(目的)
第一条 この法律は、大都市における人口及び産業の過度の集中を防止し、並びに地域格差の是正を図るとともに、雇用の安定を図るため、産業の立地条件及び都市施設を整備することにより、その地方の開発発展の中核となるべき新産業都市の建設を促進し、もつて国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達に資することを目的とする。
(区域の指定の申請)
第二条 都道府県知事は、新産業都市の区域の指定を受けようとするときは、あらかじめ関係市町村長に協議するとともに、申請書に政令で定める事項を記載した書類を添附し、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
2 前項の申請については当該都道府県の議会の議決を、同項の協議については当該市町村の議会の議決を経なければならない。
(区域の指定)
第三条 前条第一項の申請書の提出があつたときは、内閣総理大臣は、当該申請書の写しを経済企画庁長官、農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、建設大臣及び自治大臣(北海道の区域内又は首都圏整備法(昭和三十一年法律第八十三号)第二条第一項の規定による首都圏の地域内(以下「首都圏の地域内」という。)に係るものにあつては、北海道開発庁長官又は首都圏整備委員会を含む。以下同じ。)その他関係行政機関の長に送付するものとする。
2 経済企画庁長官、農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、建設大臣及び自治大臣は、前項の規定により申請書の写しの送付を受けた場合において、第一条の目的を達成するため必要があると認められるときは、協議により、当該区域を新産業都市の区域として指定すべきことを内閣総理大臣に要請するものとする。
3 前項の要請をしようとするときは、経済企画庁長官は、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 内閣総理大臣は、第二項の要請に基づき、地方産業開発審議会の議を経て、当該区域を新産業都市の区域として指定することができる。
第四条 経済企画庁長官、農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、建設大臣及び自治大臣は、第二条第一項の申請がない場合において、第一条の目的を達成するため必要があると認められるときは、協議により、新産業都市の区域を指定すべきことを内閣総理大臣に要請するものとする。
2 前項の要請をしようとするときは、経済企画庁長官は、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事の同意を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の要請に基づき、地方産業開発審議会の議を経て、当該区域を新産業都市の区域として指定することができる。
4 都道府県知事は、第二項の同意をしようとするときは、あらかじめ関係市町村長に協議しなければならない。
5 第二条第二項の規定は、第二項の同意及び前項の協議について準用する。
(区域の指定の要件)
第五条 新産業都市の区域の指定(以下「区域の指定」という。)は、次の各号に掲げる要件を備えている区域で、その区域に将来相当規模の産業都市が形成される可能性を有すると認められるものについて行なわなければならない。
一 新産業都市の建設が総合的に行なわれる自然的及び社会的条件を備えていること。
二 相当規模の工場用地及び住宅用地の確保が容易であること。
三 相当量の工業用水及び水道用水の確保が容易であること。
四 道路、鉄道、港湾等による輸送が便利であり、かつ、これらの施設の整備が容易であること。
五 洪水、高潮、地盤沈下等による災害の発生のおそれが少なく、かつ、その防除が容易であること。
2 区域の指定は、国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)第七条の規定による全国総合開発計画(北海道の区域にあつては、全国総合開発計画及び北海道開発法(昭和二十五年法律第百二十六号)第二条の規定による北海道総合開発計画)に適合するものでなければならない。
3 区域の指定は、産業の立地条件及び都市施設の整備並びに雇用の安定が緊急に必要である区域から順次しなければならない。
4 区域の指定は、当該区域を中心とする地域内において労働力の需給が均衡して雇用が安定するよう配慮してしなければならない。
5 区域の指定は、第九条の規定により行なう調査及びその他の政府が行なう工場立地その他に関する調査(国の補助金を受けて地方公共団体が行なう調査を含む。)の結果に基づいてしなければならない。
(建設基本方針の指示)
第六条 経済企画庁長官、農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、建設大臣及び自治大臣は、第三条第二項及び第四条第一項の要請をするときは、協議により、当該新産業都市に係る新産業都市の建設に関する基本方針(以下「建設基本方針」という。)を決定すべきことを内閣総理大臣に要請するものとする。
2 前項の要請をしようとするときは、経済企画庁長官は、関係行政機関の長に協議しなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の要請に基づき、地方産業開発審議会の議を経て、当該新産業都市に係る建設基本方針を決定し、これを関係都道府県知事に指示するものとする。
4 建設基本方針として定めるべき事項は、政令で定める。
5 前条第二項及び第五項の規定は、建設基本方針の決定について準用する。
(公示)
第七条 内閣総理大臣は、区域の指定をするときは、その旨及び当該区域を官報で公示しなければならない。
(区域の変更等)
