総合保養地域整備法
法令番号: 法律第七十一号
公布年月日: 昭和62年6月9日
法令の形式: 法律
総合保養地域整備法をここに公布する。
御名御璽
昭和六十二年六月九日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 金丸信
法律第七十一号
総合保養地域整備法
(目的)
第一条 この法律は、良好な自然条件を有する土地を含む相当規模の地域である等の要件を備えた地域について、国民が余暇等を利用して滞在しつつ行うスポーツ、レクリエーション、教養文化活動、休養、集会等の多様な活動に資するための総合的な機能の整備を民間事業者の能力の活用に重点を置きつつ促進する措置を講ずることにより、ゆとりのある国民生活のための利便の増進並びに当該地域及びその周辺の地域の振興を図り、もつて国民の福祉の向上並びに国土及び国民経済の均衡ある発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定施設」とは、次に掲げる施設(政令で定める公共施設であるものを除く。)であつて前条に規定する活動のために必要なものをいう。
一 スポーツ又はレクリエーション施設
二 教養文化施設
三 休養施設
四 集会施設
五 宿泊施設
六 交通施設(車両、船舶、航空機等の移動施設を含む。第五条第二項第四号において同じ。)
七 販売施設
八 熱供給施設、食品供給施設、汚水共同処理施設その他の滞在者の利便の増進に資する施設
2 この法律において「特定民間施設」とは、特定施設であつて民間事業者が設置及び運営をするものをいう。
(地域)
第三条 この法律による第一条に規定する整備を促進するための措置は、次の各号に掲げる要件に該当する地域について講じられるものとする。
一 良好な自然条件を有する土地を含み、かつ、特定施設の総合的な整備を行うことができる相当規模の地域であること。
二 自然的経済的社会的条件からみて一体として第一条に規定する整備を図ることが相当と認められる地域であること。
三 特定施設の用に供する土地の確保が容易であること。
四 産業及び人口の集積の程度が著しく高い地域であつて政令で定めるもの以外の地域であること。
五 特定民間施設の整備の状況及び見込み並びに国民の利用上必要な立地条件からみて相当程度の特定民間施設の整備が確実と見込まれる地域であること。
(基本方針)
第四条 国土庁長官、農林水産大臣、通商産業大臣、運輸大臣、建設大臣及び自治大臣(以下「主務大臣」という。)は、前条各号に掲げる要件に該当する地域についての第一条に規定する整備に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次の各号に掲げる事項につき、次条第一項の基本構想の指針となるべきものを定めるものとする。
一 第一条に規定する整備に関する基本的な事項
二 第一条に規定する整備を行おうとする地域(以下「特定地域」という。)の設定に関する事項
三 特定地域のうち、特定施設の整備を特に促進することが適当と認められる地区(以下「重点整備地区」という。)の設定に関する事項
四 特定施設の設置及び特定民間施設の運営に関する事項
五 公共施設(特定施設であるものを除く。以下同じ。)の整備の方針に関する事項
六 第一条に規定する整備の一環として推進すべき産業の振興に関する事項
七 自然環境の保全との調和、農林漁業の健全な発展との調和、居住機能との調和、観光業の健全な発展、地価の安定その他第一条に規定する整備に際し配慮すべき重要事項
3 主務大臣は、基本方針を作成するに当たつては、あらかじめ、第一条に規定する整備に関し、スポーツ及び文化の振興並びに社会教育に係る学習活動の推進を図る見地からの文部大臣の意見を聴かなければならない。
4 主務大臣は、基本方針を定めようとするときは、環境庁長官その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 主務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 主務大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
7 第三項から第五項までの規定は、前項の規定による基本方針の変更について準用する。
(基本構想の承認)
第五条 都道府県は、基本方針に基づき、当該都道府県内の地域であつて第三条各号に掲げる要件に該当すると認められるものについて、第一条に規定する整備に関する基本構想(以下「基本構想」という。)を作成し、主務大臣の承認を申請することができる。
2 基本構想においては、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 特定地域の区域
二 第一条に規定する整備の方針に関する事項
三 重点整備地区の区域及び当該区域ごとの整備の方針に関する事項
四 重点整備地区において整備されるべき特定民間施設(重点整備地区間を連絡する特定民間施設である交通施設を含む。)の種類、位置、規模、機能及び運営に関する基本的な事項並びに特定民間施設以外の特定施設(重点整備地区間を連絡する特定施設である交通施設を含む。)の設置に関する基本的な事項
五 公共施設の整備の方針に関する事項
六 第一条に規定する整備の一環として推進すべき産業の振興に関する事項
七 特定施設及び公共施設の整備に必要な土地の確保に関連して実施される農用地の整備に関する事項
八 自然環境の保全との調和、農林漁業の健全な発展との調和、居住機能との調和、観光業の健全な発展、地価の安定その他第一条に規定する整備に際し配慮すべき事項
3 都道府県は、基本構想を作成しようとするときは、関係市町村に協議しなければならない。
4 主務大臣は、基本構想が次の各号に該当するものであると認めるときは、その承認をするものとする。
一 その基本構想に係る地域が第三条各号に掲げる要件に該当し、かつ、基本方針に適合するものであること。
二 第二項第二号から第八号までに掲げる事項にあつては、基本方針に適合するものであること。
三 その基本構想に係る第一条に規定する整備が当該特定地域及びその周辺の地域に対して適切な経済的効果を及ぼすものであること。
四 その他基本方針に照らして適切なものであること。
5 主務大臣は、基本構想につき前項の規定による承認をしようとするときは、環境庁長官その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
6 都道府県は、基本構想が第四項の規定による承認を受けたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(基本構想の変更)
