朕勞働者災害扶助法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年十一月二十七日
內閣總理大臣 男爵 若槻禮次郞
內務大臣 安達謙藏
勅令第二百七十六號
勞働者災害扶助法施行令
第一條 勞働者災害扶助法第一條第一項第二號(イ)ノ公共團體ハ左ニ揭グルモノトス
一 府縣組合、市町村組合、町村組合、市町村內ノ區、學區竝ニ町村制ヲ施行セザル地ニ於ケル町村ニ準ズベキモノ及其ノ組合
二 水利組合、水利組合聯合會及北海道土功組合
三 耕地整理組合及土地區劃整理組合竝ニ其ノ聯合會
第二條 勞働者災害扶助法第一條第一項第二號(ハ)ノ工事ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル規模ノモノトス但シ軒高九米未滿ニシテ且建築面積三百三十平方米未滿ノ木造家屋ノ建築工事ヲ除ク
一 使用勞働者延人員千人以上ノモノ
二 請負ニ依ルモノニシテ請負金額一萬圓以上ノモノ
三 火藥類、動力(一馬力以下ノ電動力ヲ除ク)ニ依リ運轉スル機械又ハ運搬ノ用ニ供スル軌道ヲ用フルモノニシテ使用勞働者延人員三百人以上ノモノ
四 地上十米以上又ハ地下三米以上ニ於テ作業ヲ爲スモノニシテ使用勞働者延人員三百人以上ノモノ
工事著手前ニ於ケル豫定計畫ガ前項ノ規模ニ該當スルモノハ工事著手後之ニ該當セザルニ至リシ場合ト雖モ前項ノ規模ニ該當スルモノト看做ス
第三條 事業主ハ勞働者ガ業務上負傷シ若ハ疾病ニ罹リ又ハ之ニ因リ死亡シタルトキハ本令ニ依リ扶助ヲ爲スベシ但シ扶助ヲ受クベキ者民法ニ依リ同一ノ原因ニ付損害賠償ヲ受ケタルトキハ事業主ハ扶助金額ヨリ其ノ金額ヲ控除スルコトヲ得
前項ノ疾病トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
一 負傷ニ因リ發シタル疾病
二 異物ニ因ル眼疾患、重量物體ノ取扱ニ因ル腱鞘炎其ノ他災害ニ因ル疾病
三 毒性、劇性又ハ刺㦸性料品ニ因ル中毒症又ハ皮膚若ハ粘膜ノ障碍
四 氣壓ノ急激ナル變化ニ因ル疾病
五 有害ナル光線ニ因ル眼疾患
六 其ノ他內務大臣ノ指定スル疾病
第一項ノ扶助義務ハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外勞働者ノ解雇ニ因リテ變更セラルルコトナシ
工場法又ハ鑛業法ノ適用ヲ受クル職工及鑛夫ニ付テハ本令ニ依ル扶助ヲ爲スコトヲ要セズ
第四條 勞働者負傷シ又ハ疾病ニ罹リタルトキハ事業主ハ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負擔スベシ
第五條 勞働者療養ノ爲勞務ニ服スルコト能ハザルニ因リ賃金ヲ受ケザルトキハ事業主ハ勞働者ノ療養中一日ニ付標準賃金百分ノ六十ノ休業扶助料ヲ支給スベシ但シ日日雇入レラルル者又ハ使用期間ノ定ナク勞務供給契約ニ基キ使用セラルル者ニシテ繼續使用セラルルコト十日未滿ノ者ニ付テハ事故發生ノ日ヨリ起算シ三日間ハ之ヲ支給スルコトヲ要セズ
勞働者ヲ病院ニ收容シタル場合ニ於テ本人ノ收入ニ依リ生計ヲ維持スル者ナキトキハ休業扶助料ハ標準賃金ノ百分ノ二十トス
