日本蚕繭事業団法
法令番号: 法律第百四号
公布年月日: 昭和34年4月4日
法令の形式: 法律
日本蚕繭事業団法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十四年四月四日
内閣総理大臣 岸信介
法律第百四号
日本蚕繭事業団法
目次
第一章
総則(第一条―第八条)
第二章
役員等(第九条―第二十二条)
第三章
業務(第二十三条―第二十五条)
第四章
財務及び会計(第二十六条―第三十四条)
第五章
監督(第三十五条・第三十六条)
第六章
雑則(第三十七条・第三十八条)
第七章
罰則(第三十九条―第四十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本蚕繭事業団は、養蚕業の経営の安定に資するため、農業協同組合連合会からの委託による乾繭の売渡、乾繭の生糸への加工及びその加工に係る生糸の売渡等の操作を行うことにより、適正な繭価水準の実現を図ることを目的とする。
(法人格)
第二条 日本蚕繭事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 事業団は、主たる事務所を東京都に置く。
2 事業団は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第四条 事業団の資本金は、十億円とし、政府がその全額を出資する。
(定款)
第五条 事業団は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金及び資産に関する事項
五 役員及び運営審議会に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 財務及び会計に関する事項
八 公告に関する事項
九 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第六条 事業団は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。
2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第七条 事業団でない者は、日本蚕繭事業団という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、事業団に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第九条 事業団に、役員として、理事長一人、理事二人以内及び監事一人を置く。
(役員の職務及び権限)
第十条 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、事業団の業務を監査する。
(役員の任命)
第十一条 理事長及び監事は、農林大臣が任命する。
2 理事は、理事長が農林大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第十二条 理事長及び理事の任期は、三年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十三条 国会議員、国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者で、非常勤のものを除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員は、役員となることができない。
(役員の解任)
第十四条 農林大臣は、理事長又は監事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 理事長は、理事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
第十五条 農林大臣は、理事長若しくは監事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長若しくは監事に職務上の義務違反その他理事長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、農林大臣の認可を受けて、これを解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第十六条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
(代表権の制限)
第十七条 事業団と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。
(代理人の選任)
第十八条 理事長は、理事又は事業団の職員のうちから、事業団の従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第十九条 事業団の職員は、理事長が任命する。
(運営審議会)
第二十条 事業団に、運営審議会を置く。
2 運営審議会は、理事長の諮問に応じ、事業団の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 運営審議会は、前項の事項に関し、理事長に意見を述べることができる。
4 運営審議会は、委員十人以内で組織する。
5 委員は、事業団の業務に関し学識経験を有する者のうちから、農林大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
6 委員の任期は、一年とする。
7 第十二条第一項ただし書及び第二項並びに第十五条第二項の規定は、委員について準用する。
(役員等の秘密保持義務)
第二十一条 事業団の役員若しくは職員若しくは運営審議会の委員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らしてはならない。
(役員及び職員の地位)
第二十二条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務の範囲)
第二十三条 事業団は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 農業協同組合連合会からの委託を受けて、乾繭を売り渡し、加工し、又は生糸と交換すること。
二 前号の委託による加工又は交換に係る生糸を当該農業協同組合連合会からの委託を受けて売り渡すこと。
三 前二号に掲げる業務に附帯する業務
2 事業団は、前項に掲げる業務のほか、あらかじめ農林大臣の認可を受けて、前事業年度における損益計算上の利益金から積み立てられた積立金に相当する金額に政令で定める率を乗じて得た金額の範囲内で、養蚕業の経営の安定に資するための事業に対する助成を行うことができる。
(受託数量の限度)
第二十四条 事業団は、前条第一項第一号に掲げる業務を行う場合には、農林省令で定める蚕期ごとに、あらかじめ、繭及び生糸の需給事情からみて適正と認められる繭価水準の実現を図ることを旨として、同号の委託を受ける乾繭の数量の限度を定め、農林大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 事業団は、前項の承認を受けた数量の範囲内でなければ、前条第一項第一号の委託を受けることができない。
(業務方法書)
第二十五条 事業団は、業務開始の際、業務方法書を作成し、農林大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、農林省令で定める。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十六条 事業団の事業年度は、毎年六月一日に始まり、翌年五月三十一日に終る。
(収入及び支出の予算等の認可)
第二十七条 事業団は、毎事業年度、収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に農林大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(決算)
第二十八条 事業団は、毎事業年度の決算を翌年度の七月三十一日までに完結しなければならない。
(財務諸表)
