電話加入権質に関する臨時特例法
法令番号: 法律第138号
公布年月日: 昭和33年5月6日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

電話加入権を質権の目的とすることは公衆電気通信法で禁止されているが、中小企業者等から電話加入権を担保とした融資への要望が強いため、5年間の期限付きで質権設定を認めることとした。質権設定に伴う権利関係の公示方法として、事務の簡素化のため登記制度ではなく簡易な登録制度を採用し、質権者の範囲を金融機関等に限定した。また質権の実行手続きを簡略化するとともに、加入者・質権者の利益を保護するため、二重質・転質の禁止、流質の禁止、質権設定電話の通話停止制度の導入など、一連の規整を行い、制度の円滑な運営を図ることとした。

参照した発言:
第28回国会 参議院 逓信委員会 第9号

審議経過

第28回国会

参議院
(昭和33年3月11日)
(昭和33年3月13日)
衆議院
(昭和33年3月20日)
(昭和33年4月12日)
(昭和33年4月15日)
参議院
(昭和33年4月22日)
(昭和33年4月23日)
(昭和33年4月23日)
衆議院
(昭和33年4月25日)
参議院
(昭和33年4月25日)
電話加入権質に関する臨時特例法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十三年五月六日
内閣総理大臣 岸信介
法律第百三十八号
電話加入権質に関する臨時特例法
(質権設定の許容)
第一条 加入電話加入者は、公衆電気通信法(昭和二十八年法律第九十七号)第三十八条第四項の規定にかかわらず、昭和三十八年三月三十一日まで、その電話加入権(三十日以内の加入期間を指定して加入した加入電話及び電話取扱局(公衆電気通信法第二十五条に規定する電話取扱局をいう。)に収容されていない加入電話の電話加入権を除く。)に質権を設定することができる。
2 電話加入権は、質権が前項の規定により設定され、かつ、昭和三十八年三月三十一日までに第五条の規定により登録された場合には、公衆電気通信法第三十八条第四項の規定にかかわらず、同年四月一日以後も当該質権の目的とすることができる。
(質権者の範囲)
第二条 電話加入権を目的とする質権を取得することができる者は、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫、信用金庫、信用協同組合、相互銀行及び政令で定めるその他の金融機関並びに信用保証協会及び事業協同組合に限る。ただし、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百条の規定により債権者に代位する者については、この限りでない。
(二重質の禁止)
第三条 同一の電話加入権は、二以上の質権の目的とすることができない。
(転質及び流質の禁止)
第四条 民法第三百四十八条及び商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百十五条の規定は、電話加入権を目的とする質権には、適用しない。
(対抗要件等)
第五条 電話加入権を目的とする質権の設定、変更、移転又は消滅は、電話取扱局に備える原簿に登録しなければ、日本電信電話公社(以下「公社」という。)その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の原簿及びその登録に関する事項は、政令で定める。
第六条 前条第一項の規定による質権の設定、変更、移転又は消滅の登録(以下「質権の登録」という。)の請求は、当該加入電話の加入に関する事務を取り扱う電話取扱局に対し、書面をもつてしなければならない。
2 質権の登録を請求する書類は、公衆電気通信法第三十八条の三第一項第一号に掲げる書類に該当する書類とみなして同項の規定を適用し、質権の登録は、電話加入権の譲渡の承認に該当するものとみなして同条第二項の規定を適用し、同条第三項の規定は、質権の登録と同条第一項第二号の差押又は同項第三号の差押、仮差押若しくは仮処分との関係について準用する。
3 次の各号の一に該当する書類は、公衆電気通信法第三十八条の三第一項第二号又は第三号に掲げる書類に該当する書類とみなして同項の規定を適用し、同条第三項の規定は、質権の登録と第一号若しくは第二号の処分の制限又は第三号の仮処分との関係について準用する。
一 電話加入権を目的とする質権の被担保債権に対する滞納処分(国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。)による差押による質権の処分の制限に関する書類
二 電話加入権を目的とする質権の被担保債権に対する強制執行による差押又は仮差押による質権の処分の制限に関する命令書
三 電話加入権を目的とする質権に対する仮処分の命令書
(弁済期後における届出等の催告)
第七条 公社は、質権の被担保債権の弁済期が到来した日から三月を経過してなお第五条第一項の規定による質権の消滅の登録がないときは、質権者に対して、一定の期日までに当該質権の存続の届出又は消滅の登録をなすべき旨及びその届出又は登録をしないときは当該期日に消滅の登録があつたものとみなす旨を催告することができる。存続の届出があつた質権について、届出の日から三月を経過したときも、同様とする。
2 前項の催告は、同項の期日から二週間前までにしなければならない。
(質権設定者の公社に対する請求等の制限)
第八条 質権が設定されている加入電話の加入者は、質権者の承諾がなければ、公社に対して、加入電話加入契約の解除又は電話加入権の譲渡の承認の請求、加入電話の種類の変更の請求若しくは逓信省令で定めるその他の請求をすることができない。
(公社の行う処分の通知義務)
