(銀行持株会社創設のための合併の条件の特例)
第三条 金融機関と銀行持株会社の子会社(会社がその発行済株式の総数に当たる株式を所有する他の会社をいう。第十二条第五項を除き、以下同じ。)である他の金融機関とが当該他の金融機関が存続することとなる合併を行う場合において、当該銀行持株会社が当該合併により消滅する金融機関(以下「消滅金融機関」という。)の子会社であるときは、合併契約書に、当該消滅金融機関の株主が当該合併により受けるべき当該他の金融機関(以下「存続金融機関」という。)の株式を現物出資の目的として当該銀行持株会社に給付し、かつ、当該銀行持株会社が当該株主に対し当該現物出資に係る新株を発行することを当該合併の条件として定めることができる。
2 前項の規定による条件を定めた合併契約書について商法第四百八条第一項に規定する株主総会の承認が得られたときは、前項の消滅金融機関の株主は、当該条件に従い、同項の存続金融機関が合併に際して発行する株式を同項の銀行持株会社に対し現物出資の目的として給付しなければならない。
(合併契約書の記載の特例)
第四条 前条第一項の規定による条件を定めた合併契約書には、商法第四百九条に規定する事項のほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 銀行持株会社が発行する現物出資に係る新株の発行価額及び払込期日
二 銀行持株会社に対する現物出資の目的たる株式の一株当たりの価格及びその合計額並びにこれに対して銀行持株会社が与える株式の額面無額面の別、種類及び数
三 銀行持株会社の現物出資に係る新株発行価額中資本に組み入れない額
(合併契約書の承認の特例等)
第五条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る株主総会の承認の決議は、商法第四百八条第三項の規定にかかわらず、発行済株式の総数の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。ただし、総株主の過半数に当たる株主が当該株主総会に先立ち当該合併に係る消滅金融機関に対し書面をもって当該合併に反対の意思を通知し、かつ、当該株主総会において当該条件を定めた合併契約書の承認に反対したときは、当該合併契約書についての承認は、決議できないものとする。
2 第三条第一項の現物出資に係る新株を発行する銀行持株会社の定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあり、かつ、同項の消滅金融機関の定款にその定めがないときは、当該消滅金融機関における前項の決議は、商法第三百四十八条第一項の決議の場合の例によらなければならない。
3 商法第四百八条第六項の規定は、前項の決議をする同項の消滅金融機関の株主総会について準用する。
(備置き書類の特例)
第六条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併を行う各金融機関の取締役は、商法第四百八条ノ二第一項に規定する期間、同項に規定する書類のほか、次に掲げる書類をその本店に備え置かなければならない。
一 第四条第二号に掲げる事項について、その理由を記載した書面
二 銀行持株会社に係る商法第四百八条ノ二第一項第三号から第六号までに規定する書類
三 銀行持株会社の定款(当該銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資に係る新株を発行するためにその定款を変更するときは、その規定を含む。)
2 商法第四百八条ノ二第二項の規定は、前項各号に掲げる書類について準用する。
(株券の交付の特例)
第七条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る存続金融機関は、その合併に際して発行する株券(以下この条において「合併新株券」という。)を同項の消滅金融機関の株主に対して交付することに代えて、これを同項の銀行持株会社に交付しなければならない。この場合において、当該存続金融機関が合併新株券を当該銀行持株会社に交付したときは、当該株主により、当該銀行持株会社に対し、株式をその目的とする現物出資の給付があったものとみなす。
2 合併新株券の発行のために前項の合併に係る消滅金融機関に提出される当該消滅金融機関の株券について商法第四百十六条第三項において準用する同法第二百十六条第一項の規定による公告が行われ、当該公告に係る期間経過前に、当該合併に係る合併契約書に記載された現物出資に係る払込期日が到来したときは、前項の存続金融機関は、同条第一項の規定にかかわらず、前項の規定による同項の銀行持株会社への合併新株券の交付を、当該払込期日にすることができる。
3 前項の規定により合併新株券を同項の銀行持株会社に交付した同項の存続金融機関は、同項の公告に係る期間経過後、遅滞なく当該公告の結果を当該銀行持株会社に通知しなければならない。
4 前項の規定による通知があったときは、同項の銀行持株会社が現物出資の給付を受けて発行する新株に係る株券を同項の存続金融機関が合併に際して発行する新株に係る株券に該当するものと、当該銀行持株会社を当該存続金融機関に該当するものとそれぞれみなして、商法第四百十六条第三項において準用する同法第二百十六条第一項の規定を適用する。
5 第一項の存続金融機関の取締役は、同項の規定による銀行持株会社への合併新株券の交付及び当該交付までの間の当該合併新株券の保管について、同項の株主に対し、善良な管理者の注意をもってその事務を処理する義務を負う。
(質権の効力等)
第八条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に際して、同項の銀行持株会社に対し株式をその目的とする現物出資の給付があったものとみなされる存続金融機関が発行する株券の交付があったときは、商法第二百八条(同法第四百十六条第四項において準用する場合を含む。)の規定により当該現物出資の目的である当該存続金融機関が発行する株式の上に存在した当該合併に係る消滅金融機関の従前の株式を目的とする質権は、当該現物出資により株主が受けるべき当該銀行持株会社の発行する株式の上に存在するものとする。
