銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律
法令番号: 法律第121号
公布年月日: 平成9年12月12日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

銀行持株会社が金融業務の効率的な運営に資するものであることを踏まえ、銀行等による銀行持株会社の創設を円滑にするための措置を講ずるものである。具体的には、銀行等による銀行持株会社の創設のための合併手続について、合併の条件、合併契約書の承認等に係る特例を設けるなど、所要の措置を講ずる。これは金融システム改革の一環として、金融の基本的枠組みの整備を図るものである。

参照した発言:
第141回国会 衆議院 本会議 第9号

審議経過

第141回国会

衆議院
(平成9年11月6日)
(平成9年11月7日)
(平成9年11月12日)
(平成9年11月25日)
(平成9年11月27日)
参議院
(平成9年12月3日)
(平成9年12月3日)
(平成9年12月4日)
(平成9年12月5日)
銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成九年十二月十二日
内閣総理大臣 橋本龍太郎
法律第百二十一号
銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
合併手続等の特例(第三条―第十三条)
第三章
罰則(第十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、銀行持株会社が金融業務の効率的な運営に資するものであることにかんがみ、銀行等による銀行持株会社の創設を円滑にするための措置として銀行等の合併手続の特例その他の所要の措置を講ずることにより、金融制度の安定及びその利用者の利便の向上を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融機関」とは、次に掲げる者をいう。
一 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行
二 長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行
三 外国為替銀行法(昭和二十九年法律第六十七号)第二条第一項に規定する外国為替銀行
2 この法律において「銀行持株会社」とは、次に掲げる者をいう。
一 銀行法第五十二条の二第一項に規定する銀行持株会社
二 長期信用銀行法第十六条の四第一項に規定する長期信用銀行持株会社
三 外国為替銀行法第十条の五第一項に規定する外国為替銀行持株会社
3 この法律において「合併」とは、第一項各号に掲げる金融機関がそれぞれ商法(明治三十二年法律第四十八号)の規定に基づき同種の金融機関との間で行う合併をいう。
第二章 合併手続等の特例
(銀行持株会社創設のための合併の条件の特例)
第三条 金融機関と銀行持株会社の子会社(会社がその発行済株式の総数に当たる株式を所有する他の会社をいう。第十二条第五項を除き、以下同じ。)である他の金融機関とが当該他の金融機関が存続することとなる合併を行う場合において、当該銀行持株会社が当該合併により消滅する金融機関(以下「消滅金融機関」という。)の子会社であるときは、合併契約書に、当該消滅金融機関の株主が当該合併により受けるべき当該他の金融機関(以下「存続金融機関」という。)の株式を現物出資の目的として当該銀行持株会社に給付し、かつ、当該銀行持株会社が当該株主に対し当該現物出資に係る新株を発行することを当該合併の条件として定めることができる。
2 前項の規定による条件を定めた合併契約書について商法第四百八条第一項に規定する株主総会の承認が得られたときは、前項の消滅金融機関の株主は、当該条件に従い、同項の存続金融機関が合併に際して発行する株式を同項の銀行持株会社に対し現物出資の目的として給付しなければならない。
(合併契約書の記載の特例)
第四条 前条第一項の規定による条件を定めた合併契約書には、商法第四百九条に規定する事項のほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 銀行持株会社が発行する現物出資に係る新株の発行価額及び払込期日
二 銀行持株会社に対する現物出資の目的たる株式の一株当たりの価格及びその合計額並びにこれに対して銀行持株会社が与える株式の額面無額面の別、種類及び数
三 銀行持株会社の現物出資に係る新株発行価額中資本に組み入れない額
(合併契約書の承認の特例等)
第五条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る株主総会の承認の決議は、商法第四百八条第三項の規定にかかわらず、発行済株式の総数の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。ただし、総株主の過半数に当たる株主が当該株主総会に先立ち当該合併に係る消滅金融機関に対し書面をもって当該合併に反対の意思を通知し、かつ、当該株主総会において当該条件を定めた合併契約書の承認に反対したときは、当該合併契約書についての承認は、決議できないものとする。
2 第三条第一項の現物出資に係る新株を発行する銀行持株会社の定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあり、かつ、同項の消滅金融機関の定款にその定めがないときは、当該消滅金融機関における前項の決議は、商法第三百四十八条第一項の決議の場合の例によらなければならない。
3 商法第四百八条第六項の規定は、前項の決議をする同項の消滅金融機関の株主総会について準用する。
(備置き書類の特例)
第六条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併を行う各金融機関の取締役は、商法第四百八条ノ二第一項に規定する期間、同項に規定する書類のほか、次に掲げる書類をその本店に備え置かなければならない。
