自動車事故対策センター法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年七月二十四日
内閣総理大臣 田中角榮
法律第六十五号
自動車事故対策センター法
目次
第一章
総則(第一条―第九条)
第二章
設立(第十条―第十五条)
第三章
管理(第十六条―第三十条)
第四章
業務(第三十一条―第三十三条)
第五章
財務及び会計(第三十四条一第四十三条)
第六章
監督(第四十四条・第四十五条)
第七章
雑則(第四十六条―第四十八条)
第八章
罰則(第四十九条―第五十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 自動車事故対策センターは、自動車の運行の安全の確保に関する事項を処理する者に対する指導、自動車事故による被害者に対する資金の貸付け等を行なうことにより、自動車事故の発生の防止に資するとともに、自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)による損害賠償の保障制度と相まつて被害者の保護を増進することを目的とする。
(法人格)
第二条 自動車事故対策センター(以下「センター」という。)は、法人とする。
(数)
第三条 センターは、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第四条 センターの資本金は、その設立に際し、政府及び政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 政府は、センターの設立に際し、二億四千万円を出資するものとする。
3 センターは、必要があるときは、運輪大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
4 政府は、前項の規定によりセンターがその資本金を増加するときは、予算で定める金額の範囲内において、センターに出資することができる。
(持分の払戻し等の禁止)
第五条 センターは、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 センターは、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(持分の譲渡等)
第六条 政府以外の出資者(第四十六条第二項並びに第四十七条第一項及び第二項を除き、以下「出資者」という。)は、その持分を譲渡することができる。
2 出資者の持分の移転は、譲受け者について第四十六条第二項各号に掲げる事項を出資者原簿に記載した後でなければ、センターその他の第三者に対抗することができない。
(名称)
第七条 センターは、その名称中に自動車事故対策センターという文字を用いなければならない。
2 センターでない者は、その名称中に自動車事故対策センターという文字を用いてはならない。
(登記)
第八条 センターは、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、センターについて準用する。
第二章 設立
(発起人)
第十条 センターを設立するには、自動車事故の発生の防止又は被害者の保護について学識経験を有する者七人以上が発起人となることを必要とする。
2 発起人は、定款及び事業計画書を作成し、政府以外の者に対しセンターに対する出資を募集しなければならない。
3 前項の事業計画書に記載すべき事項は、運輸省令で定める。
(設立の認可)
第十一条 発起人は、前条第二項の募集が終わつたときは、定款及び事業計画書を運輸大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
第十二条 運輸大臣は、設立の認可をしようとするときは、前条の規定による認可の申請が次の各号に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画書の内容が法令の規定に適合するものであること。
二 定款又は事業計画書に虚偽の記載がないこと。
三 事業の運営が健全に行なわれ、自動車事故の発生の防止に資し、及び被害者の保護を増進することが確実であると認められること。
第十三条 運輸大臣は、前条の規定により認可をしたときは、遅滞なく、発起人が推薦した者のうちから、センターの理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、センターの成立の時において、それぞれ第十九条第一項の規定により理事長又は監事に任命されたものとする。
(事務の引継ぎ)
第十四条 前条第一項の規定により理事長となるべき者が指名されたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第十五条 理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあつたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 センターは、設立の登記をすることによつて成立する。
第三章 管理
(定款記載事項)
第十六条 センターの定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員に関する事項
六 評議員会に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 財務及び会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
十 公告の方法
2 センターの定款の変更は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(役員)
第十七条 センターに、役員として、理事長一人、理事四人以内及び監事一人を置く。
2 センターに、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事二人以内を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第十八条 理事長は、センターを代表し、その業務を総理する。
2 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐してセンターの業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、センターの業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は運輸大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十九条 理事長及び監事は、運輸大臣が任命する。
2 理事は、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第二十条 役員の任期は、三年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第二十一条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第二十二条 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第二十三条 役員(非常勤の理事を除く。)は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、運輸大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第二十四条 センターと理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事がセンターを代表する。
(代理人の選任)
第二十五条 理事長は、理事又はセンターの職員のうちから、センターの業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(評議員会)
