(指定)
第八条 環境大臣は、関係事業者から申請があった場合において、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、当該関係事業者を、この章の規定等の適用を受ける者として指定することができる。
二 当該関係事業者がその財産をもって債務を完済することができないこと。
三 当該関係事業者が第五条第五項の一時金の確実な支給を行うために必要があると認められること。
四 水俣病に係る補償を将来にわたり確保するために必要があると認められること。
(事業再編計画)
第九条 前条の規定による指定を受けた者(以下「特定事業者」という。)は、次に掲げる事項を記載した事業の再編に関する計画(以下「事業再編計画」という。)を作成し、環境大臣の認可を申請しなければならない。
一 株式会社を設立すること及び当該株式会社が設立に際して発行する株式の総数を特定事業者が引き受けること。
二 特定事業者が、個別補償協定に係る債務、水俣病に係る損害賠償債務及び公的支援に係る借入金債務その他環境大臣が指定する債務に係るものを除き、その事業を前号の株式会社(以下「事業会社」という。)に譲渡すること(以下「事業譲渡」という。)。
三 特定事業者が、事業譲渡の対価として事業会社が新たに発行する株式を引き受けること。
四 事業再編計画の実施及び事業譲渡の時期に関する事項
五 前各号に掲げる事項以外の事項であって、特定事業者の事業の再編に必要な事項
七 事業譲渡の時における特定事業者が総数を保有する事業会社の株式の評価額
八 第二号に規定する個別補償協定に係る債務、水俣病に係る損害賠償債務及び公的支援に係る借入金債務その他環境大臣が指定する債務の支払に関する特定事業者の資金計画
2 環境大臣は、前項の認可の申請があった場合において、当該申請に係る特定事業者が第五条第一項の方針に基づく一時金の支給に同意しており、かつ、当該申請に係る事業再編計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、前項の認可をするものとする。
一 個別補償協定の将来にわたる履行及び公的支援に係る借入金債務の返済に、救済措置の開始の時点及び救済措置の対象者の確定の時点において支障が生じないと認められること。
二 事業会社の事業計画が特定事業者の事業所が所在する地域における事業の継続等により当該地域の経済の振興及び雇用の確保に資するものであること。
三 特定事業者が事業再編計画に基づいて行う事業会社の設立及び事業会社への事業譲渡その他の行為によって特定事業者の債権者に対する債務の履行に要する原資が減少しないものであること。
四 その内容が債権者の一般の利益に反するものではないこと。
3 環境大臣は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を官報に公告するものとする。
(事業譲渡等に関する特例)
第十条 株式会社である特定事業者(以下「特定会社」という。)がその財産をもって債務を完済することができないときは、当該特定会社は、会社法(平成十七年法律第八十六号)第四百四十七条第一項並びに第四百六十七条第一項第一号及び第二号の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、次に掲げる事項であって、前条第一項の認可を受けた事業再編計画(以下「認可事業再編計画」という。)に記載されたものを行うことができる。
2 前項の許可(以下「代替許可」という。)があったときは、当該代替許可に係る事項について株主総会の決議があったものとみなす。
3 代替許可に係る事件は、当該特定会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
4 裁判所は、代替許可の決定をしたときは、その決定書を特定会社に送達するとともに、その決定の要旨を公告しなければならない。
5 前項の規定によってする公告は、官報に掲載してする。
6 代替許可の決定は、第四項の規定による特定会社に対する送達がされた時から、効力を生ずる。
7 代替許可の決定に対しては、株主は第四項の公告のあった日から一週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
8 第三項から前項までに規定するもののほか、代替許可に係る事件に関しては、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第一編(第二条から第四条まで、第十五条、第十六条、第十八条第一項及び第二項並びに第二十条を除く。)の規定を準用する。
(代替許可に係る登記の特例)
第十一条 前条第一項第二号に掲げる事項に係る代替許可があった場合においては、当該事項に係る登記の申請書には、当該代替許可の決定書の謄本又は抄本を添付しなければならない。
(事業会社の株式の譲渡)
第十二条 特定事業者は、事業会社の株式の全部又は一部を譲渡しようとするときは、あらかじめ、環境大臣の承認を得なければならない。
2 環境大臣は、前項の承認をしようとするときは、あらかじめ、総務大臣及び財務大臣に協議するとともに、第十七条第二項の指定支給法人にその旨を通知しなければならない。
3 環境大臣は、第十九条第一項の補償賦課金の確保及び公的支援に係る借入金債務の返済の確保その他債権者の保護に関する政府の方針に従って、次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、第一項の株式の譲渡に係る承認をすることができる。
一 第十九条第一項の補償賦課金を株式の譲渡により確保できること。
二 公的支援に係る借入金債務の返済に支障が生じないと見込まれること。
三 第一項の株式の譲渡の後に債権者の一般の利益が害されることがないこと。
4 環境大臣は、第一項の承認をしたときは、遅滞なく、その旨を官報に公告するものとする。
(事業会社の株式の譲渡の暫時凍結)
第十三条 事業会社の株式の譲渡は、救済の終了及び市況の好転まで、暫時凍結する。
(詐害行為取消権及び否認権の適用除外)
第十四条 特定事業者が認可事業再編計画に基づいて行う事業会社の設立及び事業会社への事業譲渡その他の行為については、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条、破産法(平成十六年法律第七十五号)第百六十条及び第百六十一条、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条及び第百二十七条の二並びに会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第八十六条及び第八十六条の二の規定は適用しない。
(報告及び検査)
第十五条 環境大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、特定事業者に対し、その業務若しくは財産の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、特定事業者の事務所その他その業務を行う場所に立ち入り、業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(特定事業者に係る命令)
第十六条 環境大臣は、特定事業者の業務又は財産の状況に関し改善が必要であると認めるときは、特定事業者に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
2 環境大臣は、特定事業者の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者又はこれらに準ずる者をいう。以下この項において同じ。)がこの法律又はこの法律に基づく環境大臣の処分に違反したときは、当該特定事業者に対し、当該役員の解任を命ずることができる。