琵琶湖総合開発特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十七年六月十五日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第六十四号
琵琶湖総合開発特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、琵琶湖の自然環境の保全と汚濁した水質の回復を図りつつ、その水資源の利用と関係住民の福祉とをあわせ増進するため、琵琶湖総合開発計画を策定し、その実施を推進する等特別の措置を講ずることにより、近畿圏の健全な発展に寄与することを目的とする。
(琵琶湖総合開発計画の内容)
第二条 琵琶湖総合開発計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発に関する基本的な方針
二 前号の方針に基づき実施すべき次の事業の概要
イ 琵琶湖の洪水から防御すべき地域の保全上重要な治水事業
ロ 琵琶湖の水質の保全上重要な下水道及びし尿処理施設の整備に関する事業
ハ 淀川の下流地域における水の需要に対応する琵琶湖の水資源の開発のための事業
ニ 琵琶湖から取水する水道、工業用水道及び農業用用排水施設の整備に関する事業(琵琶湖から取水する農業用用排水施設の整備に関する事業(ハの事業の附帯工事として実施するものその他ハの事業の実施により必要を生じたものを含む。)の実施に関連して実施することを相当とする区画整理の事業を含む。)
ホ 琵琶湖の流域内の森林に係る造林及び保育の事業、林道の開設及び改良の事業並びに治山事業
ヘ 琵琶湖の湖辺に設けられる都市公園及び自然公園の保護又は利用のための施設の整備に関する事業並びに琵琶湖の景観又は自然環境の維持上重要な土地の保全のためにする当該土地の取得に関する事業
ト 琵琶湖における観光又はレクリエーションのための資源の開発に寄与する道路及び港湾の整備に関する事業
チ 琵琶湖の水産資源の保護倍養及び開発のための事業、琵琶湖の周辺地域に設けられる琵琶湖産の水産物の流通及び加工の施設の整備に関する事業並びに琵琶湖における漁港の整備に関する事業
リ その他前条の目的を達成するために必要な政令で定める事業
2 琵琶湖総合開発計画は、琵琶湖の水質の保全及び汚濁した水質の回復について適切な考慮が払われたものでなければならない。
3 琵琶湖総合開発計画は、全国総合開発計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、淀川水系に係る水資源開発促進法(昭和三十六年法律第二百十七号)第四条第一項の規定による水資源開発基本計画及び河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条第一項の規定による工事実施基本計画その他琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発と関係を有する国の計画との調和が保たれたものでなければならず、かつ、第一項第二号ハの事業の琵琶湖における水産業に及ぼす影響について適切な考慮が払われたものでなければならない。
(琵琶湖総合開発計画の決定及び変更)
第三条 滋賀県知事は、琵琶湖総合開発計画の案を作成し、これを近畿圏整備長官を通じて内閣総理大臣に提出するものとする。この場合において、琵琶湖総合開発計画の案の作成については、滋賀県知事は、あらかじめ、公聴会を開催してその住民の意見をきき、かつ、当該県の関係市町村長の意見をきくとともに、当該県の議会の議を経なければならない。
2 前項の琵琶湖総合開発計画の案の作成については、滋賀県知事は、あらかじめ、関係府県知事の意見をもきかなければならない。この場合において、関係府県知事は、その意見を述べようとするときは、あらかじめ、当該府県の関係市町村長の意見をきかなければならない。
3 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長と協議の上、滋賀県知事に対し、琵琶湖総合開発計画の案の作成上準拠すべき事項を指示することができる。
4 内閣総理大臣は、第一項の規定により提出された案に基づき、琵琶湖総合開発計画を決定するものとする。この場合において、内閣総理大臣は、あらかじめ、近畿圏整備審議会の意見をきくとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 内閣総理大臣は、琵琶湖総合開発計画を決定したときは、これを関係行政機関の長及び滋賀県知事その他関係府県知事に送付するものとする。
6 琵琶湖総合開発計画は、情勢の推移によりこれを変更することが適当であると認められる事態になつたときは、変更することができる。
7 第一項から第五項までの規定は、琵琶湖総合開発計画を変更する場合について準用する。
(年度計画の決定)
第四条 滋賀県知事は、毎年度、その年度の開始前までに、琵琶湖総合開発計画に基づく当該年度の各事業(政令で定める事業を除く。)の実施に関する計画(以下「年度計画」という。)の案を作成し、これを近畿圏整備長官を通じて当該各事業に関する主務大臣に提出するとともに、関係行政機関の長に送付するものとする。
2 滋賀県知事は、前項の規定により、第十一条第一項の規定に基づきその経費の一部を負担すべき地方公共団体が定められている事実に係る年度計画の案を主務大臣に提出したときは、遅滞なく、これをその地方公共団体に送付するものとする。