第二十九条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後一月以内に農林大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 事業団は、前項の規定により財務諸表を農林大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添え、かつ、財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十条 事業団は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 事業団は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十一条 事業団は、農林大臣の認可を受けて、一時借入金をすることができる。
2 前項の規定による一時借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、農林大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第三十二条 事業団は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 農林中央金庫又は農林大臣の指定するその他の金融機関への預金
二 国債又は農林大臣の指定するその他の有価証券の取得
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十三条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、農林大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(農林省令への委任)
第三十四条 この法律に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、農林省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十五条 事業団は、農林大臣が監督する。
2 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対して、その業務に関し、監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十六条 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、事業団の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(解散)
第三十七条 事業団の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第三十八条 農林大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第五条第二項、第二十三条第二項、第二十五条第一項、第二十七条又は第三十一条第一項若しくは第二項ただし書の認可をしようとするとき。
二 第二十四条第一項、第二十九条第一項又は第三十三条の承認をしようとするとき。
三 第三十二条第一号又は第二号の指定をしようとするとき。
四 第二十五条第二項又は第三十四条の農林省令を定めようとするとき。
第七章 罰則
第三十九条 第二十一条の規定に違反してその職務に関して知得した秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第四十条 第三十六条第一項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第四十一条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により農林大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第六条第一項の政令に違反して登記をすることを怠つたとき。
三 第二十三条に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第三十二条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十五条第二項の命令に違反したとき。
第四十二条 第七条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(事業団の設立)
第二条 農林大臣は、第十一条第一項の例により、事業団の理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、事業団の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。
第三条 農林大臣は、設立委員を命じて、事業団の設立に関する事務を処理させる。
第四条 設立委員は、定款を作成し、農林大臣の認可を受けなければならない。
2 設立委員は、前項の認可を受けたときは、政府に対し、出資金の払込を求めなければならない。
3 政府は、前項の規定により出資金の払込を求められたときは、第四条の規定による出資金の全額を払い込まなければならない。
4 設立委員は、前項の規定による出資金の払込があつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。
5 第三十八条の規定は、第一項の認可をしようとする場合に準用する。
第五条 附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条第四項の規定による事務の引継を受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第六条 事業団は、設立の登記をすることによつて成立する。
(経過規定)
第七条 この法律の施行の際現に日本蚕繭事業団という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第七条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第八条 事業団の最初の事業年度は、第二十六条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十五年五月三十一日に終るものとする。
第九条 事業団の最初の事業年度の収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画については、第二十七条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「事業団の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第十条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「石炭鉱業整備事業団」の下に「、日本蚕繭事業団」を、「石炭鉱業合理化臨時措置法」の下に「、日本蚕繭事業団法」を加える。
(印紙税法の一部改正)
第十一条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号ノ三ノ二の次に次の一号を加える。
六ノ三ノ三 日本蚕繭事業団ノ発スル証書、帳簿
(所得税法の一部改正)
第十二条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「日本貿易振興会」の下に「、日本蚕繭事業団」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十三条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号中「日本貿易振興会」の下に「、日本蚕繭事業団」を加える。
(地方税法の一部改正)
第十四条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「日本貿易振興会」の下に、「、日本蚕繭事業団」を加える。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 愛知揆一