第九条 公社は、質権が設定されている加入電話について、公衆電気通信法第四十二条の規定により加入電話加入契約の解除をしようとするときは、その解除をする日から十日前までに、加入電話の種類の変更又は逓信省令で定めるその他の処分をしたときは、すみやかに、質権者にその旨を通知しなければならない。
(質権実行の手続)
第十条 質権者が電話加入権を目的とする質権の実行をする場合においては、裁判所は、質権者の申立により、当該電話加入権に対する差押命令において、公社に対し、一月以内の期間を限り、当該加入電話による通話を停止すべきことを命ずることができる。
2 公衆電気通信法第七十七条の規定は、前項の規定により通話の停止を受けた加入電話加入者に準用する。
第十一条 質権者が電話加入権を目的とする質権の実行をする場合においては、裁判所は、質権者の申立により、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第六百二十五条第三項に規定する特別の処分として、質権者に当該電話加入権の換価をさせることができる。ただし、質権者が第二条本文に規定する者以外の者である場合は、この限りでない。
2 質権者は、前項の規定による換価をする場合においては、当該電話加入権について鑑定人の評価を経ることを要しない。ただし、裁判所の特別の指示がある場合は、この限りでない。
(返還金に対する物上代位)
第十二条 公社は、質権が設定されている加入電話について、公衆電気通信法第四十二条の規定による加入電話加入契約の解除をした場合において、当該加入電話加入者に支払うべき金銭(以下「返還金」という。)があるときは、質権者から供託しなくてもよい旨の申出がある場合を除き、その返還金を供託しなければならない。
2 質権者は、前項の規定により供託された返還金に対して、その権利を行うことができる。
(手数料)
第十三条 第五条第一項の規定による質権の設定、変更又は移転の登録をしようとする者は、公社に対して、政令で定める額の手数料を支払わなければならない。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月をこえない期間内において政令で定める。
2 郵政省の省名が逓信省に改められるまでの間、第八条及び第九条中「逓信省令」とあるのは「郵政省令」とする。
3 公衆電気通信法の一部を次のように改正する。
第三十八条の次に次の二条を加える。
第三十八条の二 電話加入権の譲渡の承認の請求は、当該加入電話の加入に関する事務を取り扱う電話取扱局に対し、書面をもつてしなければならない。
第三十八条の三 加入電話の加入に関する事務を取り扱う電話取扱局は、その加入事務を取り扱う加入電話について左の各号の一に該当する書類を受け取つたときは、受け取つた順序により、その書類に受付の年月日及び受付番号を記載しなければならない。
一 第三十八条第一項の規定により、電話加入権の譲渡の承認を請求する書類
二 電話加入権に対する滞納処分(国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。)による差押に関する書類
三 電話加入権に対する強制執行による差押又は仮差押若しくは仮処分に関する命令書
2 電話加入権の譲渡の承認は、受付番号の順序によつてしなければならない。
3 電話加入権の譲渡の承認があつたときは、その譲渡の承認は、第一項第二号の差押又は同項第三号の差押、仮差押若しくは仮処分との関係においては、当該電話加入権の譲渡の承認の請求に係る書類を受け取つた時にされたものとみなす。
法務大臣 唐澤俊樹
郵政大臣 田中角榮
内閣総理大臣 岸信介
電話加入権質に関する臨時特例法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十三年五月六日
内閣総理大臣 岸信介
法律第百三十八号
電話加入権質に関する臨時特例法
(質権設定の許容)
第一条 加入電話加入者は、公衆電気通信法(昭和二十八年法律第九十七号)第三十八条第四項の規定にかかわらず、昭和三十八年三月三十一日まで、その電話加入権(三十日以内の加入期間を指定して加入した加入電話及び電話取扱局(公衆電気通信法第二十五条に規定する電話取扱局をいう。)に収容されていない加入電話の電話加入権を除く。)に質権を設定することができる。
2 電話加入権は、質権が前項の規定により設定され、かつ、昭和三十八年三月三十一日までに第五条の規定により登録された場合には、公衆電気通信法第三十八条第四項の規定にかかわらず、同年四月一日以後も当該質権の目的とすることができる。
(質権者の範囲)
第二条 電話加入権を目的とする質権を取得することができる者は、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫、信用金庫、信用協同組合、相互銀行及び政令で定めるその他の金融機関並びに信用保証協会及び事業協同組合に限る。ただし、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百条の規定により債権者に代位する者については、この限りでない。
(二重質の禁止)
第三条 同一の電話加入権は、二以上の質権の目的とすることができない。
(転質及び流質の禁止)
第四条 民法第三百四十八条及び商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百十五条の規定は、電話加入権を目的とする質権には、適用しない。
(対抗要件等)
第五条 電話加入権を目的とする質権の設定、変更、移転又は消滅は、電話取扱局に備える原簿に登録しなければ、日本電信電話公社(以下「公社」という。)その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の原簿及びその登録に関する事項は、政令で定める。