第六条 都道府県は、前条第四項の規定による承認を受けた基本構想を変更しようとするときは、主務大臣の承認を受けなければならない。
2 前条第三項から第六項までの規定は、前項の場合について準用する。
(基本構想の実施等)
第七条 都道府県は、関係民間事業者の能力を活用しつつ、第一条に規定する整備を第五条第四項の規定による承認を受けた基本構想(前条第一項の規定による変更の承認があつたときは、その変更後のもの。以下「承認基本構想」という。)に基づいて計画的に行うよう努めなければならない。
2 文部大臣は、承認基本構想の円滑な実施の促進のため、関係地方公共団体に対し、スポーツ若しくは文化の振興又は社会教育に係る学習活動の推進を図る見地から必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならない。
3 前項に定めるもののほか、主務大臣、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、承認基本構想の円滑な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
(課税の特例)
第八条 承認基本構想に従つて重点整備地区内で特定民間施設の設置を行う者が設置をした当該施設については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、特別償却をすることができる。
(地方税の不均一課税に伴う措置)
第九条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定により、自治省令で定める地方公共団体が、重点整備地区内において第二条第一項第一号から第四号までに掲げる施設に該当する特定民間施設その他政令で定める特定民間施設のうち自治省令で定めるものを承認基本構想に従つて設置した者について、当該特定民間施設の用に供する家屋若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税又は当該特定民間施設の用に供する家屋若しくは構築物若しくはこれらの敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が自治省令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち自治省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が自治省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(資金の確保)
第十条 国及び地方公共団体(港務局を含む。次条、第十二条並びに第十三条第一項及び第三項において同じ。)は、特定民間施設の設置を行う者が承認基本構想に従つて行う当該施設の設置又は当該施設の用に供する土地の取得若しくは造成に要する経費に充てるために必要な資金の確保に努めなければならない。
(公共施設の整備)
第十一条 国及び地方公共団体は、承認基本構想を達成するために必要な公共施設の整備の促進に努めなければならない。
(国等の援助)
第十二条 国及び地方公共団体は、承認基本構想の達成に資するため、承認基本構想に基づき特定民間施設の設置及び運営を行う者に対し必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならない。
(地方公共団体による助成等)
第十三条 地方公共団体は、承認基本構想に基づき民間事業者の能力を活用しつつ第一条に規定する整備を促進するため必要があると認めるときは、当該民間事業者に対して出資、補助その他の助成をすることができる。
2 地方公共団体が前項の助成を行おうとする場合において、当該助成が特定民間施設の設置又は当該施設の用に供する土地の取得若しくは造成に係るものであるときは、当該助成に要する経費であつて地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条第一項各号に規定する経費に該当しないもの(次項において「特定経費」という。)は、同条第一項第五号に規定する経費とみなす。
3 地方公共団体が承認基本構想を達成するために行う事業に要する経費であつて特定経費以外のもの又は特定経費であつて重点整備地区の整備に資する中核的施設に係るものに充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(農地法等による処分についての配慮)
第十四条 国の行政機関の長又は都道府県知事は、重点整備地区内の土地を承認基本構想に定める特定民間施設の用に供するため、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該重点整備地区における当該施設の設置の促進が図られるよう適切な配慮をするものとする。
(国有林野の活用等)
第十五条 国は、承認基本構想の実施を促進するため、国有林野の活用について適切な配慮をするものとする。
2 港湾管理者(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第五十六条第一項に規定する都道府県知事を含む。)は、重点整備地区に係る港湾において承認基本構想に定める特定施設の設置の促進が図られるよう当該港湾に係る水域の利用について適切な配慮をするものとする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次条及び附則第三条の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(租税特別措置法の一部改正)
第二条 租税特別措置法の一部を次のように改正する。
第四十四条の三の次に次の一条を加える。
(特定余暇利用施設の特別償却)
第四十四条の四 青色申告書を提出する法人が、総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)第七条第一項に規定する承認基本構想であつて昭和六十四年三月三十一日までに同法第五条第四項に規定する承認(同法第六条第一項に規定する承認を含む。)を受けたものにおいて定められた同法第四条第二項第三号に規定する重点整備地区の区域内において、同法第五条第四項に規定する承認の日から五年以内の期間で政令で定める期間内に、当該承認基本構想において定められた同法第二条第二項に規定する特定民間施設に含まれる建物及びその附属設備並びに構築物のうち政令で定めるものでその建設の後事業の用に供されたことのないもの(以下この項において「特定余暇利用施設」という。)を取得し、又は特定余暇利用施設を建設して、これを当該法人の事業の用に供した場合には、その用に供した日を含む事業年度の当該特定余暇利用施設(第四十三条から前条まで又はこれらの規定に係る第五十二条の三第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の償却限度額は、法人税法第三十一条第一項の規定にかかわらず、当該特定余暇利用施設の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定余暇利用施設の取得価額の百分の十三に相当する金額をいう。)との合計額とする。