第八条 内閣総理大臣は、関係都道府県知事の申請に基づき、新産業都市の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。この場合においては、第二条、第三条及び第五条から前条までの規定を準用する。
2 前項に定める場合のほか、経済企画庁長官、農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、建設大臣及び自治大臣は、新産業都市の区域の一部又は全部が第五条第一項に定める区域の指定の要件を欠くに至つたと認められるとき、又は新産業都市の建設の目的が達成されたと認められるときは、協議により、当該区域を変更し、又はその指定を解除すべきことを内閣総理大臣に要請するものとする。
3 前項の要請をしようとするときは、経済企画庁長官は、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事の意見をきかなければならない。
4 内閣総理大臣は、第二項の要請に基づき、地方産業開発審議会の議を経て、新産業都市の区域を変更し、又はその指定を解除するものとする。
5 第五条第五項、第六条及び前条の規定は、前項の規定による新産業都市の区域の変更又はその指定の解除について準用する。
(基礎調査)
第九条 政府は、区域の指定及び建設基本方針の指示のため必要な基礎調査を行なわなければならない。
(建設基本計画の承認)
第十条 区域の指定があつたときは、関係都道府県知事は、第六条第三項の規定により指定された当該新産業都市に係る建設基本方針に基づき、新産業都市建設協議会の意見をきいて、当該新産業都市に係る新産業都市建設基本計画(以下「建設基本計画」という。)を作成し、政令の定めるところにより、内閣総理大臣に承認を申請しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 内閣総理大臣は、前項の建設基本計画が適当なものであると認められるときは、これを承認するものとする。ただし、当該建設基本計画に係る区域が北海道の区域内又は首都圏の地域内にあるものであるときは、第四項の規定による経由に際し、北海道開発庁長官又は首都圏整備委員会が当該建設基本計画の承認をすべき旨の意見を付したときに限るものとする。
3 内閣総理大臣は、前項の規定により建設基本計画を承認しようとするときは、地方産業開発審議会の意見をきくとともに、経済企画庁長官、農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、労働大臣、建設大臣及び自治大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 都道府県知事が第一項の申請をしようとする場合において、当該建設基本計画に係る区域が北海道の区域内又は首都圏の地域内にあるものであるときは、北海道開発庁長官又は首都圏整備委員会を経由しなければならない。
(建設基本計画の内容)
第十一条 建設基本計画には、第一号から第四号までに掲げる事項の大綱及び第五号に掲げる事項について定めるものとする。
一 開発すべき工業の業種及びその規模等に関する工業開発の目標
五 前号に掲げる施設の整備のために必要な経費の概算
(地方産業開発審議会)
第十二条 この法律及び低開発地域工業開発促進法(昭和三十六年法律第二百十六号)によりその権限に属せしめられる事項を処理させるため、総理府に、附属機関として、地方産業開発審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、新産業都市の建設の促進に関する重要事項について調査審議する。
3 審議会は、新産業都市の建設の促進に関する重要事項について、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は関係行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。
2 委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 審議会に会長を置き、委員の互選によつてこれを定める。
6 会長は、会務を総理する。会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
7 専門の事項を調査するため必要があるときは、審議会に、専門委員を置くことができる。
8 専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
9 特定の低開発地域に関する事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に、特別委員を置くことができる。
10 特別委員は、当該事項に関し学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
11 特別委員は、当該事項の調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
12 委員、専門委員及び特別委員は、非常勤とする。
14 部会に部会長を置き、会長の指名する委員がこれに当たる。
第十四条 審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
第十五条 前三条に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項並びに審議会の庶務を処理する機関は、政令で定める。
(新産業都市建設協議会)
第十六条 区域の指定があつたときは、当該区域の属する都道府県に、当該新産業都市に係る建設基本計画の作成及びその建設の促進に関する重要事項について調査審議するため、新産業都市建設協議会(以下「協議会」という。)を置く。