2 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る消滅金融機関の従前の株式が質権の目的とされている場合において、当該消滅金融機関が質権設定者の請求により、質権者の氏名及び住所を株主名簿に記載し、かつ、その氏名を株券に記載したときは、当該質権者は、当該条件に従い現物出資の給付を受けた銀行持株会社に対し、当該現物出資により株主が受けるべき株券の引渡しを請求することができる。
(銀行持株会社が発行する株式総数の増加の制限の特例等)
第九条 銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資の給付を受けて新株を発行する場合には、当該銀行持株会社は、商法第三百四十七条の規定にかかわらず、発行済株式の総数と当該現物出資の給付を受けて発行する新株の総数を合計した数の四倍を超えない範囲において、その発行する株式の総数を増加することができる。
2 銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資の給付を受けて新株を発行する場合には、当該銀行持株会社は、商法第二百八十条ノ二第一項(第三号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、同項の規定により決定すべきものとされる当該新株の発行に係る現物出資者の氏名を、当該条件が定められた合併の時における当該合併に係る消滅金融機関の株主である者として決定することができる。
(現物出資の検査の特例)
第十条 銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資の給付を受けて新株を発行する場合において、同項の消滅金融機関の株式(次項において「旧株」という。)が取引所の相場のある株式であり、かつ、第四条の規定により合併契約書に記載された現物出資の目的たる第三条第一項の存続金融機関の株式(次項において「合併新株」という。)の一株当たりの価格が株式評価額(その金額が相当であることについて大蔵省令で定めるところにより証明を受けたものに限る。)を超えないときは、当該現物出資については、商法第二百八十条ノ八第一項本文の規定は、適用しない。
2 前項の「株式評価額」とは、同項の合併契約書の承認の時における旧株の取引所の相場に相当する金額(同項の消滅金融機関の株主が合併により金銭の交付(利益の配当又は商法第二百九十三条ノ五第一項の金銭の分配に係るものを除く。)を受けるときは、その交付を受ける旧株一株当たりの金額を控除した金額)を旧株一株について発行される合併新株の数で除して得た金額をいう。
(合併無効の訴えの特例)
第十一条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る商法第四百十五条第一項に規定する合併無効の訴えについては、同条第二項に規定する者のほか、当該合併の時に当該合併に係る消滅金融機関の株主であった者で第三条第一項の銀行持株会社の株主であるものは、これを提起することができる。
(銀行による銀行持株会社設立等の特例)
第十二条 銀行は、銀行法第十六条の二の規定にかかわらず、大蔵大臣の認可を受けて、他の銀行(当該銀行と、第三条第一項の規定による条件が定められた合併であって当該他の銀行が存続することとなるものを行おうとするものに限る。)を子会社とする持株会社(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第九条第三項に規定する持株会社をいう。以下この条において同じ。)になろうとする株式会社を、子会社として設立することができる。
2 前項の規定による認可があった場合において、同項に規定する株式会社が設立されたときは、当該株式会社は、その子会社として設立する同項に規定する他の銀行になろうとする株式会社が銀行法第四条第一項の免許を取得することにより銀行を子会社とする持株会社になることについて同法第五十二条の三第一項の認可を受けたものとみなす。
3 銀行法第四条第二項並びに第五条第一項及び第二項の規定は、同法第四条第一項の免許を受けようとする者が第一項に規定する他の銀行になろうとする株式会社である場合には、適用しない。ただし、大蔵大臣は、当該株式会社に対してする当該免許には、当該株式会社が同項に規定する合併の後に限り営業を行うことを条件として付さなければならない。
4 大蔵大臣は、第一項の銀行及び他の銀行から、第三条第一項の規定による条件が定められた合併の認可の申請があったときは、銀行法第三十一条の規定にかかわらず、次に掲げる基準に適合するかどうかを審査するものとする。
一 当該合併後存続する銀行が、合併の後に、その業務を的確、公正かつ効率的に遂行する見込みが確実であること。
二 当該条件に従い新株を発行する銀行持株会社の収支の見込みが良好であること。
三 前号の銀行持株会社及びその子会社である他の銀行が保有し、又は保有しようとする資産等に照らしこれらの者の自己資本の充実の状況が適当であること。
四 第二号の銀行持株会社が、その人的構成等に照らして、当該合併後存続する銀行の経営管理を的確かつ公正に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であること。
5 銀行法第五十五条第二項の規定は、銀行持株会社が、第三条第一項の規定による条件が定められた合併により銀行を子会社(同法第五十二条の二第二項に規定する子会社(同条第三項の規定により子会社とみなされる会社を含む。)をいう。以下この項において同じ。)とする持株会社でなくなったとき(第三条第一項の現物出資の目的として同項の存続金融機関の発行する株式の給付を受けて再び銀行を子会社とする持株会社となった場合に限る。)については、適用しない。
6 前各項の規定は、長期信用銀行及び外国為替銀行の場合について準用する。
(政令への委任)
第十三条 この法律に定めるもののほか、第三条第一項の規定により定められた条件に従い銀行持株会社がした新株の発行に係る変更の登記の申請書に添付すべき書類に関する事項、当該条件が定められた合併に係る消滅金融機関が当該合併前に行政庁から受けている認可、免許、許可その他の処分の当該合併に係る存続金融機関への承継に関する特例その他この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。