一 第四条第二号に掲げる事項について、その理由を記載した書面
二 銀行持株会社に係る商法第四百八条ノ二第一項第三号から第六号までに規定する書類
三 銀行持株会社の定款(当該銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資に係る新株を発行するためにその定款を変更するときは、その規定を含む。)
2 商法第四百八条ノ二第二項の規定は、前項各号に掲げる書類について準用する。
(株券の交付の特例)
第七条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る存続金融機関は、その合併に際して発行する株券(以下この条において「合併新株券」という。)を同項の消滅金融機関の株主に対して交付することに代えて、これを同項の銀行持株会社に交付しなければならない。この場合において、当該存続金融機関が合併新株券を当該銀行持株会社に交付したときは、当該株主により、当該銀行持株会社に対し、株式をその目的とする現物出資の給付があったものとみなす。
2 合併新株券の発行のために前項の合併に係る消滅金融機関に提出される当該消滅金融機関の株券について商法第四百十六条第三項において準用する同法第二百十六条第一項の規定による公告が行われ、当該公告に係る期間経過前に、当該合併に係る合併契約書に記載された現物出資に係る払込期日が到来したときは、前項の存続金融機関は、同条第一項の規定にかかわらず、前項の規定による同項の銀行持株会社への合併新株券の交付を、当該払込期日にすることができる。
3 前項の規定により合併新株券を同項の銀行持株会社に交付した同項の存続金融機関は、同項の公告に係る期間経過後、遅滞なく当該公告の結果を当該銀行持株会社に通知しなければならない。
4 前項の規定による通知があったときは、同項の銀行持株会社が現物出資の給付を受けて発行する新株に係る株券を同項の存続金融機関が合併に際して発行する新株に係る株券に該当するものと、当該銀行持株会社を当該存続金融機関に該当するものとそれぞれみなして、商法第四百十六条第三項において準用する同法第二百十六条第一項の規定を適用する。
5 第一項の存続金融機関の取締役は、同項の規定による銀行持株会社への合併新株券の交付及び当該交付までの間の当該合併新株券の保管について、同項の株主に対し、善良な管理者の注意をもってその事務を処理する義務を負う。
(質権の効力等)
第八条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に際して、同項の銀行持株会社に対し株式をその目的とする現物出資の給付があったものとみなされる存続金融機関が発行する株券の交付があったときは、商法第二百八条(同法第四百十六条第四項において準用する場合を含む。)の規定により当該現物出資の目的である当該存続金融機関が発行する株式の上に存在した当該合併に係る消滅金融機関の従前の株式を目的とする質権は、当該現物出資により株主が受けるべき当該銀行持株会社の発行する株式の上に存在するものとする。
2 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る消滅金融機関の従前の株式が質権の目的とされている場合において、当該消滅金融機関が質権設定者の請求により、質権者の氏名及び住所を株主名簿に記載し、かつ、その氏名を株券に記載したときは、当該質権者は、当該条件に従い現物出資の給付を受けた銀行持株会社に対し、当該現物出資により株主が受けるべき株券の引渡しを請求することができる。
(銀行持株会社が発行する株式総数の増加の制限の特例等)
第九条 銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資の給付を受けて新株を発行する場合には、当該銀行持株会社は、商法第三百四十七条の規定にかかわらず、発行済株式の総数と当該現物出資の給付を受けて発行する新株の総数を合計した数の四倍を超えない範囲において、その発行する株式の総数を増加することができる。
2 銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資の給付を受けて新株を発行する場合には、当該銀行持株会社は、商法第二百八十条ノ二第一項(第三号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、同項の規定により決定すべきものとされる当該新株の発行に係る現物出資者の氏名を、当該条件が定められた合併の時における当該合併に係る消滅金融機関の株主である者として決定することができる。
(現物出資の検査の特例)
第十条 銀行持株会社が第三条第一項の規定により定められた条件に従い現物出資の給付を受けて新株を発行する場合において、同項の消滅金融機関の株式(次項において「旧株」という。)が取引所の相場のある株式であり、かつ、第四条の規定により合併契約書に記載された現物出資の目的たる第三条第一項の存続金融機関の株式(次項において「合併新株」という。)の一株当たりの価格が株式評価額(その金額が相当であることについて大蔵省令で定めるところにより証明を受けたものに限る。)を超えないときは、当該現物出資については、商法第二百八十条ノ八第一項本文の規定は、適用しない。
2 前項の「株式評価額」とは、同項の合併契約書の承認の時における旧株の取引所の相場に相当する金額(同項の消滅金融機関の株主が合併により金銭の交付(利益の配当又は商法第二百九十三条ノ五第一項の金銭の分配に係るものを除く。)を受けるときは、その交付を受ける旧株一株当たりの金額を控除した金額)を旧株一株について発行される合併新株の数で除して得た金額をいう。
(合併無効の訴えの特例)
第十一条 第三条第一項の規定による条件が定められた合併に係る商法第四百十五条第一項に規定する合併無効の訴えについては、同条第二項に規定する者のほか、当該合併の時に当該合併に係る消滅金融機関の株主であった者で第三条第一項の銀行持株会社の株主であるものは、これを提起することができる。