3 近畿圏整備長官又は関係行政機関の長は、必要があると認めるときは、第一項の規定により提出され又は送付された案に関し、主務大臣に(関係行政機関の長にあつては、近畿圏整備長官を通じて主務大臣に)意見を述べることができる。
4 第一項の主務大臣は、同項の規定により提出された案に基づき、年度計画を決定するものとする。
5 第一項の主務大臣は、年度計画を決定したときは、これを近畿圏整備長官及び関係行政機関の長並びに滋賀県知事に送付するものとする。第十一条第一項の規定に基づきその経費の一部を負担すべき地方公共団体が定められている事業に係る年度計画については、その地方公共団体に対しても、同様とする。
(事業の実施)
第五条 琵琶湖総合開発計画に基づく事業(以下「総合開発事業」という。)は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体、水資源開発公団その他の者が実施するものとする。
(協力及び勧告)
第六条 関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、琵琶湖総合開発計画の実施に関し、できる限り協力しなければならない。
2 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者に対し、琵琶湖総合開発計画の実施に関し勧告し、及びその勧告によつて採られた措置その他琵琶湖総合開発計画の実施に関する状況について報告を求めることができる。
3 関係行政機関の長は、必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、前項の規定による勧告をすべきことを要請することができる。
(生活再建のための措置)
第七条 総合開発事業を実施する者は、当該事業の実施によつて土地に関する権利、漁業権その他の権利に関し損失を受けたため生活の基礎を失うこととなる者について、その受ける補償と相まつて次に掲げる生活再建のための措置が実施されることを必要とするときは、その者の申出に基づき、事情の許す限り、当該生活再建のための措置のあつせんに努めるものとする。
一 土地又は建物の取得に関すること。
二 職業の紹介、指導又は訓練に関すること。
(国の負担又は補助の割合等の特例)
第八条 総合開発事業のうち別表に掲げる事業に係る経費に対する国の負担又は補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は、他の法令の規定にかかわらず、同表に定める割合の範囲内で政令で定める割合とする。
2 前項に規定する事業に係る経費に対する他の法令の規定による国の負担割合が、同項の政令で定める割合をこえるときは、当該事業に係る経費に対する国の負担割合については、同項の規定にかかわらず、当該他の法令の定める割合による。
3 第一項に規定する事業に係る経費につき前二項の規定による国の負担割合により国が負担し又は補助する場合における国の負担金若しくは補助金の交付又は地方公共団体の負担金の納付については、他の法令の規定にかかわらず、政令で、必要な特例を定めることができる。
(国の普通財産の譲渡)
第九条 国は、総合開発事業の用に供するため必要があると認めるときは、その事業に係る経費を負担する地方公共団体に対し、普通財産を譲渡することができる。
(国の財政上及び金融上の援助)
第十条 国は、前二条に定めるもののほか、琵琶湖総合開発計画を達成するために必要があると認めるときは、総合開発事業を実施する者に対し、財政上及び金融上の援助を与えることができる。
(水資源開発関連事業についての負担の調整等)
第十一条 総合開発事業(第二条第一項第二号ハの事業を除く。)、琵琶湖の湖岸及び湖底の清掃及び整地その他これらに類する琵琶湖の維持管理の事業並びに琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発に寄与する施設で当該地域に存するものの維持管理の事業のうち、総合開発事業たる第二条第一項第二号ハの事業(以下この条において「水資源開発事業」という。)の実施により琵琶湖及びその周辺地域について生ずべき不利益(水資源開発事業を実施する者による損失補償の対象となるものを除く。)を補う効用を有する事業で、その事業に係る経費の全部又は一部を当該地域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体が負担するもの(政令で定めるものに限る。)については、当該地方公共団体は、政令で定めるところにより、次に掲げる地方公共団体と協議し、その協議によりその負担する経費の一部をこれに負担させることができる。
一 水資源開発事業により生じた施設を利用して河川の流水を水道又は工業用水道の用に供し、又は供することが予定されている地方公共団体
二 次に掲げる区域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体(前号に掲げるものを除く。)
イ 前号の施設を利用して河川の流水をその用に供する水道で水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第二項に規定する水道事業の用に供するものの給水区域又は給水予定区域
ロ 前号の施設を利用して河川の流水をその用に供する水道で水道法第三条第四項に規定する水道用水供給事業の用に供するものの給水対象事業者が設置する水道の給水区域又は給水予定区域