大蔵大臣 佐藤榮作
農林大臣 三浦一雄
日本蚕繭事業団法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十四年四月四日
内閣総理大臣 岸信介
法律第百四号
日本蚕繭事業団法
目次
第一章
総則(第一条―第八条)
第二章
役員等(第九条―第二十二条)
第三章
業務(第二十三条―第二十五条)
第四章
財務及び会計(第二十六条―第三十四条)
第五章
監督(第三十五条・第三十六条)
第六章
雑則(第三十七条・第三十八条)
第七章
罰則(第三十九条―第四十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本蚕繭事業団は、養蚕業の経営の安定に資するため、農業協同組合連合会からの委託による乾繭の売渡、乾繭の生糸への加工及びその加工に係る生糸の売渡等の操作を行うことにより、適正な繭価水準の実現を図ることを目的とする。
(法人格)
第二条 日本蚕繭事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 事業団は、主たる事務所を東京都に置く。
2 事業団は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第四条 事業団の資本金は、十億円とし、政府がその全額を出資する。
(定款)
第五条 事業団は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金及び資産に関する事項
五 役員及び運営審議会に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 財務及び会計に関する事項
八 公告に関する事項
九 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第六条 事業団は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。
2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第七条 事業団でない者は、日本蚕繭事業団という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、事業団に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第九条 事業団に、役員として、理事長一人、理事二人以内及び監事一人を置く。
(役員の職務及び権限)
第十条 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、事業団の業務を監査する。
(役員の任命)
第十一条 理事長及び監事は、農林大臣が任命する。
2 理事は、理事長が農林大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第十二条 理事長及び理事の任期は、三年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十三条 国会議員、国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者で、非常勤のものを除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員は、役員となることができない。
(役員の解任)
第十四条 農林大臣は、理事長又は監事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 理事長は、理事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
第十五条 農林大臣は、理事長若しくは監事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長若しくは監事に職務上の義務違反その他理事長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、農林大臣の認可を受けて、これを解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第十六条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
(代表権の制限)
第十七条 事業団と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。
(代理人の選任)
第十八条 理事長は、理事又は事業団の職員のうちから、事業団の従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第十九条 事業団の職員は、理事長が任命する。
(運営審議会)
第二十条 事業団に、運営審議会を置く。
2 運営審議会は、理事長の諮問に応じ、事業団の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 運営審議会は、前項の事項に関し、理事長に意見を述べることができる。
4 運営審議会は、委員十人以内で組織する。
5 委員は、事業団の業務に関し学識経験を有する者のうちから、農林大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
6 委員の任期は、一年とする。
7 第十二条第一項ただし書及び第二項並びに第十五条第二項の規定は、委員について準用する。
(役員等の秘密保持義務)
第二十一条 事業団の役員若しくは職員若しくは運営審議会の委員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らしてはならない。
(役員及び職員の地位)
第二十二条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務の範囲)
第二十三条 事業団は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 農業協同組合連合会からの委託を受けて、乾繭を売り渡し、加工し、又は生糸と交換すること。
二 前号の委託による加工又は交換に係る生糸を当該農業協同組合連合会からの委託を受けて売り渡すこと。
三 前二号に掲げる業務に附帯する業務
2 事業団は、前項に掲げる業務のほか、あらかじめ農林大臣の認可を受けて、前事業年度における損益計算上の利益金から積み立てられた積立金に相当する金額に政令で定める率を乗じて得た金額の範囲内で、養蚕業の経営の安定に資するための事業に対する助成を行うことができる。
(受託数量の限度)
第二十四条 事業団は、前条第一項第一号に掲げる業務を行う場合には、農林省令で定める蚕期ごとに、あらかじめ、繭及び生糸の需給事情からみて適正と認められる繭価水準の実現を図ることを旨として、同号の委託を受ける乾繭の数量の限度を定め、農林大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 事業団は、前項の承認を受けた数量の範囲内でなければ、前条第一項第一号の委託を受けることができない。
(業務方法書)
第二十五条 事業団は、業務開始の際、業務方法書を作成し、農林大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、農林省令で定める。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十六条 事業団の事業年度は、毎年六月一日に始まり、翌年五月三十一日に終る。
(収入及び支出の予算等の認可)
第二十七条 事業団は、毎事業年度、収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に農林大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(決算)
第二十八条 事業団は、毎事業年度の決算を翌年度の七月三十一日までに完結しなければならない。
(財務諸表)
