日本蚕糸事業団法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十一年一月十三日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第三号
日本蚕糸事業団法
目次
第一章
総則(第一条―第十三条)
第二章
役員等(第十四条―第二十七条)
第三章
業務(第二十八条―第三十五条)
第四章
財務及び会計(第三十六条―第四十三条)
第五章
監督(第四十四条・第四十五条)
第六章
雑則(第四十六条―第四十八条)
第七章
罰則(第四十九条―第五十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本蚕糸事業団は、蚕糸業の経営の安定と生糸の輸出の増進に資するため、生糸の買入れ及び売渡し、委託による乾繭の売渡し等の操作を行なうことにより、繭及び生糸の価格の適正な水準における安定を図ることを目的とする。
(法人格)
第二条 日本蚕糸事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 事業団は、主たる事務所を東京都に置く。
2 事業団は、農林大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第四条 事業団の資本金は、附則第七条第二項の規定により政府から出資があつたものとされる金額及び附則第八条第一項の規定により出資される営業の価額並びに事業団の設立に際し次条各号に掲げる者から出資される金額の合計額とする。
2 事業団は、必要があるときは、農林大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
3 政府は、前項の規定により事業団がその資本金を増加するときは、予算で定める金額の範囲内において、事業団に出資することができる。
(出資)
第五条 次に掲げる者は、事業団に出資することができる。
一 養蚕業者が直接又は間接の構成員となつている農業協同組合又は農業協同組合連合会
二 製糸業者(製糸業法(昭和七年法律第二十九号)第二条第一項の規定により免許を受けた者その他農林省令で定める者に限る。以下同じ。)
三 製糸業者が直接又は間接の構成員となつている商工組合、商工組合連合会又は農林省令で定めるその他の法人
第六条 事業団に出資する者は、出資の払込みについて、相殺をもつて事業団に対抗することができない。
(出資証券)
第七条 事業団は、出資に対し出資証券を発行する。
2 出資証券は、記名式とする。
3 前項に規定するもののほか、出資証券に関し必要な事項は、政令で定める。
(持分の払戻し等の禁止)
第八条 事業団は、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 事業団は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(出資者たる地位の喪失)
第九条 政府以外の出資者(第四十七条第一項及び第二項の規定を除き、以下単に「出資者」という。)は、その持分の全部の譲渡しによつてのみ出資者たる地位を失うことができる。
(持分の譲渡し)
第十条 出資者は、事業団の承認を得なければ、その持分を譲り渡すことができない。
2 第五条各号に掲げる者でなければ、出資者の持分の譲渡しを受けることができない。
3 出資者の持分の譲受人は、その持分について、譲渡人の権利義務を承継する。
(登記)
第十一条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第十二条 事業団でない者は、日本蚕糸事業団という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第十三条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、事業団について準用する。
第二章 役員等
(役員)
第十四条 事業団に、役員として、理事長一人、理事四人以内及び監事一人を置く。
2 事業団に、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事二人以内を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第十五条 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、事業団の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は農林大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十六条 理事長及び監事は、農林大臣が任命する。
2 理事は、農林大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第十七条 理事長及び理事の任期は、三年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十八条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第十九条 農林大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 農林大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、農林大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第二十条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、非常勤の理事にあつては、農林大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第二十一条 事業団と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。
