(目的)
第一条 この法律は、沿岸漁場整備開発事業を総合的かつ計画的に推進するための措置を講ずるとともに、水産動物の育成を図り沿岸漁場としての生産力を増進するための事業を推進することにより、沿岸漁業の基盤たる沿岸漁場の整備及び開発を図り、もつて沿岸漁業の安定的な発展と水産物の供給の増大に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「沿岸漁場整備開発事業」とは、優れた沿岸漁場として形成されるべき相当規模の水面において水産動植物の増殖又は養殖を推進するために行う魚礁の設置、消波施設の設置及びしゆんせつ並びに沿岸漁場としての効用の低下している水面においてその効用を回復するために行うたい積物の除去その他の政令で定める沿岸漁場の整備及び開発の事業で、政令で定める者が実施するものをいう。
(沿岸漁場整備開発計画)
第三条 農林大臣は、沿岸漁場整備開発事業の総合的かつ計画的な実施に資するため、沿岸漁業等振興審議会の意見を聴いて、政令で定めるところにより、沿岸漁場整備開発事業に関する計画(以下「沿岸漁場整備開発計画」という。)の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
2 沿岸漁場整備開発計画においては、計画期間に係る沿岸漁場整備開発事業の実施の目標及び事業量を定めるものとする。
3 沿岸漁場整備開発計画は、沿岸漁場における水産資源の動向並びに沿岸漁業の生産性の向上及びその生産の増大の見通しに即しつつ、沿岸漁場の総合的な利用の方向及び水産動植物の種苗の生産施設の整備、生産技術の開発等栽培漁業の振興を図るための条件の整備の動向に配慮して定めるものとする。
4 農林大臣は、第一項の規定により沿岸漁場整備開発計画の案を作成しようとするときは、関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。
5 農林大臣は、沿岸漁場整備開発計画につき第一項の閣議の決定があつたときは、その概要を公表しなければならない。
第四条 沿岸漁場整備開発計画は、沿岸漁業に係る漁業事情、経済事情等に変動があつたため必要があるときは、変更することができる。
2 前条の規定は、前項の規定による沿岸漁場整備開発計画の変更について準用する。
第五条 国は、沿岸漁場整備開発計画の達成を図るため、その実施につき必要な措置を講じなければならない。
(特定水産動物育成基本方針)
第六条 都道府県は、その区域に属する水面(漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第八条第三項に規定する内水面を除く。以下同じ。)における沿岸漁場としての生産力の増進に資するため、海区漁業調整委員会の意見を聴いて、政令で定めるところにより、特定水産動物(増殖を推進することが適当なものとして農林省令で定める水産動物のうち、その水面において行われる沿岸漁場整備開発事業(水産動物の育成のために行われるものに限る。)に係るもの及び生産された水産動物の種苗の放流に係るものをいう。以下同じ。)の育成に関し基本方針を定めることができる。
2 前項の基本方針(以下「特定水産動物育成基本方針」という。)においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 特定水産動物の種類及びその育成に関する基本方針
三 特定水産動物を育成する事業を効率的に実施するために必要とされる水面(以下「育成水面」という。)の区域を定める基準となるべき事項
3 都道府県は、前項第三号に掲げる事項については、漁場としての水面の利用以外の水面の利用の状況に配慮して特定水産動物育成基本方針を定めるものとする。
4 国は、都道府県の求めに応じ、特定水産動物育成基本方針の作成に関し必要な助言又は指導を行うことができる。
5 都道府県は、特定水産動物育成基本方針を定めたときは、これを公表しなければならない。
第七条 都道府県は、沿岸漁業に係る漁業事情、水面の利用の状況等に変動があつたため必要があるときは、特定水産動物育成基本方針を変更することができる。
2 前条の規定は、前項の規定による特定水産動物育成基本方針の変更について準用する。
(特定水産動物育成事業)
第八条 漁業協同組合又は漁業協同組合連合会(以下「漁業協同組合等」という。)は、特定水産動物を育成水面の区域内において育成水面の利用に関する規則で定めるところに従い育成する事業(以下「特定水産動物育成事業」という。)を行おうとするときは、都道府県知事の認可を受けなければならない。