第六條 勞働者ノ負傷又ハ疾病治癒シタル時ニ於テ身體障害存スルトキハ事業主ハ別表ニ揭グル區別ニ依リ障害扶助料ヲ支給スベシ
別表ニ揭グル身體障害二以上存スルトキハ重キ身體障害ノ該當スル等級ニ依リ障害扶助料ヲ支給スベシ
左ニ揭グル場合ニ於テハ前二項ノ規定ニ依ル等級ヲ左ノ如ク繰リ上グ
一 第十三級以上ノ身體障害二以上存スルトキ 一級
二 第八級以上ノ身體障害二以上存スルトキ 二級
三 第五級以上ノ身體障害二以上存スルトキ 三級
別表ニ揭グルモノ以外ノ身體障害ヲ存スル者ニ付テハ障害ノ程度ニ應ジ別表ニ揭グル身體障害ニ準ジ障害扶助料ヲ支給スベシ
旣ニ身體障害ヲ存スル者負傷又ハ疾病ニ因リ同一部位ニ付障害ノ程度ヲ加重シタルトキハ其ノ加重セラレタル障害ノ該當スル障害扶助料ノ金額ヨリ旣ニ存シタル障害ノ該當スル障害扶助料ノ金額ヲ差引キタル金額ヲ支給スベシ
第七條 勞働者重大ナル過失ニ因リ負傷シ又ハ疾病ニ罹リ且事業主其ノ事實ニ付地方長官(東京府ニ在リテハ警視總監以下之ニ同ジ)ノ認定ヲ受ケタルトキハ休業扶助料及障害扶助料ハ之ヲ支給スルコトヲ要セズ
第八條 勞働者死亡シタルトキハ事業主ハ遺族又ハ勞働者ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニ標準賃金三百六十日分ノ遺族扶助料ヲ支給スベシ
第九條 勞働者死亡シタルトキハ事業主ハ葬祭ヲ行フ遺族又ハ勞働者ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ葬祭ヲ行フ者ニ標準賃金三十日分(其ノ金額三十圓ニ滿チザルトキハ三十圓)ノ葬祭料ヲ支給スベシ
第十條 第四條ノ規定ニ依リ本人ニ支給スル費用及休業扶助料ハ每月一囘以上之ヲ支給スベシ但シ本人ヨリ申出アリタルトキハ每月二囘以上之ヲ支給スベシ
障害扶助料ハ勞働者ノ負傷又ハ疾病ノ治癒後遲滯ナク之ヲ支給スベシ但シ事業主ガ從來ノ賃金ヲ支給シテ引續キ雇傭スル場合ニ於テ本人ノ承諾アリタルトキハ雇傭期間內障害扶助料ノ支給ヲ延期スルコトヲ得
遺族扶助料及葬祭料ハ勞働者ノ死亡後遲滯ナク之ヲ支給スベシ
事業主地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ障害扶助料及遺族扶助料ヲ數囘ニ分割シテ支給スルコトヲ得
勞働者災害扶助責任保險法ニ依リ保險セラルル場合ニ於テハ第二項但書及前項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第十一條 第四條ノ規定ニ依リ扶助ヲ受ケ又ハ健康保險法ニ依リ療養ノ給付若ハ療養費ノ支給ヲ受クル勞働者療養開始後一年ヲ經過スルモ負傷又ハ疾病治癒セザルトキハ事業主ハ標準賃金五百四十日分(第七條ノ場合ニ於テハ二百七十日分)ノ打切扶助料ヲ支給シ以後前七條ノ規定ニ依ル扶助ヲ爲サザルコトヲ得
第十二條 別表第八級以上ノ障害扶助料又ハ打切扶助料ヲ受クル勞働者扶助ヲ受ケタル日ヨリ十五日以內ニ歸鄕スル場合ニ於テハ事業主ハ其ノ必要ナル旅費ヲ負擔スベシ