ハ 前号の施設を利用して河川の流水をその用に供する工業用水道で工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第四項に規定する工業用水道事業の用に供するものの給水区域又は給水予定区域
2 近畿圏整備長官、厚生大臣、通商産業大臣及び自治大臣は、前項の規定による負担に関し、関係当事者のうち一以上の申出に基づき、あつせんをすることができる。
3 第一項の規定による協議が成立した場合においては、関係当事者は、遅滞なく、近畿圏整備長官、厚生大臣、通商産業大臣、自治大臣その他その協議に係る事業に関する主務大臣に対し、その協議が成立した事項を報告しなければならない。ただし、前項のあつせんに基づきその協議が成立した場合には、近畿圏整備長官、厚生大臣、通商産業大臣及び自治大臣に対しては、この限りでない。
4 第一項各号に掲げる地方公共団体は、琵琶湖及びその周辺地域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体で総合開発事業(水資源開発事業を除く。)を実施するものに対し、当該事業の実施に必要な資金を融通することができる。
(琵琶湖管理基金)
第十二条 琵琶湖及びその周辺地域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体は、琵琶湖の湖岸及び湖底の清掃及び整地その他これらに類する琵琶湖の維持管理の事業並びに琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発に寄与する施設で当該地域に存するものの維持管理の事業の適正かつ円滑な実施を図るため必要があると認めるときは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十一条の基金として、琵琶湖管理基金を設けることができる。
附 則
(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 第八条(別表を含む。)の規定は、昭和四十七年度分の事業(昭和四十六年度分の事業で翌年度に繰り越したものを除くものとし、第三条第四項の規定による琵琶湖総合開発計画の決定前に実施されたものを含む。)に係る経費に対する国の負担金又は補助金から適用する。
(この法律の失効)
3 この法律は、昭和五十七年三月三十一日限り、その効力を失う。ただし、第七条に規定する生活再建のための措置のあつせんで同日後に実施される必要があるもの、第八条第一項に規定する事業に係る経費に対する国の負担金若しくは補助金又は地方公共団体の負担金で昭和五十七年度以降に交付され又は納付されるもの及び第十一条第一項の規定に基づく負担金で同年度以降に支払われるものについては、第七条、第八条(別表を含む。)及び第十一条第一項の規定は、なおその効力を有する。
(昭和四十七年度の特例)
4 昭和四十七年度の年度計画の作成については、第四条第一項中「その年度の開始前までに」とあるのは、「琵琶湖総合開発計画の決定後遅滞なく」とする。
5 昭和四十七年度に限り、同年度分の事業(国が実施するものを除く。)に係る経費につき第八条第一項の規定による国の負担割合によつて算定した国の負担金又は補助金の額が、他の法令の規定による国の負担割合によつて算定した国の負担金又は補助金の額をこえることとなる場合には、当該事業に係る事務を所掌する各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。)は、そのこえることとなる部分の額を昭和四十八年度に交付するものとする。
(近畿圏整備法の一部改正)
6 近畿圏整備法(昭和三十八年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。
第四条中第八号を第九号とし、第七号の次に次の一号を加える。
八 琵琶湖総合開発特別措置法(昭和四十七年法律第六十四号)(これに基づく命令を含む。)により内閣総理大臣の権限に属する事務を処理すること。
別表
事業の区分
国の負担割合の範囲
河川法第四条第一項に規定する一級河川の改良工事(政令で定めるものを除く。)
四分の三以内
砂防法(明治三十年法律第二十九号)第一条に規定する砂防工事
四分の三以内
下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号及び第四号に規定する公共下水道及び流域下水道の設置又は改築
三分の二以内
土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業のうち農業用用排水施設の新設、廃止若しくは変更又は区画整理
百分の六十五以内
森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第四十一条第二項に規定する保安施設事業(政令で定めるものを除く。)
四分の三以内
都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第二項に規定する公園施設の新設、増設又は改築
十分の五・五以内
自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第二条第六号に規定する公園事業で政令で定めるもの
十分の五・五以内
内閣総理大臣 佐藤栄作
大蔵大臣 水田三喜男
厚生大臣 齋藤昇