(代理人の選任)
第二十二条 理事長は、理事又は事業団の職員のうちから、事業団の従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第二十三条 事業団の職員は、理事長が任命する。
(運営審議会)
第二十四条 事業団に、運営審議会を置く。
2 運営審議会は、理事長の諮問に応じ、事業団の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 運営審議会は、前項の事項に関し、理事長に意見を述べることができる。
第二十五条 運営審議会は、委員十五人以内で組織する。
2 委員は、事業団の業務に関し学識経験を有する者のうちから、農林大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
3 委員の任期は、二年とする。
4 第十七条第一項ただし書及び第二項並びに第十九条第二項及び第三項の規定は、委員について準用する。
(役員等の秘密保持義務)
第二十六条 事業団の役員若しくは職員若しくは運営審議会の委員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第二十七条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務の範囲)
第二十八条 事業団は、第一条の目的を達成するため、次に掲げる業務を行なう。
一 生糸の買入れ及び売渡し(第三号の委託による売渡しを除く。)を行なうこと。
二 委託を受けて、乾繭を売り渡し、加工し、又は生糸と交換すること。
三 前号の委託による加工又は交換に係る生糸を当該委託をした者からの委託を受けて売り渡すこと。
四 前三号に掲げる業務に伴う生糸又は乾繭の保管を行なうこと。
五 前各号に掲げる業務に附帯する業務を行なうこと。
2 事業団は、前項の規定により行なう業務のほか、あらかじめ農林大臣の認可を受けて、前事業年度における損益計算上の利益金から積み立てられた積立金に相当する金額に政令で定める率を乗じて得た金額の範囲内で、繭又は生糸の生産又は流通の合理化を図るための事業に対する助成を行なうことができる。
3 事業団は、前二項の規定により行なう業務の遂行に支障のない範囲内で、あらかじめ農林大臣の認可を受けて、生糸の流通の円滑化を図るための生糸の買入れ、保管及び売渡しの業務並びにこれに附帯する業務を行なうことができる。
4 第一項第一号及び第二号に掲げる業務は、次条から第三十三条までに定めるところにより行なうものとする。
(生糸の買入れ)
第二十九条 事業団は、出資者で第五条第二号に掲げるもの又は出資者で同条第三号に掲げるものの直接若しくは間接の構成員たる製糸業者の申込みにより、その申込みをした者の製造に係る生糸(他に委託して製造したものを含む。)を第三十四条第一項第一号に掲げる買入価格で買い入れることができる。
2 事業団は、農林省令で定めるところにより、前項の規定による生糸の買入れに当たつて、その相手方との間に、その買入れ後政令で定める期間を経過するまでは、その者の請求により、当該生糸をその買入れの価格に相当する額にその保管に要する費用の額を加えて得た額で売り戻す旨の約定をしなければならない。
3 事業団が毎事業年度第一項の規定により買い入れることができる生糸の数量は、政令で定める数量を限度とする。ただし、事業団が同項の規定により買い入れて保管する生糸を当該事業年度に売り渡した場合(繭糸価格安定法(昭和二十六年法律第三百十号)第二条又は第九条の二第一項の規定による政府の買入れの契約に基づいて売り渡した場合を除く。)には、当該政令で定める数量に当該売渡しに係る生糸の数量(その数量が当該政令で定める数量をこえるときは、当該政令で定める数量)を加えて得た数量を限度とする。
(生糸の売渡し)
第三十条 事業団は、前条第二項の約定に基づき売り戻すほか、同条第一項の規定により買い入れて保管する生糸(その生糸に係る第三十二条第一項の規定による買換えによつて保管する生糸を含む。)のうち前条第一項の規定による買入れ後同条第二項の政令で定める期間を経過してなお保管しているものを売り渡すことができる。
2 事業団が前項の規定による売渡しをすることができるのは、繭糸価格安定法第二条又は第九条の二第一項の規定による政府の買入れの契約に基づいて売渡しをする場合及び生糸の価格が第三十四条第一項第一号に掲げる標準売渡価格をこえて騰貴し又は騰貴するおそれがあると認められる場合に限るものとする。
3 事業団は、第一項の規定による売渡しをする場合においては、繭糸価格安定法第二条又は第九条の二第一項の規定による政府の買入れの契約に基づいて売渡しをする場合を除き、政令で定めるところにより、一般競争入札の方法によらなければならない。ただし、その方法によることが著しく不適当であると認められる場合においては、政令で定めるところにより、農林大臣の承認を受けて、随意契約その他の方法によることができる。