第六条 前条第一項の規定による質権の設定、変更、移転又は消滅の登録(以下「質権の登録」という。)の請求は、当該加入電話の加入に関する事務を取り扱う電話取扱局に対し、書面をもつてしなければならない。
2 質権の登録を請求する書類は、公衆電気通信法第三十八条の三第一項第一号に掲げる書類に該当する書類とみなして同項の規定を適用し、質権の登録は、電話加入権の譲渡の承認に該当するものとみなして同条第二項の規定を適用し、同条第三項の規定は、質権の登録と同条第一項第二号の差押又は同項第三号の差押、仮差押若しくは仮処分との関係について準用する。
3 次の各号の一に該当する書類は、公衆電気通信法第三十八条の三第一項第二号又は第三号に掲げる書類に該当する書類とみなして同項の規定を適用し、同条第三項の規定は、質権の登録と第一号若しくは第二号の処分の制限又は第三号の仮処分との関係について準用する。
一 電話加入権を目的とする質権の被担保債権に対する滞納処分(国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。)による差押による質権の処分の制限に関する書類
二 電話加入権を目的とする質権の被担保債権に対する強制執行による差押又は仮差押による質権の処分の制限に関する命令書
三 電話加入権を目的とする質権に対する仮処分の命令書
(弁済期後における届出等の催告)
第七条 公社は、質権の被担保債権の弁済期が到来した日から三月を経過してなお第五条第一項の規定による質権の消滅の登録がないときは、質権者に対して、一定の期日までに当該質権の存続の届出又は消滅の登録をなすべき旨及びその届出又は登録をしないときは当該期日に消滅の登録があつたものとみなす旨を催告することができる。存続の届出があつた質権について、届出の日から三月を経過したときも、同様とする。
2 前項の催告は、同項の期日から二週間前までにしなければならない。
(質権設定者の公社に対する請求等の制限)
第八条 質権が設定されている加入電話の加入者は、質権者の承諾がなければ、公社に対して、加入電話加入契約の解除又は電話加入権の譲渡の承認の請求、加入電話の種類の変更の請求若しくは逓信省令で定めるその他の請求をすることができない。
(公社の行う処分の通知義務)
第九条 公社は、質権が設定されている加入電話について、公衆電気通信法第四十二条の規定により加入電話加入契約の解除をしようとするときは、その解除をする日から十日前までに、加入電話の種類の変更又は逓信省令で定めるその他の処分をしたときは、すみやかに、質権者にその旨を通知しなければならない。
(質権実行の手続)
第十条 質権者が電話加入権を目的とする質権の実行をする場合においては、裁判所は、質権者の申立により、当該電話加入権に対する差押命令において、公社に対し、一月以内の期間を限り、当該加入電話による通話を停止すべきことを命ずることができる。
2 公衆電気通信法第七十七条の規定は、前項の規定により通話の停止を受けた加入電話加入者に準用する。
第十一条 質権者が電話加入権を目的とする質権の実行をする場合においては、裁判所は、質権者の申立により、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第六百二十五条第三項に規定する特別の処分として、質権者に当該電話加入権の換価をさせることができる。ただし、質権者が第二条本文に規定する者以外の者である場合は、この限りでない。
2 質権者は、前項の規定による換価をする場合においては、当該電話加入権について鑑定人の評価を経ることを要しない。ただし、裁判所の特別の指示がある場合は、この限りでない。
(返還金に対する物上代位)
第十二条 公社は、質権が設定されている加入電話について、公衆電気通信法第四十二条の規定による加入電話加入契約の解除をした場合において、当該加入電話加入者に支払うべき金銭(以下「返還金」という。)があるときは、質権者から供託しなくてもよい旨の申出がある場合を除き、その返還金を供託しなければならない。
2 質権者は、前項の規定により供託された返還金に対して、その権利を行うことができる。
(手数料)
第十三条 第五条第一項の規定による質権の設定、変更又は移転の登録をしようとする者は、公社に対して、政令で定める額の手数料を支払わなければならない。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月をこえない期間内において政令で定める。
2 郵政省の省名が逓信省に改められるまでの間、第八条及び第九条中「逓信省令」とあるのは「郵政省令」とする。
3 公衆電気通信法の一部を次のように改正する。
第三十八条の次に次の二条を加える。
第三十八条の二 電話加入権の譲渡の承認の請求は、当該加入電話の加入に関する事務を取り扱う電話取扱局に対し、書面をもつてしなければならない。
第三十八条の三 加入電話の加入に関する事務を取り扱う電話取扱局は、その加入事務を取り扱う加入電話について左の各号の一に該当する書類を受け取つたときは、受け取つた順序により、その書類に受付の年月日及び受付番号を記載しなければならない。
一 第三十八条第一項の規定により、電話加入権の譲渡の承認を請求する書類
二 電話加入権に対する滞納処分(国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。)による差押に関する書類
三 電話加入権に対する強制執行による差押又は仮差押若しくは仮処分に関する命令書
2 電話加入権の譲渡の承認は、受付番号の順序によつてしなければならない。
3 電話加入権の譲渡の承認があつたときは、その譲渡の承認は、第一項第二号の差押又は同項第三号の差押、仮差押若しくは仮処分との関係においては、当該電話加入権の譲渡の承認の請求に係る書類を受け取つた時にされたものとみなす。
法務大臣 唐沢俊樹
郵政大臣 田中角栄
内閣総理大臣 岸信介