第二十六条 センターに、業務方法書の変更、毎事業年度の予算及び事業計画その他センターの運営に関する重要事項を審議する機関として、評議員会を置く。
2 評議員会は、評議員二十人以内で組織する。
(評議員)
第二十七条 評議員は、自動車事故の発生の防止又は被害者の保護について学識経験を有する者のうちから、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
2 第二十条並びに第二十二条第二項及び第三項の規定は、評議員について準用する。
(職員の任命)
第二十八条 センターの職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の秘密保持義務)
第二十九条 センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第三十条 センターの役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四章 業務
(業務)
第三十一条 センターは、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第二項に規定する自動車運送事業(同法第四十六条の規定により一般区域貨物自動車運送事業の免許を受けたものとみなされる通運事業者の事業を含む。)及び同法第二条第五項に規定する軽車両等運送事業の用に供する自動車(以下単に「自動車」という。)の運行の安全の確保に関する事項を処理する者に対し、当該事項に関する指導及び講習を行なうこと。
二 自動車の運転者に対し、適性診断(自動車の運行の安全を確保するため、自動車の運行の態様に応じ運転者に必要とされる事項について心理学的又は医学的な方法による調査を行ない、必要に応じて指導することをいう。)を行なうこと。
三 次に掲げる被害者であつて生活の困窮の程度が運輸省令で定める基準に適合するものに対し、当該被害者が損害賠償額又は損害のてん補として支払われる金額の支払を受けるまでの間、その支払を受けるべき金額の一部に相当する資金の貸付けを行なうこと。
イ 自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)の規定により後遺障害に係る損害賠償額の支払を受けるべき被害者
ロ 自賠法第五章の規定による損害のてん補として支払われる金額の支払を受けるべき被害者
四 次に掲げる被害者であつて生活の困窮の程度が運輸省令で定める基準に適合するものに対し、当該被害者に必要な資金の全部又は一部の貸付けを行なうこと。
イ 自動車事故により死亡した者の遺族である義務教育終了前の児童
ロ 自動車事故による損害賠償についての債務名義を得た被害者であつて当該債務名義に係る債権についてその全部又は一部の弁済を受けることが困難であると認められるもの
五 自賠法による損害賠償の保障制度について周知宣伝を行なうこと。
六 自動車事故の発生の防止及び被害者の保護に関する調査及び研究を行ない、その成果を普及すること。
七 前各号に掲げる業務に附帯する業務
八 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務
2 センターは、前項第八号に掲げる業務を行なおうとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
第三十二条 センターは、運輸大臣の認可を受けて、前条第一項第六号に掲げる業務の委託を受け、又は同項第四号若しくは第六号に掲げる業務の一部を委託することができる。
(業務方法書)
第三十三条 センターは、業務の開始前に、業務方法書を作成し、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、運輸省令で定める。
第五章 財務及び会計
(事業年度)
第三十四条 センターの事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第三十五条 センターは、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第三十六条 センターは、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に運輸大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 センターは、前項の規定により財務諸表を運輸大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(出資者に対する書類の送付)
第三十七条 センターは、第三十五条又は前条第一項に規定する認可又は承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る予算、事業計画及び資金計画に関する書類又は財務諸表を出資者に送付しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十八条 センターは、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 センターは、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十九条 センターは、資金の借入れ(借換えを含む。)をしようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(政府からの資金の貸付け)
第四十条 政府は、毎年度、予算で定める金額の範囲内において、センターに対し、第三十一条第一項第三号及び第四号の業務に要する資金を無利子で貸し付けることができる。
(補助金)
第四十一条 政府は、予算で定める金額の範囲内において、センターに対し、センターの業務運営費の一部を補助することができる。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第四十二条 センターは、役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(運輸省令への委任)
第四十三条 この法律に規定するもののほか、センターの財務及び会計に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
第六章 監督
(監督)
第四十四条 センターは、運輸大臣が監督する。
2 運輸大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、センターに対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十五条 運輸大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、センターに対しその業務に関し報告をさせ、又はその職員にセンターの事務所その他の事業場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七章 雑則
(出資者原簿)
第四十六条 センターは、出資者原簿を備えて置かなければならない。
2 出資者原簿には、各出資者について次の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 出資の引受け及び出資金の払込みの年月日又は出資者の持分の譲受けの年月日
三 出資額又は出資者の持分の譲受け額(以下「出資額」という。)
3 出資者は、出資者原簿の閲覧を求めることができる。
(解散)
第四十七条 センターは、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる金額は、その出資額を限度とする。
3 前二項に規定するもののほか、センターの解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第四十八条 運輸大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第四条第三項、第三十一条第二項、第三十二条、第三十三条第一項、第三十五条又は第三十九条の認可をしようとするとき。