(生糸の買入れ又は売渡しをしない場合)
第三十一条 事業団は、次に掲げる場合には、第二十九条第一項の規定による買入れ又は前条第一項の規定による売渡しをしないものとする。
一 第二十九条第一項の申込みをした者について、その者が第三十四条第一項第二号に掲げる基準繭価に達しない価格で繭を買い入れ又は買い入れるおそれがあると認めるとき。
二 前条第一項の規定による売渡しを受ける旨の申込みが買占めその他による不当な利得を目的として行なわれたと認めるとき。
三 その他農林省令で定める理由があるとき。
(生糸の買換え)
第三十二条 事業団は、第二十九条第一項の規定により買い入れて保管する生糸の品質の低下により著しい損失を生ずるおそれがある場合において、必要があるときは、同条及び第三十条の規定にかかわらず、これを同一の種類及び数量の生糸に買い換えることができる。この項の規定による買換えによつて保管する生糸についても、同様とする。
2 前項の規定による買換えのための売渡し及び買入れは、同時期に行なわなければならない。
(乾繭の売渡し等の受託)
第三十三条 事業団は、繭の売買取引が次条第一項第二号に掲げる基準繭価に達しない価格で行なわれるおそれがあると認められる場合には、農業協同組合連合会の申込みにより、乾繭を売り渡し、加工し、又は生糸と交換すべき旨の委託を受けることができる。
2 事業団は、前項の規定により委託を受ける場合には、次条第一項第二号に掲げる期間ごとに、繭の価格が同号に掲げる基準繭価を下つて低落することを防止することを旨として、当該委託を受ける乾繭の数量の限度を定め、農林大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
3 事業団は、前項の承認を受けた数量の範囲内でなければ、第一項の委託を受けることができない。
(標準売渡価格等)
第三十四条 事業団は、次の各号に掲げる価格を、当該各号に掲げる期間ごとに、当該期間の開始前に定め、農林大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
一 標準売渡価格及び買入価格 農林省令で定める期間
二 基準繭価 春蚕繭及び夏秋蚕繭のそれぞれの掃立ての時期から出荷の時期までを基準として農水省令で定める期間
2 前項第一号に掲げる標準売渡価格及び買入価格は、繭糸価格安定法第二条の最高価格をこえずかつ同条の最低価格を下らない範囲内において、生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として農林大臣が定める生糸の価格(以下「基準糸価」という。)を基準として定めるものとする。
3 第一項第二号に掲げる基準繭価は、繭の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて適正と認められる繭価水準の実現を図ることを旨として、基準糸価を参酌して定めるものとする。
4 基準糸価は、繭糸価格安定法第四条の規定により同法第三条第一項の標準生糸の最高価格及び最低価格を定める際、あわせて定めるものとする。
5 農林大臣は、基準糸価を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを事業団に通知しなければならない。
6 農林大臣は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その認可に係る標準売渡価格及び買入価格並びに基準繭価を告示しなければならない。
(業務方法書)
第三十五条 事業団は、第二十八条第一項から第三項までに規定する業務の開始の際、業務方法書を作成し、農林大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、農林省令で定める。
3 事業団は、第一項の規定により農林大臣の認可を受けたときは、遅滞なく、その認可に係る業務方法書(変更の認可を受けた場合にあつては、その変更に係る部分)を出資者に送付しなければならない。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第三十六条 事業団の事業年度は、毎年六月一日に始まり、翌年五月三十一日に終わる。
(事業計画等の認可)
第三十七条 事業団は毎事業年度、事業計画、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、農林大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 第三十五条第三項の規定は、前項の規定による認可を受けた場合に準用する。
(財務諸表)
第三十八条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に、これを、出資者に送付するとともに、農林大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 事業団は、前項の規定により財務諸表を出資者に送付し又は農林大臣に提出するときは、これに、当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書を添え、かつ、財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十九条 事業団は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 事業団は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第四十条 事業団は、農林大臣の認可を受けて、長期借入金又は短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、農林大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第四十一条 事業団は、次に掲げる方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他農林大臣の指定する有価証券の取得
