労働者災害扶助法
法令番号: 法律第五十四號
公布年月日: 昭和6年4月2日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル勞働者災害扶助法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年四月一日
內閣總理大臣 濱口雄幸
內務大臣 安達謙藏
法律第五十四號
勞働者災害扶助法
第一條 本法ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル事業ニ之ヲ適用ス
一 土石砂鑛ヲ採取スル事業ニシテ動力若ハ火藥類ヲ用ヒ若ハ地下ニ於テ作業ヲ爲スモノ又ハ常時十人以上ノ勞働者ヲ使用スルモノ
二 土木工事又ハ工作物ノ建設、保存、修理、變更若ハ破壞ノ工事ニシテ左ノ一ニ該當スルモノ
(イ)國、道府縣、市町村又ハ勅令ヲ以テ指定スル公共團體ノ直營工事
(ロ)鐵道、軌道若ハ索道ノ運輸事業又ハ水道、電氣若ハ瓦斯ノ事業ヲ營ム者ガ其ノ事業ノ爲ニスル直營工事
(ハ)其ノ他ノ工事ニシテ勅令ノ定ムル規模ノモノ
三 鐵道、軌道若ハ索道ノ運輸事業又ハ一定ノ路線ニ依ル自動車ノ運輸事業
四 船舶ヨリ若ハ船舶ヘノ貨物ノ積卸ノ事業、岸壁、波止場、停車場若ハ倉庫ニ於ケル貨物取扱ノ事業又ハ工場、鑛山若ハ土石砂鑛ヲ採取スル場所ニ於ケル貨物積卸ノ事業ニシテ動力ニ依ル起重機、昇降機其ノ他ノ揚重機ヲ用フルモノ又ハ常時十人以上ノ勞働者ヲ使用スルモノ
五 前各號ニ揭グルモノノ外危險ナル事業又ハ衞生上有害ノ虞アル事業ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
主務大臣ハ前項ノ規定ニ該當セザル土石砂鑛ヲ採取スル事業及岸壁、波止場、停車場又ハ倉庫ニ於ケル貨物取扱ノ事業ニ付地域ヲ限リ本法ヲ適用スルコトヲ得
第二條 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勞働者ガ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於テ本人又ハ其ノ遺族若ハ本人ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ヲ扶助スベシ
第三條 前條ノ事業主トハ勞働者ヲ使用シテ事業ヲ爲ス者ヲ謂フ但シ第一條第一項第二號(ハ)ノ工事ノ全部又ハ一部ガ數次ノ請負ニ依リ爲サルル場合ニ於テハ元請負人ヲ其ノ請負ヒタル工事ニ付事業主トス
前項但書ノ場合ニ於テ元請負人ガ書面ニ依ル契約ヲ以テ下請負人ヲシテ扶助ヲ引受ケシメタルトキハ其ノ下請負人モ亦其ノ請負ヒタル工事ニ付事業主トス此ノ場合ニ於テハ二以上ノ下請負人ヲシテ同一ノ工事ニ付重複シテ扶助ヲ引受ケシムルコトヲ得ズ
前項ノ場合ニ於テ元請負人ガ扶助ノ請求ヲ受ケタルトキハ扶助ヲ引受ケタル下請負人ニ對シ先ヅ催吿スベキ旨ヲ請求スルコトヲ得但シ其ノ下請負人ガ破產ノ宣吿ヲ受ケ又ハ其ノ行方ガ知レザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 第一條第一項第一號又ハ第四號ノ事業ガ專ラ同一ノ注文者ノ注文ニ依リ爲サルルモノナルトキハ其ノ注文者モ亦其ノ事業ニ付事業主トス
前條第三項ノ規定ハ前項ノ注文者ガ扶助ノ請求ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第五條 行政官廳ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業ノ行ハルル場所ニ於ケル危害ノ防止又ハ衞生ニ關シ必要ナル事項ヲ事業主又ハ勞働者ニ命ズルコトヲ得
第六條 行政官廳ハ必要アリト認ムルトキハ當該官吏又ハ吏員ヲシテ事業ノ行ハルル場所ニ臨檢セシムルコトヲ得
第七條 事業主扶助ヲ爲スベキ場合ニ於テ其ノ資力アルニ拘ラズ扶助ヲ爲サザルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第八條 正當ノ事由ナクシテ當該官吏又ハ吏員ノ臨檢ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九條 事業主未成年者若ハ禁治產者ナルトキ又ハ法人ナルトキハ之ニ適用スベキ罰則ハ其ノ法定代理人又ハ法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十條 事業主ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十一條 本令中事業主ニ關スル罰則ハ國、道府縣、市町村及勅令ヲ以テ指定スル公共團體ニ之ヲ適用セズ
附 則