(銀行による銀行持株会社設立等の特例)
第十二条 銀行は、銀行法第十六条の二の規定にかかわらず、大蔵大臣の認可を受けて、他の銀行(当該銀行と、第三条第一項の規定による条件が定められた合併であって当該他の銀行が存続することとなるものを行おうとするものに限る。)を子会社とする持株会社(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第九条第三項に規定する持株会社をいう。以下この条において同じ。)になろうとする株式会社を、子会社として設立することができる。
2 前項の規定による認可があった場合において、同項に規定する株式会社が設立されたときは、当該株式会社は、その子会社として設立する同項に規定する他の銀行になろうとする株式会社が銀行法第四条第一項の免許を取得することにより銀行を子会社とする持株会社になることについて同法第五十二条の三第一項の認可を受けたものとみなす。
3 銀行法第四条第二項並びに第五条第一項及び第二項の規定は、同法第四条第一項の免許を受けようとする者が第一項に規定する他の銀行になろうとする株式会社である場合には、適用しない。ただし、大蔵大臣は、当該株式会社に対してする当該免許には、当該株式会社が同項に規定する合併の後に限り営業を行うことを条件として付さなければならない。
4 大蔵大臣は、第一項の銀行及び他の銀行から、第三条第一項の規定による条件が定められた合併の認可の申請があったときは、銀行法第三十一条の規定にかかわらず、次に掲げる基準に適合するかどうかを審査するものとする。
一 当該合併後存続する銀行が、合併の後に、その業務を的確、公正かつ効率的に遂行する見込みが確実であること。
二 当該条件に従い新株を発行する銀行持株会社の収支の見込みが良好であること。
三 前号の銀行持株会社及びその子会社である他の銀行が保有し、又は保有しようとする資産等に照らしこれらの者の自己資本の充実の状況が適当であること。
四 第二号の銀行持株会社が、その人的構成等に照らして、当該合併後存続する銀行の経営管理を的確かつ公正に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であること。
5 銀行法第五十五条第二項の規定は、銀行持株会社が、第三条第一項の規定による条件が定められた合併により銀行を子会社(同法第五十二条の二第二項に規定する子会社(同条第三項の規定により子会社とみなされる会社を含む。)をいう。以下この項において同じ。)とする持株会社でなくなったとき(第三条第一項の現物出資の目的として同項の存続金融機関の発行する株式の給付を受けて再び銀行を子会社とする持株会社となった場合に限る。)については、適用しない。
6 前各項の規定は、長期信用銀行及び外国為替銀行の場合について準用する。
(政令への委任)
第十三条 この法律に定めるもののほか、第三条第一項の規定により定められた条件に従い銀行持株会社がした新株の発行に係る変更の登記の申請書に添付すべき書類に関する事項、当該条件が定められた合併に係る消滅金融機関が当該合併前に行政庁から受けている認可、免許、許可その他の処分の当該合併に係る存続金融機関への承継に関する特例その他この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。
第三章 罰則
第十四条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした金融機関の取締役、商法第百八十八条第三項若しくは第二百五十八条第二項の職務代行者又は支配人は、百万円以下の過料に処する。
一 第六条第一項第一号の書面に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
二 第六条第一項の規定に違反して同項各号に掲げる書類を備え置かなかったとき。
三 第六条第二項の規定において準用する商法第四百八条ノ二第二項の規定に違反して正当な事由なく書類の閲覧又はその騰本若しくは抄本の交付を拒んだとき。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、持株会社の設立等の禁止の解除に伴う金融関係法律の整備等に関する法律(平成九年法律第百二十号)の施行の日から施行する。
(金融監督庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律の一部改正)
第二条 金融監督庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成九年法律第百二号)の一部を次のように改正する。
第五十八条の次に次の一条を加える。
(銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律の一部改正)
第五十九条 銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律(平成九年法律第百二十一号)の一部を次のように改正する。
第十条第一項中「大蔵省令」を「総理府令・大蔵省令」に改める。
第十二条第一項、第三項及び第四項中「大蔵大臣」を「内閣総理大臣」に改め、同条に次の二項を加える。
7 内閣総理大臣は、第一項(前項において長期信用銀行及び外国為替銀行の場合について準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定による認可をしたときは、速やかに、その旨を大蔵大臣に通知するものとする。
8 第一項又は前項に規定する内閣総理大臣の権限は、金融監督庁長官に委任する。
附則第二条第一項中「又は日本銀行法」を「、日本銀行法又は銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律」に改める。
内閣総理大臣 橋本龍太郎
法務大臣 下稲葉耕吉
大蔵大臣 三塚博