二 第三十六条第一項又は第四十二条の承認をしようとするとき。
三 第三十一条第一項第三号及び第四号又は第四十三条の運輸省令を定めようとするとき。
第八章 罰則
第四十九条 第二十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第五十条 第四十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をしたセンターの役員又は職員は、五万円以下の罰金に処する。
第五十一条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をしたセンターの役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により運輸大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第三十一条第一項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第四十四条第二項の規定による運輸大臣の命令に違反したとき。
第五十二条 第七条第二項の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現にその名称中に自動車事故対策センターという文字を用いている者については、第七条第二項の規定は、この法律の施行の日から起算して六月間は、適用しない。
第三条 センターの最初の事業年度は、第三十四条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、その日の属する年の翌年三月三十一日に終わるものとする。
2 センターの最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第三十五条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「センターの成立後遅滞なく」とする。
(地方税法の一部改正)
第四条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「海洋水産資源開発センター」の下に「、自動車事故対策センター」を加える。
(自動車損害賠償責任再保険特別会計法の一部改正)
第五条 自動車損害賠償責任再保険特別会計法(昭和三十年法律第百三十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中「納付金、借入金」の下に「、自動事事故対策センターに対する貸付金の償還金」を、「繰入金」の下に「、自動車事故対策センターに対する出資金、貸付金及び補助金」を加える。
(所得税法の一部改正)
第六条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中自転車競技会の項の次に次のように加える。
自動車事故対策センター
自動車事故対策センター法(昭和四十八年法律第六十五号)
(法人税法の一部改正)
第七条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中自転車競技会の項の次に次のように加える。
自動車事故対策センター
自動車事故対策センター法(昭和四十八年法律第六十五号)
(運輸省設置法の一部改正)
第八条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第四十二号の七の次に次の一号を加える。
四十二の八 自動車事故対策センターを監督すること。
第二十八条第一項に次の一号を加える。
二十六 自動車事故対策センターに関すること。
大蔵大臣 愛知揆一
運輸大臣 新谷寅三郎
内閣総理大臣 田中角榮
自動車事故対策センター法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年七月二十四日
内閣総理大臣 田中角栄
法律第六十五号
自動車事故対策センター法
目次
第一章
総則(第一条―第九条)
第二章
設立(第十条―第十五条)
第三章
管理(第十六条―第三十条)
第四章
業務(第三十一条―第三十三条)
第五章
財務及び会計(第三十四条一第四十三条)
第六章
監督(第四十四条・第四十五条)
第七章
雑則(第四十六条―第四十八条)
第八章
罰則(第四十九条―第五十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 自動車事故対策センターは、自動車の運行の安全の確保に関する事項を処理する者に対する指導、自動車事故による被害者に対する資金の貸付け等を行なうことにより、自動車事故の発生の防止に資するとともに、自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)による損害賠償の保障制度と相まつて被害者の保護を増進することを目的とする。
(法人格)
第二条 自動車事故対策センター(以下「センター」という。)は、法人とする。
(数)
第三条 センターは、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第四条 センターの資本金は、その設立に際し、政府及び政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 政府は、センターの設立に際し、二億四千万円を出資するものとする。
3 センターは、必要があるときは、運輪大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
4 政府は、前項の規定によりセンターがその資本金を増加するときは、予算で定める金額の範囲内において、センターに出資することができる。
(持分の払戻し等の禁止)
第五条 センターは、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 センターは、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(持分の譲渡等)
第六条 政府以外の出資者(第四十六条第二項並びに第四十七条第一項及び第二項を除き、以下「出資者」という。)は、その持分を譲渡することができる。
2 出資者の持分の移転は、譲受け者について第四十六条第二項各号に掲げる事項を出資者原簿に記載した後でなければ、センターその他の第三者に対抗することができない。
(名称)
第七条 センターは、その名称中に自動車事故対策センターという文字を用いなければならない。
2 センターでない者は、その名称中に自動車事故対策センターという文字を用いてはならない。
(登記)
第八条 センターは、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第九条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、センターについて準用する。
第二章 設立
(発起人)
第十条 センターを設立するには、自動車事故の発生の防止又は被害者の保護について学識経験を有する者七人以上が発起人となることを必要とする。
2 発起人は、定款及び事業計画書を作成し、政府以外の者に対しセンターに対する出資を募集しなければならない。
3 前項の事業計画書に記載すべき事項は、運輸省令で定める。
(設立の認可)
第十一条 発起人は、前条第二項の募集が終わつたときは、定款及び事業計画書を運輸大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
第十二条 運輸大臣は、設立の認可をしようとするときは、前条の規定による認可の申請が次の各号に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画書の内容が法令の規定に適合するものであること。