第二十九条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後一月以内に農林大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 事業団は、前項の規定により財務諸表を農林大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添え、かつ、財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十条 事業団は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 事業団は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第三十一条 事業団は、農林大臣の認可を受けて、一時借入金をすることができる。
2 前項の規定による一時借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、農林大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第三十二条 事業団は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 農林中央金庫又は農林大臣の指定するその他の金融機関への預金
二 国債又は農林大臣の指定するその他の有価証券の取得
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十三条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、農林大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(農林省令への委任)
第三十四条 この法律に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、農林省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十五条 事業団は、農林大臣が監督する。
2 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対して、その業務に関し、監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十六条 農林大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、事業団の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(解散)
第三十七条 事業団の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第三十八条 農林大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第五条第二項、第二十三条第二項、第二十五条第一項、第二十七条又は第三十一条第一項若しくは第二項ただし書の認可をしようとするとき。
二 第二十四条第一項、第二十九条第一項又は第三十三条の承認をしようとするとき。
三 第三十二条第一号又は第二号の指定をしようとするとき。
四 第二十五条第二項又は第三十四条の農林省令を定めようとするとき。
第七章 罰則
第三十九条 第二十一条の規定に違反してその職務に関して知得した秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第四十条 第三十六条第一項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第四十一条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により農林大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第六条第一項の政令に違反して登記をすることを怠つたとき。
三 第二十三条に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第三十二条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十五条第二項の命令に違反したとき。
第四十二条 第七条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(事業団の設立)
第二条 農林大臣は、第十一条第一項の例により、事業団の理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、事業団の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。
第三条 農林大臣は、設立委員を命じて、事業団の設立に関する事務を処理させる。
第四条 設立委員は、定款を作成し、農林大臣の認可を受けなければならない。
2 設立委員は、前項の認可を受けたときは、政府に対し、出資金の払込を求めなければならない。
3 政府は、前項の規定により出資金の払込を求められたときは、第四条の規定による出資金の全額を払い込まなければならない。
4 設立委員は、前項の規定による出資金の払込があつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。
5 第三十八条の規定は、第一項の認可をしようとする場合に準用する。
第五条 附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条第四項の規定による事務の引継を受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第六条 事業団は、設立の登記をすることによつて成立する。
(経過規定)
第七条 この法律の施行の際現に日本蚕繭事業団という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第七条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第八条 事業団の最初の事業年度は、第二十六条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十五年五月三十一日に終るものとする。
第九条 事業団の最初の事業年度の収入及び支出の予算、事業計画並びに資金計画については、第二十七条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「事業団の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第十条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「石炭鉱業整備事業団」の下に「、日本蚕繭事業団」を、「石炭鉱業合理化臨時措置法」の下に「、日本蚕繭事業団法」を加える。
(印紙税法の一部改正)
第十一条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号ノ三ノ二の次に次の一号を加える。
六ノ三ノ三 日本蚕繭事業団ノ発スル証書、帳簿
(所得税法の一部改正)
第十二条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「日本貿易振興会」の下に「、日本蚕繭事業団」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十三条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号中「日本貿易振興会」の下に「、日本蚕繭事業団」を加える。
(地方税法の一部改正)
第十四条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「日本貿易振興会」の下に、「、日本蚕繭事業団」を加える。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 愛知揆一
大蔵大臣 佐藤栄作
農林大臣 三浦一雄