2 第四十三条第二項の規定は、前項の規定を適用する場合について準用する。
(地方税法の一部改正)
第三条 地方税法の一部を次のように改正する。
第五百八十六条第二項第一号の二の次に次の一号を加える。
一の三 総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)第四条第二項第三号に規定する重点整備地区において、同法第七条第一項に規定する承認基本構想に従つて同法第二条第二項に規定する特定民間施設の用に供する家屋又は構築物のうち政令で定めるものを新築した者で政令で定めるものが当該家屋又は構築物の敷地の用に供する土地
附則第三十二条の三第九項中「第七項」を「第八項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の表の下欄中「第七項まで」を「第八項まで」に改め、同項を同条第九項とし、同条第七項の次に次の一項を加える。
8 指定都市等は、事業所用家屋で総合保養地域整備法第四条第二項第三号に規定する重点整備地区において同法第七条第一項に規定する承認基本構想(昭和六十四年三月三十一日までに同法第五条第四項の規定による承認(同法第六条第一項の規定による承認を含む。)を受けたものに限る。)に従つて設置された同法第二条第二項に規定する特定民間施設で政令で定めるものに係るものの新築で当該特定民間施設に係る事業を行う者が建築主であるものに係る新増設事業所床面積に対しては、当該新築が当該承認基本構想に係る同法第五条第四項の規定による承認を受けた日から五年を経過する日までの間に行われたときに限り、第七百一条の三十二第一項の規定にかかわらず、新増設に係る事業所税を課することができない。この場合においては、第七百一条の三十四第十項の規定を準用する。
附則第三十二条の三の二第八項を同条第九項とし、同条第五項から第七項までを一項ずつ繰り下げ、同条第四項の次に次の一項を加える。
5 前条第八項に規定する特定民間施設に係る事業所等において行う事業に対して課する事業に係る事業所税のうち資産割の課税標準となるべき事業所床面積の算定については、当該事業が法人の事業である場合には当該特定民間施設に係る事業所等が新設された日から五年を経過する日以後に最初に終了する事業年度分まで、当該事業が個人の事業である場合には当該特定民間施設に係る事業所等が新設された日から五年を経過する日の属する年分までに限り、当該特定民間施設に係る事業所等に係る事業所床面積(第七百一条の三十四(事業に係る事業所税に関する部分に限る。)の規定の適用を受けるものを除く。以下本項において同じ。)から当該特定民間施設に係る事業所床面積の二分の一に相当する面積を控除するものとする。この場合においては、第七百一条の四十一第八項の規定を準用する。
附則第三十八条第十一項中「附則第三十二条の三第八項」を「附則第三十二条の三第九項」に、「第七項」を「第八項」に改める。
(国土庁設置法の一部改正)
第四条 国土庁設置法(昭和四十九年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。
第四条中第二十一号を第二十二号とし、第二十号を第二十一号とし、第十九号を第二十号とし、第十八号の次に次の一号を加える。
十九 総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)の施行に関する事務を処理すること。
第七条第一項中「第四条第十九号」を「第四条第二十号」に改める。
(農林水産省設置法の一部改正)
第五条 農林水産省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十七号の次に次の一号を加える。
二十七の二 総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)の施行に関する事務で所掌に属するものを処理すること。
(通商産業省設置法の一部改正)
第六条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第三十九号の次に次の一号を加える。
三十九の二 総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)の施行に関すること。
(運輸省設置法の一部改正)
第七条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第三条の二第一項第十七号の次に次の一号を加える。
十七の二 総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)の施行に関すること。
第四条第一項第十四号の二を同項第十四号の二の二とし、同項第十四号の次に次の一号を加える。
十四の二 総合保養地域整備法の規定に基づき、基本方針を定め、及び基本構想を承認すること。
(建設省設置法の一部改正)
第八条 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第三号の次に次の一号を加える。
三の二 総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)の施行に関する事務を管理すること。
(自治省設置法の一部改正)
第九条 自治省設置法(昭和二十七年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号の次に次の一号を加える。
三の二 総合保養地域整備法(昭和六十二年法律第七十一号)の施行に関する事務を行うこと。
第五条第三号の次に次の一号を加える。
三の二 総合保養地域整備法に基づき、基本方針を定め、及び基本構想を承認すること。
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 金丸信
大蔵大臣臨時代理 国務大臣 加藤六月
文部大臣 塩川正十郎
農林水産大臣 加藤六月
通商産業大臣臨時代理 国務大臣 塩川正十郎
運輸大臣臨時代理 国務大臣 天野光晴
建設大臣 天野光晴
自治大臣 葉梨信行