農林大臣 赤城宗徳
通商産業大臣 田中角栄
運輸大臣 丹羽喬四郎
建設大臣 西村英一
自治大臣 渡海元三郎
琵琶湖総合開発特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十七年六月十五日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第六十四号
琵琶湖総合開発特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、琵琶湖の自然環境の保全と汚濁した水質の回復を図りつつ、その水資源の利用と関係住民の福祉とをあわせ増進するため、琵琶湖総合開発計画を策定し、その実施を推進する等特別の措置を講ずることにより、近畿圏の健全な発展に寄与することを目的とする。
(琵琶湖総合開発計画の内容)
第二条 琵琶湖総合開発計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発に関する基本的な方針
二 前号の方針に基づき実施すべき次の事業の概要
イ 琵琶湖の洪水から防御すべき地域の保全上重要な治水事業
ロ 琵琶湖の水質の保全上重要な下水道及びし尿処理施設の整備に関する事業
ハ 淀川の下流地域における水の需要に対応する琵琶湖の水資源の開発のための事業
ニ 琵琶湖から取水する水道、工業用水道及び農業用用排水施設の整備に関する事業(琵琶湖から取水する農業用用排水施設の整備に関する事業(ハの事業の附帯工事として実施するものその他ハの事業の実施により必要を生じたものを含む。)の実施に関連して実施することを相当とする区画整理の事業を含む。)
ホ 琵琶湖の流域内の森林に係る造林及び保育の事業、林道の開設及び改良の事業並びに治山事業
ヘ 琵琶湖の湖辺に設けられる都市公園及び自然公園の保護又は利用のための施設の整備に関する事業並びに琵琶湖の景観又は自然環境の維持上重要な土地の保全のためにする当該土地の取得に関する事業
ト 琵琶湖における観光又はレクリエーションのための資源の開発に寄与する道路及び港湾の整備に関する事業
チ 琵琶湖の水産資源の保護倍養及び開発のための事業、琵琶湖の周辺地域に設けられる琵琶湖産の水産物の流通及び加工の施設の整備に関する事業並びに琵琶湖における漁港の整備に関する事業
リ その他前条の目的を達成するために必要な政令で定める事業
2 琵琶湖総合開発計画は、琵琶湖の水質の保全及び汚濁した水質の回復について適切な考慮が払われたものでなければならない。
3 琵琶湖総合開発計画は、全国総合開発計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、淀川水系に係る水資源開発促進法(昭和三十六年法律第二百十七号)第四条第一項の規定による水資源開発基本計画及び河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条第一項の規定による工事実施基本計画その他琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発と関係を有する国の計画との調和が保たれたものでなければならず、かつ、第一項第二号ハの事業の琵琶湖における水産業に及ぼす影響について適切な考慮が払われたものでなければならない。
(琵琶湖総合開発計画の決定及び変更)
第三条 滋賀県知事は、琵琶湖総合開発計画の案を作成し、これを近畿圏整備長官を通じて内閣総理大臣に提出するものとする。この場合において、琵琶湖総合開発計画の案の作成については、滋賀県知事は、あらかじめ、公聴会を開催してその住民の意見をきき、かつ、当該県の関係市町村長の意見をきくとともに、当該県の議会の議を経なければならない。
2 前項の琵琶湖総合開発計画の案の作成については、滋賀県知事は、あらかじめ、関係府県知事の意見をもきかなければならない。この場合において、関係府県知事は、その意見を述べようとするときは、あらかじめ、当該府県の関係市町村長の意見をきかなければならない。
3 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長と協議の上、滋賀県知事に対し、琵琶湖総合開発計画の案の作成上準拠すべき事項を指示することができる。
4 内閣総理大臣は、第一項の規定により提出された案に基づき、琵琶湖総合開発計画を決定するものとする。この場合において、内閣総理大臣は、あらかじめ、近畿圏整備審議会の意見をきくとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 内閣総理大臣は、琵琶湖総合開発計画を決定したときは、これを関係行政機関の長及び滋賀県知事その他関係府県知事に送付するものとする。
6 琵琶湖総合開発計画は、情勢の推移によりこれを変更することが適当であると認められる事態になつたときは、変更することができる。
7 第一項から第五項までの規定は、琵琶湖総合開発計画を変更する場合について準用する。
(年度計画の決定)
第四条 滋賀県知事は、毎年度、その年度の開始前までに、琵琶湖総合開発計画に基づく当該年度の各事業(政令で定める事業を除く。)の実施に関する計画(以下「年度計画」という。)の案を作成し、これを近畿圏整備長官を通じて当該各事業に関する主務大臣に提出するとともに、関係行政機関の長に送付するものとする。