2 漁業協同組合等は、前項の認可を受けようとするときは、農林省令で定めるところにより、育成水面の区域及び当該育成水面に係る育成水面利用規則で次に掲げる事項を内容とするものを定め、これを申請書に添えて、都道府県知事に提出しなければならない。
一 当該育成水面の区域内において育成すべき特定水産動物の種類
二 当該育成水面の区域内において組合員(漁業協同組合連合会の場合には、その会員たる漁業協同組合のうち自然的経済的社会的諸条件により当該育成水面が属すると認められる地区をその地区の全部又は一部とするもの(以下「地元組合」という。)で漁業を営むもの及び地元組合の組合員。以下「組合員等」という。)が特定水産動物の採捕につき遵守すべき事項
三 当該育成水面の区域を表示する標識の設置、組合員等以外の者で当該育成水面の区域内において特定水産動物を採捕するものからの利用料の徴収その他当該育成水面の利用につき特定水産動物を育成する事業の実施上必要な事項
第九条 漁業協同組合は、前条第二項の規定により育成水面の区域及び育成水面利用規則を定めようとするときは、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)の規定による総会の議決前に、当該水面において当該特定水産動物に係る漁業を営む組合員の三分の二以上の書面による同意を得なければならない。
2 漁業協同組合連合会は、前条第二項の規定により育成水面の区域及び育成水面利用規則を定めようとするときは、水産業協同組合法の規定による総会の議決前に、地元組合のすべての同意を得なければならない。
3 地元組合は、前項の同意をするには、あらかじめ、当該水面において当該特定水産動物に係る漁業を営む組合員の三分の二以上の書面による同意を得なければならない。
第十条 都道府県知事は、第八条第一項の認可の申請があつたときは、海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。
第十一条 都道府県知事は、第八条第一項の認可の申請が次の各号に該当すると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
一 特定水産動物育成基本方針の内容に適合するものであること。
二 その申請に係る育成水面の区域及び育成水面利用規則が当該特定水産動物を育成するために適切なものであること。
三 その申請に係る育成水面の区域及び育成水面利用規則が当該都道府県の区域に属する沿岸漁場の総合的な利用の見地からみて適切なものであること。
四 その申請に係る育成水面の区域及び育成水面利用規則を定める手続が法令又は定款若しくは規約に違反しないものであること。
五 その申請に係る育成水面の区域の全部又は一部が既に定められた育成水面の区域又は水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第十四条に規定する保護水面の区域で当該特定水産動物に係るものの全部又は一部と重複しないものであること。
第十二条 第八条第一項の認可を受けた漁業協同組合等(以下「認可組合等」という。)は、その育成水面の区域又は育成水面利用規則を変更するには、都道府県知事の認可を受けなければならない。ただし、その変更が農林省令で定める軽微なものであるときは、この限りでない。
2 認可組合等は、特定水産動物育成事業を廃止したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
3 第九条の規定は育成水面の区域又は育成水面利用規則を変更する場合について、前二条の規定は第一項の認可について、それぞれ準用する。
第十三条 認可組合等は、特定水産動物育成事業を適切に実施し、及び組合員等に対し特定水産動物の育成に関し必要な指導を行わなければならない。
(勧告)
第十四条 都道府県知事は、特定水産動物育成事業の実施が適切さを欠くに至つたと認めるときは、あらかじめ海区漁業調整委員会の意見を聴いて、当該認可組合等に対し、育成水面の区域又は育成水面利用規則の変更その他必要な措置を採るべきことを勧告することができる。
(国及び都道府県の援助)
第十五条 国及び都道府県は、特定水産動物育成事業の実施に関し必要な助言、指導その他の援助を行うように努めなければならない。
(栽培漁業の振興)
第十六条 国及び都道府県は、沿岸漁場整備開発事業及び特定水産動物育成事業の実施を水産動植物の種苗の生産施設の整備運営と併せて推進することにより、栽培漁業の振興に努めなければならない。