二 銀行、農林中央金庫その他農林大臣の指定する金融機関への預金
三 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託
(給与及び退職手当の支給の基準)
第四十二条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、農林大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(農林省令への委任)
第四十三条 この法律に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、農林省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第四十四条 事業団は、農林大臣が監督する。
2 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十五条 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に事業団の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳薄、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(繭の価格に関する勧告)
第四十六条 農林大臣は、繭の売買取引が第三十四条第一項第二号に掲げる基準繭価に達しない価格で行なわれるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、製糸業者に対し、養蚕業者(養蚕業者が直接又は間接の構成員となつている農業協同組合又は農業協同組合連合会を含む。)から繭を買い入れるに当たつては同号に掲げる基準繭価以上の価格によるべきことを勧告することができる。
(解散)
第四十七条 事業団は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる金額は、その出資額を限度とする。
3 前二項に規定するもののほか、事業団の解散については、別の法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第四十八条 農林大臣は、次に掲げる場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第四条第二項、第二十八条第二項若しくは第三項、第三十五条第一項、第三十七条第一項又は第四十条第一項若しくは第二項ただし書の規定による認可をしようとするとき。
二 第三十三条第二項、第三十八条第一項又は第四十二条の規定により承認をしようとするとき。
三 第三十五条第二項又は第四十三条の規定により農林省令を定めようとするとき。
四 第四十一条第一号又は第二号の規定による指定をしようとするとき。
第七章 罰則
(罰則)
第四十九条 第二十六条の規定に違反して、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第五十条 第四十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第五十一条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした事業団の役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により農林大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 この法律により出資者に書類の送付をしなければならない場合において、その書類の送付をしなかつたとき。
三 第八条第一項の規定に違反して、出資者の持分を払い戻したとき。
四 第八条第二項の規定に違反して、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けたとき。
五 第十一条第一項の政令の規定に違反して、登記することを怠つたとき。
六 第二十八条第一項から第三項までに規定する業務以外の業務を行なつたとき。
七 第四十一条の規定に違反して、業務上の余裕金を運用したとき。
八 第四十四条第二項の規定による農林大臣の命令に違反したとき。