2 滋賀県知事は、前項の規定により、第十一条第一項の規定に基づきその経費の一部を負担すべき地方公共団体が定められている事実に係る年度計画の案を主務大臣に提出したときは、遅滞なく、これをその地方公共団体に送付するものとする。
3 近畿圏整備長官又は関係行政機関の長は、必要があると認めるときは、第一項の規定により提出され又は送付された案に関し、主務大臣に(関係行政機関の長にあつては、近畿圏整備長官を通じて主務大臣に)意見を述べることができる。
4 第一項の主務大臣は、同項の規定により提出された案に基づき、年度計画を決定するものとする。
5 第一項の主務大臣は、年度計画を決定したときは、これを近畿圏整備長官及び関係行政機関の長並びに滋賀県知事に送付するものとする。第十一条第一項の規定に基づきその経費の一部を負担すべき地方公共団体が定められている事業に係る年度計画については、その地方公共団体に対しても、同様とする。
(事業の実施)
第五条 琵琶湖総合開発計画に基づく事業(以下「総合開発事業」という。)は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体、水資源開発公団その他の者が実施するものとする。
(協力及び勧告)
第六条 関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、琵琶湖総合開発計画の実施に関し、できる限り協力しなければならない。
2 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者に対し、琵琶湖総合開発計画の実施に関し勧告し、及びその勧告によつて採られた措置その他琵琶湖総合開発計画の実施に関する状況について報告を求めることができる。
3 関係行政機関の長は、必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、前項の規定による勧告をすべきことを要請することができる。
(生活再建のための措置)
第七条 総合開発事業を実施する者は、当該事業の実施によつて土地に関する権利、漁業権その他の権利に関し損失を受けたため生活の基礎を失うこととなる者について、その受ける補償と相まつて次に掲げる生活再建のための措置が実施されることを必要とするときは、その者の申出に基づき、事情の許す限り、当該生活再建のための措置のあつせんに努めるものとする。
一 土地又は建物の取得に関すること。
二 職業の紹介、指導又は訓練に関すること。
(国の負担又は補助の割合等の特例)
第八条 総合開発事業のうち別表に掲げる事業に係る経費に対する国の負担又は補助の割合(以下「国の負担割合」という。)は、他の法令の規定にかかわらず、同表に定める割合の範囲内で政令で定める割合とする。
2 前項に規定する事業に係る経費に対する他の法令の規定による国の負担割合が、同項の政令で定める割合をこえるときは、当該事業に係る経費に対する国の負担割合については、同項の規定にかかわらず、当該他の法令の定める割合による。
3 第一項に規定する事業に係る経費につき前二項の規定による国の負担割合により国が負担し又は補助する場合における国の負担金若しくは補助金の交付又は地方公共団体の負担金の納付については、他の法令の規定にかかわらず、政令で、必要な特例を定めることができる。
(国の普通財産の譲渡)
第九条 国は、総合開発事業の用に供するため必要があると認めるときは、その事業に係る経費を負担する地方公共団体に対し、普通財産を譲渡することができる。
(国の財政上及び金融上の援助)
第十条 国は、前二条に定めるもののほか、琵琶湖総合開発計画を達成するために必要があると認めるときは、総合開発事業を実施する者に対し、財政上及び金融上の援助を与えることができる。
(水資源開発関連事業についての負担の調整等)
第十一条 総合開発事業(第二条第一項第二号ハの事業を除く。)、琵琶湖の湖岸及び湖底の清掃及び整地その他これらに類する琵琶湖の維持管理の事業並びに琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発に寄与する施設で当該地域に存するものの維持管理の事業のうち、総合開発事業たる第二条第一項第二号ハの事業(以下この条において「水資源開発事業」という。)の実施により琵琶湖及びその周辺地域について生ずべき不利益(水資源開発事業を実施する者による損失補償の対象となるものを除く。)を補う効用を有する事業で、その事業に係る経費の全部又は一部を当該地域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体が負担するもの(政令で定めるものに限る。)については、当該地方公共団体は、政令で定めるところにより、次に掲げる地方公共団体と協議し、その協議によりその負担する経費の一部をこれに負担させることができる。
一 水資源開発事業により生じた施設を利用して河川の流水を水道又は工業用水道の用に供し、又は供することが予定されている地方公共団体
二 次に掲げる区域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体(前号に掲げるものを除く。)
イ 前号の施設を利用して河川の流水をその用に供する水道で水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第二項に規定する水道事業の用に供するものの給水区域又は給水予定区域
ロ 前号の施設を利用して河川の流水をその用に供する水道で水道法第三条第四項に規定する水道用水供給事業の用に供するものの給水対象事業者が設置する水道の給水区域又は給水予定区域