第十三條 事業主豫メ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ事業主及勞働者ノ出捐スル共濟組合ノ爲シタル給付ノ限度ニ於テ之ニ相當スル本令ノ扶助ヲ爲スコトヲ要セズ
地方長官必要ト認ムルトキハ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第十四條 勞働者災害扶助責任保險法第四條第二項ノ規定ニ依リ政府ガ扶助ヲ受クベキ者ニ保險金ヲ支拂ヒタルトキハ事業主ハ其ノ限度ニ於テ之ニ相當スル本令ノ扶助ヲ爲スコトヲ要セズ
第十五條 標準賃金ハ左ノ各號ノ金額トス
一 勞働者災害扶助法第一條第一項第二號(ハ)ノ工事ニ使用セラルル者ニ付テハ一日ニ付十六歲未滿ノ者ハ四十錢、十六歲以上ノ女子ハ六十錢、其ノ他ノ者ハ一圓
二 勞働者災害扶助法第一條第一項第四號ノ事業ニ使用セラルル者ニ付テハ事故發生前(賃金締切日アル場合ニ於テハ直前賃金締切日以前)一月間當該事業ニ繼續使用セラレタル同種勞働者ノ賃金總額ヲ其ノ勞働者ノ數ニ其ノ期間ノ日數ヲ乘ジタル數(業務上負傷シ又ハ疾病ニ罹リ療養ノ爲休業シ賃金ヲ受ケザル日數ヲ控除ス)ヲ以テ除シタル金額
三 前二號以外ノ事業ニ日日雇入レラルル者又ハ使用期間ノ定ナク勞務供給契約ニ基キ使用セラルル者ニ付テハ事故發生ノ日ニ於テ當該事業ニ使用セラレタル同種勞働者ノ平均賃金ノ三分ノ二
四 前三號ニ該當セザル者ニ付テハ事故發生前(賃金締切日アル場合ニ於テハ直前賃金締切日以前)三月間(雇入後三月ニ滿チザルトキハ其ノ期間)ニ於ケル賃金總額ヲ其ノ期間ノ日數ヲ以テ除シタル金額但シ其ノ金額ハ上記賃金總額ヲ該期間中ニ於テ賃金ヲ受ケタル日數ヲ以テ除シタル金額ノ百分ノ六十ヲ下ルコトヲ得ズ
五 健康保險法ノ被保險者ニ付テハ前四號ノ規定ニ拘ラズ事故發生當時其ノ者ニ付定メラレタル標準報酬日額
六 前各號ノ規定ニ依リ標準賃金ヲ算出スルコト能ハザル者ニ付テハ地方長官ノ定ムル金額
內務大臣ハ業務ノ種類又ハ地域ヲ限リ前項第一號ノ金額ヲ增加又ハ減少スルコトヲ得
第一項第四號ニ規定スル期間中ニ業務上負傷シ又ハ疾病ニ罹リ療養ノ爲休業シタル期間アルトキハ其ノ日數及其ノ期間中ニ於ケル賃金ハ第一項第四號ノ期間及賃金總額ヨリ之ヲ控除ス
第一項第四號ノ賃金總額ニハ三月ヲ超ユル期間每ニ支給スル賞與及發明善行其ノ他特別ノ行爲ニ對スル手當ヲ包含セズ
第十六條 前條ノ規定ニ依リ標準賃金ヲ算出スルコト不適當ナル場合ニ於テハ事業主ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ別段ノ標準賃金ヲ定ムルコトヲ得
第十七條 工場法施行令第十條乃至第十二條、第十三條ノ二、第十五條及第十八條ノ規定ハ本令ノ扶助ニ付之ヲ準用ス
第十八條 國ノ直營スル事業ニ於ケル勞働者ノ扶助ニ付テハ別ニ定ムル規定ニ依ル
第十九條 勞働者災害扶助法第十一條ノ公共團體ハ道府縣又ハ市町村ニ準ズベキモノトス
第二十條 本令中地方長官トアルハ砂鑛業ニ在リテハ鑛山監督局長トス
附 則
本令ハ昭和七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
(別表)
【表】