二 定款又は事業計画書に虚偽の記載がないこと。
三 事業の運営が健全に行なわれ、自動車事故の発生の防止に資し、及び被害者の保護を増進することが確実であると認められること。
第十三条 運輸大臣は、前条の規定により認可をしたときは、遅滞なく、発起人が推薦した者のうちから、センターの理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、センターの成立の時において、それぞれ第十九条第一項の規定により理事長又は監事に任命されたものとする。
(事務の引継ぎ)
第十四条 前条第一項の規定により理事長となるべき者が指名されたときは、発起人は、遅滞なく、その事務を理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第十五条 理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあつたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 センターは、設立の登記をすることによつて成立する。
第三章 管理
(定款記載事項)
第十六条 センターの定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員に関する事項
六 評議員会に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 財務及び会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
十 公告の方法
2 センターの定款の変更は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(役員)
第十七条 センターに、役員として、理事長一人、理事四人以内及び監事一人を置く。
2 センターに、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事二人以内を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第十八条 理事長は、センターを代表し、その業務を総理する。
2 理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐してセンターの業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、センターの業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は運輸大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十九条 理事長及び監事は、運輸大臣が任命する。
2 理事は、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第二十条 役員の任期は、三年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第二十一条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第二十二条 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第二十三条 役員(非常勤の理事を除く。)は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、運輸大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第二十四条 センターと理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事がセンターを代表する。
(代理人の選任)
第二十五条 理事長は、理事又はセンターの職員のうちから、センターの業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(評議員会)
第二十六条 センターに、業務方法書の変更、毎事業年度の予算及び事業計画その他センターの運営に関する重要事項を審議する機関として、評議員会を置く。
2 評議員会は、評議員二十人以内で組織する。
(評議員)
第二十七条 評議員は、自動車事故の発生の防止又は被害者の保護について学識経験を有する者のうちから、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
2 第二十条並びに第二十二条第二項及び第三項の規定は、評議員について準用する。
(職員の任命)
第二十八条 センターの職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の秘密保持義務)
第二十九条 センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第三十条 センターの役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四章 業務
(業務)
第三十一条 センターは、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第二項に規定する自動車運送事業(同法第四十六条の規定により一般区域貨物自動車運送事業の免許を受けたものとみなされる通運事業者の事業を含む。)及び同法第二条第五項に規定する軽車両等運送事業の用に供する自動車(以下単に「自動車」という。)の運行の安全の確保に関する事項を処理する者に対し、当該事項に関する指導及び講習を行なうこと。
二 自動車の運転者に対し、適性診断(自動車の運行の安全を確保するため、自動車の運行の態様に応じ運転者に必要とされる事項について心理学的又は医学的な方法による調査を行ない、必要に応じて指導することをいう。)を行なうこと。
三 次に掲げる被害者であつて生活の困窮の程度が運輸省令で定める基準に適合するものに対し、当該被害者が損害賠償額又は損害のてん補として支払われる金額の支払を受けるまでの間、その支払を受けるべき金額の一部に相当する資金の貸付けを行なうこと。
イ 自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)の規定により後遺障害に係る損害賠償額の支払を受けるべき被害者
ロ 自賠法第五章の規定による損害のてん補として支払われる金額の支払を受けるべき被害者
四 次に掲げる被害者であつて生活の困窮の程度が運輸省令で定める基準に適合するものに対し、当該被害者に必要な資金の全部又は一部の貸付けを行なうこと。
イ 自動車事故により死亡した者の遺族である義務教育終了前の児童
ロ 自動車事故による損害賠償についての債務名義を得た被害者であつて当該債務名義に係る債権についてその全部又は一部の弁済を受けることが困難であると認められるもの
五 自賠法による損害賠償の保障制度について周知宣伝を行なうこと。
六 自動車事故の発生の防止及び被害者の保護に関する調査及び研究を行ない、その成果を普及すること。
七 前各号に掲げる業務に附帯する業務
八 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務
2 センターは、前項第八号に掲げる業務を行なおうとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
第三十二条 センターは、運輸大臣の認可を受けて、前条第一項第六号に掲げる業務の委託を受け、又は同項第四号若しくは第六号に掲げる業務の一部を委託することができる。
(業務方法書)
第三十三条 センターは、業務の開始前に、業務方法書を作成し、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、運輸省令で定める。
第五章 財務及び会計
(事業年度)