ハ 前号の施設を利用して河川の流水をその用に供する工業用水道で工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第四項に規定する工業用水道事業の用に供するものの給水区域又は給水予定区域
2 近畿圏整備長官、厚生大臣、通商産業大臣及び自治大臣は、前項の規定による負担に関し、関係当事者のうち一以上の申出に基づき、あつせんをすることができる。
3 第一項の規定による協議が成立した場合においては、関係当事者は、遅滞なく、近畿圏整備長官、厚生大臣、通商産業大臣、自治大臣その他その協議に係る事業に関する主務大臣に対し、その協議が成立した事項を報告しなければならない。ただし、前項のあつせんに基づきその協議が成立した場合には、近畿圏整備長官、厚生大臣、通商産業大臣及び自治大臣に対しては、この限りでない。
4 第一項各号に掲げる地方公共団体は、琵琶湖及びその周辺地域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体で総合開発事業(水資源開発事業を除く。)を実施するものに対し、当該事業の実施に必要な資金を融通することができる。
(琵琶湖管理基金)
第十二条 琵琶湖及びその周辺地域の全部又は一部をその区域に含む地方公共団体は、琵琶湖の湖岸及び湖底の清掃及び整地その他これらに類する琵琶湖の維持管理の事業並びに琵琶湖及びその周辺地域の保全及び開発に寄与する施設で当該地域に存するものの維持管理の事業の適正かつ円滑な実施を図るため必要があると認めるときは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十一条の基金として、琵琶湖管理基金を設けることができる。
附 則
(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 第八条(別表を含む。)の規定は、昭和四十七年度分の事業(昭和四十六年度分の事業で翌年度に繰り越したものを除くものとし、第三条第四項の規定による琵琶湖総合開発計画の決定前に実施されたものを含む。)に係る経費に対する国の負担金又は補助金から適用する。
(この法律の失効)
3 この法律は、昭和五十七年三月三十一日限り、その効力を失う。ただし、第七条に規定する生活再建のための措置のあつせんで同日後に実施される必要があるもの、第八条第一項に規定する事業に係る経費に対する国の負担金若しくは補助金又は地方公共団体の負担金で昭和五十七年度以降に交付され又は納付されるもの及び第十一条第一項の規定に基づく負担金で同年度以降に支払われるものについては、第七条、第八条(別表を含む。)及び第十一条第一項の規定は、なおその効力を有する。
(昭和四十七年度の特例)
4 昭和四十七年度の年度計画の作成については、第四条第一項中「その年度の開始前までに」とあるのは、「琵琶湖総合開発計画の決定後遅滞なく」とする。
5 昭和四十七年度に限り、同年度分の事業(国が実施するものを除く。)に係る経費につき第八条第一項の規定による国の負担割合によつて算定した国の負担金又は補助金の額が、他の法令の規定による国の負担割合によつて算定した国の負担金又は補助金の額をこえることとなる場合には、当該事業に係る事務を所掌する各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。)は、そのこえることとなる部分の額を昭和四十八年度に交付するものとする。
(近畿圏整備法の一部改正)
6 近畿圏整備法(昭和三十八年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。
第四条中第八号を第九号とし、第七号の次に次の一号を加える。
八 琵琶湖総合開発特別措置法(昭和四十七年法律第六十四号)(これに基づく命令を含む。)により内閣総理大臣の権限に属する事務を処理すること。
別表
事業の区分
国の負担割合の範囲
河川法第四条第一項に規定する一級河川の改良工事(政令で定めるものを除く。)
四分の三以内
砂防法(明治三十年法律第二十九号)第一条に規定する砂防工事
四分の三以内
下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号及び第四号に規定する公共下水道及び流域下水道の設置又は改築
三分の二以内
土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業のうち農業用用排水施設の新設、廃止若しくは変更又は区画整理
百分の六十五以内
森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第四十一条第二項に規定する保安施設事業(政令で定めるものを除く。)
四分の三以内
都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第二項に規定する公園施設の新設、増設又は改築
十分の五・五以内
自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第二条第六号に規定する公園事業で政令で定めるもの
十分の五・五以内
内閣総理大臣 佐藤栄作
大蔵大臣 水田三喜男
厚生大臣 斎藤昇
農林大臣 赤城宗徳
通商産業大臣 田中角栄
運輸大臣 丹羽喬四郎
建設大臣 西村英一
自治大臣 渡海元三郎