(目的)
第一条 この法律は、水俣病にかかつた者の迅速かつ公正確実な救済のため、旧公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(昭和四十四年法律第九十号。以下「旧救済法」という。)による水俣病に係る認定の申請をした者で認定に関する処分を受けていないものについて認定に関する処分を行う機関の特例を臨時に設けることにより、水俣病に係る認定に関する業務の促進を図ることを目的とする。
(認定に関する処分を行う機関の特例)
第二条 公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号。以下「補償法」という。)施行の際旧救済法第三条第一項の水俣病に係る認定の申請をしていた者で補償法附則第十二条の規定により旧救済法第三条第一項の規定の例による認定に関する処分を受けていないものは、環境庁長官に対して、当該水俣病が当該申請に係る旧救済法第二条第一項の規定により定められた指定地域に係る水質の汚濁の影響によるものである旨の認定を、第六項に規定する期間内に、申請することができる。ただし、当該旧救済法第三条第一項の認定の申請について、補償法附則第十二条の規定により旧救済法第三条第一項の規定の例による公害被害者認定審査会の意見が県知事又は市の長(以下「県知事等」という。)に既に示されている場合は、この限りでない。
2 環境庁長官は、前項の規定による申請を受けた場合には、当該申請者に係る旧救済法第三条第一項の認定の申請を受けた県知事等に自ら前項の認定に関する処分を行う旨の通知をした上で、臨時水俣病認定審査会の意見を聴いて、当該申請者について同項の認定に関する処分を行う。
3 県知事等は、前項の通知を受けた後においては、補償法附則第十二条の規定にかかわらず、当該通知に係る旧救済法第三条第一項の認定の申請をした者について同項の規定の例による認定に関する処分を行うことができない。
4 県知事等は、第二項の通知を受けた場合において、同項の規定による認定に関する処分を行うために必要な資料があるときは、直ちに、これらの資料を環境庁長官に送付しなければならない。
5 環境庁長官は、第二項の規定による認定に関する処分を行う場合において、必要な資料の提出を県知事等に求めることができる。
6 第一項の規定による申請をすることができる期間は、当該申請者に係る旧救済法第三条第一項の認定の申請の日の属する区分期間(旧救済法の施行の日から補償法の施行の日の前日までの期間を政令で定めるところにより区分したものをいう。)に応じて政令で定める日から五年とする。
第三条 補償法施行の際旧救済法第三条第一項の水俣病に係る認定の申請をしていた者が、補償法附則第十二条の規定により旧救済法第三条第一項の規定の例による認定に関する処分を受けることなく、かつ、前条第一項の規定による申請をしないで死亡した場合(この法律の施行前に死亡した場合を含む。)においては、同項中「受けていないもの」とあるのは「受けていないものが死亡した場合においては、その死亡した者の補償法第三十条第一項に規定する遺族若しくは補償法第三十五条第一項各号に掲げる者又はその死亡した者について葬祭を行う者」と、同条第二項及び第六項中「当該申請者」とあるのは「当該申請に係る死亡者」と読み替えて、これらの規定を適用する。
(臨時水俣病認定審査会)
第四条 この法律によりその権限に属させられた事項を行わせるため、環境庁に、附属機関として、臨時水俣病認定審査会を置く。
2 臨時水俣病認定審査会は、委員十人以内で組織する。
3 委員は、水俣病に係る医学に関し高度の学識と豊富な経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
5 前三項に定めるもののほか、臨時水俣病認定審査会の組織、運営その他臨時水俣病認定審査会に関し必要な事項は、総理府令で定める。
(認定の効力)
第五条 第二条第二項の規定による認定を受けた者は、政令で定めるところにより、補償法による認定を受けた者とみなす。
2 前項の規定により補償法による認定を受けた者とみなされる者の水俣病に係る補償法第七条第一項の規定による認定の有効期間の始期は、補償法の施行の日とする。
3 補償法附則第十五条の規定の適用については、第二条第二項の規定による認定を受けた者は、補償法附則第十二条の規定により旧救済法第三条第一項の規定の例による認定を受けた者とみなす。この場合においては、補償法附則第十八条中「なお従前の例によることとされる場合」とあるのは、「なお従前の例によることとされる場合(水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法(昭和五十三年法律第百四号)第五条第三項の規定による場合を含む。)」と読み替えて、同条の規定を適用する。
(異議申立ての場合における鑑定)
第六条 環境庁長官は、第二条第二項の規定による認定に関する処分についての行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)に基づく異議申立ての審理をする場合においては、同法第四十八条において準用する同法第二十七条の規定による公害健康被害補償不服審査会の委員及び当該異議申立てに係る患者の主治の医師(患者が死亡した場合にあつては、当該死亡した患者の主治の医師であつた者)の鑑定を求め、これを尊重するよう努めなければならない。
(総理府令への委任)
第七条 この法律に定めるもののほか、第二条第一項の認定の申請その他この法律の実施のための手続に関し必要な事項は、総理府令で定める。