関は、毎事業年度、厚生省令・農林水産省令で定めるところにより、事業報告書及び収支決算書を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に厚生大臣及び農林水産大臣に提出しなければならない。
(適合命令)
第二十一条 厚生大臣及び農林水産大臣は、指定認定機関が第十五条第一号から第三号までに適合しなくなったと認めるときは、その指定認定機関に対し、これらの規定に適合するため必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
(指定の取消し等)
第二十二条 厚生大臣及び農林水産大臣は、指定認定機関が次の各号のいずれかに該当するときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて高度化計画の認定の業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 この章の規定に違反したとき。
二 第十四条各号のいずれかに該当するに至ったとき。
三 第十八条第一項の認可を受けた認定業務規程によらないで高度化計画の認定を行ったとき。
四 第十八条第三項又は前条の規定による命令に違反したとき。
五 不正の手段により指定を受けたとき。
(公示)
第二十三条 厚生大臣及び農林水産大臣は、次に掲げる場合には、その旨を官報に公示しなければならない。
一 指定認定機関の指定をしたとき。
二 第十七条又は第十九条の規定による届出があったとき。
三 前条の規定により指定を取り消し、又は業務の停止を命じたとき。
(報告徴収及び立入検査)
第二十四条 厚生大臣及び農林水産大臣は、必要があると認めるときは、指定認定機関に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に指定認定機関の事務所に立ち入り、その業務に関し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第四章 罰則
第二十五条 第二十二条の規定による命令に違反した場合には、その違反行為をした指定認定機関の役員又は職員は、五十万円以下の罰金に処する。
第二十六条 次の各号の一に掲げる違反行為があった場合には、その違反行為をした指定認定機関の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十九条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 第二十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(この法律の廃止)
第二条 この法律は、この法律の施行の日から五年以内に廃止するものとする。
(罰則に関する経過措置)
第三条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(厚生省設置法の一部改正)
第四条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第二十八号中「及び容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成七年法律第百十二号)」を「、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成七年法律第百十二号)及び食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(平成十年法律第五十九号)」に改める。
第六条第二十一号の三の次に次の一号を加える。
二十一の四 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の定めるところにより、基本方針を定め、高度化基準及び試験研究計画の認定を行い、及びその認定を取り消し、並びに同法の規定に基づき指定認定機関を指定し、及び指定認定機関に対し、認可その他監督を行うこと。
(農林水産省設置法の一部改正)
第五条 農林水産省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第八十七号の三の次に次の一号を加える。
八十七の四 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(平成十年法律第五十九号)の施行に関する事務で所掌に属するものを処理すること。
厚生大臣 小泉純一郎
農林水産大臣 島村宜伸
内閣総理大臣 橋本龍太郎