第三十四条 センターの事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第三十五条 センターは、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第三十六条 センターは、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に運輸大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 センターは、前項の規定により財務諸表を運輸大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(出資者に対する書類の送付)
第三十七条 センターは、第三十五条又は前条第一項に規定する認可又は承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る予算、事業計画及び資金計画に関する書類又は財務諸表を出資者に送付しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十八条 センターは、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 センターは、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十九条 センターは、資金の借入れ(借換えを含む。)をしようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(政府からの資金の貸付け)
第四十条 政府は、毎年度、予算で定める金額の範囲内において、センターに対し、第三十一条第一項第三号及び第四号の業務に要する資金を無利子で貸し付けることができる。
(補助金)
第四十一条 政府は、予算で定める金額の範囲内において、センターに対し、センターの業務運営費の一部を補助することができる。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第四十二条 センターは、役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(運輸省令への委任)
第四十三条 この法律に規定するもののほか、センターの財務及び会計に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
第六章 監督
(監督)
第四十四条 センターは、運輸大臣が監督する。
2 運輸大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、センターに対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十五条 運輸大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、センターに対しその業務に関し報告をさせ、又はその職員にセンターの事務所その他の事業場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七章 雑則
(出資者原簿)
第四十六条 センターは、出資者原簿を備えて置かなければならない。
2 出資者原簿には、各出資者について次の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 出資の引受け及び出資金の払込みの年月日又は出資者の持分の譲受けの年月日
三 出資額又は出資者の持分の譲受け額(以下「出資額」という。)
3 出資者は、出資者原簿の閲覧を求めることができる。
(解散)
第四十七条 センターは、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる金額は、その出資額を限度とする。
3 前二項に規定するもののほか、センターの解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第四十八条 運輸大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第四条第三項、第三十一条第二項、第三十二条、第三十三条第一項、第三十五条又は第三十九条の認可をしようとするとき。
二 第三十六条第一項又は第四十二条の承認をしようとするとき。
三 第三十一条第一項第三号及び第四号又は第四十三条の運輸省令を定めようとするとき。
第八章 罰則
第四十九条 第二十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第五十条 第四十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をしたセンターの役員又は職員は、五万円以下の罰金に処する。
第五十一条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をしたセンターの役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により運輸大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第三十一条第一項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第四十四条第二項の規定による運輸大臣の命令に違反したとき。
第五十二条 第七条第二項の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現にその名称中に自動車事故対策センターという文字を用いている者については、第七条第二項の規定は、この法律の施行の日から起算して六月間は、適用しない。
第三条 センターの最初の事業年度は、第三十四条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、その日の属する年の翌年三月三十一日に終わるものとする。
2 センターの最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第三十五条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「センターの成立後遅滞なく」とする。
(地方税法の一部改正)
第四条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「海洋水産資源開発センター」の下に「、自動車事故対策センター」を加える。
(自動車損害賠償責任再保険特別会計法の一部改正)
第五条 自動車損害賠償責任再保険特別会計法(昭和三十年法律第百三十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中「納付金、借入金」の下に「、自動事事故対策センターに対する貸付金の償還金」を、「繰入金」の下に「、自動車事故対策センターに対する出資金、貸付金及び補助金」を加える。
(所得税法の一部改正)
第六条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中自転車競技会の項の次に次のように加える。
自動車事故対策センター
自動車事故対策センター法(昭和四十八年法律第六十五号)
(法人税法の一部改正)
第七条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中自転車競技会の項の次に次のように加える。
自動車事故対策センター
自動車事故対策センター法(昭和四十八年法律第六十五号)
(運輸省設置法の一部改正)
第八条 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第四十二号の七の次に次の一号を加える。
四十二の八 自動車事故対策センターを監督すること。
第二十八条第一項に次の一号を加える。
二十六 自動車事故対策センターに関すること。
大蔵大臣 愛知揆一
運輸大臣 新谷寅三郎
内閣総理大臣 田中角栄