朕労働者災害扶助法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年十一月二十七日
内閣総理大臣 男爵 若槻礼次郎
内務大臣 安達謙蔵
勅令第二百七十六号
労働者災害扶助法施行令
第一条 労働者災害扶助法第一条第一項第二号(イ)ノ公共団体ハ左ニ掲グルモノトス
一 府県組合、市町村組合、町村組合、市町村内ノ区、学区並ニ町村制ヲ施行セザル地ニ於ケル町村ニ準ズベキモノ及其ノ組合
二 水利組合、水利組合連合会及北海道土功組合
三 耕地整理組合及土地区画整理組合並ニ其ノ連合会
第二条 労働者災害扶助法第一条第一項第二号(ハ)ノ工事ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル規模ノモノトス但シ軒高九米未満ニシテ且建築面積三百三十平方米未満ノ木造家屋ノ建築工事ヲ除ク
一 使用労働者延人員千人以上ノモノ
二 請負ニ依ルモノニシテ請負金額一万円以上ノモノ
三 火薬類、動力(一馬力以下ノ電動力ヲ除ク)ニ依リ運転スル機械又ハ運搬ノ用ニ供スル軌道ヲ用フルモノニシテ使用労働者延人員三百人以上ノモノ
四 地上十米以上又ハ地下三米以上ニ於テ作業ヲ為スモノニシテ使用労働者延人員三百人以上ノモノ
工事著手前ニ於ケル予定計画ガ前項ノ規模ニ該当スルモノハ工事著手後之ニ該当セザルニ至リシ場合ト雖モ前項ノ規模ニ該当スルモノト看做ス
第三条 事業主ハ労働者ガ業務上負傷シ若ハ疾病ニ罹リ又ハ之ニ因リ死亡シタルトキハ本令ニ依リ扶助ヲ為スベシ但シ扶助ヲ受クベキ者民法ニ依リ同一ノ原因ニ付損害賠償ヲ受ケタルトキハ事業主ハ扶助金額ヨリ其ノ金額ヲ控除スルコトヲ得
前項ノ疾病トハ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノヲ謂フ
一 負傷ニ因リ発シタル疾病
二 異物ニ因ル眼疾患、重量物体ノ取扱ニ因ル腱鞘炎其ノ他災害ニ因ル疾病
三 毒性、劇性又ハ刺㦸性料品ニ因ル中毒症又ハ皮膚若ハ粘膜ノ障碍
四 気圧ノ急激ナル変化ニ因ル疾病
五 有害ナル光線ニ因ル眼疾患
六 其ノ他内務大臣ノ指定スル疾病
第一項ノ扶助義務ハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外労働者ノ解雇ニ因リテ変更セラルルコトナシ
工場法又ハ鉱業法ノ適用ヲ受クル職工及鉱夫ニ付テハ本令ニ依ル扶助ヲ為スコトヲ要セズ
第四条 労働者負傷シ又ハ疾病ニ罹リタルトキハ事業主ハ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負担スベシ
第五条 労働者療養ノ為労務ニ服スルコト能ハザルニ因リ賃金ヲ受ケザルトキハ事業主ハ労働者ノ療養中一日ニ付標準賃金百分ノ六十ノ休業扶助料ヲ支給スベシ但シ日日雇入レラルル者又ハ使用期間ノ定ナク労務供給契約ニ基キ使用セラルル者ニシテ継続使用セラルルコト十日未満ノ者ニ付テハ事故発生ノ日ヨリ起算シ三日間ハ之ヲ支給スルコトヲ要セズ
労働者ヲ病院ニ収容シタル場合ニ於テ本人ノ収入ニ依リ生計ヲ維持スル者ナキトキハ休業扶助料ハ標準賃金ノ百分ノ二十トス
第六条 労働者ノ負傷又ハ疾病治癒シタル時ニ於テ身体障害存スルトキハ事業主ハ別表ニ掲グル区別ニ依リ障害扶助料ヲ支給スベシ
別表ニ掲グル身体障害二以上存スルトキハ重キ身体障害ノ該当スル等級ニ依リ障害扶助料ヲ支給スベシ
左ニ掲グル場合ニ於テハ前二項ノ規定ニ依ル等級ヲ左ノ如ク繰リ上グ
一 第十三級以上ノ身体障害二以上存スルトキ 一級
二 第八級以上ノ身体障害二以上存スルトキ 二級
三 第五級以上ノ身体障害二以上存スルトキ 三級
別表ニ掲グルモノ以外ノ身体障害ヲ存スル者ニ付テハ障害ノ程度ニ応ジ別表ニ掲グル身体障害ニ準ジ障害扶助料ヲ支給スベシ
既ニ身体障害ヲ存スル者負傷又ハ疾病ニ因リ同一部位ニ付障害ノ程度ヲ加重シタルトキハ其ノ加重セラレタル障害ノ該当スル障害扶助料ノ金額ヨリ既ニ存シタル障害ノ該当スル障害扶助料ノ金額ヲ差引キタル金額ヲ支給スベシ
第七条 労働者重大ナル過失ニ因リ負傷シ又ハ疾病ニ罹リ且事業主其ノ事実ニ付地方長官(東京府ニ在リテハ警視総監以下之ニ同ジ)ノ認定ヲ受ケタルトキハ休業扶助料及障害扶助料ハ之ヲ支給スルコトヲ要セズ
第八条 労働者死亡シタルトキハ事業主ハ遺族又ハ労働者ノ死亡当時其ノ収入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニ標準賃金三百六十日分ノ遺族扶助料ヲ支給スベシ
第九条 労働者死亡シタルトキハ事業主ハ葬祭ヲ行フ遺族又ハ労働者ノ死亡当時其ノ収入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニシテ葬祭ヲ行フ者ニ標準賃金三十日分(其ノ金額三十円ニ満チザルトキハ三十円)ノ葬祭料ヲ支給スベシ
第十条 第四条ノ規定ニ依リ本人ニ支給スル費用及休業扶助料ハ毎月一回以上之ヲ支給スベシ但シ本人ヨリ申出アリタルトキハ毎月二回以上之ヲ支給スベシ
障害扶助料ハ労働者ノ負傷又ハ疾病ノ治癒後遅滞ナク之ヲ支給スベシ但シ事業主ガ従来ノ賃金ヲ支給シテ引続キ雇傭スル場合ニ於テ本人ノ承諾アリタルトキハ雇傭期間内障害扶助料ノ支給ヲ延期スルコトヲ得
遺族扶助料及葬祭料ハ労働者ノ死亡後遅滞ナク之ヲ支給スベシ
事業主地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ障害扶助料及遺族扶助料ヲ数回ニ分割シテ支給スルコトヲ得
労働者災害扶助責任保険法ニ依リ保険セラルル場合ニ於テハ第二項但書及前項ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第十一条 第四条ノ規定ニ依リ扶助ヲ受ケ又ハ健康保険法ニ依リ療養ノ給付若ハ療養費ノ支給ヲ受クル労働者療養開始後一年ヲ経過スルモ負傷又ハ疾病治癒セザルトキハ事業主ハ標準賃金五百四十日分(第七条ノ場合ニ於テハ二百七十日分)ノ打切扶助料ヲ支給シ以後前七条ノ規定ニ依ル扶助ヲ為サザルコトヲ得
第十二条 別表第八級以上ノ障害扶助料又ハ打切扶助料ヲ受クル労働者扶助ヲ受ケタル日ヨリ十五日以内ニ帰郷スル場合ニ於テハ事業主ハ其ノ必要ナル旅費ヲ負担スベシ