本法ハ昭和七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル労働者災害扶助法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年四月一日
内閣総理大臣 浜口雄幸
内務大臣 安達謙蔵
法律第五十四号
労働者災害扶助法
第一条 本法ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル事業ニ之ヲ適用ス
一 土石砂鉱ヲ採取スル事業ニシテ動力若ハ火薬類ヲ用ヒ若ハ地下ニ於テ作業ヲ為スモノ又ハ常時十人以上ノ労働者ヲ使用スルモノ
二 土木工事又ハ工作物ノ建設、保存、修理、変更若ハ破壊ノ工事ニシテ左ノ一ニ該当スルモノ
(イ)国、道府県、市町村又ハ勅令ヲ以テ指定スル公共団体ノ直営工事
(ロ)鉄道、軌道若ハ索道ノ運輸事業又ハ水道、電気若ハ瓦斯ノ事業ヲ営ム者ガ其ノ事業ノ為ニスル直営工事
(ハ)其ノ他ノ工事ニシテ勅令ノ定ムル規模ノモノ
三 鉄道、軌道若ハ索道ノ運輸事業又ハ一定ノ路線ニ依ル自動車ノ運輸事業
四 船舶ヨリ若ハ船舶ヘノ貨物ノ積卸ノ事業、岸壁、波止場、停車場若ハ倉庫ニ於ケル貨物取扱ノ事業又ハ工場、鉱山若ハ土石砂鉱ヲ採取スル場所ニ於ケル貨物積卸ノ事業ニシテ動力ニ依ル起重機、昇降機其ノ他ノ揚重機ヲ用フルモノ又ハ常時十人以上ノ労働者ヲ使用スルモノ
五 前各号ニ掲グルモノノ外危険ナル事業又ハ衛生上有害ノ虞アル事業ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
主務大臣ハ前項ノ規定ニ該当セザル土石砂鉱ヲ採取スル事業及岸壁、波止場、停車場又ハ倉庫ニ於ケル貨物取扱ノ事業ニ付地域ヲ限リ本法ヲ適用スルコトヲ得
第二条 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ労働者ガ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於テ本人又ハ其ノ遺族若ハ本人ノ死亡当時其ノ収入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ヲ扶助スベシ
第三条 前条ノ事業主トハ労働者ヲ使用シテ事業ヲ為ス者ヲ謂フ但シ第一条第一項第二号(ハ)ノ工事ノ全部又ハ一部ガ数次ノ請負ニ依リ為サルル場合ニ於テハ元請負人ヲ其ノ請負ヒタル工事ニ付事業主トス
前項但書ノ場合ニ於テ元請負人ガ書面ニ依ル契約ヲ以テ下請負人ヲシテ扶助ヲ引受ケシメタルトキハ其ノ下請負人モ亦其ノ請負ヒタル工事ニ付事業主トス此ノ場合ニ於テハ二以上ノ下請負人ヲシテ同一ノ工事ニ付重複シテ扶助ヲ引受ケシムルコトヲ得ズ
前項ノ場合ニ於テ元請負人ガ扶助ノ請求ヲ受ケタルトキハ扶助ヲ引受ケタル下請負人ニ対シ先ヅ催告スベキ旨ヲ請求スルコトヲ得但シ其ノ下請負人ガ破産ノ宣告ヲ受ケ又ハ其ノ行方ガ知レザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四条 第一条第一項第一号又ハ第四号ノ事業ガ専ラ同一ノ注文者ノ注文ニ依リ為サルルモノナルトキハ其ノ注文者モ亦其ノ事業ニ付事業主トス
前条第三項ノ規定ハ前項ノ注文者ガ扶助ノ請求ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第五条 行政官庁ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業ノ行ハルル場所ニ於ケル危害ノ防止又ハ衛生ニ関シ必要ナル事項ヲ事業主又ハ労働者ニ命ズルコトヲ得
第六条 行政官庁ハ必要アリト認ムルトキハ当該官吏又ハ吏員ヲシテ事業ノ行ハルル場所ニ臨検セシムルコトヲ得
第七条 事業主扶助ヲ為スベキ場合ニ於テ其ノ資力アルニ拘ラズ扶助ヲ為サザルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第八条 正当ノ事由ナクシテ当該官吏又ハ吏員ノ臨検ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第九条 事業主未成年者若ハ禁治産者ナルトキ又ハ法人ナルトキハ之ニ適用スベキ罰則ハ其ノ法定代理人又ハ法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十条 事業主ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十一条 本令中事業主ニ関スル罰則ハ国、道府県、市町村及勅令ヲ以テ指定スル公共団体ニ之ヲ適用セズ
附 則
本法ハ昭和七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス