朕臺灣ニ施行スル法律ノ特例ニ關スル件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年九月十六日
內閣總理大臣 男爵 加藤友三郞
勅令第四百七號
第一章 通則
第一條 臺灣ニ施行スル民事ニ關スル法律中裁判所構成法トアルハ臺灣總督府法院條例トス
前項ノ法律中裁判所構成法ノ規定ヲ揭ケ又ハ其ノ規定ニ依ルコトヲ定メタル場合ニ付法院條例中其ノ規定ニ相當スル規定アルモノハ其ノ規定ニ依ル
第二條 前條第一項ノ法律中大審院トアルハ高等法院上告部、控訴院トアルハ高等法院覆審部、地方裁判所トアルハ地方法院合議部又ハ地方法院支部合議部、區裁判所又ハ區裁判所判事トアルハ地方法院單獨判官又ハ地方法院支部單獨判官、區裁判所出張所トアルハ地方法院出張所、地方裁判所長トアルハ地方法院長トス但シ不動產登記法第百五十條中地方裁判所トアルハ高等法院覆審部トス
第三條 第一條第一項ノ法律ニ規定スル各省大臣ノ職務ハ民事訴訟法第百五十二條ノ場合ヲ除クノ外臺灣總督之ヲ行フ
第四條 第一條第一項ノ法律中府縣トアルハ州又ハ廳、市町村トアルハ市街庄又ハ區、市町村長トアルハ市尹街庄長又ハ區長トス
第二章 民法ニ關スル規定
第五條 本島人ノミノ親族及相續ニ關スル事項ニ付テハ民法第四編及第五編ノ規定ヲ適用セス別ニ定ムルモノヲ除クノ外慣習ニ依ル
第六條 本令施行前ニ發生シタル左ニ揭クル權利ニハ本令施行ノ日ヨリ左ノ例ニ依リ各民法ノ規定ヲ適用ス
一 業主權 所有權
二 地基權及工作物又ハ竹木所有ノ爲ニスル存續期間二十年以上ノ贌耕權其ノ他ノ永佃權 地上權
三 耕作又ハ牧畜ノ爲ニスル存續期間二十年以上ノ贌耕權其ノ他ノ永佃權 永小作權
四 典權及起耕胎權 質權
五 胎權(起耕胎權ヲ除ク) 抵當權
六 第二號第三號ニ該當セサル贌耕權其ノ他ノ永佃權及佃權 賃借權
第七條 臺灣不動產登記規則又ハ臺灣土地登記規則ニ依リテ爲シタル登記ハ民法第百七十七條ノ規定ノ適用ニ付テハ本令施行ノ日ヨリ不動產登記法ニ依ル登記ト看做ス
第八條 本令施行ノ際臺灣土地登記規則ニ依リテ業主權、典權、胎權又ハ第六條第二號若ハ第三號ニ該當スル贌耕權ニ關スル登記ヲ爲スコトヲ得ル者本令施行ノ日ヨリ一年內ニ第六條ノ例ニ依リ民法ノ權利ニ關スル登記ヲ爲シタルトキハ各其ノ效力ヲ生ス
第九條 本令施行ノ際臺灣土地登記規則ニ依リテ贌耕權ニ關スル登記ヲ爲スコトヲ得ル者ニ付テハ本令施行ノ日ヨリ賃貸借ニ關スル規定ヲ適用ス但シ前條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第十條 本令施行前ニ土地ノ引渡ヲ受ケ登記ヲ爲サス本令施行ノ際現ニ之ヲ贌耕スル者ニシテ前條ノ規定ニ該當セサルモノニ付テハ本令施行ノ日ヨリ賃貸借ニ關スル規定ヲ適用ス
前項ノ場合ニ於テハ存續期間ノ定アルトキト雖各當事者ハ其ノ期間內ニ解約ヲ爲ス權利ヲ留保シタルモノト看做ス
第十一條 主務官廳カ本令施行後正當ノ理由ナクシテ法人ノ設立許可ヲ取消シ又ハ其ノ解散ヲ命シタルトキハ法人ハ訴願スルコトヲ得
第十二條 後四條ノ規定ハ本島人ノミニ關スル事項ニ之ヲ適用ス
第十三條 本令施行ノ際現ニ十六年以上ノ者ハ二十年ニ達セサルモノト雖仍成年者トス
第十四條 民法第七百二十五條乃至第七百三十一條ノ規定ハ第一條第一項ノ法律中親族ニ關スル規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第十五條 本令施行ノ際現ニ存スル祭祀公業ハ慣習ニ依リ存續ス但シ民法施行法第十九條ノ規定ニ準シ之ヲ法人ト爲スコトヲ得
第十六條 本令施行ノ際現ニ獨立ノ財產ヲ有スル團體ニシテ民法第三十四條ニ揭ケタル目的ヲ有セサルモノノ財產ハ團體員ノ共有トス
第十七條 民法ノ施行ニ關シテハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外民法施行法ヲ準用ス
第三章 商法ニ關スル規定
第十八條 家長、董事其ノ他ノ者ニシテ本令施行ノ際現ニ主人ニ代リテ其ノ營業ニ關スル一切ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル者ニハ本令施行ノ日ヨリ支配人ニ關スル規定ヲ適用ス
第十九條 商法及明治二十三年法律第三十二號商法第三編ノ施行ニ關シテハ商法施行法及商法施行條例ヲ準用ス
第四章 民事訴訟法ニ關スル規定
第二十條 訴訟關係人カ期日ニ出頭スヘキ旨ヲ記載シタル書面ヲ差出シタルトキハ呼出ヲ爲シタルト同一ノ效力ヲ有ス
第二十一條 法院ハ臺灣ニ住所ヲ有セサル當事者又ハ臺灣ノ島嶼ニ住所ヲ有スル當事者ノ爲特ニ附加期間ヲ定ムルコトヲ得
第二十二條 民事訴訟法第百八十八條第三項ニ規定スル一年內ハ之ヲ三月內トス
第二十三條 本令施行ノ際滿了セサル控訴期間ハ之ヲ一月ニ伸長ス
第二十四條 本令施行前ニ爲シタル訴訟手續ニシテ本令ニ相當スル規定アルモノハ之ヲ本令ニ依リテ爲シタルモノト看做ス
本令施行前ニ爲シタル訴訟手續ニシテ前項ノ規定ニ該當セサルモノト雖從前ノ例ニ依リ仍其ノ效力ヲ有ス
第五章 不動產登記法ニ關スル規定
第二十五條 不動產登記法ノ施行ニ關シテハ不動產登記法附則及大正二年法律第十八號附則ノ規定ヲ準用ス
第二十六條 不動產登記法ノ施行ニ付臺灣特殊ノ事項ノ登記手續ニ關シテハ臺灣總督ノ定ムル所ニ依ル
第六章 雜則
第二十七條 法人ニ關スル登記事項ニシテ內地ニ於テ生シタルモノニ付テハ其ノ登記期間ヲ二週間伸長ス
第二十八條 別ニ定ムルモノヲ除クノ外從前ノ律令中臺灣特殊ノ事情ニ因リ規定セラレタル事項ニ關シテハ第一條第一項ノ法律トノ關係ニ於テハ當分ノ內當該律令ノ規定ニ依ル
附 則
本令ハ大正十二年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕台湾ニ施行スル法律ノ特例ニ関スル件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年九月十六日
内閣総理大臣 男爵 加藤友三郎
勅令第四百七号
第一章 通則
第一条 台湾ニ施行スル民事ニ関スル法律中裁判所構成法トアルハ台湾総督府法院条例トス
前項ノ法律中裁判所構成法ノ規定ヲ掲ケ又ハ其ノ規定ニ依ルコトヲ定メタル場合ニ付法院条例中其ノ規定ニ相当スル規定アルモノハ其ノ規定ニ依ル
第二条 前条第一項ノ法律中大審院トアルハ高等法院上告部、控訴院トアルハ高等法院覆審部、地方裁判所トアルハ地方法院合議部又ハ地方法院支部合議部、区裁判所又ハ区裁判所判事トアルハ地方法院単独判官又ハ地方法院支部単独判官、区裁判所出張所トアルハ地方法院出張所、地方裁判所長トアルハ地方法院長トス但シ不動産登記法第百五十条中地方裁判所トアルハ高等法院覆審部トス
第三条 第一条第一項ノ法律ニ規定スル各省大臣ノ職務ハ民事訴訟法第百五十二条ノ場合ヲ除クノ外台湾総督之ヲ行フ
第四条 第一条第一項ノ法律中府県トアルハ州又ハ庁、市町村トアルハ市街庄又ハ区、市町村長トアルハ市尹街庄長又ハ区長トス
第二章 民法ニ関スル規定
第五条 本島人ノミノ親族及相続ニ関スル事項ニ付テハ民法第四編及第五編ノ規定ヲ適用セス別ニ定ムルモノヲ除クノ外慣習ニ依ル
第六条 本令施行前ニ発生シタル左ニ掲クル権利ニハ本令施行ノ日ヨリ左ノ例ニ依リ各民法ノ規定ヲ適用ス
一 業主権 所有権
二 地基権及工作物又ハ竹木所有ノ為ニスル存続期間二十年以上ノ贌耕権其ノ他ノ永佃権 地上権
三 耕作又ハ牧畜ノ為ニスル存続期間二十年以上ノ贌耕権其ノ他ノ永佃権 永小作権
四 典権及起耕胎権 質権
五 胎権(起耕胎権ヲ除ク) 抵当権
六 第二号第三号ニ該当セサル贌耕権其ノ他ノ永佃権及佃権 賃借権
第七条 台湾不動産登記規則又ハ台湾土地登記規則ニ依リテ為シタル登記ハ民法第百七十七条ノ規定ノ適用ニ付テハ本令施行ノ日ヨリ不動産登記法ニ依ル登記ト看做ス
第八条 本令施行ノ際台湾土地登記規則ニ依リテ業主権、典権、胎権又ハ第六条第二号若ハ第三号ニ該当スル贌耕権ニ関スル登記ヲ為スコトヲ得ル者本令施行ノ日ヨリ一年内ニ第六条ノ例ニ依リ民法ノ権利ニ関スル登記ヲ為シタルトキハ各其ノ効力ヲ生ス
第九条 本令施行ノ際台湾土地登記規則ニ依リテ贌耕権ニ関スル登記ヲ為スコトヲ得ル者ニ付テハ本令施行ノ日ヨリ賃貸借ニ関スル規定ヲ適用ス但シ前条ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第十条 本令施行前ニ土地ノ引渡ヲ受ケ登記ヲ為サス本令施行ノ際現ニ之ヲ贌耕スル者ニシテ前条ノ規定ニ該当セサルモノニ付テハ本令施行ノ日ヨリ賃貸借ニ関スル規定ヲ適用ス
前項ノ場合ニ於テハ存続期間ノ定アルトキト雖各当事者ハ其ノ期間内ニ解約ヲ為ス権利ヲ留保シタルモノト看做ス
第十一条 主務官庁カ本令施行後正当ノ理由ナクシテ法人ノ設立許可ヲ取消シ又ハ其ノ解散ヲ命シタルトキハ法人ハ訴願スルコトヲ得
第十二条 後四条ノ規定ハ本島人ノミニ関スル事項ニ之ヲ適用ス
第十三条 本令施行ノ際現ニ十六年以上ノ者ハ二十年ニ達セサルモノト雖仍成年者トス
第十四条 民法第七百二十五条乃至第七百三十一条ノ規定ハ第一条第一項ノ法律中親族ニ関スル規定ノ適用ニ付之ヲ準用ス
第十五条 本令施行ノ際現ニ存スル祭祀公業ハ慣習ニ依リ存続ス但シ民法施行法第十九条ノ規定ニ準シ之ヲ法人ト為スコトヲ得
第十六条 本令施行ノ際現ニ独立ノ財産ヲ有スル団体ニシテ民法第三十四条ニ掲ケタル目的ヲ有セサルモノノ財産ハ団体員ノ共有トス
第十七条 民法ノ施行ニ関シテハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外民法施行法ヲ準用ス
第三章 商法ニ関スル規定
第十八条 家長、董事其ノ他ノ者ニシテ本令施行ノ際現ニ主人ニ代リテ其ノ営業ニ関スル一切ノ行為ヲ為ス権限ヲ有スル者ニハ本令施行ノ日ヨリ支配人ニ関スル規定ヲ適用ス
第十九条 商法及明治二十三年法律第三十二号商法第三編ノ施行ニ関シテハ商法施行法及商法施行条例ヲ準用ス
第四章 民事訴訟法ニ関スル規定
第二十条 訴訟関係人カ期日ニ出頭スヘキ旨ヲ記載シタル書面ヲ差出シタルトキハ呼出ヲ為シタルト同一ノ効力ヲ有ス
第二十一条 法院ハ台湾ニ住所ヲ有セサル当事者又ハ台湾ノ島嶼ニ住所ヲ有スル当事者ノ為特ニ附加期間ヲ定ムルコトヲ得
第二十二条 民事訴訟法第百八十八条第三項ニ規定スル一年内ハ之ヲ三月内トス
第二十三条 本令施行ノ際満了セサル控訴期間ハ之ヲ一月ニ伸長ス
第二十四条 本令施行前ニ為シタル訴訟手続ニシテ本令ニ相当スル規定アルモノハ之ヲ本令ニ依リテ為シタルモノト看做ス
本令施行前ニ為シタル訴訟手続ニシテ前項ノ規定ニ該当セサルモノト雖従前ノ例ニ依リ仍其ノ効力ヲ有ス
第五章 不動産登記法ニ関スル規定
第二十五条 不動産登記法ノ施行ニ関シテハ不動産登記法附則及大正二年法律第十八号附則ノ規定ヲ準用ス
第二十六条 不動産登記法ノ施行ニ付台湾特殊ノ事項ノ登記手続ニ関シテハ台湾総督ノ定ムル所ニ依ル
第六章 雑則
第二十七条 法人ニ関スル登記事項ニシテ内地ニ於テ生シタルモノニ付テハ其ノ登記期間ヲ二週間伸長ス
第二十八条 別ニ定ムルモノヲ除クノ外従前ノ律令中台湾特殊ノ事情ニ因リ規定セラレタル事項ニ関シテハ第一条第一項ノ法律トノ関係ニ於テハ当分ノ内当該律令ノ規定ニ依ル
附 則
本令ハ大正十二年一月一日ヨリ之ヲ施行ス