第十三条 事業主予メ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ事業主及労働者ノ出捐スル共済組合ノ為シタル給付ノ限度ニ於テ之ニ相当スル本令ノ扶助ヲ為スコトヲ要セズ
地方長官必要ト認ムルトキハ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第十四条 労働者災害扶助責任保険法第四条第二項ノ規定ニ依リ政府ガ扶助ヲ受クベキ者ニ保険金ヲ支払ヒタルトキハ事業主ハ其ノ限度ニ於テ之ニ相当スル本令ノ扶助ヲ為スコトヲ要セズ
第十五条 標準賃金ハ左ノ各号ノ金額トス
一 労働者災害扶助法第一条第一項第二号(ハ)ノ工事ニ使用セラルル者ニ付テハ一日ニ付十六歳未満ノ者ハ四十銭、十六歳以上ノ女子ハ六十銭、其ノ他ノ者ハ一円
二 労働者災害扶助法第一条第一項第四号ノ事業ニ使用セラルル者ニ付テハ事故発生前(賃金締切日アル場合ニ於テハ直前賃金締切日以前)一月間当該事業ニ継続使用セラレタル同種労働者ノ賃金総額ヲ其ノ労働者ノ数ニ其ノ期間ノ日数ヲ乗ジタル数(業務上負傷シ又ハ疾病ニ罹リ療養ノ為休業シ賃金ヲ受ケザル日数ヲ控除ス)ヲ以テ除シタル金額
三 前二号以外ノ事業ニ日日雇入レラルル者又ハ使用期間ノ定ナク労務供給契約ニ基キ使用セラルル者ニ付テハ事故発生ノ日ニ於テ当該事業ニ使用セラレタル同種労働者ノ平均賃金ノ三分ノ二
四 前三号ニ該当セザル者ニ付テハ事故発生前(賃金締切日アル場合ニ於テハ直前賃金締切日以前)三月間(雇入後三月ニ満チザルトキハ其ノ期間)ニ於ケル賃金総額ヲ其ノ期間ノ日数ヲ以テ除シタル金額但シ其ノ金額ハ上記賃金総額ヲ該期間中ニ於テ賃金ヲ受ケタル日数ヲ以テ除シタル金額ノ百分ノ六十ヲ下ルコトヲ得ズ
五 健康保険法ノ被保険者ニ付テハ前四号ノ規定ニ拘ラズ事故発生当時其ノ者ニ付定メラレタル標準報酬日額
六 前各号ノ規定ニ依リ標準賃金ヲ算出スルコト能ハザル者ニ付テハ地方長官ノ定ムル金額
内務大臣ハ業務ノ種類又ハ地域ヲ限リ前項第一号ノ金額ヲ増加又ハ減少スルコトヲ得
第一項第四号ニ規定スル期間中ニ業務上負傷シ又ハ疾病ニ罹リ療養ノ為休業シタル期間アルトキハ其ノ日数及其ノ期間中ニ於ケル賃金ハ第一項第四号ノ期間及賃金総額ヨリ之ヲ控除ス
第一項第四号ノ賃金総額ニハ三月ヲ超ユル期間毎ニ支給スル賞与及発明善行其ノ他特別ノ行為ニ対スル手当ヲ包含セズ
第十六条 前条ノ規定ニ依リ標準賃金ヲ算出スルコト不適当ナル場合ニ於テハ事業主ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ別段ノ標準賃金ヲ定ムルコトヲ得
第十七条 工場法施行令第十条乃至第十二条、第十三条ノ二、第十五条及第十八条ノ規定ハ本令ノ扶助ニ付之ヲ準用ス
第十八条 国ノ直営スル事業ニ於ケル労働者ノ扶助ニ付テハ別ニ定ムル規定ニ依ル
第十九条 労働者災害扶助法第十一条ノ公共団体ハ道府県又ハ市町村ニ準ズベキモノトス
第二十条 本令中地方長官トアルハ砂鉱業ニ在リテハ鉱山監督局長トス
附 則
本令ハ昭和七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
(別表)
【表】