第一條 本法ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル事業ニ之ヲ適用ス
一 土石砂鑛ヲ採取スル事業ニシテ動力若ハ火藥類ヲ用ヒ若ハ地下ニ於テ作業ヲ爲スモノ又ハ常時十人以上ノ勞働者ヲ使用スルモノ
二 土木工事又ハ工作物ノ建設、保存、修理、變更若ハ破壞ノ工事ニシテ左ノ一ニ該當スルモノ
(イ)國、道府縣、市町村又ハ勅令ヲ以テ指定スル公共團體ノ直營工事
(ロ)鐵道、軌道若ハ索道ノ運輸事業又ハ水道、電氣若ハ瓦斯ノ事業ヲ營ム者ガ其ノ事業ノ爲ニスル直營工事
三 鐵道、軌道若ハ索道ノ運輸事業又ハ一定ノ路線ニ依ル自動車ノ運輸事業
四 船舶ヨリ若ハ船舶ヘノ貨物ノ積卸ノ事業、岸壁、波止場、停車場若ハ倉庫ニ於ケル貨物取扱ノ事業又ハ工場、鑛山若ハ土石砂鑛ヲ採取スル場所ニ於ケル貨物積卸ノ事業ニシテ動力ニ依ル起重機、昇降機其ノ他ノ揚重機ヲ用フルモノ又ハ常時十人以上ノ勞働者ヲ使用スルモノ
五 前各號ニ揭グルモノノ外危險ナル事業又ハ衞生上有害ノ虞アル事業ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ
主務大臣ハ前項ノ規定ニ該當セザル土石砂鑛ヲ採取スル事業及岸壁、波止場、停車場又ハ倉庫ニ於ケル貨物取扱ノ事業ニ付地域ヲ限リ本法ヲ適用スルコトヲ得
第二條 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勞働者ガ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於テ本人又ハ其ノ遺族若ハ本人ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ヲ扶助スベシ
第三條 前條ノ事業主トハ勞働者ヲ使用シテ事業ヲ爲ス者ヲ謂フ但シ第一條第一項第二號(ハ)ノ工事ノ全部又ハ一部ガ數次ノ請負ニ依リ爲サルル場合ニ於テハ元請負人ヲ其ノ請負ヒタル工事ニ付事業主トス
前項但書ノ場合ニ於テ元請負人ガ書面ニ依ル契約ヲ以テ下請負人ヲシテ扶助ヲ引受ケシメタルトキハ其ノ下請負人モ亦其ノ請負ヒタル工事ニ付事業主トス此ノ場合ニ於テハ二以上ノ下請負人ヲシテ同一ノ工事ニ付重複シテ扶助ヲ引受ケシムルコトヲ得ズ
前項ノ場合ニ於テ元請負人ガ扶助ノ請求ヲ受ケタルトキハ扶助ヲ引受ケタル下請負人ニ對シ先ヅ催吿スベキ旨ヲ請求スルコトヲ得但シ其ノ下請負人ガ破產ノ宣吿ヲ受ケ又ハ其ノ行方ガ知レザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 第一條第一項第一號又ハ第四號ノ事業ガ專ラ同一ノ注文者ノ注文ニ依リ爲サルルモノナルトキハ其ノ注文者モ亦其ノ事業ニ付事業主トス
前條第三項ノ規定ハ前項ノ注文者ガ扶助ノ請求ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第五條 行政官廳ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業ノ行ハルル場所ニ於ケル危害ノ防止又ハ衞生ニ關シ必要ナル事項ヲ事業主又ハ勞働者ニ命ズルコトヲ得
第六條 行政官廳ハ必要アリト認ムルトキハ當該官吏又ハ吏員ヲシテ事業ノ行ハルル場所ニ臨檢セシムルコトヲ得
第七條 事業主扶助ヲ爲スベキ場合ニ於テ其ノ資力アルニ拘ラズ扶助ヲ爲サザルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第八條 正當ノ事由ナクシテ當該官吏又ハ吏員ノ臨檢ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九條 事業主未成年者若ハ禁治產者ナルトキ又ハ法人ナルトキハ之ニ適用スベキ罰則ハ其ノ法定代理人又ハ法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十條 事業主ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十一條 本令中事業主ニ關スル罰則ハ國、道府縣、市町村及勅令ヲ以テ指定スル公共團體ニ之ヲ適用セズ