第五十二条 第十二条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、附則第十五条から第十七条までの規定、附則第十八条中繭糸価格安定法第十四条の二から第十四条の十四までを削る改正規定、同法第十八条第二号の改正規定及び同法第二十条から第二十二条までを削る改正規定(以下「日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定」という。)並びに附則第十九条及び第二十三条から第三十二条までの規定は公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から、附則第十八条中日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定以外の改正規定及び附則第二十条から第二十二条までの規定は公布の日から起算して六月をこえかつ九月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(事業団の設立)
第二条 農林大臣は、事業団の理事長又は監事となるベき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、事業団の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。
第三条 農林大臣は、設立委員を命じて、事業団の設立に関する事務を処理させる。
第四条 設立委員は、第五条各号に掲げる者に対し、事業団に対する出資を募集しなければならない。
2 設立委員は、前項の規定による募集が終わつたときは、農林大臣に対し、設立の認可を申請しなければならない。
3 設立委員は、前項の認可を受けたときは、出資の募集に応じた第五条各号に掲げる者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
4 前項の規定により払込みを求められたときは、出資の募集に応じた第五条各号に掲げる者は、その引き受けた出資金の全額を払い込まなければならない。
5 設立委員は、出資金の払込みがあつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。
6 第四十八条の規定は、第二項の認可をしようとする場合に準用する。
第五条 附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条第五項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第六条 事業団は、前条の規定による設立の登記をすることによつて成立する。
(日本蚕繭事業団の解散等)
第七条 日本蚕繭事業団は、事業団の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、その時において事業団が承継する。
2 日本蚕繭事業団の解散の時までに政府から日本蚕繭事業団に対して出資された十億円は、事業団の設立に際して政府から事業団に対し出資されたものとする。
3 第一項の規定により日本蚕繭事業団が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
(日本輸出生糸保管株式会社の解散等)
第八条 日本輸出生糸保管株式会社は、この法律の公布の日から起算して二月以内に商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百四十三条(定款変更の決議方法)に規定する株主総会の決議を得て、事業団の設立に際し、事業団に対してその営業の全部を出資することができる。
2 商法第二百四十五条ノ二本文、第二百四十五条ノ三及び第二百四十五条ノ四(反対株主の株式買取請求)の規定は、前項の場合に準用する。
3 日本輸出生糸保管株式会社は、第一項の規定による出資をする場合には、あらかじめ、その旨を設立委員に申し出なければならない。
4 設立委員は、前項の規定による申出があつたときは、遅滞なく、農林大臣の認可を申請しなければならない。
5 第一項に規定する決議があつたときは、政府及び第五条各号に掲げる者以外の株主の所有する株式は、前項の認可があつた時に日本輸出生糸保管株式会社が買い取つて消却したものとみなす。
6 前項の場合における株式一株の買取価格は、日本輸出生糸保管株式会社の純資産の額をその発行済株式の総数で除して得た額とする。
7 日本輸出生糸保管株式会社が第一項の規定による出資をする場合においては、日本輸出生糸保管株式会社の株主(政府及び第五条各号に掲げる者に限る。)は、その所有する株式の数に比例して、事業団の出資証券の引受人となる。
8 第四項の認可があつたときは、日本輸出生糸保管株式会社の一切の権利及び義務は、事業団の成立の時において事業団に承継されるものとし、日本輸出生糸保管株式会社は、その時において解散するものとする。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算について定める規定は、適用しない。
9 日本輸出生糸保管株式会社が第一項の規定による出資をする場合においては、日本輸出生糸保管株式会社の株式を目的とする質権は、第七項の規定により日本輸出生糸保管株式会社の株主が受けるべき事業団の出資証券の上に存在する。
10 商法第二百九条第四項(質権者の株券の引渡請求)の規定は、前項の質権について準用する。
11 第八項の規定により日本輸出生糸保管株式会社が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
第九条 前条第一項の規定により日本輸出生糸保管株式会社が出資する営業の価額及び同条第六項の日本輸出生糸保管株式会社の純資産の額は、臨時に農林省に置く評価審査会が決定する。
2 前項の評価審査会は、委員五人をもつて組織する。