4 会長は、会務を総理する。会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
5 委員は、次の各号に掲げる者をもつて充てる。
一 政令で定める国の地方支分部局で当該新産業都市の区域を管轄するものの長又はその指名する職員
三 学識経験のある者のうちから都道府県知事が任命する者
6 前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。
(施設の整備等)
第十七条 国及び地方公共団体(港務局を含む。以下第二十条において同じ。)は、建設基本計画を達成するために必要な工場用地、住宅及び住宅用地、工業用水道、道路、鉄道、港湾等の輸送施設、水道及び下水道、教育施設及び厚生施設、職業訓練施設その他の施設の整備の促進に努めなければならない。
第十八条 国の行政機関の長、都道府県知事又は港湾管理者の長は、新産業都市の区域内の土地を、建設基本計画を達成するために必要な工場用地、住宅用地、工業用水道、道路、鉄道、港湾等の輸送施設、水道及び下水道、教育施設及び厚生施設並びに職業訓練施設の用に供するため、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、新産業都市の建設が促進されるよう配慮するものとする。
(財政上の措置等)
第十九条 国は、新産業都市の建設に資するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
(地方債についての配慮)
第二十条 地方公共団体が建設基本計画を達成するために行なう事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(資金の確保)
第二十一条 国及び地方公共団体は、建設基本計画に適合し、新産業都市の建設の促進に寄与すると認められる製造事業、運輸事業等の事業を営む者が、新産業都市の区域内において行なう工場、事業場その他の施設の新設若しくは増設又はこれらの施設の用に供する土地の取得若しくは造成に要する経費に充てるために必要な資金の確保に努めなければならない。
(地方税の不均一課税に伴う措置)
第二十二条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条の規定により、政令で定める地方公共団体が、新産業都市の区域内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者について、その事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税又はその事業に係る機械及び装置若しくはその事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が政令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち自治省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が自治省令で定める日以後において行なわれたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(関係市町村の規模の適正化等)
第二十三条 新産業都市の一体的な建設を促進するため、新産業都市の区域の一部をその区域とする市町村(以下「関係市町村」という。)は、市町村合併(関係市町村の廃置分合で市町村の数の減少を伴うものをいう。以下同じ。)によりその規模の適正化並びにその組織及び運営の合理化に資するよう配慮しなければならない。
2 都道府県知事は、関係市町村の廃置分合又は関係市町村とこれに隣接する関係市町村以外の市町村との廃置分合若しくは境界変更の処分をしようとするときは、あらかじめ自治大臣に協議しなければならない。
第二十四条 市町村合併に際し、次の各号に掲げる事項については、当該各号の定めるところにより、町村合併促進法(昭和二十八年法律第二百五十八号)又は新市町村建設促進法(昭和三十一年法律第百六十四号)の当該規定の例による。ただし、町村合併促進法第九条第一項第一号中「一箇年」とあるのは「二箇年」と、第九条の三第一項中「三十をこえず十五を下らない範囲」とあるのは「八十をこえず十を下らない範囲」と、「十五」とあるのは「四十」と、第十一条の五中「郡」とあるのは「都市」と、「公職選挙法第十五条第一項及び第二項」とあるのは「公職選挙法第十五条第一項から第三項まで」と、第二十条の二中「十箇年」とあるのは「五箇年」とする。
一 関係市町村の議会の議員の任期及び定数 |
町村合併促進法第九条 |
二 農業委員会の委員の任期及び定数 |
町村合併促進法第九条の三 |
三 都道府県の議会の議員の選挙区 |
町村合併促進法第十一条の五 |
四 一部事務組合等 |
町村合併促進法第十一条の六 |
五 国の財政援助 |
町村合併促進法第二十条の二 |
六 地方税の不均一課税 |
新市町村建設促進法第二十二条 |
七 地方交付税の算定 |
新市町村建設促進法第二十三条及び附則第六項 |
第二十五条 市町村合併により衆議院議員の二以上の選挙区にわたつて市町村の境界の変更があることとなつたときは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第十三条及び同法別表第一の規定にかかわらず、同法別表第一が当該市町村の境界の変更が行なわれた日以後最初に更正されるまでの間、なお従前の選挙区による。
2 前項の規定により従前の選挙区によることとした場合においては、公職選挙法第十八条第一項の規定にかかわらず、選挙区の区域により市町村の区域を分けて数開票区を設けるものとする。
(人口及び産業の集中防止のための配慮)
第二十六条 国は、人口及び産業の集中の著しい大都市及びその周辺地域への人口及び産業の過度の集中を防止するため必要があるときは、大規模な工場の新設又は増設を制限することについて、特別の配慮をするものとする。