3 前二項に定めるもののほか、第一項の評価審査会の組織及び運営に関し必要な事項は、農林省で定める。
(事業団の名称についての経過規定)
第十条 この法律の施行の際現に日本蚕糸事業団という名称を使用している者については、第十二条の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
(事業団の助成事業についての経過規定)
第十一条 事業団の最初の事業年度の第二十八条第二項の規定による助成については、同項中「前事業年度における損益計算上の利益金から積み立てられた積立金」とあるのは、「日本蚕繭事業団の解散の日の属する事業年度の開始の日から当該解散の日の前日までの期間に係る損益計算上の利益金として政令で定めるところにより算出される金額」とする。
(事業団の事業年度等についての経過規定)
第十二条 事業団の最初の事業年度は、第三十六条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和四十二年五月三十一日に終わるものとする。
第十三条 事業団の最初の事業年度の事業計画、予算及び資金計画については、第三十七条第一項中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「事業団の成立後遅滞なく」とする。
(増資)
第十四条 事業団は、その成立の日における資本金の金額のうち第五条各号に掲げる者の出資に係る部分の金額が十億円に満たないときは、昭和四十三年五月三十一日までに、資本金の金額のうち同号に掲げる者の出資に係る部分の金額が十億円以上となるようにその資本金を増加するものとする。
2 前項に規定する場合においては、第五条各号に掲げる者の出資に係る金額が十億円に達するまでは、事業団は、第四条第二項の認可を受けなくても、その資本金を増加することができる。ただし、第五条各号に掲げる者の出資のみにより資本金を増加する場合に限る。
(繭糸価格の安定に関する臨時措置法の廃止)
第十五条 繭糸価格の安定に関する臨時措置法(昭和三十三年法律第百六十七号)は、廃止する。
(日本蚕繭事業団法の廃止)
第十六条 日本蚕繭事業団法(昭和三十四年法律第百四号)は、廃止する。
(日本蚕繭事業団法の廃止に伴う経過規定)
第十七条 前条の規定の施行前にした廃止前の日本蚕繭事業団法の規定に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(繭糸価格安定法の一部改正)
第十八条 繭糸価格安定法の一部を次のように改正する。
第九条の二第五項中「第二項」を「第三項」に改め、同項を同条第六項とし、同条第四項を同条第五項とし、同条第三項中「若しくは次条第一項」を削り、同項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に、「経済事情」を「経済事情並びに日本蚕糸事業団による輸出適格生糸の買入れの価格にその保管に要する費用の額を加えて得た額」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項中「日本輸出生糸保管株式会社を相手方として、当該会社が、農林大臣の定める条件に従い買い入れて保管する輸出適格生糸」を「日本蚕糸事業団を相手方として、日本蚕糸事業団が、買い入れて保管する輸出適格生糸」に改め、同項の次に次の一項を加える。
2 前項の政令で定める期間は、日本蚕糸事業団法(昭和四十一年法律第三号)第二十九条第二項の政令で定める期間下らない期間とする。
第九条の三を削り、第九条の四第一項中「、第九条の二第一項」を削り、「第九条の二第三項」を「前条第四項」に改め、同条第二項中「費用の額を加えて得た額」の下に「又は日本蚕糸事業団法第三十四条第一項第一号に掲げる標準売渡価格のいずれか高い額」を加え、同条を第九条の三とし、第九条の五を第九条の四とする。
第十二条の三中「、第九条の二第一項若しくは第九条の三第一項」を「若しくは第九条の二第一項」に改め、第四号を削り、第五号を第四号とし、第六号から第八号までを一号ずつ繰り上げる。
第十四条の二から第十四条の十四までを削る。
第十八条第二号中「若しくは第十四条の十四第一項」を削り、「第十四条第二項」を「同条第二項」に改める。
第二十条から第二十二条までを削る。
(繭糸価格安定法の一部改正に伴う経過規定)
第十九条 事業団は、第二十八条第一項から第三項までの規定により行なう業務のほか、日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定の施行の日から前条中日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定以外の改正規定の施行の日の前日までは、次に掲げる業務を行なうことができる。この場合において、改正前の繭糸価格安定法第九条の二及び第九条の三の規定の適用については、これらの規定中「日本輸出生糸保管株式会社」とあり、「当該会社」とあるのは、「日本蚕糸事業団」とする。
一 日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定の施行の際現に日本輸出生糸保管株式会社が改正前の繭糸価格安定法第九条の二第一項又は第九条の三第一項の規定により締結している契約に基づいて、輸出適格生糸(改正前の同法第九条の二第一項の輸出適格生糸をいう。以下同じ。)の買入れ及び保管を行ない、並びに当該契約に係る輸出適格生糸の売渡しを行なうこと。
二 改正前の繭糸価格安定法第九条の二第一項又は第九条の三第一項の規定により契約を締結し、これに基づいて輸出適格生糸の買入れ及び保管を行ない、並びに当該契約に係る輸出適格生糸の売渡しを行なうこと。
三 前二号に掲げる業務に附帯する業務を行なうこと。
2 前項の規定により同項に規定する業務が行なわれる場合には、第五十一条第六号中「第二十八条第一項から第三項まで」とあるのは、「第二十八条第一項から第三項まで及び附則第十九条第一項」とする。
第二十条 事業団は、第二十八条第一項から第三項までの規定により行なう業務のほか、附則第十八条中日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定以外の改正規定の施行の後において、日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定の施行の際現に日本輸出生糸保管株式会社が改正前の繭糸価格安定法第九条の二第一項若しくは第九条の三第一項の規定により締結している契約又は附則第十八条中日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定以外の改正規定の施行の際現に事業団が改正前の同法第九条の二第一項若しくは第九条の三第一項の規定により締結している契約に基づいて、輸出適格生糸(附則第十八条中日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定以外の改正規定の施行の際現に事業団が保管しているものに限る。)の保管及び売渡しの業務を行ない、並びにこれに附帯する業務を行なうことができる。
2 前項の規定により同項に規定する業務が行なわれる場合には、第五十一条第六号中「第二十八条第一項から第三項まで」とあるのは、「第二十八条第一項から第三項まで及び附則第二十条第一項」とする。
第二十一条 改正前の繭糸価格安定法第九条の二第一項又は第九条の三第一項の規定による買入れにより政府が保有する生糸は、改正後の同法第九条の二第四項及び第九条の三第一項の規定の適用については、改正後の同法第九条の二第一項の規定による買入れにより政府が保有する生糸とみなす。
第二十二条 改正前の繭糸価格安定法第九条の二第一項又は第九条の三第一項の規定による政府の買入れの契約は、改正後の同法第十二条の三の規定の適用については、改正後の同法第九条の二第一項の規定による政府の買入れの契約とみなす。
第二十三条 日本輸出生糸保管株式会社関係改正規定の施行前にした当該改正規定による改正前の繭糸価格安定法の規定に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(糸価安定特別会計法の一部改正)
第二十四条 糸価安定特別会計法(昭和二十六年法律第三百十一号)の一部を次のように改正する。
附則中第二項を削り、第三項を第二項とし、第四項を第三項とする。
(地方財政再建促進特別措置法の一部改正)
第二十五条 地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。
第二十四条第二項中「八郎潟新農村建設事業団」の下に「、日本蚕糸事業団」を加える。
(登録税法の一部改正)
第二十六条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「日本蚕繭事業団」を「日本蚕糸事業団」に、「日本蚕繭事業団法」を「日本蚕糸事業団法」に改める。
(印紙税法の一部改正)
第二十七条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号ノ三ノ三を次のように改める。
六ノ三ノ三 日本蚕糸事業団ノ発スル出資証券
(租税特別措置法の一部改正)
第二十八条 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第八十四条中「、日本輸出生糸保管株式会社」を削る。
(所得税法の一部改正)
第二十九条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中日本蚕繭事業団の項を次のように改める。
日本蚕糸事業団
日本蚕糸事業団法(昭和四十一年法律第三号)
(法人税法の一部改正)
第三十条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中日本蚕繭事業団の項を削り、別表第二第一号の表中日本小型自動車振興会の項の次に次のように加える。
日本蚕糸事業団
日本蚕糸事業団法(昭和四十一年法律第三号)
(地方税法の一部改正)
第三十一条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「、日本蚕繭事業団」を削る。
第七十二条の五第一項第七号中「糖価安定事業団」の下に「、日本蚕糸事業団」を加える。
(行政管理庁設置法の一部改正)
第三十二条 行政管理庁設置法(昭和二十三年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。
第二条第十二号中「日本蚕繭事業団」を「日本蚕糸事業団」に改める。
(農林省設置法の一部改正)
第三十三条 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第十二条第四号の三の次に次の一号を加える。
四の四 日本蚕糸事業団の指導監督に関すること。
内閣総理大臣 佐藤栄作
法務大臣 石井光次郎
大蔵大臣 福田赳夫
農林大臣 坂田英一
自治大臣 永山忠則